表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

意味不明な理由で追放されましたが活躍しました。戻ってこい? 関わりたくありません。

作者: 仇増

 何がホラーかと言えば、意味不明な理屈を鵜呑みにし続けた人達の言動だと思います。

 目にとめて下さりありがとうございます。

●意味不明な理由で追放されました。

 その通達を受けた時、ヴェニ・サンクテは呆然と困惑と混乱を足して3で割らない心境に襲われた。

『ヴェニ・サンクテ。お前の同背後の魔導士ナピスが親友達の行動を真似た。信用できないのでお前とお前の配下の部隊を全員追放する』

「は?」

 その文面を見たヴェニの目が点になる。

 通達を出してきたのは、自分の祖国が所属する中央大陸同盟。正確には各国の騎士団が同盟を結んで結成された騎士団同盟だ。

 その騎士団同盟を率いる神導騎士団長レオハルト・ソードシャドウは、ヴェニと彼女が率いる部隊の国外追放を命じてきた。

 処分内容も唐突で理解しがたいが、処分理由もさらに意味不明だった。

 同背後とはどういう意味だ。そんな存在はいないし、魔導士ナピスとやらも私は知らない。

 次にその魔導士とやらが親友の行動を真似た事と、自分達が信用できないとどう結び付くのか理解できない。

 さらに言えば、無関係の人間の行動で自分達が追放されることにどうつながるのか意味が解らない。

 通達には『被害者』として自称『世界の恋人』アンリと『新聞王』ジャンピエトロの名があり、両者からの告発として『罪状』も記載されていた。

 魔導士が犯した罪は、『好きな人にプレゼントを贈るという自分達の保護されるべきアイデアと行動を真似された』こと、とあった。

 アンリとジャンピエトロの告発を全面的に支持し、レオハルトに賛同するものとして、『聖女』オーガスト・ビューティレインの名もあった。

 アンリは自分達の主張を後でその行動をとる者は、先に行ったものに対し事前に許可を得なければならないという『先発優遇思想』と称し、統一見解とするよう迫っている。

 好きな人に贈り物をする事なら、世界中の人達が既にやっていることだ。

 それがなぜこのアンリとジャンピエトロとかいう連中だけが保護されて、他の人間が駄目なのかが意味不明だ。

 ヴェニはレオハルト達の意味不明な論理と処分に納得がいかなかったが、この状況での追放処分は非常にまずい。

 なぜならヴェニ達は今、大陸同盟諸国の隣国で現在複数の国家が共同管理する旧ガラタ王国に国際治安維持部隊として派遣されている状態だからだ。

 慌てて故国へ事実を問いただす使者を送ったり、独自の諜報網を駆使して情報を集めていく。

 その結果、事態が予想よりも悪く、かつ理解不能な展開に陥っている事が判明する。

 まず使者は故国に入る前に、レオハルトの手勢によって追い返された。

 次に自分や部隊への『信用できない』という悪評が大陸同盟諸国中に拡散している。

 そして大陸同盟諸国の上層部や国民達もレオハルトが出した追放処分を支持しており、弁明の機会は一切ない。

 さらにまずいことに、治安が定まらない旧ガラタ国の状況に、共同管理を結んでいた国家の1つ、オルデン連合王国の軍隊が旧ガラタ国へと武力介入を開始した。

 またたくまにガラタ国のほぼ全地域を制圧下におき、ヴェニ達のいる街へと迫っていた。

 ヴェニがさらなる情報収集と迎撃準備を整える間に、街を視認できる場所まで到達。

 オルデン連合王国軍司令ロッサは、ヴェニ達に降伏するか殲滅されるかの二者択一を迫る使者を送ってきた。


●条件付きで別国に降伏しましたら活躍しました。

 ヴェニは独自の諜報網を使い、オルデン軍と他の国々の動きを調べた。

 オルデン軍の動きがほぼ独断専行に近いものと判断すると、自らオルデン軍に乗り込み『投降の用意はあるが今後どう動くつもりか聞かせてほしい』と直談判した。

 ロッサから今後の目標について聞き、ヴェニは条件付きで降伏する。

「言いたいことはあるが、それはお前の周囲の人間達が言ってるだろうから言わない。お前が理想を叶える事ができるか身近で見届けさせてもらう」

 ヴェニはこの世界に存在する聖剣・魔剣よりも上位にあたる『星剣』を振るう星剣士であり、人の中から時々生まれてくる英雄の一種、ミュルメクサ(天兵)だった。

 ヴェニ達の降伏をきっかけとして、ガラタにいた残る諸勢力もオルデン軍に降伏し、ガラタは名実ともにオルデン軍の管轄下となる。

 だがロッサの行動に異を唱えていたオルデン軍の予想通り、共同でガラタを管理していた他の国々はこれに反発し、対オルデン国包囲網を結成。

 このうち北方の大国ノーズ帝国軍は、オルデン国へ宣戦布告と同時にオルデン国の国境を突破。

 怒涛の勢いでオルデン国領内を席巻し、首都に迫る勢いだった。

 本国の危機にロッサはガラタ放棄を決定。抑えの手勢を残してほぼ全軍で本国へと急行し、ノーズ帝国軍と激突する。

