Cafe Shelly シェリー・ブレンドの謎
「マスター、シェリー・ブレンドよろしく」
「かしこまりました」
この喫茶店、カフェ・シェリーに通い始めてからどのくらい経つだろう。気がつくと毎週一回は顔を出すようになっていた。顔を出すのは毎週水曜日の夕方。研究所がノー残業デーとなっている日だ。その他にも土曜日や日曜日に気が向いたら顔を出している。ここで飲むのは決まっている。
この店の一番のウリであり、この店に来たらこれを飲まずにはいられないというコーヒー、シェリー・ブレンド。この店に通う常連は皆このシェリー・ブレンドの魔法に魅了されて足を運んでいるといっても過言ではないだろう。もちろん私もその中の一人だ。
「はい、おまたせしました」
この店に通うのはもう一つ理由がある。それは今コーヒーを運んできたウェイトレスのマイさんやマスターとの会話。いや、ハッキリ言おう。マイさんのかわいさに惹かれてここに来ている。
この店に通う男性の大半が同じ思いをしているはずだ。出口でアンケート調査をすると、まず間違いなくそういう結果が出るだろう。だが残念なことにマイさんはマスターと夫婦である。それをわかっていながら通う私も私だが。
まったく、マスターもうらやましい人だ。さぁて、今日はどんな味がするのか…
「ん、なんだか奥が深いな。私の研究心をあおるようだ」
私は仕事がら、さまざまな食品の成分試験を行っている。今、世間ではいろんな偽装問題や混入問題が話題になっている。おかげで私の研究所の仕事もかなり忙しい。その疲れを癒すためにも、ここカフェ・シェリーへと足を運んでいる。
「研究心といえば、最近は自分のテーマに没頭することがなくなったなぁ」
私たちのような研究者は、依頼された分析の仕事以外にも自分のテーマを持って日々研究を続けることが多い。それを論文として発表することも少なくはない。だがこのところ依頼された仕事に没頭せざるを得ない状況なので、どうしてもそういったテーマに向き合う時間がなくなっている。
本来の私はどちらかというと学者タイプ。依頼された仕事よりも、自分で考えて見つけた仕事に没頭したい。しかし最近では自分のテーマを考えることすらできていない。
「そうかぁ、今日のシェリー・ブレンドは自分の研究に立ち返れ、ということを伝えているのかな」
「佐久間さん何ブツブツ言ってんすか?」
常連客の隆史くんが声をかけてきた。彼もシェリー・ブレンドの魅力に取り付かれた一人である。
「いや、今日のシェリー・ブレンドが私に自分の研究に立ち返れ、と教えてくれているんだよ」
「へぇ~、そういえば佐久間さんって食品の成分を調査する会社でしたよね。今はどんなもの扱っているんですか?」
「それは守秘義務もあるから詳しくは言えないんだけどね。まぁ加工食品が多いな」
「やっぱ食品が多いんですね。コーヒーとかの液体ものは成分調査しないんですか?」
「え、コーヒー?」
「いえね、前々から気になってたんっすよ。このシェリー・ブレンド、なんか特殊な成分が入っているんじゃないかって。へたすると、幻覚を見せるような麻薬みたいな成分が入ってたりして」
隆史くんは怪しい目つきでカウンターにいるマスターの方をちらりと見た。そう言われればそうだ。私もこのシェリー・ブレンドの成分にはとても興味がある。今までなぜ気づかなかったんだろう。しかし隆史くんが言うように、もしこのシェリー・ブレンドに変な成分が入っていたら…。そう考えたら、マスターには内緒で調査する必要があるな。
「佐久間さん、何真剣な顔しているんっすか。麻薬は冗談としても、なんか特別な成分が入ってないとシェリー・ブレンドを飲んであんな風にはならないですよね」
隆史くんの言う通りかも知れない。シェリー・ブレンドには他のコーヒーとは違う、何か特別な成分が含まれているのかも。私の研究心をくすぐるテーマだ。よし、早速調査してみよう。
「隆史くん、ありがとう。久々に燃えるテーマに出会えたよ。シェリー・ブレンドの謎に迫る、か。あ、このことはマスターやマイさんには内緒にしておいてくれないか」
私は隆史くんの手を握りしめて、小さな声で、しかし力強くそう言った。
「え、あ、あぁ、いいっすけど」
「なに二人で話してんの?」
「あ、マイさん」
突然、後ろからマイさんが声をかけてきた。これにはちょっとびっくり。
「何か男と男の約束って感じだったけど」
「ま、まぁ、そうかな」
隆史くんは頭をかきながらおどおどした声でそう答えた。まったく、彼はすぐに顔に出るタイプだな。反面、私はクールな態度でマイさんにこう言った。
「今度の私の研究で隆史くんにちょっと協力をしてもらうことになったんだよ」
