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六十にして六十と化す 1/3

 紀元前にいまの中国で書かれたものと言われている“淮南子(えなんじ)”という思想書がありまして、日本にもいつ入ってきたか分からないのか詳しくは書いてありませんでしたが、日本でもむちゃくちゃ昔から知られていた書物です。今だに消えずに残っているミラクル書籍とも言うべき淮南子ですけど、また書いてあることがすごいです。

 淮南子の中に“六十(ろくじゅう)にして六十(ろくじゅう)()す”という言葉あるのですが、私はこれを読んだときから自分の座右(ざゆう)(めい)にしました。座右の銘とはご存知の通りですが、自分の方針とかスローガンみたいなものですね。

 淮南子で六十にして六十と化すの部分にどういうことが書いてあったかと言うと、“蘧伯玉(きょはくぎょく)という50歳になるおっさんがいましたが、彼はいままで生きてきた49年間のなかで色々間違いがあることに気付き、それを50歳になっても直していこうとするヤツである。つまり、彼は60歳になれば60歳分の成長をしていく人間である”というようなことが書いてあります。色々と解説をいれていきますね。

 まず、昔は寿命がめっちゃ短いので、50歳なんてかなりのおじいちゃんです。60歳なんて今で言う90歳と言っても良いぐらいな感じです。たぶん。蘧伯玉という人は中国の有名な思想家、世界の四大聖人の一人と言われている孔子(こうし)の友だちだそうです。ちなみに世界の四大聖人はブッダ、キリスト、ムハンマド(あるいはソクラテス)、そして孔子です。あるいはソクラテスとかじゃなくて五大聖人と言っても良いと思いますが、世間的には四大聖人という言い方が一般的みたいです。

 蘧伯玉さんは大夫(たいふ)(昔の中国の身分で領地(りょうち)を持った貴族のこと)でした。きっとええ感じに自分に与えられた領地を治めていたんだと思います。

 人は歳を取れば取るほど、自分がいままで信じていたものとか生きてきた道とかが正しかったと思いたくなってしまうと思います。だから、考え方とかもそう簡単に変えたくなくなってきます。男なんてプライド持ちが多いので、さらに変えません。

 このへんのことは具体例を挙げないと過去の自分を否定する難しさがピンとこないと思いますので、詳細な説明をします。もしあなたがサラリーマンをやっていて、自分ひとりでガリガリ仕事をするほうがラクだし、効率が良いと考えて、人脈はあまり築かずに夜は資格の勉強をして過ごしていたとします。そして、難しい資格をいくつか取ったりして自分のスキルを上げることを優先的に10年ぐらい生きてきたとします。それである日、夜に飲みにばっかり行って全然勉強していなかった後輩くんがあなたを追い越して課長になってしまったとします。

 あなたはその後輩くんをバカにして生きてきましたから、その後輩くんが課長になったことを聞いたら、まあモチベーションがだだ下がりになると思いますし、人事部はいったい何を見ているんだと、恨み節を吐きたくなると思います。そうこうしているうちに、こんな見どころのない会社はこっちから出ていってやると思うようにもなると思います。

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