48 陸灯台 倉庫 闘い
「よくわからんが、説明してもらえるか?」
コンタードは、体勢を立て直しながら言った。
「カッドじゃないの?あなたの頭があったところを、ナイフが通っていったのよ。幸い、通り道から頭は退いたけれど」
「そりゃあ……助かった……ありがとう」
「いいのよ」
「……けど、もうちょい他に言い方がないか?」
「そうね。でも、貴方の首は繋がってた。それでよくないかしら?」
「……わかったよ」
コンタードは、ミリティストに差し出されたショートソードを受け取った。代わりに彼女は、もう一本腰に帯びていたロングソードを抜く。
そして、部屋の隅の影になった部分に、警戒の目を向ける。
「さっきも直前まで気配はなかったわ。さすが、盗賊ギルドの仕事人ね」
ミリティストが言った瞬間、一瞬だけ空気が揺らいだ。
コンタードがそれに気が付いたときには、ミリティストの剣の刃に火花が散って、再びにらみ合いに戻った。わずかな隙を突いた攻撃に、ミリティストが反応して防いだのだ。
コンタードは鋭く言った。
「ノヴロ。灯りを付けろ。闇を無くせ」
「はい、わかりました!」
歯切れよく答えたノヴロの杖の先に、すぐに光球が灯り辺りを照らし始める。
「チッ」
舌打ちが聞こえ、何かが動く気配がした。
間髪入れずにミリティストが剣を繰り出すが、躱されたようだった。
「ちょこまかとよく逃げるわね」
「待ってください」
ノヴロが杖を掲げて、影が出来ないように部屋中を照らす。ところが目を凝らしても中々姿は見えない。
だが、ミリティストが突然動いた。
一歩下がると、左に飛びかかり突きを繰りだす。
次の瞬間、コンタードたちの目に映ったのは、大型のナイフでロングソードを食い止める男の姿だった。今まで隠れていたとは信じられない様な立派な体躯の男が、壁を背にしてミリティストと力比べをしていた。
軽装の革の胸当てを身に纏い、同じく薄汚れた革のブーツを履いている。
「くそっ、やるな」
「そちらこそ。カッドさんでらっしゃるかしら?」
刃を水平にして、逆手に持ち替えたまま押し込むミリティストは優雅に言ってみせた。
「チッ、ギルドの差し金か」
「そうね。私たちは暗殺者でもないからバラしても大丈夫だと思うけど」
「盗賊ギルドからの告発で貴様を捕縛する。殺しはしない。投降しろ」
コンタードが、ショートソードを握ったまま言う。
「バカを言え。どうせ消される!」
カッドは身を翻してナイフから手を離すと、腰に帯びていた、年代物のショートソードを引き抜いた。
ミリティストは急に力の抜けたナイフを冷静に捌くと、カッドに打ちかかる。
コンタードとノヴロは、一足飛びに出口の方へ離れた。狭い部屋の中央で、ミリティストとカッドがにらみ合う。
コンタードが、目を離さずに声を飛ばした。
「いつも危険なことばかり押しつけてすまん」
「あら、軍人の役目ですもの。まして、騎士として当然よ」
「なにをごちゃごちゃと」
カッドは、古びたショートソードを握っているのとは反対の手を、一瞬だけ懐にしまった。
すぐに手元が翻る。
「伏せて!」
ミリティストの鋭い声と共に、部屋中の至る所に金属音が響いた。
素直に伏せた二人の頭上を何かが飛ぶ。
同時にミリティストが身をかわし、さらには剣でなにかを弾く。
投擲用のナイフだった。すべてカッドが投げたものだ。
ミリティストはそこからさらに踏み込むと、素早く剣を振るった。
激しい音がして、二合三合と打ち合う。
カッドは、少しだけリーチの短い剣で器用に受け止める。
二人は右に左に動きながら打ち合った。
それから、鍔迫り合いを演じ、一度離れた。




