正反対の二人
あれから、ポルカーンとたくさん喋った。彼女は話し上手で、どの内容も愉快だった。
彼女が当時、学校に通っていた話。生徒が得られる最高の役職、“生徒会長”をしていたそうだ。気さくで、友達もたくさんいて、光のような笑顔の耐えない人物だったと、少し高い岩の上から憎たらしい顔で自慢してきた。その後、どう道を間違えたのか、魔女になっていたという。庶民の出身だが、大魔導士と呼ばれる程に魔法を極めたとのこと。俺とは、真逆の学校生活だったので、新鮮な気持ちで話を聞いていた。
次は、ポルカーンの固有スキルの話。亜空間が、彼女の固有スキル。亜空間の中では、自分以外の時間が止まっているらしく、快適な気温が保たれているようで、食料保存には最適である。彼女は睡眠を取る時は、この亜空間に入っている。俺も入れてくれたらいいのに…。だけど、「プライベート空間だから!」と言って拒否された。
結局、俺の方が勝っている事といえば、有力貴族という事ぐらい。
あ。そういえば彼女からは、「お主、以外と頭の回転が速いと思うぞよ。私よりも計画性があったり、物事には人一倍注意を払う。本質を見抜くのも上手じゃ。なんで、お主は学校で落ちこぼれだったのかのぅ」とか言っていたな。そんなの、俺だって知りたいよ…。
俺とポルカーンの唯一の類似点といえば、好物がりんごであるという事ぐらいだろう。金髪天使の彼女と対になるように、漆黒の髪色の俺は地味だ。
そんな話をしていたら、いつの間にかポルカーンは眠っていた。俺が前文を回想しているほんの一瞬に…。疲れていたのかな?亜空間寝室に帰してやろうか迷ったが、起こすのも申し訳ないので、そのまま寝かせる事にした。彼女に俺の服を一枚掛ける。さてと、俺もそろそろ寝るか。
パッ!
深くもない、小さな洞窟だが、もしもの事を想定して、コウモリに変身する。なんでコウモリかって?もし生き物が来ても、超音波で分かるからだよ。夜行性じゃないコウモリは、俺ぐらいだな。ポルカーンの近くで、俺は横になる。逆さまで眠らないコウモリも、俺ぐらいだな…。
いやぁ、しかし。ポルカーンの顔立ちは、天使と言っても過言で無い。白い肌と、薄めの金髪。可愛らしい顔面の正体が、魔女なんて、未だに信じられない。そして、俺達が人肉を求めているなんて、もっと信じられない。ひょっとしたら、彼女はカニバリズム!?…いや、まさかね。
彼女いわく、人間は生物の頂点にして、秘めている期待値が高い、らしい。俺には、まだ本来の人間程の期待値が残っているのだろうか…。
朝だ。シャキッと起き上がり、伸びをする。ポルカーンを確認したが、彼女はまだ眠っている。太陽が真南に位置する数時間前ぐらいが、彼女の起床時刻だ。
俺は、今日中に城を作り終えておきたいので、早速作業に取り掛かる。
パッ!
大工のおっちゃんに変身し、建設現場へと足を運ぶ。この人は、街の1番大きな城、つまり、コズミック家の豪邸だ。それを設計、及び建設にも携わったシャル・ビルゲイツ氏。一回だけ、顔を見たことがあったので、見つけるのも簡単だった。ゴツゴツとした、髭がカッコいいおっちゃんだ。
現在新しい建物を建設中だという情報を得たので、その現場へと足を運んで、コピーさせていただいた。彼、設計を本当に知り尽くしている。そんな熟練の技術をコピーできるなんて、ドッペルゲンガー恐るべし。
あとは壁となる木材を敷き詰めるだけなので、単純だと思われた。しかし、そうはいかなかった。あとは屋根だけ、という所まで進めたが、ポルカーンの希望だと、丸い形をした家が良いと言っていた。それって、城と言うかな?と思ったけど、俺は特に形にこだわらなかったので、丸型の城に決定された。その、丸の部分が、かなり難しい!木で再現するのは、面倒くさいから、俺は街へレンガを買いに行く事にした。よって、ポルカーンを起床させないとだめだ。変身を解いてから、洞窟へ戻る。
ミズモ 「ポルカーン。起きろー」
ポルカーン 「な、何ぃ!?お主、どうやってこの亜空間へ、…って、あれ?」
ミズモ 「おはよう。君、いつの間にかぐっすりだったよ」
ポルカーン 「お、おはよう。そうじゃったか…いつの間に…。あ、毛布ありがと」
彼女はまだ眠たそうにして、俺の服を手渡ししてきた。まぁ、この服は俺のでは無いけれどね…。
ミズモ 「ちょっと調達したい物があるから、ついて来てほしいんだけど…」
ポルカーン 「わかった。私がいなければ、なーんにもできないのじゃから。世話が焼けるのぅ」
言い方にムカついたけど、事実だから否定できない。彼女は、当初は無能だと勘違いしていたが、全然違った。魔法は全般使えるし、何より亜空間が便利過ぎる。
穏やかな昼の顔のハイベルンジャー通りを、二人で歩く。レンガって、どこにあったっけ…。
「よってらっしゃ〜い!!」
聞き慣れない声に、思わず振り返る。道端で、ガタイの良い男が、いろんな物を並べて立っていた。
男 「俺と決闘しよう!勝てば、この中から、好きなものを持っていっていいよ〜!」
あ、これは、気まぐれで現れる“参加型決闘”だ。腕自慢が、自分の名声を高めるためによくやっている。
勝利後の報酬コーナーをチラッと見ると、良いものがおいてあった。おそらくは、誰も要らないであろう、大量のレンガ。これだけあれば、足りそうだ。俺は、なんて運がいいのだろう!
ポルカーンの方を見ると、「決闘って来い」という目を向けられた。俺は、男のもとへ歩み寄る。
ミズモ 「お願いします!」