 降伏した者の常として、ヴェニ達は最前線に送られることが多かったが、部隊を崩壊させずに役目を果たし続けた。

 その篤実ぶりはロッサやその近臣たちも認めるところで、いつの間にかヴェニはテスタロッサや司令部直轄の親衛旅団長という肩書を得た。

 与えられた部隊を率いて順調に戦歴と戦功を重ねていった。

 そのままオルデン軍は本国からノーズ軍を叩きだすと、今度はノーズ帝国本土へと逆侵攻をかける。

 幾多の戦いの末、首都を落としノーズ帝国を瓦解させ、包囲網を形成していた他国にも次々と攻め入り降伏させ、戦争を終わらせた。

 一連の戦いの間に、ヴェニは色々やっている。

 まずオルデン国と交易を結びたがっていた東の大国で、『悪魔が支配する国』と大陸同盟から酷評されていたシャングリラ帝国と共闘した。

 次に『神の落とし子』と呼ばれる奇妙な存在達と戦って勝利した。

 ノーズ帝国の背後にいた天使たちを討ち、帝国が降伏する決定打となった。

 いずれも人間ができる範囲を超える活躍を見せた。

 そのためか、終戦後に締結された世界規模の条約の署名者としてヴェニも参加した。

 このときヴェニはオルデン国やシャングリラ帝国が後押しする形で、『世界の守護者』という象徴として認められた。

 実際に、後の歴史家の示す『世界の守護者』はヴェニのことを指しているので、自称ではなく世界で公認されたものだ。


●活躍したら戻れと言われたので拒否します。

 これに慌てたのはヴェニ達を追放処分としたレオハルトや大陸同盟諸国だった。

 レオハルトはアンリやジャンピエトロの言い分を鵜呑みにして、オーガストと共に追放後もヴェニ達に様々な『懲罰』を行っていた。

 まずヴェニ達が大陸同盟諸国に置いてきた資産を凍結し没収。

 これを『被害者』であるアンリやジャンピエトロに分け与えた。

 次にヴェニ達の社会的身分を全て抹消した。

 その上で、それらの手続きにかかった費用と『先発優遇思想』に違反したことへの賠償をすべしと国を動かした。


 さらにアンリやジャンピエトロの『先発優遇思想』を大陸同盟諸国の統一見解とし、被疑者ナピスとヴェニは同背後人物であるという意味不明な理屈でヴェニを犯罪者扱いし、ヴェニの評判を落とす工作を行った。

 彼らはヴェニが終戦まで駆けずり回っていた地域に怪文書や中傷のビラをばらまき、『先発優先思想』に違反したとしてヴェニに多額の賠償金を請求した。


 ただこの『先発優遇思想』は、うわべだけを取り繕った誤った思想だった。

 簡単に言えば、『おはよう』や『こんにちは』というありふれた言葉も既に先人達が考えたものだから、アンリやジャンピエトロ、大陸同盟諸国はそれらありふれた言葉も使ってはならないということになるからだ。

 だからアンリやジャンピエトロの言い分は言いがかりであり、ヴェニの資産や社会的身分を奪ったり踏みにじっていい理由にはならない。

 そしてヴェニの資産はアンリたちが強奪したにもかかわらず、さらに賠償を請求したのは「真摯な反省や謝罪がない。資産没収は国によるもので、個人の賠償請求権が消えたわけではない」という意味不明な理屈だった。

 後にこれらの理屈は『馬鹿げた思想であり妄動』と歴史家から酷評されている。

 彼らが槍玉にあげているヴェニ自身はアンリやジャンピエトロと一切面識はなく、レオハルトやアンリ、ジャンピエトロの掲げる「罪状」とやらには無関係だ。

 それでもアンリやジャンピエトロはヴェニを諸悪の根源という主張を続けていた。

 ここでレオハルトは意味不明な要求をさらに行っている。


『ヴェニ達へ賠償金を請求しているのは自分とは無関係の義士だが、彼らはレオハルトの心に不快感を与えたので、ヴェニは請求者達に賠償金を支払い、請求者達を自分のもとへ連れてきて一緒に誠心誠意謝罪しろ』


 オーガストからの要求はさらに支離滅裂だった。


『被害者として言わせて下さい。アンリ様が望んでいるのは、自らがアクトという作品やアイデアをパクったという大罪をアンリ様にしたことを反省、謝罪し、被害を受けたアンリ様の為に行動をして下さることです。

 アンリ様への賠償を持ち出した方の意見は正しいのでしょうが、このまま貴方がその意見だけを飲めば、また貴方がこの一連の騒動と同じ経緯を辿るような気がしてなりません。

 お願いです。賠償以外にも自ら行動して誠意を表して下さい。押し付けられた意見に従う姿を、もう見たくはありません。

 そして貴方がまっとうな人間に生まれ変わったことを、アンリ様や私達に証明してください』


 わけがわからない。


 無関係ならば無視すればいい。

 だがそんな連中に金を払って一緒に謝れとはどういう思考回路なのだろう。

 オーガストからの要求に至っては、何をやらせたいのか意味不明だ

 さらに混乱するヴェニに、彼女の後見人となったロッサが助言する。

「もし本国に見捨てたくない人々がいるなら、今のうちに国外へ逃がした方がいいぞ。こういう連中が次にやりそうな事といえば、誰かを人質にとって言うことをきかせることだからな」