これはウソではない。私はウソが嫌いだ。けれど、いつもバカ正直に生きているわけでもない。事実でもないことを言って人をだますのが嫌なのだ。だから食品偽装問題なんていうのは、私が一番忌み嫌うところである。
さて、問題はどうやってシェリー・ブレンドのサンプルを持ち帰るかだ。今日は持って帰るような容器は持ってきていない。次回来たときに何か容器を持ってこよう。それよりも、マスターやマイさんの目を盗んで容器にシェリー・ブレンドを入れるにはどうするか、だ。できればカップ一杯ほどのサンプルは欲しい。また日によって見せてくれる世界が異なるというところも気になる。となると、少なくとも三回分ほどのサンプルが欲しい。うぅむ、困ったな。
「佐久間さん、何しぶい顔してるんっすか?」
「あぁ、どうやってシェリー・ブレンドのサンプルを持ち帰えるかで悩んでいるんだ」
「マスターに言えば簡単にもらえるでしょ」
「いや、この研究はできればマスターやマイさんには内緒で進めたいんだよ。まさかとは思うけど、さっき隆史くんが言ったように変な成分でも入っていたら大変なことだからね」
「いやぁ、さっきのは冗談っすよ」
「私もまさかとは思っているけどね。けれど、マスターが意図せずそんな成分が入ってたときが怖いんだよ。今まで調査した加工食品の中にも、材料の段階で別の物が混入していて、加工業者は知らずにそれを使っていた、なんてことはあったからね」
「まさか、シェリー・ブレンドに限ってそんなことは…」
「今はそのまさかが起こる時代だからね。そうなると豆も手に入れてみたいな。ところでシェリー・ブレンドって自家焙煎だっけ?」
「いや、マスターはどこかで焙煎したコーヒー豆を仕入れているみたいですよ」
「となると、ますます怪しくなってくるな…。隆史くん、この先シェリー・ブレンドの謎を解くために、私に協力してくれないか」
「え、まぁいいっすけど」
よし、これでなんとかなりそうだ。私は早速メモ帳を取りだして、調査するべき対象を明確にしてみた。まずは飲み物の形をしたシェリー・ブレンドのサンプル、これが最低でも三回分。そして材料となる焙煎された豆の状態のシェリー・ブレンド。そしてできれば粉の状態になっているシェリー・ブレンド。このくらいあれば、万が一どこかの過程で何かが混入されていてもそれがわかる。しかしこれらをどうやって手に入れるかが問題だ。飲み物の形をしたシェリー・ブレンドはうまく容器に持ち帰ることでなんとかなりそうだ。豆の状態のシェリー・ブレンド。これは仕入れ先を突き止めればそこに直談判することもできるだろう。あとは粉の状態のシェリー・ブレンドか。私はカウンターで作業をしているマスターをじっと観察した。どこかであの粉を手に入れるタイミングがないだろうか。
マスターの手順はこうだ。まずはどのコーヒーも注文を受けてから豆を取り出す。そしてミルで粉状にする。すかさずドリッパーに入れてお湯を注ぐ。まぁごく普通のありふれた手順だ。どこかで何かを混入させるような隙は見あたらない。いや、ひょっとしたらどこかに違いがあるかも知れない。私はふたたびマスターを観察した。が、残念ながら次の注文がなかなか入らない。
「佐久間さん、どうしたんですか? マスターをそんなににらんで」
突然後ろからマイさんがそう声をかけてきた。またまたこれにはビックリ。
「あ、いや。私もおいしいコーヒーの入れ方をマスターしようかと思ってね」
思わず口からでまかせ。
「それなら今度の日曜日の午前中、ここにいらっしゃいませんか? マスターが月に一度、コーヒーの入れ方教室やってるんですよ」
マイさんはそう言って壁に貼ってあるコーヒーの入れ方教室のチラシを指差した。マスターがこういうのをやっていることは知っていた。ここで私はあることをひらめいた。ひょっとしてうまくいったら…。
「はい、ぜひうかがいます」
そうしてこの日はカフェ・シェリーを後にした。あのとき私がひらめいたこと。それは、コーヒーの入れ方教室では当然ながらコーヒー豆の粉を取り扱うはず。となるとそれをサンプルとして手に入れることもたやすいのではないだろうか。ただし、コーヒーの入れ方教室でシェリー・ブレンドを取り扱ってくれればの話だが。ひょっとしたら貴重な豆なので、こんなところでは使ってくれないかもしれない。しかし可能性がないわけではない。とにかく少しでも近づけるところに足を運ぶことにしよう。そう思ったら、私の帰りの足取りもかなり軽くはずんできた。今度の日曜日が楽しみだ。
ちなみにこの日の帰りに、私は本屋に寄ってコーヒーの入れ方なる本を早速購入。家に帰ってコーヒーの奥深いところをいろいろと研究しはじめた。私は一つのことに熱中しはじめると、とことん突き詰めるタイプだ。単にシェリー・ブレンドの成分を調査するだけでなく、どうせなら成分以外でのおいしさの追求もしてみたい。そう思い始めたのだ。
