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26 採石場 調査

 広場の正面には、四方に柱を立てて屋根を付けただけの広めの作業場がある。そこから左手の絶壁に向かって道は延びていて、石を切り出すための道具や運搬用の設備が置かれている。

 反対側には仮住まいといった感じの宿舎兼事務所の掘っ立て小屋があった。


「静かですねえ」

「そうね、でもなんだか嫌な感じはするわね。気を抜かないで」


 ミリティストは油断なく腰を落として周囲を警戒しながら盾を構え、腰に付けた帯剣の柄を握った。ノヴロも杖を構え、マエスノはツルハシを握った。


「とりあえず事務所に寄ってみようか」


 一応剣を握りながらも、及び腰のコンタードが言った。三人が頷き、木造の事務所の建物へ向かう。崖の縁に沿って歩きながら、同じく崖の縁にある建物の入口へ近づいた。


「あれ、なんですか?」


 ノヴロが指さしたのは石切場の方にある小さな扉だった。

 少しだけ大きめの丸太を並べて括り付けた分厚い扉だった。まるで筏が立てかけてあるようだったが、マエスノが解説してくれる。


「あそこは中が洞窟状になってて……といっても少し広い部屋があるだけなんですが、資材や保存用の食料が収納してあるんです」

「今も?」

「ええ、そのままになってるはずですよ」


 やがて四人は先ほどの扉とは反対側にある、事務所の扉の前に辿り着いた。

 コンタードがそっとノブを握りそのままゆっくり回す。ガチャリと小さな音がして扉が開き始めた。


「鍵が掛かってないのか?」

「おかしいですね。普段は掛かってますけど、襲撃を受けたときにそのまま逃げたのかな?」


 マエスノが首を捻る。コンタードはそのまま扉を開き中に入った。

 事務所は広い一室で、机がいくつかとソファとロッカーが並んでいた。正面の奥の窓の横には扉があって、宿舎の方へ続いているのだろう。


「ん?なんだこりゃ」


 少し薄暗い部屋の中を見廻していたコンタードが呟くと、ミリティストも言った。


「なんだか荒れてる……ってよりは荒らされているみたい?」


 机の引き出しは無造作に開かれ、ロッカーもいくつかが開きっぱなしになっている。慎重に近づいたミリティストは入ってきた入口に警戒の視線を飛ばしながらも、ロッカーの扉を素早く触って確かめた。

 丁寧に調べてみれば、机の引き出しは乱暴に開かれている上に、ロッカーの扉は何かで鍵ごとこじ開けられた形跡があった。


「これって、本当に魔物の仕業かしら?」

「そうですよね。魔法の形跡は見られませんから力任せっぽいですね」

「普段はもう少し整頓されていました」

「なにか無くなったものは?」

「はっきりは言えませんが……応接用の食器とこちらに置いていた保存食が減っているような……」


 マエスノが答えた。

 と、突然、悲鳴にも似た甲高い奇声が上がった。


「キーッ、キーッ」


 何度か声がして、四人の顔に緊張が走る。

 ミリティストが、部屋に二つある窓のうちの一つに駆け寄ると、姿を隠しながら外をのぞき込んで、鋭く舌打ちをした。コンタードとマエスノもそっと駆け寄った。


「あれは……ダイモーンか?」


 コンタードが緊張した声で言った。

 窓の外にはちょうど壁側の倉庫の扉が見えるが、その前に四体の人型の魔物が動いていたのだ。真っ黒な全身に裂けた口と尖った耳が特徴的で、その身体には黒い鎧を纏っている。

 事務所を荒らしたのも連中だろうか?なにやら扉の前で大騒ぎをしているようだったが、やがてそのうちの一体がくるりと振り返って、事務所の方を見た。


「あ、やべ。目が合っちゃった」


 コンタードがポツリと呟くと同時に、ダイモーン達は背中に小さなコウモリのような翼を生やすと、建物に向かって飛びかかってきた。

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