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27 採石場 戦闘

「もう。結局こうなるの?」


 ミリティストは剣を抜くと、事務所の扉から外へ駆けだした。続いてノヴロが杖を構えながら飛び出す。

 コンタードは窓を一気に開け放つと、その側の壁にしゃがみ込み、足もとに落ちていた石のかけらを拾った。それから、おもいきり振りかぶって投げた。

 拳より少し小さい石のかけらは真っ直ぐと向かってくるダイモーンの一体の顔面に直撃し、ダイモーンがのけぞる。


「ナイス援護!」


 すでに駆け寄っていたミリティストが、すれ違いざまに真横に胴を薙ぐと、そのままダイモーンは悶絶しながら倒れ込んだ。


「危ない!」


 少し遅れて外に出たマエスノが声を上げる。


「出でよ氷の矢!出でよ石の矢!」


 胴を薙ぐために剣を振りきって無防備になったミリティストに向かって、ダイモーンの内の一体が黒い剣を抜き放ち、一撃を振り下ろすところだった。

 だが、すぐにノヴロが放った魔法が弧を描きながら飛来し、ダイモーンを突き刺しながら吹き飛ばす。倒れ込んだところをマエスノがツルハシを振り下ろした。

 残りの二体が、先程の個体と同じような黒い剣を抜き放った。そして、先頭にいたミリティストに襲いかかる。

 一本目の剣が横殴りに襲ってくるが、一歩踏み込みかがみ込んで躱す。今度はそのまま上段から振り下ろされた別の黒剣を、自分の剣の刃先に手を当てて両手で受け止めた。

 さらに刃先の側を下げるとそのまま滑らせて身体の向きをずらし、みぞおちのあたりの鎧の隙間に肘鉄を撃ち込んだ。

 ダイモーンが前のめりになる。そのまま肩車で投げ飛ばした。

 最初に一撃を見舞ったダイモーンは、その様子に怯むと、杖しか武器を持たないノヴロに狙いを定めた。大きくのけぞるように深呼吸をするとそのまま炎を吐き出す。


「うわっ」


 口ではそう叫んだノヴロは、けれども冷静に右手を前にかざす。すると、一本の束になった炎は、ノヴロの手のひらによって張られた透明な壁に阻まれ拡散した。

 ノヴロが素早く右手の杖を突き出すと、ダイモーンはそのまま弾かれるように後方へ吹き飛んだ。狙っていたかのように先ほどミリティストが投げ飛ばしたダイモーンの上に重なるように落ちる。

 ミリティストはその隙を見逃さずに、ジャンプすると、二体の上から剣を下向きに構え、重力に引かれて刃先が地面に到達するまで突き刺した。さらにマエスノがツルハシを振り下ろし、ダイモーンは全て動かなくなった。


「……おまえらめちゃくちゃ強いのな」

「あら、あなたの投石もなかなかよかったわよ」

「いや、おまえらと一緒にするなよ」


 照れるノヴロを無視して、コンタードは窓越しに言った。ミリティストは軽く息を吐き出すと、剣を一振りしてから血を飛ばして、鞘に収めた。


「今日は手入れが大変だわ」

「その点、魔法はいいですよ」

「そうかもね……コンタードはこの魔物を知ってるの?」

「ああ、先生に聞いたことがあるよ。たしか魔族の使い魔だな。少し知能もあって、武具も扱えるし、炎も扱える。吐くとは聞いてなかったけどな」

「ふーん。強いのかしら?」

「それなりには。駆け出しの冒険者になんとかなるレベルではないな。おまえら下手な冒険者より強いんじゃないか?」

「まあ、騎士ですもの。武技こそ命よ。そこらで燻っている冒険者よりは自信があるわよ?」


 ミリティストが冗談のように言ったが、コンタードは彼女が半分本気なのを感じた。

 コンタードは扉の方へ向かい、部屋を出る。

 ミリティストは続けた。


「さすがに、人型の魔物を解体する気にはなれないわね」

「そうですよね。ちょっと勘弁して欲しいです」

「まあ、でも鎧と剣くらいは持って行けるんじゃないか?」


 ミリティストは首を縦に振ると、落ちていた黒剣を手に取った。それは金属ではなく、石だった。黒曜石から切り出された剣だ。


「んー、変な力を感じますね。呪われてはいませんけど」


 ノヴロが言った。


「鑑定魔法か?」

「いえ、実家が武器商人だったんで」

「……おまえが何者かいまいちわかんないな」


 コンタードがボソリと言った。


「いずれにしても、いい武器だと思いますよ。石の専門としてはそう断言しますけど」


 マエスノも口添えする。


「……とりあえず出ようか。特徴からしてこいつらが依頼の魔物だろうけど、まだ、他にもいるかも知れない」

「それにさっき連中が集ってた場所も気になります」

「そうですね。あそこは倉庫ですし、中を確認した方がいいかもしれません」


 マエスノが言った。

 コンタードも頷いて、ミリティストに目をやると、彼女はあごに手を当ててなにやら考え事をしているようだった。


「ねえ……」


 ミリティストはふと我に返ると言った。


「魔物ってなにを食べるのかしら?」

「ん?なに言ってるんだ……まあ、気になるなら……種類によるけど大体は雑食だと思うぞ。あ、肉は好きだろうな。人間を襲うのもその為らしいし」


 魔物には造詣の深いコンタードが答えた。


「さっきのダイモーンは?」

「あれも……詳しくはないけど肉食寄りだろうな。歯が尖ってるし犬歯も少し大きいし……」

「保存食は食べる?」

「そりゃあ、塩漬け肉の瓶詰めだもんなあ……でも、鮮度を考えたら食べないかもしれないなあ」

「じゃあ、あの事務室にあった保存食は誰が持ち出したのかしら?」

「え?」

「あーそうですよねえ。やだなあ。倉庫に何かいるかも知れないんですかね?」


 ノヴロがのんびりとした声で言った。相変わらず緊張感とは無縁の男だが、話はよく聞いている。マエスノもなにかに気が付いたように斜め上に目がいく。


「調べるにしても要注意か」

「そうね」


 ミリティストは拾った黒曜石の剣を一本腰に佩き、自分の愛剣は鞘から抜き払い、無造作に握った。マエスノもツルハシを握りしめ、コンタードはため息をついた。


「いこうか」

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