気がつけば翌日、コーヒーショップで一通りの器具を買いそろえている自分がいた。これも研究のためだ。そう思いながらも、なぜかにやけている自分がいた。
そして迎えた日曜日。シェリー・ブレンドのサンプルがどこで手にはいるかわからないので、液状のものを入れて持って帰れるように小型の水筒と、粉状のものを入れるための容器を持参してカフェ・シェリーへ向かった。
「あ、佐久間さんいらっしゃい」
いつもとはちょっと雰囲気の違うカフェ・シェリー。丸テーブルにはコーヒーを入れるための器具一式やお湯を沸かすための電磁調理器が置かれている。今回の生徒は私を含めて四人。うち常連が二人。時々この店でも見る顔だ。そしてもう一人はその中の一人の友達のようだ。
「ではそろいましたので、今からおいしいコーヒーの入れ方教室を始めますね。今日は夏に向けて、アイスコーヒーのおいしい作り方もご紹介します」
こうしてマスターのコーヒー入れ方教室がスタートした。まずはマスターが解説を入れながら実演。特に興味をひいたのはお湯の注ぎ方だ。ここにはかなりのこだわりがある。
「こうやってゆっくりと蒸らしながら入れるのがコツなんですよ。このときにご自分の愛情もしっかりと注いでみて下さいね」
愛情を注ぐ。私には理解のできないところだ。そもそもこういった感情が伝わるなんてことは論理的に見て考えられない。そして今度はマスターの手ほどきに従って、各自が一人ずつコーヒーを入れ始めた。
「そうそう、もっとゆっくりゆっくり。あせらないで…うん、いいよ」
こんな感じで、一人ずつ二杯分のコーヒーを入れて、それを参加者みんなで少しずつ味わう。
「えぇっ、どうしてもマスターみたいな味が出ないなぁ」
「マスターの方がやっぱりコクが出てるね」
口々に感想を言いながら、マスターの入れ方との違いについてアドバイスをもらっている。そして最後は私の番だ。
「もう一度確認しておこう…」
私はコーヒーの入れ方の本から抜き出してメモをしたものと、先ほどマスターが説明したもののメモを読み直した。
「よし、じゃぁ入れますね」
まずはお湯の温度。一度沸騰させたものを少し冷ます。そして最初はネルにお湯をかけないようにして静かに注ぐ。このときにお湯が下から落ちない程度で注ぐのをストップさせる。ここでしっかり蒸らしを入れるのだ。蒸らして珈琲豆が大きくふくらんだところで、お湯を端から端へ、「の」の字を描くように注ぐ。この次が慎重にしなければいけない。一度にたくさん注ぎすぎず、下から落ちるコーヒーの量と同じくらいのペースで何度かに分けてお湯を注ぐ。そしてちょうど二杯分のコーヒーができたら、ドリッパーにお湯が溜まっていてもここで終了。ドリッパーをはずし、サーバーに入ったコーヒーをかき混ぜて拡散させる。これで完成だ。
「さぁ、召し上がれ」
私は自信を持って皆さんにコーヒーをふるまった。
「わぁ、今までの中で一番おいしいわ」
「うん、マスターに負けず劣らずの味ですよ、これ」
みんな少量とはいえ、口々に私の入れたコーヒーを褒めてくれた。
「佐久間さん、なかなかお上手ですね。さすがは食品の研究をしているだけありますよ」
マスターからもお褒めの言葉をいただいた。
「マスター、今回使った豆というのはどのような種類なのですか?」
「あぁ、今回は中煎りのブレンド豆を使ってみたんですよ。メーカーから降ろしてもらっているものですけどね」
やはりこんなところでシェリー・ブレンドは使わないか。私は無理を承知でこんなお願いを切り出してみた。
「マスター、費用はお支払いしますから。次は私にシェリー・ブレンドを入れさせてくれませんか?」
ちょっと強引だが、このくらいやらないと豆のサンプルを手に入れるチャンスは廻ってこない。
「シェリー・ブレンドかぁ…」
マスターはさすがに躊躇している。
「やはり無理ですか?」
「あ、いえ。う~ん、どうしようかなぁ。じゃぁ佐久間さん、一つだけお願いがあるのですが」
「なんでしょうか?」
「佐久間さんが入れたシェリー・ブレンドで期待したような効果が出なくてもがっかりしないで下さいね」
期待したような効果とは、あのシェリー・ブレンドの魔法のことなのはわかった。ということは豆そのものではなく、コーヒーを入れる過程に何か秘密があるのだろうか。なにはともあれマスターから許可が出たのだからよしとしよう。問題は粉のサンプルをどの隙で手に入れるか、だ。
「では豆の準備をしてきますので」
マスターはカウンターの奥へと消えていった。そしてミルで豆を挽き、しばらくして粉を手にして出てきた。
