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電流拷問

 「ぎゃぁぁぁぁあ!!」

 

 地下監獄に、悲鳴がこだまする。ぐったりとしたオルティナだったが、その目にはまだ火が灯っている。四肢拘束された彼女は、外見では拷問されている様には見えない。傷が全く無いから。

 

 現在執行しているのは、“電流拷問”ってやつだ。白弾ホワイトの威力を弱めた物を、再びオルティナに投げる。

 

オルティナ 「ぐぎャァァァアア!!」

 

 身体が跳ね上がり、今度こそ苦しそうな声がした。ライトブルーの髪が乱れる。俺は自分の手を染めたくはないのでね。人を傷つけたら、傷つける方も痛い。傷つくと、ポルカーンに「外傷を付けるでない!」と怒られるし…。

 

 彼女は、どんな拷問が待っていても、平気だと思い込んでいたのだろう。スライム人間というスキルは、物理攻撃が効かないスキルだ。

 

 オルティナに変身している時、魔物狩りが楽ちんになる。例えば、ゴブリン。奴らは魔法を使わない。よって、彼らには攻撃打が無いのだ。棍棒、剣、投石や弓矢などは、身体がドロッとする事で効かない。さらに、水の中ではもはや手に負えないほど自由になり、水を支配できてしまう。まさに無敵に等しいスキルだ!

 

 だが、オルティナの姿を長時間続けると、酷い肩こりが発生するのが弱点かな。胸がとにかく重いし、邪魔。ポルカーンみたいに“壁”ならば、楽なのかもしれないけどね〜。

 

 拷問は、棍棒攻撃や水攻め、急所フォーカス攻撃などが主流だ。それらはスライムで回避できる。しかし、魔法攻撃を忘れていたのが、オルティナの最大のミスだ。俺が魔法を使えるなんて思っていなかったのだろう。それは正しいが、ポルカーンの存在に全てを狂わされたと思う。

 

ミズモ 「剣士の中でも、あなたが上層部だという事は分かってる。早く、他の上層部剣士のスキルと弱点を教えたまえ」

 

 脅迫として、電流が走る弾をオルティナの顔の前に見せる。 

 

オルティナ 「………」

 

 まだ黙秘を決め続けようとしていた。彼女を死なせたくは無い。優しくて強い人なので、無能な部下のせいで死んでしまうには勿体ない。

 

 あと、このドッペルゲンガーというスキルは対象が生きていないと変身できない。だから、ロストバーグ兄にはもう変身できなくなっている。スライム人間は、かなり強力なスキルだから、ストックしておきたい。

 

 時間もそこまでかけられないので、あとはポルカーンに任せよう。

 

ミズモ 「おーい、ポルカーン!」

 

ポルカーン 「おっ、何じゃ?」

 

 亜空間から参上した彼女に、電流弾を10個手渡す。彼女は今、めでたい事に声帯を取り戻した。よって、声だけなら俺以外の人にも聞こえる状態。

 

ミズモ 「これでオルティナから剣士についての情報を聞き出しておいてくれ」

 

ポルカーン 「わかったのじゃ!」

 

 コツ、コツ、コツ

 

 階段を上がる俺は、建設予定の防壁の設計図を頭に描いていた。バンとオルティナが来たのは、どうやらロストバーグ兄妹を探しに来たからのようで、今後も訪問者が増えると考えた。だったら、今のうちに魔城アップルの防御力を高めないと…。

 

 バリバリバリー!

 

 下から、恐ろしい音がした。「え!?」と思わず振り返る。

 

ポルカーン 「ミズモ、私には向いてなかった!」

 

 上を向き直ると、亜空間から彼女の元気な声が聞こえた。彼女が一発で電流弾を使用したという事は、先程の音で察した。オルティナ、どうか生きていて…。

 

ミズモ 「…わかったよ。じゃあ、木材を取ってきてくれるかな?」

 

ポルカーン 「はーい!」

 

 幼児の様な可愛らしい返事をして、彼女は姿を消す。ポルカーンって、ああ見えて、短気だ。厄介な性格だが、その分単純。俺には足りない明るさが、彼女の何よりの取り柄だろう。

 

 城を出ると、既に数本の木が横たわっていた。亜空間カットは、効率が最高級。俺は、淡々と作業を始めた。

 

 狩ったゴブリンも、容赦なく素材にする。4メートル程の防壁ならば、普通の人間や魔物は越えられないだろう。もっとも、この世には普通じゃない人の方が多いけど。その後は、なんの支障もなく作業が進んだ。

 

 

 休憩の時間。春が旬の珍しいりんごを、ポルカーンがおすそ分けしてくれた。遠い遠い街の物らしい。そろそろ夏に入るから、りんごは食べられなくなると思っていただけに、嬉しい差し入れだった。

 

ポルカーン 「この中には、あと数百個もあるぞよ!」

 

 亜空間の中を、珍しく見せてくれた。ぎっしりと春りんごが詰め込まれている。

 

 わーお。凄い量だ。見知らぬりんご農家さん、ごめんなさい。しかし、そんな申し訳ない気持ちも、春りんごを口に入れた瞬間忘れてしまった。とれたて新鮮で、最高に美味しかった。

 

ポルカーン 「そういえばミズモ、お主がこれまでの人生で食べてきた中で、いーっち番美味しかったりんごはどれじゃ?」

 

 彼女は期待の目を向けてきた。そうだな。彼女も食べたこと無いような、最高に美味しかったりんご(みたいな)の話がある。

 

ミズモ 「あれは、今から1年間。まだ俺が落ちこぼれ学生だった頃。学校を抜け出し、魔の果実ソウルフルーツの大樹で起こった出来事だ。」

 

ポルカーン 「ふむふむ」

 

ミズモ 「木陰で寝そべっていた俺は、禍々(まがまが)しい果実の中に、1つ場違いな実があったんだ。そう、真っ赤なりんご、だよ。当時からりんご好きな俺は、なんとかよじ登ってそいつを食べた。それはそれは美味しかったんだ。まぁ、少しかじった位なんだけどね」

 

 一旦目線をそらして、考える。あの美味しさを、どうやって表現したらいいかな…。…あ、そうだ!果肉がジューシーで、もはや高級なステーキの様な感じだ。うん、これなら、ポルカーンにも伝わるだろう。

 

ミズモ 「例えるとね、そのりんごは…」

 

 彼女の顔を見て、思わず声がでなくなる。

 

 ポルカーンは、絶望と驚愕の表情をしていた。

 

ミズモ 「…ポ、ポルカーン?どうしたの?」

 

ポルカーン 「なるほど、お主じゃったのか。私が霊体になってしまったのは…」

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