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45 陸灯台 2F 1

 二階は一階とは打って変わって狭い空間だった。

 階段を上がりきった正面には、真四角の小さな石を積んだ壁に仕切られた、狭い通路が延びている。天井や壁の一部がぼんやりと光っていて、一階と同じように明るい輝きに満たされていた。


「すごいなあ。魔法具の一種でヒカリゴケですね」


 コンタードが疑問を口にするより早く、ノヴロが少しだけ興奮気味になって言った。


「どういう仕組みなの?」

「永続的に光を発し続ける苔なんです。空気と水をエネルギーにするので、湿気の多いところでしか使えません」

「ああ、ここは少しだけ湿気があるからなあ」

「だからレンガじゃなくて石なのかしら?」

「そうですね。今は失われた技術です。ヒカリゴケを繁殖する技術は確立されましたが、技術的にもコスト面でも普及するような物じゃないのが残念ですよね」


 コンタードは嬉しそうに語るノヴロを見て肩を竦めると、そのまま通路に足を踏み出した。

 二人が並んで歩くには少し狭い通路を真っ直ぐ歩くと、すぐに四つ角に出会う。十字に交わる通路は殺風景で、とくになんの特徴もないような通路だった。

 相変わらず真四角の石が正確に積まれているだけだ。


「どうする?」

「……とりあえず、真っ直ぐ進みましょう」


 ミリティストがそう言うと、三人はスピードを落としていた歩みを再び早めた。

 ところが、少しだけ歩いたところで、また、足を止めることになった。

 正面には道を塞ぐように取り付けられた木製の扉と、その前に崩れ落ちた大量の石の塊のせいだった。


「事故かしら?」

「いや……故意でしょうねえ」


 ミリティストの問いに、ノヴロが珍しく真剣な面持ちで答えた。

 コンタードは小さめの石の塊を手に取った。


「ああ、たしかに……見ろよ」


 そう言って差し出された石を、ミリティストは丹念に眺めた。


「……断面が新しいわね。それに綺麗な面になって割れてる……」

「ああ、道具で割った証拠だな。しかも、最近となると……」

「ここに誰かが隠れて住んでて、しかも正規ルートを潰したんですね」


 ノヴロが指さす先には、正規ルートであることを示すように「階段室」の文字が刻まれた金属のプレートがあった。薄汚れたプレートは石の破片に塗れ、一見しただけでは気が付きにくかった。


「んー、ということは、ほかの道を探すのか……あるのか?」

「あると思いますよ?」


 ノヴロはあっけらかんとして答えた。


「なぜ?」

「ここは一度観光名所として整備されたそうですよ。アトラクションが作られたそうです」

「そういえば、そんな話もあったな」


 コンタードが頭を掻きながら、思い出したように言った。


「そうだそうだ。ってことはアトラクションとやらのコースを進めばいいのか」

「すんなり行ければいいのだけれど……」


 ミリティストが諦めたように呟くと、三人はそのまま来た道を戻りはじめた。

 ほんの一分も経たずに十字路へ戻る。


「さて、どっちだと思う?」


 コンタードが十字路の真ん中で、腕組みをしたまま言ったが、答えは明白だった。

 階段側から見て右側へ伸びる道はすぐに扉に塞がれており、反対へ伸びる道は薄明かりの届かない暗闇へと伸びて消えていた。


「あっちの扉は管理室ってプレートがありますから、道としては向こうで正しいんでしょうね」

「そうだな。ただ……アトラクションってのが引っかかるんだよなあ……」


 呟くコンタードは、ノヴロの意見を肯定しながらも、そのまま管理室側へ向かって歩き出した。

 ミリティストも頷くと、彼に続く。ノヴロは肩を竦めながらコンタードを追った。

 管理室と書かれたプレートは埃が積もり、文字がかすれて読みに難かったが、十字路から見たときの通りで間違いはなかった。

 コンタードは、ドアノブに手をかけてを回そうとしてみたが、鍵が掛かっているのか回らなかった。


「開かないですね……」

「備えあれば、ってやつな」


 コンタードは鼻歌交じりに、ポケットから陸灯台の入口で使った鍵束を取り出した。

 一つずつ確かめながら鍵穴に射し込んで回してゆく。やがてコトリと音がすると、手をかけていたドアノブが静かに回った。扉を押し込むと、蝶番が錆び付いたような音をたてながら内側へ開いた。

 部屋の中は暗く、しかも、空気が淀んでいた。視界は薄暗く、床や壁は全て厚い埃に覆われていて、扉が空気を撹拌したせいか、細かい塵がもうもうと巻き上がっていた。 

 ミリティストは、布を口元に当てながら浅く呼吸をした。


「これは酷いわね」

「ああ、埃が随分と積もってんな……」


 コンタードがじろりとノヴロの方を見る。


「……分かってますよ。風を使った生活魔法は権利フリーが多いですから、任せてください。ええと……」


 ノヴロが察したように言って、それから口の中でなにかをもごもごと呟いた。

 ふわりと風が舞い、一瞬大きなつむじ風が部屋を荒らし、コンタードの視界を奪ったかに見えたが、すぐに落ち着くと目の前には清潔感にあふれる小部屋が姿を現した。

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