新しい家ゲット
手始めに、寝床を確保しないとな。目の前に、猫がいた。これって、人外にも変身できるのか?物は試しだ、やってみよう。
パッ!
目線が急降下してゆく。近くの家のガラスを覗いてみた。外出中のようで、電気は点灯していなかった。すると、やっぱり猫の顔が浮かんだ。俺が今猫だという証拠。よし、こうなりゃあ俺の勝ちだ!それと、今着ている服は、姿によって大きさが変わるようだ。茶色の革服と黒い長ズボンを着た白猫。超オシャレなキャットじゃん。
そんな事はどうでもいい。すぐに食品店へ向かう。そこには、うまそうな食材が大量にあるから。
店は混雑していた。これなら、盗むのは容易いぜ!客に紛れて、焼き魚を咥えて奪う。猫の瞬発力は伊達じゃないなッ!あっという間に店は遠ざかっていく。だが、そう簡単にはいかなかった。
店員 「泥棒猫が!そらぁッ!」
店員が手をグッと握る。バシュ!
な、何だ!?手足が、動かせない!そのまますっ転ぶ。
ま、まずい!たぶん、あの店員のスキルだ。捕まってしまう!!後ろを見ると、店員が鬼気迫る顔で走ってきた。
だが、冷静沈着な俺は、すぐに対処法を思いついた。まずは、店員に変身する。
パッ!
辺りの人々がざわめく。変身時には、俺に掛かっているスキルは解除されるのだ。手足が動いたぞ!あとは、身体に任せてスキル発動!
手を握ると、対象の手足の自由を奪う。もちろん、相手は店員。
店員 「うわッ!な、何ぃぃ!?」
店員はぶっ倒れる。そして、全く同じ顔、体型の俺は、焼き魚を抱えて足早に立ち去った。
店員 「クソッ!猫はどこいったぁ〜!」
遠くまで走ってきた。よし、ここまで来れば大丈夫だろう。俺は路地裏で、焼き魚を食べた。うまい!
「元の姿に戻りますか?」
はい。俺は、いつもの俺に戻った。
俺が今後生きていくには、こういった盗みを働かなくてはいけないんだ。よし、明日は服を盗もう。そう考えていた俺のもとへ、1人の剣士がやって来た。
剣士 「おいお前、盗みを働いていたな?」
ミズモ 「ひ、人違いじゃないすか?」
剣士 「いや、俺は見ていたぞ。お前が変身する姿をな」
ミズモ 「なるほど、あの場にいたという事だな。だったら、どうするんだ?」
剣士 「お前に決闘を申し込む!」
決闘とは、正式な勝負である。勝てば、レートが1上がり、負ければ1下がる。お互いが引き分けを認めれば、レートの変動は無い。
バン 「俺はバン。レベルは15だ」
名前と、レベルをお互いが言えば、勝負開始。初期レベルが10だから、見た目通りの若手剣士だろう。剣士は、帯刀が許される。ズルいが、彼も剣で闘うタイプだな。
ミズモ 「俺はミズモ。レベル10」
「いざ、勝負!」
まずは変身する。さーてこいつのスキルは?
パッ!
バン 「やはりそう来たか。」
元々、身長は一緒ぐらいだ。スキルは武器粉砕。普通に弱い。まぁ、とりあえずあいつの剣を…
バン 「な、なんだとッ!剣が壊れた!」
ミズモ 「これで一騎打ちだな!」
俺はドッペルゲンガーだ。闘い方が分からなくても、バンと同じような動きができる。お互い、拳で勝負した。
ボカ!ドン!ドカン!
バン 「はぁ、はぁ、はぁ…」
ミズモ 「はぁ、はぁ、はぁ…」
目も当てられない泥仕合が続いた。その時、俺は剣の破片を見つけた。いい考えが浮かんだぞ!
ミズモ 「こ、これ以上やったら、お互い疲弊するだけだ…。はぁ、ここは、ひ、引き分けで手を打たないか?」
バン 「はぁ、そ、そうだな。今回は、ゆ、許してやる」
握手が行われれば、引き分けの合図だ。お互いが歩み寄る。
そこへ、俺は拾った剣の破片をぶん投げた。見事に胸に突き刺さる。
バン 「うわぁぁぁぁぁッ!!だ、騙したな!」
ミズモ 「よ、世の中引き分けなんて無いんだよぉぉッ!」
もう一つの破片を突き刺す。バンは、涙を流しながら気を失った。刺した場所は、お腹だ。胸に突き刺せば、死んでいただろうが、流石にそんな事はしない。人殺しなんて、俺にはまだできないから。そのまま反対の方向へ歩く。
ピロン!レベルが上がる音がした。レベルが上がると、全回復するのだ。負けた側は、回復しない。
さぁて、この姿のまま、こいつの家に向かうか…。
ガチャリ。身体はバンの家に向かう。
女 「あら、おかえりなさい!」
ミズモ 「うん、ただいま」
口調すらコピーできるんだ。先程の勝負で、スキルがレベルアップしたからな。スキルは、努力次第で更に強力になるんだ。ククク…。これから、よろしくなぁ。