作戦1回目
ロストバーグ兄 「レベル46の、ダンバル・ロストバーグ」
ミズモ 「レベル13の、ミズモ・コズミック」
ダンバル 「あ!お前、確か懸賞金がかけられた泥棒じゃないか!どおりで、どっかで見たことがあるとは思っていたが…。好都合!」
これは、絶対に負けられない決闘だ。命がかかっている。ルールは、勝者が敗者の命を奪う権利を得るデスマッチ。命を取るなら、自分だってリスクを負う必要があるしな。
「いざ、勝負!」
パッ!
初手変身。彼は身体能力強化系スキルで、全ての能力を高める化け物だ。スタミナも尋常じゃ無い。
俺達は、ただひたすらに殴り合った。防御力が高すぎるあまり、攻撃が効かない。だが、それは相手も同じようだ。
ミズモ 「はぁ、はぁ…」
ダンバル 「チッ、これじゃあいつまでたっても終りゃあしねぇ」
ミズモ 「だったら、引き分けにしよう。」
ダンバル 「あぁ、そっちの方が好都合だ」
歩み寄って握手をする…
直前に、ナイフを肩に刺された。身体能力強化をしていたから、絶叫するほど痛くないものの、激痛が走る。反射で俺は一歩後退した。
ダンバル 「なっ!お、お前は…!」
彼は、刺された拍子にフードが取れた俺の顔を見て驚いていた。自分が刺したはずの人物が、自分自身と全く同じ顔をしていたら、俺でもびっくりする。
卑怯者は、考える事が同じだ。引き分けの握手が勝負の決め手。油断させて、そこを狙うのさ。このルールは、変更したほうがいいと思う。
ダンバル 「おいドリー!今すぐこいつを撃て!!」
ドリー 「りょ、了解兄さん!」
彼女は大きなバズーカを構える。まずいと思った俺は、先程の作戦会議でポルカーンから渡された物体を彼の顔面に投げた。利き手の右腕を刺されていたため、不慣れな左腕で投げた。
だが、ありがたい事に命中し、白弾が効果を発する。ダンバルは、急に気絶した。
白弾は、文字通り相手が白目を剥く程の電流を与える超危険物。ポルカーンが作ったらしいので、彼女が封印されていて良かったなと再確認した。これが世に出回ったら、恐ろしい事になる。
彼の体を持って、自分の前に盾のようにして自分を守る。妹のドリーは、急いでバズーカから手を離した。
ドリー 「こ、降参です!もう、悪さしませんッ!」
嘘だ。彼女もやってしまおう。俺はダンバルを地面へと落として、こう言った。
ミズモ 「この馬鹿兄貴を連れて、さっさと出ていけ!」
ドリー 「…はい。だ、大丈夫兄さ…」
駆け寄った彼女は倒れた。もちろん、俺が白弾を命中させたからなのだが。
気絶した兄妹を、どうするのかポルカーンに聞いてみた。
ミズモ 「こいつらを、どうするの?」
ポルカーン 「よしよし、よくやったぞ!」
ポルカーンは、ずっと座っていた腰を上げて、近づいて来る。彼女は、コルク栓が付いた瓶を二本持っていた。おそらく、亜空間から出したのだろう。
ミズモ 「で、どうするの?」
ポルカーン 「こうするのじゃ」
ポルカーンは、ロストバーグ兄妹の胸へと腕を入れた。霊体の腕は、体を貫通している。
腕を抜いたとき、ポルカーンの両手は、ふわふわとした物体を掴んでいた。それが魂だと理解するのは簡単だった。
ポルカーンは、その魂を瓶へと入れる。
ポルカーン 「これで、そいつらの体は死んだ事になった。じゃあ、いただくとするかのぅ」
彼女はロストバーグ兄妹の体を亜空間へと連れ去って、自分も亜空間へと戻っていった。
そう、これが最高の作戦の、魂抜き作戦だ。傷が付くことなく、人殺しをする罪悪感も無い(俺には人殺しとの差が分からない)らしい。今頃、彼女はロストバーグ兄妹の体を、どうしているのだろうか。
その後も、ポルカーンは詳細を話してくれなかった。兄妹の魂は、瓶の中でふわふわと浮遊しているだけであった。