40 ターゲット
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数時間前、出張の準備を整えたコンタードたちの元に、盗賊ギルドから手紙が届けられた。
持ってきたのはメッセンジャーのスサだった。ぎこちない笑顔を振りまきながらも、愛想を心駆けながら仕事をするスサに、コンタードはねぎらいの言葉をかけて送り出してから、貰った封書の口を切ると、中にはギルド長からの短い文書が入っていた。
『すまない。奴が逃げた』
コンタードは、危うく卒倒するところだったが、踏みとどまった。
酷く短いメッセージと共に、ターゲットとなる人物の名前と特徴、そして、逃亡先の候補が記載された資料が同封されていた。
そして、コンタードたちは再び馬車で移動を開始することになった。
「さすがに今回は、日帰りは無理ね」
ゆったりと揺れる馬車の客車の中で、ミリティストが言った。今回は距離もあり、さすがにレンタルを含めて馬車を用意する余裕もなかったため、三人は乗合馬車に身を置いている。
向かう先は、王都より北東にある陸灯台だ。
「日帰りどころか、片道に二日はかかるんじゃないか?」
コンタードがうんざりしたように言う。ノヴロはいつものようににこにこと笑顔を浮かべながら、車窓を流れる景色に目を向けていた。
狭いながらも、八人ほどは乗れる大型の客車を、二頭の馬車が曳いている。スピードはあまり出ないが安定はしていて、のんびりとした雰囲気に覆われている。
乗り合いとはいえ、現在の乗客はコンタードたち三人だけだ。
「別室に異動してからこっち、出張が多くて敵わないな」
「あら、私はむしろ減ったけど?」
「そりゃ、騎士団の調整役なら飛び回るだろうさ。俺はしがない文官だからな」
コンタードは答えながら、肩掛け鞄を開いて文書を取り出す。
「しかし、なんの因果か陸灯台とはな……」
「あら、手間が省けたじゃない。鍵の在処を確認できるわよ?」
「それは勇者の仕事だろ?まさか、かち合わないよな?」
「たぶん、大丈夫ですよ。カンツの街からは距離がありますし、盗賊ギルドが講習会するんでしょ?」
ノヴロが言った。
コンタードは同意して肩を竦めた。
「どうせなら、勇者たちに任せりゃよかったかな?」
「魔物相手以外の仕事は振らない方がいいわよ。汚れ役はさせない方がいいわ」
「そうだよなあ」
コンタードが言ってはみたもののという風に、ミリティストに向かって頷いた。ノヴロはきょとんとして聞いた。
「どうしてです?」
「そりゃ、結構な特権を与えられてるんだ。やっかみもすごいだろ?」
「ああ……なるほど」
「下手に攻撃させる材料を増やすもんじゃないさ。魔物以外の相手は、な」
コンタードは説明しながら書類を広げる。
ガラス一枚で隔てられただけの御者台の様子を伺いながら、コンタードは声を落とした。
「まだ、ゆっくりとは説明してなかったが、まず、ギルドからの要請は、生死を問わず、裏切り者であるセイフ・カッドを捕まえることだ。このカッドという男はそれこそいろいろな汚れ役をこなした男らしいからな。手強いぞ」
コンタードは書類の記載を指で追う。
「剣技もさることながら、体術が得意らしい。正面切っての戦いもかなり強いらしいが、汚れ仕事の多くは暗殺まがいの手段だったようだな」
「ふうん。暗器も使うのかしら?毒は……特に記載は無いわね」
「けど、気をつけた方がいいと思う」
「そうね」
ミリティストが頷くと、コンタードは書類を丁寧に畳み、鞄に戻した。
「とりあえず、陸灯台の最寄りは……ハーロ砦か……」
「そうね。まあ、ハーロ砦までは楽に行けるわよ」
ミリティストはそう言うと、背もたれにもたれ掛かって伸びをした。ノヴロはとなりでうたた寝をするためか、杖にすがって目を瞑っている。
コンタードは肩の力を抜くと、自分も背もたれに体を預けて目を瞑るのだった。




