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番外編 IF 野猿な囚人 18.再会

 セリウスが司法省を襲撃している頃


 アウスフォーデュ修道院から無事に脱出ルートに入ったリーリアとミランダは、ルクレナやその部下達と一緒に、旅人のふりをしながら、順調に逃走していた。

 アウスフォーデュ修道院がアルーテ王国寄りの場所にあったため、王都に行くよりも近いこともあり、アルーテ王国に向かっている。

 旅の途中では、運良く野宿することもなく、街道にある比較的良い宿に泊まったり、王妃の仕事上のアジトとして使っている空き屋等に寄りながら、進んでいた。

 ちなみに、宿はルクレナ達があらかじめ調べているが、特に決めていない時は、良い宿か否かはリーリアが宿の前に立ち、その周辺の匂いから、この宿のご飯は美味しいと嗅ぎ分けて泊まっている。

 当たりの確率は、今のところ100%である。


 侮れない、野猿の嗅覚!


 リーリアをうまく使うルクレナは、「旅の一団には一匹の野猿だな~」とその便利さに感心していた。

 思わぬ才能を見出されるリーリアは、美食家ならぬ美食野猿とルクレナ達に呼ばれ始めていた。

 そんな宿での出来事。


「おい~、の・ざ・る。待ちなっ!

 何でお前はミランダの分まで飯を食おうとしているんだ!?」とリーリアを叱るルクレナ。

「え?奪ってないですよ!?

 ミランダがもうお腹いっぱいだからってくれた分ですよ!」

「……ミランダ、まだ具合、悪いのか?」とルクレナはミランダを心配する。

「大丈夫ですよ、ルクレナ様。

 ただ、ここの食事は美味しいのですが量が多いので、食べきれなかっただけです」

「そうか。あまり無理するなよ。

 辛かったら早めに言えよ?」

「はい、ありがとうございます」

「……ミランダ、まだしんどいの?」とリーリアも心配する。

「ううん、大丈夫よ、リーリア」と言って微笑むミランダ。


 ミランダは脱獄時こそ、倒れそうなくらいに体力が落ちていたが、リーリアの嗅覚のおかげで、美味しいものが食べられるようになって、かなり回復はしている。

 しかし、ミランダは、いざ脱獄してみると、ほっとする一方で、自分を何とか助けてくれようと頑張っていたディオンとは、別世界で自分は生きなければならないから、もう会えないと思われた。

 もちろん、ミランダも頭ではわかっていたが、うまく冤罪が晴れて、もし万が一、貴族社会へ無事に戻れていたら、ディオンと一緒の未来があったかも知れないと考えると、まだリーリアのように元気いっぱいに食事が摂れなかった。

 そこでふと、気になったことをリーリアに聞くミランダ。


「ねえ、リーリア。もしセリウス殿下がリーリアを迎えにきたら、どうするの?」

「はえ?それはないでしょう~」

「いや、わからんぞ。

 あの第2王子なら、正気に戻っていたら、鬼のような勢いで野猿を迎えに来るんじゃないか?

 あいつの野猿溺愛は有名だったからな~」と揶揄うように言ってくるルクレナ。

「いえいえ、そうでもないですよ。

 それに、ヒロイン……じゃなかった、アリーシアにセリウス様が落ちてから、とっくにセリウス様のことは、あきらめましたよ~。

 もう、変なことを聞かないでよ、ミランダ!」と言って、先程以上の食欲で、がつがつとご飯を食べるリーリア。

 その様子を見て、ルクレナが思ったことは……。


(第2王子の話をすると、野猿はいつも、すごい量を食べるんだよな~

 ストレスで、空腹感が増すんだろうな。

 ミランダとは逆だな……)

 

 預かっている二人の貴族令嬢の相反する反応を見て、(どちらも気の毒に……)とため息をつくルクレナであった。


 そして、数日後、ルクレナ達が、アルーテ王国手前にある中継地点の街に向かっている時でのこと。

 

「お、野猿。次の街では、待ち人に会えるぞ!

