ダイバーシティ&インクルージョンの可能性と日本の未来について 6/6
いまの日本はそこそこ豊か、そこそこ裕福です。このそこそこという場所からスタートさせれば、背伸びをする(無理をする)必要が無くなります。あとは普通というものをとりあえず置いといて、自分の子どもたちがいったい何に向いているのか一緒に考えて、一緒にアクションを起こしていくことでしょうか。例えば塾に行かせるのは当たり前というのは置いといて、本当は何を習わせたらこの子は伸びるんだろう。どんな道具を渡せば使いこなすんだろうと一緒になって考え、発見してあげれば、一獲千金だって夢じゃないと思います。三方よしで、親よし(自分よし)、子どもよし(相手よし)、世間よし(社会にもよし)が揃えば、突き進むべきです。そのときは多少無理したって大丈夫。勇気だってふりしぼる価値が出てくると思います。見た目の維持に躍起なってパワーをムダに使っていたときと比べれば明らかに良いことにパワーを使っています。それでも、メンテナンスの心をしっかり持って、自分や子どもに癒やしをしっかり与えることや元気になるように努めることをちゃんと忘れずに。いまの日本を良くするためのアクションはあなたの近くにいっぱい転がっています。見た目(進歩)ももちろん大切です。でも、ちゃんと中身(調和)を伴わせることも同じぐらいみんなで大切にしていきませんか?
私のダイバーシティ&インクルージョンの活動についてちょっと紹介して、長くなったこの話を終わりにしたいと思います。私の仕事場にこれといってやりたいことのない若手の社員がいます。まだ若いのに興味のあるスキルは無いわ、これといってやりたい業務も無いわって感じで、勤務態度こそマジメなんですけど、若い頃にガツガツしていた自分からしたら、こいつはこの先やっていけんのかなあって思っていました。人間ひとりの中には天使と悪魔がいます。そんな人間の集まりである会社も温かい空気と冷たい空気の両方が漂っています。冷酷な視線でこれといってやりたいことがないその子を見れば、やる気のない子だというレッテルを早くも貼られてしまう。変人というレッテルを貼られている私が言えた義理でもないですが、チーム内の先輩としてはもうちょい頑張れないものかと思ってしまう。でも、同時に私の中のダイバーシティ精神が疼きました。悟りを開いている人間は開いていない人よりも高いところからものを見ることができます。俯瞰的位置が一段も二段も高い。でも、経験的に自分でも助けることのできない人はいっぱいいることを知っています。会社という狭い世界で考えないといけない、なおさら自分の力が及ばないことが多い。この一見やる気のなさそうな若手を会社の戦力にするにはどうしたら良いのか。3ヶ月は頭を悩ませたと思います。
目標を持たないのはソーシャルスタイルでいうところのエミアブルタイプ(協調派)によくある傾向です。この方々は人のためにはがんばりますが、自分のためには全然がんばれなかったりします。だから、自分のスキルアップとかにあんまり興味がないこともよくあります。まず、そういう人たちであることからスタートさせないといつまで経ってもこのタイプの人たちのことを理解できませんし、こちらのアドバイスも響きません。それは分かっていました。分かっていましたが、その若手にはこちらの言うことを理解してもらえず、そんな後ろ向きに仕事をしていたら周りから頼りにされないという気持ちからキツめの言葉を浴びせたりして、ムダにその若手を凹ませてしまったりしていました。本人もやっぱり目標を持って生きていないことを悩んでいたみたいで、余計に歪んだ形で僕の言葉が響いたみたいでした。
もう全然、自分では分からなくなってしまって、ある飲み会の場で新入社員たちに先輩であるその若手が新入社員たちからみてどう映っているのか質問してみました。その場にその若手はいませんでしたから、新入社員たちから辛辣な言葉が返ってくると思っていましたが、僕の予想は外れました。むしろ、自分がそういうことを思っていたことを恥じる気持ちも生まれるぐらいの言葉が、その時、新入社員たち返ってきました。
「とても質問しやすいですし、質問したらとても丁寧に教えてくださいます」
この言葉を言われた瞬間は、僕はふーんぐらいにしか思いませんでした。ちなみにその若手とは対照的に目標をもってガツガツ仕事をしているもう一人の若手がいるのですが、そのもう一人の若手は質問をすればちゃんと回答をくれると分かってはいてもいつも忙しそうにしていて、気を使ってしまい、そこまで質問をしやすい感じではないということも新入社員たちは言っていました。
僕は数日間、新入社員の言葉をポケーッと咀嚼していて、ある時ハッ!となりました。目標を持たない若手は一見やる気のない社員に見えてしまいます。でも、違いました。会社にとって非常に重要な存在であり、戦力であることに気づきました。戦力の底上げと他の社員のサポートという面で、ものすごい才能があることに僕は気づきました。その若手はこだわりを持たないがゆえに、なんでも好き嫌いなく業務をこなしていました。本人の中で多少好き嫌いはあるようですが、他の社員と比べると、そんなに気にしていない感じでした。こだわりが強い社員は、自分のスキルが上がらない仕事をやたら嫌がる傾向にあります。すぐに誰かにしれっと押し付ける傾向があります。でも会社には面倒くさい事務処理がいっぱいあります。そういうこともちゃんとやっていかないといけないんですけど、こだわりの持たない若手はそのへんの事務仕事もテキパキこなしていました。するとこの若手はスキルの深さは浅くとも、広さで言えば色々な仕事をちゃんとこなせる力がついていました。そして、その力を何の出し惜しみもなく質問されたら、答えてたり、丁寧に他人に教えたりしていました。こだわりのある人は自分が苦労して手に入れたスキルを他人にすぐ教えたりはしません。お前も苦労して会得しろよと考えています。だからこのタイプはスキルの深さはあれど、チームの戦力底上げをしてくれるタイプではありません。
僕は都合をつくって、その目標を持たない若手とマンツーマンで話をしました。そして、以下のアドバイスを送りました(ちゃんと臭いセリフにならないよう、自然な感じで伝えました。たぶん・・・)。
・色々なことに興味を持てないことは悪いことではない
・君はこだわりがないからこそ、チーム戦力の底上げ役に向いている。つまり君がスキルを上げてくれれば、それだけチーム戦力の底上げがしやすくなる
・君の親しみやすさは天性のもの。他の人間は真似しようにもできない
・上に目標を持てと言われるから、建前の目標だけは作っておいたらいい。でも君は特に目標を持たずに流されて生きていってもいいと思う
彼がどう消化してくれたのかは分かりません。ただ前よりは悩み事が晴れて笑顔が増えたような気がするので、自分でも良いアドバイスができたのではないかなと思っていたりします。知らんけど。