 ロッサの助言に従い、ヴェニはシャングリラ帝国やオルデン国、終戦後交流を深めた各国に相談して協力を求め、密かに救出部隊を編成。大陸同盟諸国内の故郷へと派遣した。

 暗闘の末、救出部隊はヴェニに従うと決めた人々を国外へ脱出させることに成功する。 

 そうとは知らないレオハルトや大陸同盟諸国は、ヴェニや配下の部隊に対し『原隊復帰命令』を出す。


 もともとはヴェニやその部隊は大陸同盟諸国の1部隊に過ぎない。

 だから原隊復帰命令で帰還させ、服属させればヴェニ達があげてきた功績や得た権益は全て大陸同盟諸国のものになる。

 そんな腹積もりだったらしいが、レオハルト達はいまだに気付いていない。

 最初にいわれのない罪を掲げ、ヴェニ達を国外追放処分にしたのはレオハルト達だ。

 その後彼らが行ってきた『懲罰』を受け続けたヴェニが、素直に命令に従う訳がないことを。

 実際にヴェニは原隊復帰命令に対し、『我々は既に追放された身。今は世界に仕えている』と返信して命令を拒否している。


 これに憤ったアンリとジャンピエトロは自身の動かせる新聞や情報伝達手段を使い、大陸同盟諸国に『恥知らずのヴェニ赦すまじ』の論調でヴェニ討つべしの記事をばらまいて、世論を操作した。

 アンリとジャンピエトロによって操られた世論に後押しされ、レオハルトはヴェニの故郷に軍を差し向けた。

 だがそこは既にもぬけの殻になっており、レオハルトは無人となった村を焼き、『罪人たちを匿ったに違いない』と周辺の町や村に言いがかりをつけ、町や村にあったものを略奪して火を放ち、人々を奴隷にして連れ去った。

 一連の愚行は『全てヴェニが悪い』と大陸同盟諸国内で情報操作され実際の所業は隠ぺいされたが、オルデンやシャングリラ帝国の諜報員たちは一連の証拠を既に確保しており、周辺の国々には明らかにされていた。

 それでもジャンピエトロやアンリは『全てはナピスと同背後のヴェニが悪い』と言い続け、その言い分を鵜呑みにし続ける大陸同盟諸国は世界から孤立していく。


●何を言ってるのかわからない連中

 そんな中、世界の国々が今後の運営を話し合う会議を開くが、そこへアンリ達は呼ばれもしないのに乗り込んできた。

 各国の人々が周囲にいる中、ヴェニ批判の演説と賠償請求を行ったため、ついにヴェニはアンリたち大陸同盟諸国の人々へ反論した。

「あなたたちが何を言っているのかわからない」

「貴様!」

 アンリが声を荒げる。

「私の背後とはどういう意味なのかわからない。その魔導士とやらを私は知らない」


「私がそう言っているんだ! それが何よりの証拠だ!」

 ジャンピエトロの主張に大陸同盟諸国の人々は拍手を送るが、オルデンやシャングリラ帝国、他の諸国の要人たちの視線と態度は冷えていく。 

「個人の言葉を鵜呑みにしただと?」

「信じられんな。とても正気とは思えない」

 諸国の要人たちからすれば陶酔の表情を浮かべて妄言を垂れ流すジャンピエトロよりも、彼の話を盲目的に信じている大陸同盟諸国という集団の方が不気味だ。

「仮に貴方の言ってる事が正しいとしても。それが私達の職権や国籍を剥奪し、資産を奪って追放する理由にならない事を、なぜ気づかない?」

 本気でヴェニはそう思う。

「気付かないとは何だ! 私がそう言っているんだ! レオハルトも認めた! だから理由になる!」

 アンリもジャンピエトロを援護するように言うが、その発言を支持しているのは大陸同盟の者達ばかり。

 ヴェニへの仕打ちを自画自賛するアンリやジャンピエトロ、大陸同盟諸国の人々に世界各国の人々から冷めた視線が集中する。

 不意にジャンピエトロが音頭を取って謎の唱和が会場に響き渡る。

「ピー!」

『ピー!』

「エー!」

『エー!』

「ケー!」

『ケー!』

「ユー!」

『ユー!』

「アール!」

『アール!』

「アイ!」

『アイ!』

 ジャンピエトロの妙な掛け声に合わせ、大陸同盟諸国の人々が妙なポーズをとりながら踊り出す。

「ピーエーケーユーアールアイ、それ!」

 パークリ・パクリ・パクリパクリ、アクトパクリのパクリバカ!

 アクトー・アクトー・アクトアクト・アークト・アクト・アクトアクト・アクトパクリのナピスバカ!

 パパパパパパパパークリー。パパパパパパパパークリー!

 パクリ! パクリ! アクトのパクリ! パークリ・パクリ・パクリパクリ、アクトパクリのパクリバカ!

 謎の唱和をアンリやジャンピエトロだけでなく、大陸同盟諸国の者たちも一緒になって行い、踊る光景は異様であり不気味だった。


 ――こいつらは何をやってるんだ?