 楽しみにしていろよ~」と、また、どこからかと連絡のやり取りをして、それを終えたルクレナからそう言われ、リーリアは、とても嬉しかった。


(待ち人は、きっと、お父様ね!

 怪我は大丈夫かな?

 ああ、あとちょっとで会えるのね!!)

 

 期待と心配に胸を膨らませて、次の街に向かったリーリア達。

 予定していた落ち合う場所は、街の中心街からややはずれた閑静な住宅街にある空き家で、そこは元貴族の古い屋敷であった。

 ルクレナが持っていた鍵で入ると、居間と思われるところに、2人の先客がいた。

 1人はリーリアと同じ髪色と瞳の色をした、いかにも武人である立派な体格をした男性で、もう1人はほっそりとした文官のような男性であった。

 その男性達をみた瞬間、リーリアは体格の良い方に駆け寄り、ミランダはほっそりした方に駆け寄っていった。


「お父様!!」

「リーリア!!」


 二人はがしっと抱き合い、体格の良いメナード公爵は、嬉しさのあまり小さい頃のように、そのままリーリアを両脇から持ち上げて、高速でぐるぐる回す。

 もちろん、三半規管が丈夫なリーリアは、久しぶりに高速ぐるぐるをして貰えるのが嬉しくて、思わずきゃっきゃっと笑ってしまった。

 それを横で見ているルクレナの方が酔いそうになって、メナード公爵への不敬も忘れて「やめんか!!」と叫んだ。

 やっと、再会の喜びでお互い無事な様子に安心した二人は、落ち着いて話し合いをした。


「お父様、お怪我は?」

「ああ、かすり傷だから大丈夫だよ。

 実は、アリーシアの術は私には何故か効かなくてな。

 それで、アリーシアのことを諫めようとしたせいで、邪魔者と思われて、命を狙われたのだ。

 アリーシアは、お前の母親イレーヌを操って、私を刺そうとしたが、イレーヌが操られながらも精一杯、抵抗してくれたから助かったんだ。

 リーリア、お前のお母様は本当に強い人だよ。

 たとえ操られても私を刺す位ならと、死ぬ気で抵抗をして自分を代わりに刺そうとしたんだよ。

 そのイレーヌを私が止めて、ちょっと怪我をしたが、アリーシアを油断させるために、そのまま大怪我をしたことにして、すぐに失神させたイレーヌと共に屋敷を離脱したのだ」

「では、お母様もご無事ですか!?」

「ああ、無事だよ。

 アーサーも私のように術が効かない体質か、イレーヌのように死ぬ気で抵抗していれば……、いや、それだと私のように邪魔者として、アリーシアにアーサーも始末されていたかも知れんな。

 今はもう、アーサーも王妃管理下にいるから大丈夫だ。

 アーサーのことも心配だったが、アリーシアの取り巻きになっていれば、お前よりは多少安全かと思い、お前の救出を優先したのだが……。

 思いのほか、アリーシア以外の敵がうようよ出てきて、その始末でお前の救出が遅くなってしまった。

 すまなかった、リーリア。

 あんなところに送られて、さぞ辛かっただろうに……」

「そんな、私は大丈夫ですよ!

