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9-3 女子会ではコソコソ秘密をぶっちゃけましょう。


「トモちゃん、右!」


 アタシが言うのと同時にブオオオオッ! と、また大きな震動音を響かせて、振りかえりざまに発射!

 ドラゴンへ飛びかかっていた三体目のサイクロプスは、でかい爆煙をまともにくらってよろめく……すかさず爪の巨大腕がなぐりつけて、石床へたたきつけた。


「うしろ、もう一匹いってんぞ!」


 ユッキーの言葉でドラゴンがすばやくふりむき、背後で起き上がったボロボロ巨人の拳を爪ではじき上げるけど、追撃の蹴りは空をきった……ように見えた直後、巨大シッポが横なぐりにサイクロプスの胴へめりこみ、浮かせ気味に床へたたき転がす。

 すげえ。手がつけらんねえ。

 舞島ちゃんもそう思ったらしく、階段の上のワイバーンはすでに消えていた。


「さすがに逃げたか……ドラゴンの強さも反則だけど、いきなりそこまで使いこなすトモちゃん女王もとんでもないね」


 正人のペガサスが見上げると、狂暴凶悪すぎる巨大ドラゴンは照れて身をよじる。


「えへへ。サイクロプスも一体くらいは修復しやすく半殺しで止めておけばよかったかな?」


「オレもそれはいつも考えるけど、そんなこと狙ってできるのは友恵くらいだろ」


 ユッキーが珍しく、ひかえめでも素直にほめている。

 アタシが奥の様子を見に行くと、さっちゃんはドラゴンの出撃に巻きこまれたらしく、座ったまま頭から砂をかぶっていた。

 それをはたき落としもしないで、なんだかふらふらしている。


「頭ぐるぐる……でも間に合ってよかった~」


「さっちょんもおつかれさま。ひと息ついてだいじょうぶだから……というかしっかり休め」



 さっちょんの穴埋めにみんなで気合を入れて修復していると、本日三度目のビースト警報が届く。


「ドラゴン、まだミサイル二発あるよ!」


「カワンチャもまだ一発……チャンスだな!」


 トモちゃんとユッキーが大歓迎のかまえだ。

 ツヨポンが墓地に入りしだい、出口をふさげるようにアタシと正人は馬二匹で待ちかまえる。


「おー、えらく派手に暴れたようじゃのお……うん? ……お……」


「ビゥゴ、モゥゴムブォ、ドゥオル、ゴル」


 階段の上にビーストの影が見えたけど、そのままどこかへ駆け去ってしまった。


「え……おい? ……追え!」


 ユッキーのカワンチャが先に走り出したけど、追っていいのか?

 マサポンのペガサスがふり返る。


「ツバキさん、乗って!」


 ツバキちゃんがいれば、舞島の増援があっても察知できるか。


「ビースト、二体」


「あ。強くんの襲撃ペースがやけに早いと思ったら、一匹追加していたのか……キョンちゃんはみんなを乗せて、ドラゴンの後ろについてきて!」


 ユッキーはともかく、マサポンは今回も冷静に判断しているらしいのでだいじょうぶそうだ。



 ペガサスとカワンチャが先にビーストを追いかけて山道を駆け上がり、ドラゴンはドスドスと遅れて続く……でも巨体のわりには速い。

 アタシのユニコーンの背にいるさっちゃんはアヤメさんが支えている。

 でも、ゆらしすぎないように意識していると、少し遅れそうになる。


「緑のファントムは戦力の不利を察知して、舞島様との合流に切り換えたと推測されます」


「ペガサスならツヨポンに追いつけそうだけど、舞島ちゃんに挟み撃ちされる危険はない?」


「舞島様は自分が戦わないでもドラゴンに勝てる戦力を持つまでは迎撃を避け、管理塔まで引き返す可能性が高いと思われます。黄色のファントムがいない現在は、ファントム同士の連携も薄いと思われます」