 奇しくも大陸同盟諸国を除く世界の人々の思考は1つになった。

 彼らの並べ立てた『ヴェニ達を追放した根拠』は、いくら聞いても意味不明だった。

 そして要求はさらに翻訳が不可能だった。

 ――こいつらは、やはりおかしい。

 アンリやジャンピエトロの並べ立てた主張は大陸同盟諸国内なら通じるかもしれないが、世界には通用しない。

 呆然とするヴェニの肩を、ロッサが慰めるようにポンポンと叩く。

「これ以上何を言っても無駄だ。彼らは切り捨てよう」

 話し合いの場をアンリやジャンピエトロ崇拝の場にしてしまった大陸同盟諸国の人々に話は通じないとロッサは判断し、待機させていた部隊を動かしアンリたちを強制的に会場から締め出した。


 オルデン連合王国やシャングリラ帝国、周辺諸国の要人たちは改めて用意された会議の席で、世界の交易や経済は大陸同盟諸国を除外して行うことで合意した。

 ヴェニ達は何も得ることは出来なかったが、絶縁状を大陸同盟諸国へ送りつけ、自分達が活動していた地区へと帰還する。

 ただちに世界規模で張り巡らせるはずだった世界大陸間鉄道構想や、グレートラインと呼ばれる世界交易海路構想より大陸同盟諸国を外す修正が行われる。

 その結果大陸同盟諸国は同盟国同士内でしか交易や物流が機能せず、周辺諸国との競争に負け埋没を余儀なくされていく。

 物資が交易で入手しづらくなり物価は高騰。これをジャンピエトロとアンリは自身の動かせる新聞を使ってヴェニの仕業と大陸同盟諸国に吹聴。ヴェニ討つべしの世論を高める。

 世論に後押しされた大陸同盟諸国はヴェニ追討の軍を編成して、隣国の復興活動にあたっていたヴェニ一行を急襲するが、その先にはこの事態を察知していたテスタロッサらオルデン軍が配備されていた。

 オルデン軍にとっては質・数ともに優位であり、ヴェニ追討軍は押し包まれ壊滅した。


●意味不明の正体を●します

 捕虜となった討伐軍兵士達をオルデン軍に任せ、ヴェニ達は旧ノーズ帝国管理区の一つに帰還する。

 ヴェニとしては溜まっていた復興事業を推進させたかったのだが、縁を切ったはずの大陸同盟諸国より捕虜となった兵士達の無条件返却及び賠償請求が届いた。

『ヴェニがこれまでの非を我が国全てに謝罪し、その生涯と資産の全てを我々の国家に譲渡し、我々の国家に隷属して償うというのであれば、これを赦さんこともない』


 馬鹿にしに来たとしか思えない文面だ。

 彼らの頭の中で、どういう化学反応を起こせばこういう理屈に辿り着くのかわからない。

 

 ヴェニはちらりとこの書状を持ちこんだ使者の顔を見る。

 顔色は悪く、何かを覚悟してるような表情だ。

 どうやら使者はこの書状の内容がどれだけバカバカしいか理解できているようだ。

「捕虜については私の管轄ではない。オルデン連合王国の案件なので、そちらに交渉をもちかけてはどうかな? この内容は見なかった事にするから」

「既にオルデン連合王国より拒否されています。ですからオルデンと関係が深く、討伐対象であった貴殿が働きかけて下されば――」

「本気でそう思ってる?」

 使者の口上をヴェニは遮った。

「この馬鹿げた内容と同じものをオルデンにも寄越したというなら、捕虜は通常の手段では戻らない。読み手を馬鹿にした内容だから」

 ヴェニはそう言いながら数枚の書状をしたためると、使者に持ち帰って相手に見せるよう言い含め、使者を送り返した。

 ――使者にも言ったが捕虜をどうにかする権限はオルデン国にある。貴国の言う通りにして何のメリットがある? 


 ヴェニが大陸同盟諸国にあてた内容に対し、レオハルトの返信はすぐ返ってきた。ご丁寧にもオーガストからの手紙も添えて。


 ――オルデン国は貴様なら制御できると聞いた。貴様へのメリットは信用回復。貴様にこれまで欠けていて得られなかった財産だ。

『メリット。信用。株のように大事ですわよ』


 思わずヴェニはレオハルトとオーガストからの手紙を握りつぶす。

「いつから大陸同盟諸国はこんなお花畑思考になったんだ?」

 すでに大陸同盟と縁を切っている以上、その国から信用の回復云々と言われたところでヴェニには一切関係はない。

 それに、あのアンリやジャンピエトロ崇拝の唱和を見て、話が通じると思える人間がいたら紹介してほしい。

 使者に『拒否する』という返信を持たせてレオハルトやオーガストへ送り返すと、ヴェニはテスタロッサやオルデン国、念のためシャングリラ帝国にもレオハルトやオーガストより届いた書状の写しを送り、情報共有につとめた。


 諜報網経由で届いた情報によると、ヴェニ追討軍を編成した時にかなり無理をしたらしく、そのしわ寄せが大陸同盟各国の国民にきている模様だ。

 さらにヴェニが報復として攻めてくるという偽情報をジャンピエトロ、アンリ、レオハルトの3者が結託して流し、防衛のためと称して国民達より物資や金銭を徴発し、民衆の生活はひっ迫しているとのことだ。

 その収奪のすさまじさは、反乱が起きてもおかしくないレベルだったが、例のヴェニ達を国外追放することに賛同したオーガストが、言論統制や秘密警察を駆使して不満を抑えているらしい。

