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34 ギルドの地下へ

いつも誤字報告をありがとうございます


ぼちぼちペースが元に戻るかもしれませんが、ご容赦くださいませ

「これは無事に帰れるんですかね?」


 ノヴロが疲れた声で言った。


「帰らないと室長になに言われるかわかんないぜ?」

「確かにですね」


 コンタードの言葉にノヴロがしぶしぶ同意する。

 二人が今いるのは王都の中心部にあるギルド街だ。正確にはたくさんのギルドの事務所や本部の集まった地区の中にある、盗賊ギルドの地下だ。

 受付を通り、案内された先が地下通路の入口だったのだ。

 一般向けの受付や用事は、地上の小さな一室の受付で対応してくれるが、今回は特別なお願い事であり、ギルドの担当者か責任者に会う必要があった。そして、案内されたのがこの地下通路というわけだった。

 どうやら、盗賊スキルを持ったものが通ることが前提らしいこの通路は、トラップが満載だった。命に関わりが無く、アトラクションであれば随分と人気も出るような内容だったが、コンタードたちは命がけだ。

 幸いにも、ノヴロの魔法でほとんどの罠は無効化されているし、コンタードも上手くトラップを回避できていた。


「これを部外者辺りに押しつけるのもどうなんだ?」

「部外者って思われなかったんですかね?」

「あり得るな。もしくは敵対認定されたか……」

「まだ、用事伝えてませんよ?」

「伝えりゃどうにかなったのかな?」

「どうでしょうね」


 ノヴロの言葉に、条件反射のように頭を叩くコンタード。ノヴロが頭をさすりながら呪うように言った。


「いや、まじで勘弁してくださいよ」

「おまえの頭が、ちょうどいいところにあるからだよ」

「酷いですよ」


 ノヴロがぼやく。

 それを聞き流したコンタードは、代わりに呟いた。


「公務員は、こういうギルドからはよく目の敵にされるしな」


 ギルドに対して、規制や規則などで行政の担当者が指導や立ち入り検査をする場面は、多々あるものだ。その分、彼らが煙たがられるのはたしかに道理ではある。

 コンタードは、通路の最初の方で拾った木の杖で、目の前の床を叩きながら考えている。突然、目の前の床が下に向かって開き、落とし穴が出現する。所々に設置された松明の光では、底が全く見えない。


「これで何個目ですかね?」

「さあてな。お前は今まで自分が食べたパンの数を数えてるか?」

「……数えてはいませんけど、罠の数ぐらいは数えてもいいと思います」

「……確かにそうだな。でも数え飽きるくらいには見つけたな」


 実際、部外者を撃退するためであろうトラップがあちらこちらに仕掛けられているが、致命的なものは少ない。本気で撃退と言うよりは、鍛錬と、来客者のレベルを調べるためのトラップという気がしないでもなかった。

 通路自体も、右へ左へ曲がりくねっているとはいえ、コンタードの体感ではあるが、建物の外側からははみ出ておらず、しっかりと収まっているようだった。

 このまま街の外まで行くのでは敵わない。

 目の前に開いた落とし穴を、慎重に飛び越えた二人が目を凝らすと、通路の先にぼんやりと、松明とは違う人工的な明かりが見え始めた。どうやら、通路が折れて、部屋か何かの入口になっているように見える。


「あー、これは魔法の灯りですね」


 ノヴロが目を細めて眺めた後に言った。


「ゴールって事でいいんですかね?」

「油断はするなよ」


 最後にこそ、厄介なトラップがあるものだ、とコンタードは考えながら慎重に歩みを進める。が、杞憂に終わったようで、無事に灯りの漏れ出す小部屋の前まで辿り着いた。


「お客さんか?お入りなさい」


 部屋の中からしゃがれた声が言った。

 折れた通路の角からのぞき込むと、応接セットが一組、部屋の真ん中に置かれ、奥には執務用と思われる大きな木製の机があった。背後には書棚と普通の棚があって、なにやら小物がたくさん並んでいる。


「失礼します」


 コンタードが目を凝らすと、奥の執務机のところに一人の女性が座ってこちらを見ていた。年の頃は八十代くらいか、小柄な白髪の老婆が穏やかな笑みを浮かべている。


「行政府にある魔王対策支援室の、コンタードと申します」

「同じくノヴロと申します」

「ああ、よく来たね」


 老人は立ち上がると、ゆっくりながらしっかりとした足取りで入口側へ歩き、応接セットのソファの前に立った。それから手で指してソファを進めた後、自分もそのまま腰をかけた。

 コンタードたちも、促されるままにソファに腰を下ろす。


「王都盗賊ギルドのギルド長のセラーロだよ」

「恐れ入ります」

「よくまあ、ここまで辿り着くのも大変だったろ?」

「ええまあ」


 コンタードは、だったらこんな所に作るなよ、という言葉を飲み込み愛想笑いを浮かべた。


「ふふん。なにを考えたかは分かってるよ」


 セラーロは口の端を上げてにやりと笑う。


「いろいろと重宝するんだよ。第一、冷やかしがやってこないからね」

「それはそうでしょうね。冷やかしで訪れるのにこんな苦労は割には合わないです」


 渋い顔をするコンタードの横で、ノヴロがあっさりと言った。


「……はっきりいうね、面白い子だ」

「よく言われます」


 最近コンタードは、ノヴロは実は確信犯ではなかろうか、と思い始めている。


「ははは、いいね。正直な子は嫌いじゃないよ?……それでは用件を聞こうか?なにやらギルドに用事と聞いているけど?」

「ええ、鍵師の資格を伝授していただきたいのですが?」


 コンタードは気を取り直すと話し始めた。

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