「たしかに舞島さんとツヨポンがいっしょに来ていたら大変だったけど、タイミングがずれていた……あのペチャクチャうるさい黄色のやつ、最初につぶせたけどけっこう重要だったのか」


 アヤメさんがひしめくタコプリンたちをあさって、一匹を引きあげる。


「この個体ですね。以前に事務の補助をしていた影響のようです」


「それ、黄色オバケだったやつなんだ? ミサイルをあててもプリンの記憶はふっとばないの?」


 もうほかのタコプリンと見分けがつかない。


「はい。記憶はバラバラになりますが、多くはどこかに残っています。それとタコプリンは常にそれぞれで学習して自身の改良を行っているため、記憶と学習の組み合わせからまれに、特別な個体も発生するようです」


「ドラさんも言ってた、タコがファントムに化けちゃう原因のひとつか……黄色が事務係だと、赤や緑のオバケも、元はなにか仕事を手伝っていたとか?」


「赤は警備、緑は農園管理、青は工場管理などの機能と推測される。舞島の意図しない個性が案内人に出てくる現象も、以前の記憶が影響している可能性が高い」


 無愛想だけど親切なドラさんの前世が気になる。


「あの悪霊たちが、前はそんな普通の仕事していたのか。やっぱり元凶は舞島な気がしてきた。なんだか意識誘導の影響なさそうだし」


「舞島が交流の薄い他人、特に子供へ管理の一部を任せる発言は、意識の操作なしには考えにくい」


「そういえば『押しつけられるなら助かる』とか言っていたけど……やっぱりそのへんの責任感だけは、ちゃんとしている大人なの?」


「舞島は子供との共同生活を好まない」


 なんて残念な説得力だ。



「あの……とりつくファントムさんによって、暴れかたのちがいってありますか?」


 修復女王のさっちゃんは、タコプリンで囲まれた真ん中にすっかりなじんでいた。


「個々のファントムで操作能力のちがいはあるが、とりつく対象の人格によって操作の範囲は限られる。日賀強のように特殊な思考形態の場合、どのファントムであっても、娯楽形式によらない戦闘への誘導は困難と推測される」


「ほんわかさっちょんだと『石像を破壊』の誘導だけでもギリギリみたいだったから、とりつかれても一番安全じゃない? まだ気にしていたの?」


「ん~。まだ自分のことも怖いけど、強くんの暴れかたは、みんなとぜんぜんちがっていたから……なんて言ったらいいのか……」


 さっちゃんは自信がなさそうだけど、大まじめに言葉を探している。


「まだ見つかっていない『五体目』ファントムさんの影響は、わたしみたいにふさぎこんだり、乱暴になったりするだけじゃないかもしれないよね?」


「幸代さんは、誰かにファントムの影響が出ているとお考えですか?」


 アヤメさんも気になる指摘らしい。


「おかしいと言やマサポンだけど、アレは元からでしょ?」


「誰かとかではなくて、なにか不自然な気が……気のせいかもしれないけど……」


 そのわりにはめずらしくがんばって主張しようとしている。


「……わたしにミサイルを当ててもらったあと、いろいろ不自然なことに気がついて、なにがおかしいのかもだんだんわかってきたけど、まだ残っていることがありそうな感じ……かな?」


「それならアタシも、まだ無くもない……かな?」


 ふと舞島の、悪霊つきに思えないとりつかれかたが頭をよぎる。


「さっちょん……それ、気のせいじゃない可能性も考えておかない? 今ちょっと、アタシもいやな予感がしたから……ドラさんはどう思う?」


「人間の心理分析に関しては、案内人より人間のほうが優れていることも多い」


「ドラさんの苦手分野なら自力だよりかあ」


「案内人は人間との交流経験が不足している。最も長く交流している舞島という個体は、人間の基準としては極めて不適格と推測される」


 いや、生みの親をそこまで冷静に人でなし認定しなくても。




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