「こちらがシェリー・ブレンドの粉になります。ちょっと多めに挽いてきました。じゃぁ先ほどと同じように二人前でお願いします」
私はこっくりとうなずいて、コーヒーを入れる準備を開始した。まずは粉をドリッパーへ。ここしかチャンスはない。私はここでわざとスプーンの半分ほどの量をテーブルにこぼした。
「あ、すいません。貴重なシェリー・ブレンドだと思うと、ちょっと手が震えちゃって…」
そう言い訳をしてみた。そして私はすかさずポケットからティッシュを取りだし、こぼれたシェリー・ブレンドの粉をかき集めてそこへくるんだ。そしてそのままポケットへ。よし、これで粉は確保できた。
「佐久間さん、あとで片づけたのに」
「いえいえ、じゃぁ続けますね」
そして私は先ほどと同じ手順でコーヒーを入れてみた。
「マスターみたいな味になればいいのですが。さぁ、どうぞ」
小分けにされたシェリー・ブレンドは参加者にそれぞれ配られた。
「ん、おいしいっ」
「なかなかいけますね、これ」
評判はいいようだ。けれど、誰一人としていつものシェリー・ブレンドの反応を示した人はいない。私も自分の入れたシェリー・ブレンドを早速口に入れてみた。
「確かに先ほどのコーヒーよりもおいしい。でも…」
そう、あのいつものようなシェリー・ブレンドの魔法が出てこない。ただのおいしいコーヒーだ。一体何が違うのだろうか?
「マスター、どうして私にはあの魔法の味が出せないのですか?」
「どうしてと言われてもですね…困ったな」
マスターは頭をかきながら困った表情を見せた。
「やっぱり皆さん期待しているようなので、今度は私が入れてみますね」
なんと、予想外のうれしい展開になった。目の前でマスターがシェリー・ブレンドを入れてくれる。私の入れ方とどこで何が違うのか。それが確認できる。私は目の前で繰り広げられるマジックのタネを見破ろうとするような気持ちで、マスターがシェリー・ブレンドを入れるのを目を皿のようにして凝視した。
沸騰したお湯を適温まで冷まし、まずは蒸らし。そしてゆっくりと「の」の字を描きながら少しずつお湯を注いでいく。この工程そのものは何ら私と変わらない。どこかで何かを入れる、なんていうこともしていない。使っている器具も私が先ほど使ったものとまったく同じだ。ただマスターは何やら口でブツブツ唱えるような感じでコーヒーを入れていた。そのつぶやきは残念ながら小さすぎて何を言っているのかはわからなかったが。
「さぁ、どうぞ」
私の時と同じように、少量ずつではあるがシェリー・ブレンドがふるまわれた。
「んっ、これこれ、これだよ。今日はコーヒーの味がすごく出てる。きっとこんなコーヒーが入れたいっていう願望なんだな」
「私はすっきり感がするわ。目覚めのおいしいコーヒーを自分で入れたいからここに来たの。きっとその願望が出てるのね」
周りのみんなは口々にそんな感想をもらしている。私もマスターが入れたシェリー・ブレンドを味わってみる。
「んっ!? 確かに私のものとは味が違う…」
マスターが入れているところを見ても、何らおかしなところはなかった。マスターがマジシャンで私たちにわからないところで何か仕掛けをしていれば別だが。そんな話は聞いたこともないし、そんなそぶりも見せなかった。
「マスター、一体どうしてこんなに味に差が出るのですか? なぜマスターが入れるとシェリー・ブレンドの魔法がでてくるのですか?」
もうストレートにその謎を聞くしかない。
「いやぁ、なぜなんでしょうねぇ」
とマスターはすこしとぼけた顔でそう答えた。こうなればやはり科学的な目線でこの謎を解くしかない。
この日は頭にいっぱい疑問符を残しながら終了。午後からカフェ・シェリーに居座ってもよかったのだが、今日はそんな気分にはなれなかった。とにかくシェリー・ブレンドの謎を解きたくて、いてもたってもいられなかったのだ。
「しかし、コーヒーの粉のサンプルは手に入った。あとは豆と液体状のコーヒーサンプルだな。まずは、と…」
私は携帯電話であるところへ電話。
「あ、隆史くんか。佐久間です。隆史くんにちょっとお願いがあるんだけど…」
隆史くんへのお願い。それはうまくシェリー・ブレンドの液体サンプルを入手して欲しいということである。隆史くんも頭の切れる男だ。
「おもしろそうっすね。まかせてくださいよ」
入手方法は彼にまかせることにした。私は豆のサンプルを入手するべく、マスターが取引をしている業者へと足を運ぶことにした。業者については以前マスターとこんな会話を交わしたことがある。
「私が喫茶店を本格的に始めようと思ったきっかけは、雑誌の記事に載っていたこの方のコラムを読んだからなんですよ」