 勝手に攻撃しておきながらアンリたちは負けて捕虜になった人達の銅像を作らせ、オルデン国や周辺国の非をならし『最後の1人が許すまでヴェニとオルデン国は賠償を続ける義務がある』と訴えていた。


 ヴェニはアンリやジャンピエトロ、賛同する大陸同盟諸国とは関わりたくないので、オーガストの行いに関与するつもりはない。

 当然オルデン国も周辺国も無視をしている。

 だが関わりたくないと思っても、相手はそうではなかった。

 手紙ではらちが明かないとみたアンリとジャンピエトロが、大陸同盟諸国の民衆たちを引きつれ、現在ヴェニ達が復興を担当する別の国に乗り込んできたのだ。


 口にするのは相変わらず意味不明な誹謗中傷と賠償請求だったが、ヴェニは冷ややかに応じた。

「ここは大陸同盟諸国ではない。オルデン連合王国の法律を順守する地域だ。貴方がたはいくつか法律に反した行いをしている。いま素直に応じれば罪は軽いが」

 ヴェニの言葉にアンリとジャンピエトロは傲然と胸を張り『人間ごときが我々を裁けるわけがない』と宣言した。

「余の名はラブアクト同盟の盟主にして愛と秩序の女神エイミ・フレンチキス・パリスラブ」

「同じく妾は正義の女神プリンセス・ピアー・ブリッジ」

 アンリは自らをエイミ神と名乗り、ジャンピエトロもプリンセス神と名乗る。

 なぜか髪の色が2人ともピンク色の長髪に変化して逆立った。身体の周囲にピンク色のオーラが光る。

『『我らは偉大にて至高なる神。世界の支配者にして人の上に立つ絶対者ぞ。控えおろう』』

「いやその前に性別は何処へ行った?」

 ヴェニは意味不明なポーズを決めたアンリとジャンピエトロという『男性』にツッコミを入れる。

 自称世界の女性の半分は自分の恋人だとうそぶく『世界の恋人』アンリと、自称世界のメディアの頂点に立つと豪語する『新聞王』ジャンピエトロ。

 性別は2人ともまごうことなき『男性』。漂う雰囲気は、けばけばしいピンクオーラと逆立って波打つピンクのツインテール髪の自称『女神』。

 ついでに姿は原色系のフリルとリボンでたっぷり飾られた、ミラーボールのような煌めきを放つミニスカレオタードの男性体。

 ちなみにすね毛は剃っているらしく、つるりとした生足。

 ……なんか痛すぎてこの二人を直視できない。

 エイミ神バンザイ!

 プリンセス神バンザイ!

 アクトー・アクトー・アクトアクト・アークト・アクト・アクトアクト・アクトパクリのナピスバカ!

 パパパパパパパパークリー。パパパパパパパパークリー!

 パークリパクリパクリパクリ、アクトパクリのナピスバカ!

 パクリ! パクリ! ナピスのパクリ!

 パークリ・パクリ・パクリパクリ、アクトパクリのナピスバカ!

 意味不明な言語を並び立てて妙なポーズをとって踊る大陸同盟諸国の民衆たち。

『これこそ至高なる神の御業』

『妾たちの意のままに動く。これぞ子羊たちの絶対的なる進化』

 踊り狂い、自らを賛美する民衆たちを従えたエイミやプリンセスが傲然と言い放つ。

『何をしようが無駄だ。人間風情が神である余を斬れるわけがない』

『いざ神罰を受けよ。愚かなる蛆虫ヴェニとやら』

「いや、斬れるぞ?」

 そう言ってヴェニが抜いたのは自らが作成した星剣「紅石榴」。

 エイミは稲妻を放つ。

 プリンセスは高圧水流を放つ。

 灼熱の軌跡が宙を走ってヴェニを捉え、高圧の水弾がヴェニに着弾し、水球と化して押し包む。

 ヴェニの振るう剣が赤色の剣閃を宙に描き、水球を破断した。

 水球や稲妻に蹂躙されても無傷でやり過ごしたヴェニから、紅石榴の刀身がキリカやプリンセスへと吹き伸びる。

 紅石榴の斬撃はそのままキリカの左腕、プリンセスの右腕を断ち切った。斬られた個所から塵が噴き、キリカとプリンセスは動揺する。

『『さ、再生しないいいいい!? なぜぇええええ』』

 悶絶するエイミとプリンセスだったが、紅石榴に斬られた個所は依然輝いており、急速にエイミとプリンセスの身がその断面に呑みこまれていく。

「お前達が本当に神なのかどうかはわからん。だがこれからお前達が向かう先では、熱烈に歓迎されるだろうよ」

『みゅ、ミュルメクサごときが何故ぇえええ』

「ノーズでは、神が好き勝手していたからな。鎮圧する為、より上位の存在と交渉して、お前達のような存在をどうにかできる権限を得た」

 淡々とヴェニが話す間にも、エイミやプリンセスの体は、もう胸元から下まで消えかかっている。

『お、オーガストぉ! 何をしている! はやくこの愚か者を討てぇぇえええ!』

 プリンセスの絶叫と共に、何かに気付いたヴェニが無造作に紅石榴の剣身を背後に振るい。

「さあ、これをお飲みになって」

 背後から忍び寄ってきたオーガストが、ヴェニの口元へ突き出した液体入りのワイングラスを、紅石榴で叩き落とす。

 オーガストがヴェニへ飲ませようとした液体が地面にぶちまかれ、異臭と白煙を放つ。

「毒薬の類か……。仮にも交渉相手にそんなものを飲ませる真似をすればどういう結果になるのか想像できんのか?」

 ヴェニがその短絡さに呆れながらも剣身を翻し、オーガストの身を切り裂いた。

「い、いやぁぁあ。消える、女神様から頂いたご加護がぁ」

 斬られたとたん、それまで傲慢に満ちていた表情が消え、庇護欲をかきたてられるような弱々しい仕草を見せながら、オーガストは倒れ、気を失う。

 