 親友のミランダもルクレナ様達もおりましたし、何故か途中から修道院の食事内容も良くなってきて、ミランダのおかげか、差し入れも時々あって何とか無事に生きていられました。

 それよりもお父様が負傷したと聞いて、とっても心配でした。

 でも、無事で本当によかった~」と涙目でほっと安心するリーリアに、よしよしと頭を撫でるメナード公爵。


 一方、ほっそりした方は、ミランダの父親であるローエリガー伯爵であり、ミランダを迎えに来ていて、メナード公爵とリーリアほど激しくはないが、お互い抱き合って、久しぶりの再会を喜んだ。


「ミランダ、無事だったか」と抱きしめながら、片手でミランダの顔にかかった髪を耳にかけて、顔色などの体調を確かめるローエリガー伯爵。

「お父様、無事です。

 心配かけてごめんなさい」

「いや、本当に無事でよかった。

 もっと早くに助け出せなくて、すまない。

 体調を崩してしまったと聞いているが、大丈夫か?」

「ええ、あの修道院にいた時は、食事もろくに喉に通らないこともあったのですが……。

 でも、脱獄してから、まるで喉につかえていたものが取れたように、食事もしっかり摂れるようになり、おかげで、体力も戻っています。

 リーリアやルクレナ様達のおかげですね」

「そうか、よかった……」と言って、二人して涙ぐむ。


 2組の久しぶりの父娘の再会に、しんみりとした雰囲気が流れていた。


「はーい!

 父娘の感動の再会が落ち着いたら、次の行程の話をしますよー」


 遠足の引率の先生のように、パンパンと手を叩いて注目を集めたルクレナは、次の計画を立てようと話し合いを始めた。


「このまま予定通り、アルーテ王国に一時、身を隠すので、何か問題はありますか?」

「いや、メナード公爵家関連の敵は、もうあらかた片付けたから問題ない。

 もう邪魔はされないはずだから、予定通りで大丈夫だろう。

 私は一旦、妻のところに寄ってから王宮に向かうので、一緒にはいけないが、リーリアをこのままルクレナ殿に任せてもよいだろうか?」とメナード公爵はルクレナに尋ねる。

「ええ。それはもちろん。

 このまま無事にアルーテ王国までお届けいたしますよ」

「ありがとう、ルクレナ殿。頼りにしているよ」


「それで、ミランダの方はどういたしますか?」と今度はローエリガー伯爵に聞くルクレナ。

「ああ、私達はこのまま国内の別の場所に避難する予定だ」

「それで、ミランダに危険はないですか?」

「ああ、大丈夫だ。それに、これは王妃様のご指示でもあるからね。

 貴族達のうち、影響力のある『旧』の者達は、王妃様達が中心になって既に排除されたのだが、私達の敵だった王家筋の家も、その中に含まれていたおかげで、ミランダの件も無事に片付いたんだ。

 いや~、王妃様、メナード公爵やルクレナ殿には感謝を表しきれませんな。

 本当にありがとうございます。

 そういうことで、こちらは落ち着くまで国内で潜伏するので」と終始笑顔のローエリガー伯爵。

「そうですか!ミランダの件まで解決するとは、本当によかった」

「ああ、ありがとう。

 あと、セリウス殿下がこちらに向かっているそうなので、もし現れたら、すぐに王宮に送り返して欲しいと王妃様より新たにご指示が出たので、ルクレナ殿に対応をお願いしたい。

 おそらく、近日中に接触することになるかと……」

「あの第2王子か……。

 承知いたしました」とちょっと渋い顔をするルクレナ。


 その3人のやり取りを後ろで大人しく聞いていたリーリアとミランダは驚いた。


「ええ!?じゃあ、ミランダとはここでお別れなのですか?

 あ、でも、ミランダの冤罪は、もう晴れたのですね?」とリーリアが聞くと、やはり笑顔で答えるローエリガー伯爵。

「もちろんだよ!