そういってスクラップブックを見せてくれた。そのコラムは「コーヒーは薬膳である」というもの。このコラムを書いた人がマスターのコーヒーの師匠となり、いろいろと教わったらしい。そして今はその人から珈琲豆を仕入れている。それがシェリー・ブレンドだ。私はこういった感心のあることについてはメモをとるクセがある。そのときコラムを書いたマスターの師匠にあたる人の名前と、そのコラムが掲載されていた雑誌の名前を控えていた。これが幸いするとは。
私はシェリー・ブレンドの謎を解こうと思ったときにこれを思いだし、雑誌社へ連絡してその方の連絡先を聞いていたのだ。
「こんにちはー」
業者、といってもお店を構えているわけではない。着いたのはペンション。その一角にコーヒーの焙煎小屋があるところだ。
「すいません、先ほどお電話した佐久間です」
「あぁ、いらっしゃい。さぁ、中へどうぞ」
私はカフェ・シェリーを出た後すぐにコラムを書いた西脇さんへと電話を入れ、ここに訪れることを連絡していた。西脇さんに言われるままに私はペンションロビーの一角に腰を下ろした。
「今コーヒーを入れますね」
「あ、お構いなく」
お構いなく、と口では言ったものの、マスターのコーヒーの師匠が入れるものだ。ひょっとしたらシェリー・ブレンドと同じ効果が見られるかもしれない。そんな期待を胸に、西脇さんが入れるコーヒーを待った。
「さぁ、どうぞ」
早速そのコーヒーを口に運ぶ。
「んっ、なかなかおいしいですねぇ」
味はマスターが入れるよりも深みがある。だが、あのシェリー・ブレンドの魔法とまではいかない。ひょっとして豆が違うのか?
「あの、こちらの豆ってカフェ・シェリーに卸しているのと同じですよね」
「あぁ、君はカフェ・シェリーのお客さんか。あそこのマスターはなかなかいい生徒だったよ」
西脇さんはにこりと笑ってそう言った。
「早速ですが一つ教えて頂きたいことがあるのですが。西脇さんはあのマスターが入れたシェリー・ブレンドをお飲みになったことはありますか?」
「あぁ、もちろんだとも。今出したコーヒーはシェリー・ブレンドと同じ豆を使っているからね」
やはりそうか。しかしどうしてあの魔法が効かないのだろうか?
「率直にお聞きします。マスターが入れるシェリー・ブレンドには魔法がかかっていますよね。飲むたびに味が変わっていく。なのに今のコーヒーにはそれが感じられない。この違いってなんなのでしょうか?」
「そうか、君もやはりこの謎に興味を持ったのか。実は私もその謎が知りたいのだよ。ひょっとしてあのマスターはコーヒーに何かをプラスしているのではないかと疑ったこともある。しかしそういったそぶりは全く見せなかったからね」
「では一つ協力して頂けないでしょうか。実は私、食品の成分を調査する会社におりまして。個人的な研究テーマとして、あのシェリー・ブレンドの謎を成分の面から分析してみたいと思いまして」
「ほう、それは私も興味ありますね。私で良ければご協力しましょう。で、何をすればよろしいのですか?」
こんなに話が進むとは思わなかった。
「それではシェリー・ブレンドになるコーヒー豆と、西脇さんが入れたコーヒーのサンプルをいただけないでしょうか。特に西脇さんが入れたものとマスターが入れたものを比較すれば何か出てくると思いますので」
「お安いご用ですよ」
そう言って西脇さんは水筒いっぱいに入れた、ここではニシワキブレンドと呼ばれるコーヒーを私に授けてくれた。さらにコーヒー豆も豆状のものと粉状のものをそれぞれ100グラムもくれたのだ。
私がお金を払おうとしたら
「いいですよ。ただし結果は真っ先に私に教えて下さいね」
とのこと。そのご厚意に甘えて私はサンプルを持ち帰ることにした。
翌日、私は課せられた仕事をさっさとこなし、まずは西脇さんから手に入れたサンプルの調査からスタートさせた。水分量や脂質、タンパク質と言った基礎成分、ビタミンやミネラルといった成分、さらにはアミノ酸といった有機成分にまで調査を行ってみる。また何か添加物がないかも調査することにした。この日の夕方、気がつくと私の携帯電話に留守電が入っていた。
「あ、隆史です。マスターの入れたシェリー・ブレンドのサンプルが手に入りました。連絡くださーい」
なんと、隆史くんやってくれたじゃないか。私は早速隆史くんに連絡を入れた。すると今すぐに持ってきてくれるとのこと。すでに夜遅い時間にはなっていたが、私もいてもたってもいられない気持ちだったので隆史くんの行為に甘えることにした。
「はい、佐久間さん」
到着した隆史くんが手にしたのは、保温の効く水筒であった。
「どうやってこいつを手に入れたんだい?」
