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44 陸灯台 1F

 陸灯台の正面の門は固く閉ざされていた。

 当然と言えば当然である。

 陸灯台は古来より対エルフへの監視塔として作られたのだが、歴史を紐解くと、文献として歴史が残る前の先史時代に建てられた物だった。だが、その用途は諸説あるものの、不明である。

 何処からか、切り出された大きな石が組まれた塔だったが、それを、数百年前の種族間の騒乱のあった時代に、監視塔として増改築したのが陸灯台なのだ。種族間が平和になった今は、ほとんど放棄された状態になって久しい。だから、古代の遺跡を利用した建物だが、今もすでに遺跡と化している。

 一応、貴族領に建っているが、この塔自体は国の管理である。ところが少々辺鄙なところにあるため、管理は杜撰だった。結果、盗賊や魔物の巣と成り果てていた。

 コンタードには、セイフ・カッドの捕縛、排除に関して言えば、彼がこの塔に棲み着いたというのは十分あり得る話だと思えた。

 ただ、問題はどこに隠れているかということだが。


「これって、やっぱり踏破しないといけないのかな?」

「さあ?……ここに棲み着く後ろ暗い連中は、裏口から侵入するって噂よね」

「だよなあ……門は朽ちてるように見えてるけど、経年劣化だけで、破損の様子はないもんなあ」


 コンタードが納得したように言った。そして、背嚢の中から大きな鉄の鍵を取り出す。

 丸い輪っかに鉤の付いた棒を溶接しただけに見える粗末な鍵である。

 コンタードは、ノッカーの下に鍵穴を見つけるとそうっと用心しながら鍵を射し込んだ。


「その鍵、どこから持ってきたんですか?」

「ああ、きちんと手続き踏んで、施設管理課から借りてきたんだよ」

「へえ、よく貸してくれましたね」


 ノヴロが感心したように言うと、コンタードは鍵を見つめたまま答えた。


「そりゃ、本来管理しなきゃいけないのに放置されてる施設を、別部署が覗いてくれるんだ。向こうにすりゃ渡りに船だろうよ」


 コンタードは言いながら、そっと左手を添えて、静かに鍵を回した。コトリと錠の外れる音がすると、コンタードはそっとそのままフックのような大きなドアノブを回して、静かに扉を押し込んだ。

 大きな扉が音を立てて動くと、人が二人ばかり並んで通れる空間が開いた。


「おや?結構明るいんだな」


 コンタードが口にしたとおり、塔の中は明るかった。

 大きな屋敷が二軒ばかり入りそうな巨大な空間があって、天井もかなり高い。円形の競技場のような広い空間に、ぽつんと石造りの階段が上に伸びている。

 壁のいたる所に窓があって、そこから陽射しが射し込んでいたので、建物の中とは思えない明るさだった。


「おかしいわね?」


 ミリティストが言った。


「なにがですか?」

「……噂に聞いただけだけれど、棲み着いた夜盗なんかが出入りする入口がどこかにあるらしいけれど、これじゃあり得ないわよね?」

「ああ、そういうことですか……」

「それな、管理課に鍵を借りたときに他の入口は無いか聞いてみたんだが、確かにあるってさ」

「でも……」

「いや、それがな。この塔の外壁は二重構造になってて、この内側から見える壁の向こう側とに狭い空間があるんだって」

「外壁と内壁の間ってこと?」

「そうそう、何階層か上の方で繋がってるらしい」

「……あれ?そっちから入ることもできたんじゃ?」


 ノヴロが訝しげに言った。


「そうだな。でも、カムフラージュされてるらしいから探すのがホネだし、奴も警戒してるかも知れない。正規ルートは普段使われないから……」

「油断してるかもね」


 ミリティストは首を傾げてにこりと笑ってみせると、中央の階段に向かって歩き始めた。

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