 その間にも、エイミとプリンセスの姿は光に呑まれて消えようとしていた。

『な、なんでよぉぉ! 余に逆らうウジ虫どもを潰してなにがわるいのよぉぉぉ! 思い通りに人間達を動かしていいのが神じゃないのよぉぉぉ! 悪いこと何にもしてないのに、なんでこんな目に遭わなきゃいけないのよぉぉぉお!』

 エイミが絶叫して抵抗する中、プリンセスはなおも訴える。


 妾は神。人々に愛されて幸せになる至高なるもの。

 ナピスは悪。ヴェニはクズ。

 余と妾が多くの人々に愛されちやほやされて幸せに暮らせる世界。それがここだったはずなのに。

 神だから何をしても許されるはずなのにおかしい。余と妾は幸せになる運命なのに。それがこの世界のはずなのに。

「ここは貴方達だけの世界ではない。あらゆる命が暮らしている現実なんだ」

 身勝手な事を言い続けるエイミとプリンセスに、ヴェニは感情のこもらない声で指摘した。

「そのまま向こうで裁きを受けてこい」

 ヴェニがそう呟く中、エイミとプリンセスは光に包まれ、やがてその場から姿を消した。


●レオハルトと故国は破滅の道を進む

 世界から『世界の恋人』アンリことエイミ神、『新聞王』ジャンピエトロことプリンセス・ピアー・ブリッジ神が消えてから、ヴェニと絶縁していた大陸同盟諸国は様変わりした。

 大陸同盟諸国の人々はそれまでの狂熱が嘘のように消え、落ち着きを取りもどしたかと思われたが、そうでもなかった。

「おまえたちが、馬鹿なおかげで俺はネタに困らなーい」

 オルデン国と事後交渉をしていた大陸同盟諸国の外交官がいきなり意味不明なことを言いだした。

「パッパッパパッパッパッパッパパパパッパッパパッパッパパッパッパクリーッ!」

 このとき対応していたオルデン国外交官はいきなりの馬鹿呼ばわりに呆れたが、口走った者は自分が何を言ったのか瞬時には理解できず、理解できた時にはあわてて口を塞いだが、その口はなおも止まらない。

 パパパパパパパパークリー。パパパパパパパパークリー!

 パクリ! パクリ! ナピスのパクリ!

 パークリ・パクリ・パクリパクリ、アクトパクリのナピスバカ!

 この現象は大陸同盟諸国の外交官だけではなかった。

 大陸同盟諸国の民衆や重鎮たちも、ふと気が付いた時にはこのフレーズを何度も口走っており、そのたびに周辺諸国の人々の視線や態度が冷たくなっていく。

 大陸同盟諸国はなんとかこの状態から脱出しようと様々な模索を行ったが、改善する見込みはなかった。

 オルデン国やシャングリラ国は、自分達やヴェニ達に兵を向け、最後まで迷惑をかけ続けてきたことを赦すつもりはない。

 大陸同盟諸国はいまだオルデン国やヴェニへ謝罪をしていない。

 自分達は騙された被害者という意識にこり固まっているためだ。

 そんな中、人々を扇動した末にヴェニに斬られ、エイミ神の加護や力を失ったオーガストは、扇動されていた民衆の手で処刑された。

 オーガストは刑場で『そんなつもりじゃなかったの』『私は悪くないの』『全部ヴェニのせいなの』と言いながら、処刑された。

 なお一連の事件の元凶であり、主導してきたレオハルト・ソードシャドウは突如姿を消した後、その行方はわかっていなかったが、数年たっていきなりヴェニのもとに手紙を寄こした。

『俺は世界を救ったんだ。だからいい加減大陸同盟への我が儘を止めろ』

「は?」

 相変わらず意味不明の手紙でレオハルトはヴェニを糾弾した。

『祖国に帰りたいんだろう? だがお前は罪深さに恥じてそれもできない。世界を救った俺が許してやるから、お前も大陸同盟諸国にやっていることを全部やめさせて償え』

 エイミやプリンセス、オーガストがようやく消えたかと思えば、まだ誤りを認められない人物は残っていた。

 恥も何も、全部言いがかりなのだが。


 うんざりしたヴェニは大陸同盟周辺の国に、ヴェニ達が復興を担当する場所への大陸同盟諸国からの人や物資の流れを一切封鎖するよう依頼して、それ以上のレオハルトからの追及を締め出した。

 ヴェニは自分達が関わりたくないだけのつもりだったが、オルデン国と話を聞いたシャングリラ帝国はさらに徹底した話を進めた。

 大陸同盟諸国と国境を接する国と連動し、大陸同盟諸国の国境全て(海も含む)に高い壁を構築。

 大陸同盟諸国からの一切の出入りを封鎖した。


 パパパパパパパパークリー。パパパパパパパパークリー!