「なんてことはありませんよ。ウチのお客さんがシェリー・ブレンドを飲みたいけれど、仕事の都合で営業時間内に飲みに行くことができないからって。そうしたらマスターがポットに入れたのでよければって、これを持たせてくれたんです。実はこの手、以前私が妻の真理恵を口説くときに使った手なんですよ」
隆史くんはそういって軽くウインク。男からウインクされるのはどうかとは思うが。
「二日後くらいもこの手でもう一度サンプルを手に入れますよ」
「あ、だったらお金を払わないと」
「いえ、いいですよ。このくらい私にも協力させて下さいよ。そのかわり、シェリー・ブレンドの謎が解けたら真っ先に教えて下さいね」
西脇さんとまったく同じ事を言うなぁ。マスターの周りに集まる人って、こんな感じのが多いな。そもそもマスターがそんな人だから。
こうやってみんなの協力で分析は進んでいった。あのあと、隆史くんは水曜と金曜に二回ほどシェリー・ブレンドのサンプルを持ってきてくれた。その際、多少コーヒーが余るので同僚の研究員に飲ませてみたところ
「なんか不思議な味ですね。忘れかけてたものを思い出させてくれますよ」
と、早速魔法にかかったようだ。今度彼をカフェ・シェリーに連れて行くことにしよう。
そして一週間が経った。ここで私は何度目を凝らしても、信じることができない結果と直面することになった。それは…
「水の成分が異なるのはわかる。これはミネラル分などに出てくるからな。けれど、それ以外では西脇さんが入れたものとマスターが入れたものに何の違いもない。もちろん粉も、豆も。またマスターの入れたものが日によって成分が異なるということもない。水の違いによる微妙なミネラル分が影響しているとは思えないのだが」
すなわち、科学的な目から見てマスターの入れたシェリー・ブレンドには特別な成分が含まれているとは考えられないのだ。いや、なにかあるはずだ。私はマスターがシェリー・ブレンドを入れる手順を、順を追って思い出してみた。どこかが私と違うはずだ。一体どこなのだ?
水を沸かしてお湯にする。そしてちょうどいい温度まで冷ます。ドリッパーに入れたコーヒーをまずは蒸らす。そしてゆっくりと「の」の字を描くようにお湯を注ぐ。スピードはゆっくり、ゆっくりと。
ん、そういえばここでマスターはなにやらブツブツと唱えていたな。何を唱えていたのだろう? 私は黙ってコーヒーを見つめて入れている。私とマスターに違いがあるとすればこの一点しか思い浮かばない。しかし、まさか魔法の呪文じゃあるまいし。いや待てよ、魔法の呪文か…。
前に言葉で水の波動が変わるというのが流行ったことがあったな。私から言わせれば、あんなので水が変化するなんて笑い話にしか思えなかったのだが。しかし、何らかの理由で水のクラスタ、分子結合レベルの変化が起きて、それがシェリー・ブレンドの味に作用するとしたら。そしてその作用が人の精神レベルを左右させるものであるならば。
何をバカな。そう思いながらも、心の奥ではその仮説がぬぐえない自分がいた。残念ながら我が社の設備では分子構造レベルの解析は無理だ。どこかの大学の研究施設でも借りて解析を行わない限り、その仮説の証明はできない。ここで私の研究は行き詰まってしまった。
「明日は水曜か…」
ふとカレンダーを見てそうつぶやいた。
「そういえば先週はシェリー・ブレンドの解析に没頭して、カフェ・シェリーに行かなかったなぁ。明日は行ってみるか」
研究の行き詰まりを解消させたい気持ちもあった。この日はうなだれるようにして帰宅。そして翌日、仕事が終わった後は真っ先にカフェ・シェリーへと足を運んだ。
カラン、コロン、カラン
「いらっしゃいませ。あ、佐久間さん」
「あぁ、マイさん」
「佐久間さん、どうしたんですか? あまり元気がないようですけど。それに先週はおいでになりませんでしたよね」
「ちょっとね…。シェリー・ブレンド、お願いできるかな」
「はい、かしこまりました」
私はこのとき、カウンターにいるマスターを見つめた。私が注文したシェリー・ブレンドを入れるマスター。やはり口でブツブツ言いながらお湯を注いでいる。そしてできあがり。
「シェリー・ブレンド、お待たせしました」
私は何も考えずに、シェリー・ブレンドを口にした。
「んっ!? そうか、そうだったのか…」
このときのシェリー・ブレンドの味が私の今までの疑問をすべて解消してくれた。
「マスター、マスター!」
それを確認するために、私はマスターを呼んだ。
「佐久間さん、どうしたのですか?」
私が慌てて呼ぶものだから、マスターはなんだろうという顔で私のところにやってきた。
「マスター、一つ教えて欲しいことがあるのですが。マスターがシェリー・ブレンドを入れるときって、何かブツブツと唱えながら入れていますよね」
