表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/26

指名手配開始

 夜が明けることを告げるように、暖かな太陽が登る。結局、一睡も取ることは無かった。俺たちは夜通しひたすらにご飯の話をしていた。「これは、こうやって食べると…」「あれとあれを組み合わせるとじゃな…」「ここをつまんで、がぶっと!」

 

 俺は、かなり重罪な盗みを働いたから、捕まってしまうだろう。日中のハイベルンジャー通りは、不気味な程治安が良い。理由は分からないが。

 

 俺のような危険人物を、剣士が放っておくわけが無い。すぐに、大規模捜索が始まると予想した。

 

ミズモ 「さてと!そろそろ、この街を出よう」

 

ポルカーン 「んー」

 

 寝ぼけてる。たしかに、オールするのは、俺だって初めてだから、眠いのは分かる。しょうがないから、彼女を持ち上げる。後ろから、膝と肩へと手をのばして…。

 

 あれ!?軽い!想像してた3倍ぐらい。ポルカーンは、眠っていた。スースーと、可愛らしい寝息をたてている。

 

 そもそも、霊体に触れること自体が摩訶不思議だった。

 

 

 街を、周りから見たら凄い絵面で歩く。しかし、ポルカーンは俺にしか見えないので、俺は心置きなく街を歩いていく。こんな事、今だからできることだ。元からシャイな俺が、かなりアグレッシブなのも、この好条件下だから。

 

 街は、いつも通りの穏やかな表の顔のハイベルンジャー通り。しかし、いつもとは異なる事がある。それは、指名手配ポスターが配られていた事だ。俺のフード姿が、再現後高く貼り付けられている。ご丁寧に、“ミズモ”という名前も書き込まれている。今は、フードを外しており、普通の少年を演じているけど…。

 

 ちらりと見ると、懸賞金が、一千万!?

 

 俺は急いでかけ足をする。すぐにでも出ていかないといけない!という切迫感を覚える。被害総額は、そこまであったのか…。自分の罪の重大さに、少しビビる。正体不明が、逆に厄介だった。顔が載るのも、厳しいけど、正体を隠せないのはなぁ〜。

 

 そんな事を考えているうちに、ハイベルンジャー通り及び街を出ていた。今は、平原にいる。そう、あの監獄の上の平原だ。街からの距離は数百メートルのため、ジョギング程度の爽快感もある。だが、食べ過ぎからの横っ腹が痛いのは、あまり良くないが…。

 

 魔の果実(ソウルフルーツ)の大樹へと、体を預けて休憩を取る。ポルカーンも、幹にそっと座らせた。食料の問題は、当分大丈夫だと思う。次は、住居となる場所を確保しないとな。これは、衣食住の中でも最も難易度が高いと感じる。こういう時、皆さんならどう考えるだろうか。

 

 考えているうちに、いつの間にか眠っていたようだ。目をショボショボさせ、大空を見上げる。幸い、雨が降ることは無いだろうと思われる程の快晴だ。俺は大きく伸びをして、うーんとうなった。

 

 同時に、彼女も目を覚ます。

 

ポルカーン 「おはよう〜。良い昼寝じゃった」

 

ミズモ 「昼では無いけどね」

 

ポルカーン 「午前中に寝るなんて、よほど生活リズムが悪いんじゃと思うのぅ」

 

ミズモ 「いや、こういうもんでしょ」

 

 一睡もせずに1日を迎えたことがある人は、共感してくれるはずだ。なんか、こう、気が付いたら視界が狭くなっているのだよ。

 

 それより、今後の問題、住宅についての話をしてみよう。

 

ミズモ 「ポルカーン、家持っていない?」

 

 彼女は、凄い魔女なんだ。ひっそりとした森の中に、怪しげな木製の家が…

 

ポルカーン 「無いぞ」

 

ミズモ 「なんでなんだよぉ!」

 

 予想を悪い意味で裏切る回答。どうやら、彼女は俺の想像する魔女では無いようだ、あらゆる面において。

 

ミズモ 「え?なに?もしかして、さすらいの魔女だったパターンですか」

 

ポルカーン 「いや、私はそもそも亜空間に住んでいるから…」

 

 これまた予想外な回答。でも、これは希望が持てる!

 

ミズモ 「なるほど!じゃあ、俺もそこに住ませて…」

 

ポルカーン 「嫌じゃよ。プライベート空間だし…」

 

 俺は、彼女のほっぺたをつまんだ。とうとう、限界で手を出してしまった。

 

ポルカーン 「きゃっ!な、何ふぉふるかー!」

 

 やっぱり、彼女は優秀なのか無能なのかはっきりとしない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