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19 行政官の苦悩(後)

 ランテルノは自分のカップにカフォ注ぐと、ふと立ち止まって考える素振りをしてから茶箪笥に手を掛けた。

 カップを人数分取り出して、ポットにお湯を注ぐ。

 中に入っているカフォの実を砕いた粉から、濃い琥珀色の液体が抽出されたものを確認して、他のカップにも注いだ。


「さて、少しゆっくり考えてみようか」


 そう言って自分のカップを取ったランテルノは、いつものソファに倒れるようにもたれてかかって天井を仰いだ。

 ミリティストやコンタード、他の面々もカップを手に取り応接のソファに座り込む。クルベノは自分の席に座ったまま手を止め、両手で包むようにカップを持って口に運ぶ。

 みんな無言のまま、カフォを味わっている。ランテルノは少しの間、呆けるように天井を見つめていたが、ふいに口を開いた。


「ユーロさん。さっきの狩猟権の関連法って、なんで動物と魔物が一緒くたなんでしょうね?」

「そうですなあ……この法案は前回の魔王討伐後に作られた法律の一つですけど、魔物の活動も弱ってて動物のように狩れたんと違いますかね?せやから、土地の持ち主やったりの利益になってましてん」

「でも今は違うよね?」

「そういえば、前に住民課にいた同期が相談が増えたっていってましたね。一般市民の手には負えないからって」


 コンタードがカフォを啜りながら言った。


「損害の方が大きくなり始めてるんですな」


 ミリティストも立ち上がり、茶箪笥からクッキーの入った缶を取り出しながら付け足す。


「何度か冒険者ギルドと狩猟者ギルドと合同で動いたことありますよ?」

「それは?」

「地権者というか狩猟権者というか……住民の方からギルドに依頼があったようです。魔物の種類と数を指定されてた覚えがありますね」

「つまり今はギルドは直接の討伐の指示が出せないのか……」

「そうなりますよね。僕、魔道士ギルドが動いた話も聞いたことあります」


 今度はノヴロが答えた。


「んー、大体様子は飲み込めたよ。コンタード君、出張発令ね」


 ランテルノが天井を見つめたまま言った。

 コンタードが一瞬固まった後、すぐに答えた。


「はい?……また突然ですね」

「破壊も突然だしね」

「……予感はありましたけどね」

「勇者達の件?それとも出張?」

「両方ですよ」

「またまたあ」


 ランテルノは視線を正面に戻すと、コンタードに向かって笑った。


「コンタード君は今から隣のモントゥーの街へ出張。ミリ君とノヴロ君もついていって。総務局に行って馬車を借りてね。今は昼前だから日帰りできるかな?」

「……わかりました、今日帰れるように頑張ってみます。コンタードは出張の発令書を自分で作らなきゃならないでしょうから、私が借りてくるわ」

「じゃあ、僕は携行品の準備してきますね」


 支援室での総務関係の事務仕事は、コンタードがクルベノと協力しながら担当している。行政出身のコンタードと会計官のクルベノの二人が適任との判断だったのだ。

 出張の手続きをコンタードに任せたミリティストとノヴロが、それぞれ立ち上がった。コンタードが片手を挙げる。


「悪いな。よろしく。で、室長。目的は?」

「もちろん頭を下げてくるんだよ?」

「いやいや、だったら俺一人でいいでしょう?」

「ふふふ、そうだね。じゃあ、ついでに商工ギルドに寄って、特産品を買ってきてくれる?」

「……ほんとにそれですか?」

「もちろん」

「……わかりました。で、一応お約束みたいなんで聞きますけど、室長は?」

「ちゃんと仕事しますよ?やだなあ、普段働いてないみたいじゃない。ユーロさんは僕に付き合ってくださいね」

「へえ、かしこまりました」


 コンタードが少し驚いた顔をしてみせる。


「……ほんとに仕事するんですね……」

「たまには怒るよ?」


 ランテルノは頬を膨らました。

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