49 陸灯台 倉庫 決着
「盗賊ギルドのエースと聞いたから、てっきり闇討ち専門家と思ったら、どうして剣技もやるわね」
「そいつはどうも。見たところあんたは騎士だな。なんで騎士がこんな所で俺を?」
火花が散る。
「公務だからかしら?」
ミリティストは楽しそうに笑みを浮かべながら、ロングソードを振り回す。
「ノヴロ……」
コンタードはその様子を見守りながら、ノヴロの耳に口を寄せると、そっと耳打ちをした。
ノヴロは小さく頷く。
それを見つけたカッドが油断なく構えながら言い放った。
「てめえらがなにを企んだって無駄だ!」
再び懐に手をやったカッドは、手のひらを翻した。いくつかの塊が金属特有の輝きをみせながら、コンタードとノヴロに飛来する。
小型の投げナイフだ。
しかし、一瞬早くミリティストが飛び込みそのほとんどを迎撃する。ロングソードを振り抜かずに、スライドさせるように動かして、投げナイフを弾く。
だが、いくつかは間に合わなかった。
ノヴロへ向かって二本のナイフが飛んだ。が、突然、見えない壁にぶつかったようにナイフが弾かれ、床へ落ちた。
「備えあれば憂いなしです!」
「心配するだろうが!先に言え!」
どうやら、ノヴロは自身に結界を張っていたらしい。透かさずコンタードが頭を叩く。
ミリティストも安堵の息を漏らしたが、カッドは収まらない。
「畜生。なんだってんだ。魔法か!?」
「はい、正解です」
たじろいで動きが止まった隙だった。
ノヴロが光球を維持するのとは反対の空いた手を突き出す。そして、人差し指をカッドの足下に突きつけた。すると、部屋の家具から伸びる影が陽炎のように揺らめいた。そして、カッドの足に絡みつくように動いた。
「なっ、なんだ」
影はツタのような形を取りながら足を絡め取ると、腿の辺りまで伸びて止まった。
揺らぎも消え去る。
「う、動けねえ」
ミリティストがチャンスとみて飛びかかり一撃を撃ち込むが、カッドはショートソードで受け止めた。
だが、踏ん張りが利かず弾くまでは出来ない。
カッドはショートソードで支えたまま右手を離すと、ミリティストの利き腕を握った。
距離を取らせないための策だったが、これではカッドも動けない。
事態は膠着したかに見えた。
しかし、今度はコンタードが動いた。
コンタードは五歩ほどの距離を一足跳びに駆けると、跳び上がってカッドの首に腕を絡まさせた。
そのまま覆い被さる様に背中に飛び乗り、腕に力を込める。
「くっ」
「硬いなあ!なんて筋肉だ」
そのまま頸動脈の位置を腕で締め上げるが、カッドの首の筋肉に阻まれる。
それでも、カッドのこめかみに血管が浮かんだ。徐々に顔が紅くなり、苦悶の表情を浮かべ始めた。
それを見たミリティストも、鳩尾を狙って膝を繰り出す。
「え、えげつないな……くっ」
脂汗を垂らしながらも、カッドはひげ面の口元を歪めるようにしてにやりと笑った。
そして、突然、膝をつくとそのまま崩れ落ちた。
「……離して大丈夫よ」
ミリティストがカッドの頭部に手を当てて、様子を伺ってから言った。
「ふうっ……なんとかなったな……邪魔してスマン」
「いいえ、いいのよ。予想以上に強かったから、加減できなくて……捕縛を諦めるところだったから……ノヴロもお疲れさま。ナイスアシストよ」
「へへへ、ありがとうございます」
コンタードは、背中から降りると立ち上がり辺りを見廻した。
早速ミリティストがノヴロからロープを受け取って、カッドを縛り始める。
コンタードは腰を手に当てて言った。
「任務完了……かな?」