「あぁ、あのことですか」
「あれって、ひょっとしたらシェリー・ブレンドを飲む人へ何かメッセージを送っているのではないですか?」
「いやぁ、メッセージなんていうほどのものじゃありませんけど」
「いや、あれは私にとっては力強いメッセージなんですよ。その証拠に、今飲んだシェリー・ブレンドからはダイレクトにマスターの声が聞こえてきた気がしたんです」
「どんな声だったのですか?」
「答えは自分の中にある。そう聞こえました。明らかにマスターの声だったんです。私にはそれがマスターからのメッセージに思えたんですよ」
私はジッとマスターを見つめた。さらに私は言葉を続けた。
「答えは自分の中にある。つまりシェリー・ブレンドはその答えを引き出させる要素が含まれている。しかしその要素は科学的にはなにも証明されるものはない」
マスターは黙ったまま私の話を聞いてくれている。私はさらに話を続けた。
「科学的に証明はされていないけれど、以前こんな話を聞いたことがあります。水によい言葉を与えると、きれいな結晶になる。逆にわるい言葉を与えると、結晶が崩れる。これについてはちょっと前に論争がありましたが、私としてはあまりそういうのは信じない方だったのです。けれど、シェリー・ブレンドの謎を解き明かすところでさきほどここに行き着きました。ひょっとしてマスターはコーヒーを入れるときに飲む人へ言葉のメッセージを送っているのではないか。そしてそれがコーヒーの薬膳の成分とうまく結合して、飲む人が欲しがっている味へと変化させるのではないか。まったく非科学的ではありますけどね」
一通り私がしゃべったところで、マスターはにこりと笑ってこんな言葉を返してくれた。
「佐久間さん、さすがは食品分析の研究者ですね。いつの間にそんなところまで調べていたんですか。実は私も常々、シェリー・ブレンドについてはどうしてそうなるのかを知りたかったんですよ。他のコーヒーも同じように入れているつもりなのに、なぜかシェリー・ブレンドだけはあの魔法が効いてしまうんですよね」
なんと、マスターもよくわからなかったのか。
「きっと、薬膳としてのコーヒーの成分と私の言葉の思いがうまく結びついて、それであんな味が引き出せるんだと思うんですよ」
「マスターはそういった言葉によって思いを引き出すという勉強をしたことがあるのですか?」
「えぇ、以前産業カウンセラーの資格もとりましたし。またコーチングも勉強したことがあります。今はカウンセラーとして活動するのはマイに任せていますけどね」
なるほど、もともとマスターには人の力を引き出すという能力が備わっていたのか。しかし、それがシェリー・ブレンドというコーヒーとうまく結びついて、コーヒーにもその能力を引き出させることができるとは。これはマスターにしかできないことだ。と、ここで別の疑問が湧いてきた。
「ということは、マスターと同じように人の能力を引き出すプロのコーチやカウンセラーがいたら、その人が入れたシェリー・ブレンドもこの味が出せるんでしょうかね?」
「う~ん、試したことがないからなぁ。あ、以前プロコーチの羽賀さんがコーヒーを入れてくれたことはあったけど。でも羽賀さんはコーヒーのプロじゃないから、あまりおいしくはなかったなぁ」
マスターはあははと笑いながらそう言った。
「私にもシェリー・ブレンドの謎はわからないんですけど。でも一つだけハッキリ言えることがありますよ」
マスターは真面目な顔に切り替えてそう言った。ハッキリ言えることとは一体なんだろう? 私は興味深くマスターの次の言葉を待った。
「コーヒーでも料理でも、相手を思いやる愛情というスパイスがなければ、それらの味は引き立たないんです。同じ材料、同じ手順を持ってしても、この人にこんなふうに味わって欲しいというものがなければ、それは無機質なただの『もの』に過ぎません。それが科学的にどのような変化をもたらすかはわかりませんが。けれど、この愛情が味を引き立てるのは間違いないでしょう」
そうか、愛情か。私は食品分析の研究者という立場から、こういったものを科学的に分析するということしか頭になかった。その成分が同じであれば、感じる味は同じなはずという固定観念があったようだ。
ここでふと、あることを思い出した。中学生時代にもらったバレンタインデーのチョコレートだ。今でこそ真面目で堅物のように見える私だが、あの頃はもっとはじけていた。そのときに今までの人生で一度だけの本命チョコというのをもらった。それが手作りだった。その時にもらったチョコレート、見た目は市販のものに比べるとどうしても見劣りしてしまっていた。けれど、味はこれ以上ないと言うくらい格別なもの。