 パクリ! パクリ! ナピスのパクリ! パークリ・パクリ・パクリパクリ、アクトパクリのヴェニのバカ!

 今も大陸同盟諸国の各所から、そんな唱和が響き、人々はあの奇妙な踊りを続けているらしい。そのたびに人々は絶望して涙する。

「ピー! もういやだ……エー! こんなことケー! したくユー! ないし、口にしたくアール! ない。いつになったらアイ! 解放されるんピーエーケーユーアールアイ!」

 何らかの力が働いているのか、作物の実りは失われた。日々の糧を得るために国中の動物や食えるものは食いつくされ、広がるのは荒地ばかり。


 パッパッパパッパッパッパッパパパパッパッパパッパッパパッパッパクリーッ!

 パパパパパパパパークリー! パパパパパパパパークリー!

 パクリ! パクリ! ナピスのパクリ! 

 パークリ・パクリ・パクリパクリ、アクトパクリのナピスバカ!

 訂正。あの謎の踊りと唱和も残り、広がっている。

 監獄の国と化した大陸同盟諸国は解放されることはなかったが、レオハルトがオルデン軍の厳重な囲みと壁を突破して姿を消したとの報告が届く。

 苦しむ大陸同盟諸国の人々を置き去りにして。


●レオハルトを倒し故国を見捨てる。

 ヴェニは既に大陸同盟諸国を見捨てている。

 しかしレオハルトが外へと飛び出した以上、レオハルトによる迷惑が世界中に飛び火することは十分考えられた。

 故郷の近くにいたからという理由だけで無関係の人々を焼き殺す真似をしたりと、常識が通じない。

 だが既にヴェニはレオハルトの行先がどこであるか見当はついていた。

 わざと自分の周囲から護衛を外し、自分の居場所を周囲に悟られやすくする。

 そしてヴェニの予想通り、レオハルトはヴェニを暗殺する為やってきた。

「やはり来たか」

 ヴェニはレオハルトが己のプライドを修復させるには、逆恨みしている自分を討つしかないと考えていた。

 結果、その通りだったが。

「貴様を討ち果たし、栄光を――」

 全部を言わせることなく、ヴェニは動く。

 閃いた剣光は二つ。

 レオハルトの斬撃はヴェニの身に刻まれたものの鎧を傷つけただけにとどまり、ヴェニの斬撃はレオハルトの両腕を剣ごと斬り飛ばし、後方に飛ばせた。

「お、俺のうでがぁぁぁぁっ!」

 絶対の自信を持った剣筋を破壊され、レオハルトは呆然とする。

 その隙にレオハルトの背後に回り込んだヴェニが、レオハルトの頭部に紅石榴の刃を突きつける。

「こんなはずじゃ、なかった……」

 ブツブツとレオハルトは切断された腕から血を流しながらうわごとを呟く。

「俺は、世界を救った英雄なんだ……」

「仮にそうだとしても、何をやってもいいわけではない」

「俺は、剣に愛された最強の英雄なんだ……」

「今それも終わった」

「なんで俺がこんな目に……」

「被害者への謝罪はなしか」

 ヴェニは紅石榴の刃を押し込み、レオハルトの呟きは永久に終わる。

 頭を剣で貫通されて、物事を考えられる人間はいない。

「いたぶる趣味はないのでな。これで終わらせてもらう」

 ヴェニはそう言ってレオハルトより引き抜いた紅石榴を血ぶりし、倒れたレオハルトの服で拭う。

 かつて大陸同盟騎士団最強と言われた男は、最後まで自分の非を認めず、クズ扱いされ死んだ。

 ヴェニは周囲に控えさせていた護衛を呼ぶと、レオハルトの遺体を焼却の後、無名墓地に葬った。


 これでヴェニ達を追放処分とし、言いがかりをつけ、付き纏い続けた者達の主な人物は全て消えるか死んだが、大陸同盟諸国の人々があの唱和から解放されることはなかった。

「ヴェニに死を!」

『ピー!』

「ヴェニはクズ!」

『エー!』

「ヴェニは死ね!」

『ケー!』

「ヴェニに死を!」

『ユー!』

「ヴェニよ滅べ!」

『アール!』

「ヴェニに罰を!」

『アイ!』

「「ピーエーケーユーアールアイ!」」

 今日も人々はジャンピエトロが残した唱和をしながら、あの不思議な踊りを続ける。

 ヴェニへの呪詛は、強制されたものかそれとも本心か。

 アクトー・アクトー・アクトアクト・アークト・アクト・アクトパクリ・アクトパクリのナピスバカ!

 飢えていようが喉が渇いていようが。

 パッパッパパッパッパッパッパパパパッパッパパッパッパパッパッパクリーッ!

 今にも倒れそうになっていても、彼らはあの謎の唱和と踊りを続ける。

 パッパパパッパッパッパパパパッパッパパークリー!

 『もうやめてくれ』と懇願する男達も。

 パパパパパパパパークリー。パパパパパパパパークリー!

 『こんなのもう嫌だ』と泣き叫ぶ子供達も。

 パクリ! パクリ! ナピスのパクリ!

 『なんで私達がこんな目に』と嘆く女性たちも。

 パークリ・パクリ・アクトパクリ、アクトパクリのナピスバカ!