 犯人の王族筋の貴族が、他国と不穏な取引をしている証拠も無事に掴めたし、ミランダは王妃の命令で協力して働いたことになっている」

「まあ、そうだったのですね!」とミランダ自身もまだ聞いてなかったので、とても驚いた。

「ああ、そうだよ、ミランダ。

 だから、ミランダはまた貴族社会に復帰もできるし、お前の無罪のために頑張ってくれたディオンくんにも、また会えるよ。

 彼にお礼をしないとね、ミランダ」

 

 そう言って優しく微笑むローエリガー伯爵に、ミランダは嬉しくって涙ぐんだ。


「良かったね、ミランダ!」

「うん、ありがとう、リーリア」

 

 リーリアは、嬉しくて涙ぐむミランダの様子を見て、とても喜びつつも、心のオアシスだったミランダと、ここでお別れしないといけないことを寂しく思っていた。


 そこに、リーリア達のいる屋敷の前で、馬がヒヒーンと大きくいななき、ドウッと倒れるような大きな音が聞こえた。

 しかも、その後すぐに、屋敷の扉がガンガン叩かれる音も響いた。


「何事だ!?」とルクレナが急いで見張りをしていた部下に確認する。

 敵が攻めて来たかと、屋敷内のリーリア達に一瞬、緊張が走ったが……。


「大変です!セリウス殿下が……」と見張りの部下の1人が報告のために居間に飛び込み、報告し終える前に、セリウスは他のルクレナの部下達が制止するのをものともせずにリーリア達のいる居間に強引に入りこんできた。


 バーン!


 居間の扉が壊れる勢いで開けて、「リーリアァ!!」と叫ぶセリウス。

 その声に、振り返ったリーリアは青褪めた。

 みんなで話し合っている居間の入口に、鬼気迫る勢いと暗黒オーラをまとったセリウスが立っていた。


「……リーリア、ずっと、ずっと会いたかった」と部屋の中にいるリーリアを、ぎらっとした鋭い目つきで見つけると、リーリアは思わず「ひぃ!」と悲鳴をあげているのに、セリウスは両腕を広げ、抱き締めようとしながら近づいてきた。

 そのセリウスを阻むように、メナード公爵とルクレナが立ち塞がったが、それより早く、リーリアが反応した。

 リーリアは、無詠唱でとっさに自分の前に防御壁を作り出し、それと同時にセリウスの足止めに魔法の拘束をしてしまった。


「ちょっ、リーリア!?」とリーリアに拘束されて動けなくなった上に、防御壁でリーリアに触れられなかったセリウス。


「わー!うわゎーーー!」とリーリアは、まさか突然、セリウスが現れると思っていなかったので、心構えができておらず、軽くパニックになってしまった。


「お、落ち着いて、ね、リーリア。大丈夫よ」とミランダがパニックになったリーリアを落ち着かせようと駆け寄り、背中をとんとんしながら、落ち着かせてあげる。


「ミランダ、そのまま野猿を隣室へ!」とルクレナに言われ、頷いたミランダは、まだ「わー、うわー」と落ち着かない様子のリーリアを、優しく隣室に誘導した。


「待って!リーリア !!」と拘束されたセリウスがリーリアを引き止めたが、聞いてもらえなかった。


 隣室で、ミランダが「ねえ、リーリア、ゆっくり深呼吸してみて。ちょっと落ち着くわよ?」と言って、すー、はー、すー、はーとリーリアに何度か深呼吸をさせる。

 深呼吸して、セリウスの姿が見えなくなったおかげか、落ち着いてきたリーリアは、あれ?王子を出会い頭に拘束して拒否っちゃったんじゃない?ということに気づいた。


「あ、あれ、ミランダ、どうしよ?