今考えれば、手作りチョコというのは材料をとかして型に入れてトッピングするだけ。味なんてそんなに大差ないはずなのに。どうしてあんなにおいしいと感じることができたのか。それは彼女の愛情が伝わってきたからなのだろう。ほのかな青春の一ページを思いだし、ふと笑みを浮かべながら私はもう一度シェリー・ブレンドを味わった。
「マスター、わかりましたよ。世の中には科学では解明できない、不思議な現象ってあるものなんですね。特に気持ちの問題。目に見えない世界は果てなく広がっているものですね」
「今私には佐久間さんの世界が広がったように見えましたよ。その証拠に、今までにない穏やかな顔つきをしてらっしゃる」
マスターにそういわれるとまんざらでもない気持ちになった。事実、私の気持ちはとても穏やかで、かつ更なる探求心が芽生え始めていることに気づいた。
「ところで佐久間さん、またどうしてシェリー・ブレンドの謎を解こうなんて考えついたのですか? どうせなら私に一声かけてくれればよかったのに」
「これは失礼。しかし、ひょっとしてマスターが人には言えないシェリー・ブレンドの秘密を持っているんじゃないかと思いまして。いや、変な意味じゃなくてね」
そう言いつつも、心の奥ではひょっとしたら隠れて変なものをコーヒーに混ぜているのではないかという疑惑もあった。
「あはは、実はここだけの話、秘密の媚薬を入れているんですよ」
マスターはそういってウインク。当然冗談だろうけれど、半分冗談に聞こえないところがある。
「マイ、クッキーを焼くときに入れるあれを持ってきてくれないか」
「え、あ、はい」
えっ、あれってなんだ? ホントに何か入れているのか? そうしてマイさんが何かを持ってきた。
「佐久間さん、ここだけの話にしておいてくださいよ。実はこれがウチの秘密なんですよ」
ごくりとつばを飲み込んで、マイさんが手にしたものをのぞき込んだ。そこにあったものとは…
「えっ!?」
私は目を丸くした。
「これが秘密なんですか?」
「えぇ、そうですよ」
マスターもマイさんも、うふふと笑っている。なるほど、これがカフェ・シェリーの秘密なのか。私は二人につられて、おもわず笑みをこぼしてしまった。マスターがマイさんに持ってこさせたもの。それは…
容器に入っている砂糖。しかしその容器が変わっているのだ。そこにはプリクラ写真がたくさん貼ってある。そしてどの写真も満面の笑顔。さらにはプリクラには必ずコメントが書かれてある。そのコメントは「ありがとう」「感謝」「笑顔」「サンキュー」といった文字ばかり。
「ウチでクッキーを焼くときに使う砂糖は、必ず一度この容器に入れるんですよ。他にも各テーブルに置いてある砂糖も、同じような容器に一度入れてから出すようにしています」
なるほど、マスターの呪文のような言葉で水が変化するのであれば、砂糖も同じような効果があるかもしれない。満面の笑顔に囲まれた砂糖は、きっといい成分が凝縮されてそれを味わう人たちへ笑顔を分け与えることができるんだろう。非科学的な世界ではあるが、徐々にそういうものを受け入れている自分の変化にちょっと驚いている。昔だったら絶対に「そんなバカなことを」と言っていたいに違いない。これもシェリー・ブレンドの魔法なのだろうか。
「気持ちを込めているって、こういうことを言うんでしょうね」
ふと私の口からそんな言葉がもれた。
「えぇ、きっとそうだと思います。だから私はコーヒーに気持ちを込めているんですよ」
心を込める、気持ちを込める。その意味の大切さがなんとなくわかってきた気がした。
「佐久間さん、気持ちを込めたシェリー・ブレンドを一度入れてみませんか?」
「え、いいんですか?」
私はマスターに促されるまま、カフェ・シェリーのカウンターへ。
「さ、どうぞ」
「よし、それでは」
私は以前やった手順の通りシェリー・ブレンドを入れてみた。あのときと唯一違うのは、お湯を沸かし始めたときから心の中であることをずっと唱えたこと。それは「皆さんが幸せを感じますように」。そして一杯分のシェリー・ブレンドを入れ終わった。
「マスター、飲んでみて下さい」
「いえ、まずは佐久間さん自身で味わって下さいよ」
えっ、私はマスターのためを思って入れたのに。しかしどんな味になったのか興味もある。
「それでは最初の一口だけ…」
んっ! 一瞬、何かが頭の中を横切った。
「マスター、ほんのわずかですが私にもできたようです」
「よかったですね」
「けれど残念ながらマスターにはおよびません。まだまだ修行が必要のようですね。人の幸せを思いやる愛情の心をもっと強くするための」
私に何が大切なのかをわからせてくれたマスターとシェリー・ブレンドに感謝、そして乾杯!
<シェリー・ブレンドの謎 完>