 足腰がおぼつかない老人たちも、貴族平民の区別も例外もなく。

 パッパッパパッパパッパパパパッパッパッパックーリー!

 照りつける陽光が焼きつく夏の日々でも。

 アークト・パクリ・パクリパクリ! パクリパクリのナピスバカ、ヘイ!

 骨身にしみる冬の日々でも人々は唱和し、踊り続ける。

 かつては世界に1勢力を築いていた大陸同盟諸国と呼ばれる地域は、いまはもう高い壁に囲まれて世界から隔離された。

 パッパッパパッパッパッパッパパパパッパッパパッパッパパッパッパクリーッ!

 パパパパパパパパークリー。パパパパパパパパークリー!

 パークリパクリパクリパクリ、アクトパクリのナピスバカ!

 パクリ! パクリ! ナピスのパクリ! パークリ・パクリ・アクトパクリ、アクトパクリのナピスバカ!

 アクトー・アクトー・アクトアクト・アークト・アクト・アクトアクト・アクトパクリのナピスバカ!

 パッパッパパッパッパッパッパパパパッパッパパッパッパパッパッパクリーッ!


 壁の向こうから聞こえてくる、あの意味不明な唱和だけが人々が今もそこで生きている事を知らせている。


 ここまでご覧下さりありがとうございます。


●登場人物

 ヴェニ・サンクテ

 一連の被害者。意味不明な言いがかりと追放処分、故郷の焼き討ち、追討命令を受け続けたが、祖国にそれらを止める人材が皆無だったのが彼女の不幸だった。

 この後ロッサと結婚。ロッサを唯一制御できる人物というありがたくない評価を受ける。


 ロッサ

 オルデン連合王国最高司令官。理想と行動が先走りがちだったが、ヴェニのおかげでだいぶ落ち着いた。


 アンリ

 事件の元凶その1。自己陶酔に満ちた『先発優遇思想』を広めて大恥をかいたが、実は愛の神エイミの化身というオチがあった。ヴェニによってより上位存在のもとへ強制転移させられ、サンドバックとして永遠に神々から嬲られる。


 ジャンピエトロ

 事件の元凶その2。常識を捨てた思考と狂気じみた言語センスで世界の鼻つまみ者に。こちらも正義の神プリンセス・ピアー・ブリッジの化身だったが、同じくヴェニによって強制転移。ヴェニを気に入っていた上位神によって世界に関わる事を禁じられ、神から虫への転生100万回の刑に処せられる。


 レオハルト・ソードシャドウ

 事件の元凶その3にしてヴェニ達を追放処分にした張本人。脳筋。友人の話を鵜呑みにする傾向があり、エイミ神やプリンセス神によって踊らされ、被害を拡大させた。姿を消していた間、世界を救ったらしいが大陸同盟諸国を除いては信じるものは皆無。最後まで自分の非を認めず、言いがかりをつけ踏みにじったヴェニに返り討ちにされた。


 オーガスト・ビューティレイン

 自称聖女。レオハルトと同じくキリカやプリンセスの言い分を鵜呑みにして被害を拡大させた。キリカから加護を貰い薬を使ってヴェニを操ろうとしたのが運のつき。加護を消され、自分が扇動していた人々によって処刑された。


 大陸同盟諸国

 結局国の名前は出なかった。王政国家だったらしいが多分機能してなかった。扇動されやすくジャンピエトロことプリンセスの言語センス、アンリことエイミ・フレンチキス・パリスラブの掲げた『先発優遇思想』に追従した。自分で物事を考え判断することを放棄している。そのため周囲の国々は『この国大丈夫か?』と常識を疑われ、関わりを拒否された。正気に戻って振り返ったら自分達の行動があまりにも頭が悪いものだと自覚できたはずだが、プリンセスの残した言語を最後まで口走り続けり踊り続けることになる。

 被害者に謝罪して新しい関係を築くことができれば復活の道はあったが、自分達は被害者という感情を捨てきれず、被害を与えたヴェニやオルデン国に謝罪することに思いいたらなかったことから破滅が確定した。

 あの唱和や踊りの解除条件は、大陸同盟諸国が周囲に一連の追放処分から討伐軍派遣、ヴェニの故郷焼き討ちなどの数々の所業を謝罪するという簡単なものだった。



 よくある追放ものですが、少し客観的に考えればその根拠がいかに支離滅裂で常識に欠け、追放にするほどのものなのかという疑問から生まれた内容です。

 転生による電波系ではなく、自称神による非常識な言動を元凶としましたが、自称神やレオハルト達が言った内容、人々の唱和と踊りは部分的にモデルはございます。


 ジャンルがホラーなのは、そういうことです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 狂いまくってるところ。 [気になる点] こんな国は滅ぼした方が良かったのではと思いますねぇ。
[一言] あまりの支離滅裂さに、怖さより気持ち悪さを強く感じました。パパパの辺り、マジアタオカ。 え、大陸半島同盟のことじゃなく、ノンフィクションベースなの?うわぁ、うわぁ…。
[良い点]  殆ど作者様の実体験と読み取れるのがさらなる恐怖を掻き立てる。  ※一部ノンフィクションです、が冗談じゃないですからねw  単なる金銭目当て目的以上の執着だし、ほんとカルトの様相を呈してい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