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37 ランテルノの憂鬱

 王宮府の建物はいつもの通り静かだった。魔王対策支援室も静けさは変わらない。

 ただ、暇で静かというわけでもなく、職員が自分たちの仕事に集中しているからとも言えた。

 それでも、その沈黙を破る輩もいるわけで、それは、やはり室長のランテルノだった。


「コンタード君の報告書は読んだよ。とりあえず、いつものようにノヴロ君とミリ君と三人で対応してくれるかな?」

「それは、構いませんが……ミリティストは連れて行っていいんですか?他にも仕事があるんじゃ?」

「あるけど、賊の討伐に文官を丸腰で向かわせたら、僕が怒られちゃうよ?」

「武器は持っていきますし、ノヴロだって一緒ですよ?」


 コンタードは書き上げる途中の報告書から顔を上げてから、ノヴロを指して言った。


「ノヴロ君はなかなかやるけど、専門職というか研究職だからね。行政職と専門職だけじゃ行かせられないさ」


 ランテルノは、ため息をつきながら言った。


「ただ、その前にミリ君の報告を聞こうか」

「はっ」


 コンタードたちよりもひと足先に事務室に戻っていたミリティストは、席から立ち上がると、一度美しい敬礼を見せてからランテルノの向かいの席へ移動した。

 もちろん、場所はソファでランテルノの向かい側のソファだ。

 ミリティストは少しだけ思案して形をまとめると、手短にインテリコの話を伝えた。ところどころ質問を受けながらも、ミリティストは的確に説明を続ける。


「なるほどね。状況は大体分かったよ」


 一通りの説明を受けたランテルノは、目を閉じたまま言った。


「ひとまず勇者たちには探索をさせよう。同時にうちも情報の裏取りを急いで」

「かしこまりました」

「ただし、鍵師の資格を取ることが先なんだけれどもねえ。忙しいよね?」


 ミリティストは曖昧に微笑んだまま、首を素早く縦に振った。


「んー。まあ、この件は適任を見つけて連絡させようかな?」


 珍しく、コンタードたちの勝利だった。

 ランテルノは少しだけ渋い顔をしたが、すぐに普段と同じ昼行灯に戻った。


「裏取りの方は本室に振ってしまおう。うちは、目下勇者のバックアップに力を注ぐよ」

「はい」

「この件を他人に任せるようで、ミリ君には悪いことをするけれど……」

「仕事ですからお気遣い無く」


 ミリティストはわざとらしく敬礼をして見せてから、舌を出した。

 ランテルノはそれを見て苦笑いを浮かべてから続けた。


「うん、まあ、ごめんね。コンタード君たちと一緒に盗賊ギルドの件を頼むよ」

「かしこまりました」

「あとは……」


 ランテルノは呟き、ソファに腰掛けたまま思い切り背を伸ばした。


「厄介ごとだけかな?」

「厄介事って……なんですか?」


 ノヴロがランテルノの言葉を聞き咎めて訊ねる。


「ミリ君、お友達……インテリコ君は追加で、なんて言ったんだっけ?」

「……議会に気をつけろ、と……」

「だよねえ。分かってはいるんだけれどね……」


 ランテルノは額に手をやった。


「働きたくねえなぁ……」

「室長?」


 コンタードが大きな声を上げる。


「わかってますよう。もう……冗談だってば」


 ランテルノは呟く。

 おそらく、インテリコが言いたいのは、情報戦や政治的に敵対者がいるということだろう。いくら国王の肝いりとはいえ、専制君主ではなく立憲君主制を取っている以上、国王の権限は意外に大きくはない。となれば、議会で噛み付いてくる議員なんかがいるわけだ。

 敵対者だ。

 冒険者を公務員として雇って勇者を名乗らせ、魔王軍に当たる。この案に反対する者が、いずれは議会で激しく攻撃してくることになるだろう。政争の道具としては適当といえるのだから。

 そして、その時矢面に立つ人間が必要なのだ。そして、それはおそらくランテルノになるであろう事は、当事者には分かっていることだ。


「そろそろ本腰入れなきゃダメかなあ?」


 ランテルノが残念そうに言った。

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