4 再びの精霊
ブックマーク、評価、ありがとうございます。
やっぱ普通に乙ゲーざまぁが書けていない!
それでも読み続けて下さる方の為に、出します。
機が熟したら感想でお話しませう!
(おかえり)
精霊が少しからかいの色で話しかけてきた。
また、死んだのか……
眞白の空間は、寒くも暑くもなく、浮遊する感覚は、さほど不快でもない。
腕を上げると、午餐で身につけていたフロックコートだった。袖口に吐いた染みがついていて、私はその瞬間をまざまざと思い出す。
(母親の生誕日、祝杯を掲げて、呑んで、はい、おしまい)
毒か
(愛しのリルに遣いを出しただろ?その女官が向こう側の諜報員)
「ナパテアがっ?」
(預かった手紙を開封して、お前の目論みを知った彼女は、王宮の他の諜報員に渡した。
代わりに彼女が受け取ったのが、毒さ。残念ながら、リルには手紙も宝石も渡ってはないってさ)
……。
(どんだけ愚かなんだ?寄りにもよって、向こう側の女に手紙を託すなんて。
『私は父に告白する。グレシャムの思う通りにはならない。君は一時身を隠してくれ。このままだと君も捉えられてしまう。御身を大事に。これでお別れになっても私は君を』)
「やめろ!」
私はかっとなった。
周到だと思ったのに!リルに誠実を捧げたと思ったのに!
(恥ずかしいか?そうだな。お陰でお前の2回目は、1度目よりも悲惨だぞ)
「どういう事だ」
(おっ死んだお前は知らないだろうが、お前の毒殺は民衆党によって、王家の陰謀にすり替えられた。
民衆党の御旗を王家が潰した、とな)
「私を殺したのは、ナパテアなんだろう?民衆党が私を口封じしたんだろう?」
(そこは宣伝したもん勝ちさ。
扇動した奴らは賢いな。愛しのリルちゃんは、殉死したと思い込んで、お前の仇をとるために、先頭に立って王家の専横を訴えた。
それに踊らされた男たちが破壊し、蜂起した民衆は日に日に膨れ、王都はめちゃくちゃだ)
そんな……。
何のために私は……。
(まあ、1週間前ってのは同情するよ……しかしなあ、妻の妹は、お前が大事で仕方なかったんだな)
「え?」
(デボラはお前が死んだ事を飲み込んでからは、復讐に走った。民衆党を殲滅せんと、軍を動かすだけでは足りず、姉に支援を求めた。……まあ、あの女は随分冷静で賢い女だと記憶しているが、実は熱い女だったのだな)
「母が?」
あの、要求が高く、滅多に褒めたり可愛がったりしなかった母が。
1度目の「死んで」の母が。
(外つ国から嫁いで、あれも結構苦労したんだ。先の処刑ではお前を断つ事で、お家を守ったんだろうな……今回の様子を見て、妻の妹を見直したぞ?)
母が、私の為に。
私は目を閉じて母の凛とした姿を浮かべた。
……愛情というのは、私が思うより複雑なんだな……。
(しかし、……このまま内乱が続くと、不味いぞ)
精霊は少し言いよどみながら続けた。
「……どういう事だ?エラントはどうなるんだ?」
(隣国が奪いに来ても抵抗出来ないくらいに国力が落ちている。妻の国の兵が援軍として入ってからは、支援と称した隣国の兵もねじ込まんとしているしな。王は断り続けているが騒動が自国に波及するのを懸念していると圧がかかっていて、窮地に立っている)
そこまで?
そんなに?
(デボラの里が支援したのは悪手だったかもしれん。だが、エラントの王家だけではどうにもならんのが事実。貴族や国体の長たちの中からも背く者が大勢出てきている)
王制の落日だな
精霊はそんな事を言った。
(だがなぁ。エラントの民が実権を握るには、民主主義が熟してはおらんしなぁ……この国はまだまだ主権を誰かに委ねないと民は同じ方向を向かないな。ヘッドが足らん。資金と頭とカリスマ性のある人間がいないから、民衆党は駄目なんだ)
まるで評論をするように、精霊はつらつらと述べる。
「待ってくれ。民や貴族が互いに刃を交わしているということか」
(実情はそうだな)
「被害は」
(先程から言っているだろ。国は滅ぶ寸前だ。新体制が立っても隣国に制圧される)
「民も……貴族も……犠牲に」
私は感じないはずの身体が芯から熱っしていくのを覚えた。
学生時代、リルと語った最大多数の最大幸福は。
兄と話した王家の未来は。
私もリルも兄も、エラントの為に我が身を捧げると、そう固く誓って、未来を描いていたのに!
「……てくれ」
(何)
「生き返らせてくれ!
国を守らねば!やり直しさせて欲しい!」
……いいけどさ……
(お前そろそろ色恋から離れろよ?
1度目も2度目も、結局リルとかって女を優先するから失敗してる事、分かってるのか?)
「……言い返す言葉もない。
私のせいで他人が不幸になるのは、耐えられない。だから今度は」
くっくっ、と精霊は喉を鳴らした。
(おう、いいだろう。
今度はここに帰るなよ)
私のやり直し人生
3度目の人生が始まる