 ま、まずいよね、あれ。

 一応、王子だもんね。

 あははは、全力で拒否しちゃった~」と涙目で言ってくるリーリアの手は、ちょっと血の気が失せて、小刻みに震えてしまっていた。

 その震える手を優しく握りしめて、ミランダがリーリアに微笑む。


「あれなら、大丈夫よ。

 彼のこと、魔法でもっと遠くにぶっ飛ばしても良い位だったのに、あの程度に抑えてリーリアは偉いわ。

 それに、それが今の偽りのないリーリアの気持ちなのだから、拒否していいのよ」と冷たくなって震えるリーリアの手を両手で包み、温めてあげるミランダ。

「い、いいの?本当に?」

「ええ。今はいいのよ」

「えへ、そっか、いいのか。今は……」と涙ぐむリーリアには、セリウスに会って、冷静に対応するだけの心の余裕がまだなかったことを自覚した。

 もっとも、先程、父親に会えて、家族の無事を知って安心した矢先だったこともあり、気を抜いていたせいもあった。


 アリーシアにセリウスが落とされた時も、セリウスのことはあきらめようと思えたし、アウスフォーデュ修道院にいた時も、セリウスのことを考えたり、思い出したりすると、もやっとした暗い気持ちが湧き出ていたが、それよりも家族の安否の方が心配だった。

 それでも、あらためてセリウスに向き合うとなると、自分をアウスフォーデュ修道院に送ったセリウスに怯え、まだ全然、許せていなかったことを、リーリアは今、初めてわかった。

 もし、アウスフォーデュ修道院に送られていなかったら、リーリアもここまで拒絶しなかったかも知れない。

 リーリアの前世の記憶では、ゲームでの悪役令嬢リーリアの結末のうち、セリウスルートのひとつであるこのアウスフォーデュ修道院送りは、リーリアが大切な家族を失い、碌な食べ物も食べられず、理不尽な暴力を受けて、死ぬような目にあうバッドエンドのひとつであった。

 現実では、初めの頃こそ、リーリアはちょっと痛い目にあい、魔力こそ封じられていたが、ルクレナというボスに気に入られ、親友とも思える友人ミランダに会えて、食べ物も後半には改善されて、まるで平民生活の研修でも受けにきたのかと錯覚するような特訓生活であった。

 おかげで、リーリアは、旅人のふりしても、貴族令嬢と見抜かれることは全くなかったくらい、あの修道院の生活は役立った。


 それでも、どこかでまだ、セリウスに対して本能的に恐怖して、許せていないリーリア。


 リーリアがセリウスに溺愛されていると言われていた頃でも、色々と意地悪をされたり、結界や小部屋、檻と様々なものに閉じ込められたリもして大変だったし、セリウスにはよく地雷があり、扱いが難しかったが、こんな許せないという感情はわかなかった。

 しかし、今回の件では、どうしてもまだセリウスを受け入れられないリーリアは、なぜ、自分がこんな気持ちになるのかわからなかったので、気持ちを整理する時間が欲しかった。


 そんなリーリアの気持ちも知らないセリウスは、さっさとリーリアの拘束を外したようで、リーリアとミランダのいる部屋の扉越しに話しかけてきた。


「……リーリア?聞こえる?

 君が僕のことを見たくもないなら、この扉越しでいいから、話をさせて欲しい。

 お願いだ。

 君に謝りたい。どうしても。

 話を聞いてくれるかい?」と切ない声でリーリアに問いかけるセリウス。


 でも、まだリーリアは戸惑っていて、ミランダに目で「どうしよ?」とすがるように向けると、ミランダが任せてとばかりに頷いて、代わりに答えた。


「セリウス殿下、リーリアの代理で答えさせていただきます。

 どうか明日、出直してきてください。

 それまでに準備をいたしますので、どうか、明日までお待ちください」と丁寧に返答した。

「それが、リーリアの希望?」

「はい、そうです」ときっぱり答えるミランダの横で、リーリアもコクコクと頷いていた。

 その様子が外にも通じたのか、「……わかった。また明日、出直すよ、リーリア」と言って、セリウスにしては素直に引いてくれた。


 隣室でもルクレナが「だから、そう言っただろう?明日にしてくれ!」とセリウスに注意しているようであった。


 窓越しに、セリウスがリーリア達のいる屋敷から出ていく姿を確認して、リーリアはほうっと安堵のため息をついた。

 そして、セリウスが見えなくなっても、しばらくの間、冷たくなった手で、リーリアはミランダの手を握りしめていたのであった。

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