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46 ロゼッタの推察

影は大怪我をしながらも、東宮にたどり着いた。レイモンドが、彼を抱えて

「一大事!王子、一大事ーっ!」

と、轟き渡る大声を張ったので、近衛はおろか、兵団、宮廷警察、王太子の警護、医師団まで、わらわらと現れたそうです。


私はたまたま、先日の事情聴取の為に、大ザッカードに招聘されていたので、女の身で、一緒に飛び出してしまいました。


人垣がこんもり出来ていて、流石に大ザッカードに叱られましたので、団長室に戻りましたけど。


気になるので、警護に探るように申し付けました。

程なく戻った彼は、

「……ジェイ殿下が」

「ジェイが?」

「……連れ去られ、ました、と」


はあ?


私の心臓がドクドクして、顔が火照ってまいりました。


待って、待って。

リルが誘拐されるのを

阻止するんじゃなかったの?


ジェイの未来が、変わったの?

ジェイは、ジェイは

……死ぬ、の?


「ザッカード子息の話に寄ると、荷馬車と黒ずくめの男達が、アボット男爵令嬢を拉致し、助けようとした殿下が」

「一緒に、さらわれたのね。リルと……」


どういう事?

ジェイの話なら、リルもジェイも、無事で、フランカの手の者という痕跡が……


「その者たちは、どこの者?

何か、その、証拠になるような物は」

「只今、王都警察と宮廷警察が派遣されました。

ザッカード子息は軽傷ですが、殿下の随行は、かなりの負傷で、話が出来ないようです」


影ね。

惜しい。彼なら、ジェイと同じだけ情報を持っているわ。それを聞けば、手がかりがあるのに!


そこへ

「団長はお戻りですかっ!」

と、制服が飛び込んで来ました。

襲撃の時の、大尉だわ。

確か……


「グレン様!」

「バルトークご令嬢、殿下が」


「ええ。

これ以上騒がせては駄目。

東宮に留めて。

閣僚や大臣には漏らさないで」


私は、グレン大尉にお願いしました。事が知れれば、後が大変になります。


グレン様は、承知のご様子で、

「王家の方々、王太子殿下の謁見室にお集めとなりました。

南宮や中宮には、漏らさないよう王太子殿下の命が先程」


そうよね。

私如きに分かること、王太子殿下が落とすはずもない。


「お嬢様も、どうか。

御身、大切です。謁見室へは侍従にお供させますので」


私はこくり、と頷きました。


「グレン様、貴方、大ザッカード様に御用では 「おお、グレン!動くぞ!」

団長様が、大きな身体ながら素早い動きで入ってまいりました。


「有事に居ない者が、黒だ!

全員、正門前に集合!

点呼せよ!

非番の者には確認を急げ!」


そして、私に、

「お嬢。肝が座りすぎですぞ。

お早く父上のお傍に」

と、仰いましたので、


「グレン大尉、ザッカード閣下、

真に信頼出来る方にのみ、事実を

ジェイの行方が掴めるなら、何でも申し付け下さいまし

〈鍵〉は厳重に。

東宮は、穴だらけです」

と、告げて、侍従を伴いました。


(恐らく、お二人は、非常時を待っていた……確認して居ない者が、民衆党と考えた。それはそれでいい)


それでも、先日の犯人が被ってないなら?

白いままで、東宮の動きを察知し漏らしたら?



『誰も死なせはしない。

私が守る』

ジェイは、告白のあと、決意を言ってくれたわ。

ええ。

ジェイ、私は私のできる限りの事をするわ。

だから


生きて帰って!





謁見室には、直系王家が揃っていらっしゃった。

そう。

エラント王……お義祖父様も。


エラント王、デレク王太子、デュラン、と並ぶと、壮観ね。

榛色の髪の年代別が居並んで。


フランカは……デボラ妃殿下の傍らで、青ざめて座っていました。妃殿下も気丈ながらも同様で。


男性は、交錯する情報を整理し、ジェイの行方を探っているようです。女性は、静かに成り行きを案じているご様子で……も、ないわ。


お祖母様……


「来たねロゼッタ。

貴女、ジェイと懇意じゃないか。

何を知っている?

今回の件に、承知の事、あるね?」


と、静かに響く声で仰るので、怖い陛下も王太子殿下も、私に注目するではありませんか!


「一刻を争う。

ロゼッタ、お話し」


王太子殿下は

「ロゼッタ嬢。

この際、老若男女を問わない。

出来る者が出来ることをしようね」


と、優しく仰いました。

でも、確信を持って。


お義父様は、おろおろなさるし、デュランは切なげに見てらっしゃるし……ああ、もう!


ジェイ!

許して。私、限界。


「陛下」

私は怖い怖いおじい様に向き合いました。

エラント王は、有言実行の英傑で、今でこそ柔らかくお成りで、デレク王太子に政治をお任せなさってるけど、

あのお祖母様を見染めた方ですもの!


「……端折って宜しいですか」

「大事ない。ロゼッタ、存分に」


私は礼儀を抜いて、話始めました。


「エミリオ閣下、フランカ。

あなた方を失脚せんがために、男爵令嬢の略取誘拐未遂が、本日起きる予定でした」


それが、ジェイもリルも誘拐されるなんて。


「犯人は、フランカの書簡を持っていました。

多分、今回も、閣下やフランカが、言い訳出来ない場所か証拠で、不幸を企んでいます」


荷馬車で逃走。

どこまで、たどり着いたかしら。

今、目的地をつきとめれば、間に合うのではないかしら……


「フランカの封書は、マルベル教授に届けられました。

マルベル教授を押さえて下さい。

今回に絡んでいるか、グレシャムと接点があるかのどちらかです」


直ぐに王太子の手の者が動きました。


と、不意に考えが閃きます。

もしかしたら……。


「フランカ。貴女が教授に依頼した調査の場所って?」


「え、ええ。テムノ領。私の……通称、白百合峡谷と言われる谷です」

フランカは、多分マルベル教授を案じているのでしょう。

随分、動揺していますが、構う余裕はありません。


「王太子殿下」

私は、言葉を重ねました。


「王家に身代金を取ったり、ジェイを盾に暴動をおこしたりする利得は、ございますか?」

「ないね」

王太子は、事も無げに言いました。


「王家に仇なせば、ジェイは捨てる」

私は横目で妃殿下を確認しました。

流石です。微動だに致しません。


「グレシャムがその考えに至るならば、今回の件は矢張りエミリオ閣下への罠です。

多分、ジェイは、フランカの谷で……」


そこまでで言い淀むと、義父が私の傍らまで来てくださっていました。

私が倒れると思われたのでしょう。


お義父様、

ジェイの無事を勝ち取るまで、私は大丈夫です。


「騎馬隊を。

ザッカードを呼べ」

「地図を持て。

王都から峡谷までのルートを探れ」


わらわらと人の動きが盛んになって、謁見室は騒然となりました。


王妃殿下が

「よくやった」

と、仰いましたが、私の脳細胞は未だ、引っかかる事がありました。


時間。

時間が大事なのです。


「お義父様」

私は隣の義父に言いました。


「荷馬車を先回りする手立てがあります」


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