作戦会議
1週間が経過し、俺とポルカーンは新鮮な人肉を回収する計画を練る日々を過ごした。魔城アップルの中は、石で作られた椅子と机だけが並んでおり、広いスペースを持て余している。壁は鉛色で、なんの細工も無い。
俺達が考えた案は、どれも現実性のない計画ばかりだ。つい最近まで穀潰しだった俺と、監獄に数十年間土も封印という名の幽閉を食らっていたスランプ魔女。“三矢の訓”を信じた場合だと、あと1人共犯者が必要になってくるなぁ。
出た案を、振り返っておく事にしよう。
1つ目は、埋葬業者を装って、死体を回収する作戦。だが、普通に怪しまれるし、何よりポルカーンは若い人肉(栄養価が豊富な年頃)を欲しているから、速攻却下された。
2つ目は、戦死者を持ち去る作戦。しかし、これは戦争が起こるのを待たなければならないし、何より戦争なんて起こしたくも無い。
最後に、人肉以外を試す作戦。人型の魔物。例えば、この森に沢山いるゴブリンとか…。エルフは、稀少かつ無害のため、殺害は禁止されている。当然、「無理!!」と断られる。
こんな感じで行き詰まった俺達は、今日も頭を抱えて唸る日々を送る。
ポルカーン 「お主、通り魔になってよ」
ミズモ 「いやだ。こんな俺でも、まだ人間の心を持っているし…」
ポルカーン 「う〜ん…。あ!!!私、とっておきの方法がわかったぞ!!」
向き合って座る彼女が、元気よく椅子から立ち上がる。
ミズモ 「はいはい」
どうせ、いつも通り現実的じゃ無い作戦なんだろうけど、一応聞いておくか。彼女の自信に満ちた表情から、少しは期待できる作戦かな?
ポルカーン 「私天才!この作戦は…」
ドゴーーーン!!
彼女の発言を遮る爆音が響いた。な、なんだなんだ!?付近のゴブリンがなせる技じゃあないぞ!俺は、意外と冷静だった。
同時に、城が揺れるような感覚。攻撃されている!相手は、おそらく人間だ。火薬の匂いがする。
ドゴーーーン!!
再びなる爆音。そして、城に風穴が開いた。煙が立ち込める。むせる俺。霊体のポルカーンは、平気そうにしている。彼女の顔は、深刻な状況を物語る様に真剣な表情に変わっていた。
煙が収まり、ようやく犯人の人影が見えた。急いでフードをかぶる。眼帯を付けた怪力赤髪男と、バズーカを持った、これまた赤髪の女。俺は、凄腕バスターだと秒察する。
男 「やっぱり、こいつらが犯人か」
女 「懲らしめてやろうよ!」
な、なんのこと!?とりあえず、穏便に…。
ミズモ 「あ、あなた達、何なんですか?」
2人は、キョトンとした顔で、お互い見つめ合う。そして、爆笑が起こった。何がおかしい?
男 「俺達の顔を、見たことが無い人がいたなんてな!ゴブリン退治の専門家、ロストバーグ兄妹を知らないとは」
女 「とんだ田舎育ちね!」
話を聞くに、有名人らしい。残念な事に、ロストバーグ兄妹なんて、聴いたことすらない。そんなことはどうでもいいから質問を続ける。
ミズモ 「俺達が、いつ悪いことをしたっていうんだよ!」
ロストバーグ兄 「そんなの、簡単だ!ここは元々、冬みかんの木が多くあった!それをお前が伐採して、ゴブリン達が遠くへ新たな食料を求めて去っていったんだよ!」
…そんな。完全に俺が悪い事になるよ、これ。植物についての知識が、俺にもう少しあれば、こんな事態は回避できたかもしれなかったのに…。
ロストバーグ妹 「そうだよ!全く、これじゃあ街へ捕まえたゴブリンを集団で送り込んで、それを退治するという英雄気取りできないじゃんか!このままだと、うちらの仕事が…」
妹は、「あっ」と言って手で口を隠す。手遅れだけどね。兄の方が、妹に冷たい視線を送っている。
妹の方が、余計なことを言ったのは間違いない。ロストバーグ兄妹は、自作自演の芝居で稼いでいる詐欺兄妹だと発覚した。
ゴブリンは、普通に人間を襲うし、殺傷能力もそこそこ高い。集団で固まったら、凶暴性も増す。実際、ゴブリンの被害者になった民間人だっていると予想できた。
ロストバーグ兄 「悪いが、今の話を聞いたお前には、死んでもらう必要がありそうだな。」
ロストバーグ妹 「そ、そうね!あんな弱そうなやつ、決闘してレベル上げもしちゃいましょう!」
ミズモ 「なぁ、あいつらなら殺しても構わないよな?」
ポルカーン 「ちょっと待て。私の作戦が今使える。まずは…」
ひと通り内容を聞いて、最高の作戦だと思った。あと、彼女からサクランボ程度の大きさの物体を渡された。これは、作戦の締めに使う。