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番外編 IF 野猿な囚人 12.訪問

 アリーシアの有力な逆ハーメンバーの1人である隣国セリクルド王国の王子サリューは、セリウスの離宮へのお見舞いメンバーに入れられていなかった。

 

 サリューは、アリーシアの実の従兄であり、現在のセリクルド国王とアリーシアの生みの母親は兄妹である。

 また、逆ハーメンバーのほとんどに婚約者がいるが、妻がいるのは、このサリューだけである。

 ランダード王国では18歳が成人とされているが、セリクルド王国では15歳で成人であり、王族の中でも王と王子のみ複数の妃を持つことができる国のため、サリューは子供の頃から決められた婚約者と15歳になるのと同時に結婚し、夫婦で一緒にランダード王国に留学する予定であった。

 ところが、その妻が体を壊してしまい、自国で療養することになり、しかたなくサリュー王子のみランダード王国に留学していた。


 離宮にいくために、アリーシアが逆ハーメンバーの選抜をしようとした時、ちょうど、サリューは父親のセリクルド王から緊急の呼び出しをされ、急遽、帰国することになってしまった。


 それを聞いたアリーシアは、セリウスばかりか、サリューまで自分の元から一時的にでもいなくなることに、少々、不安を抱いた。


「セリウス様が離宮に行ったと同時期に、サリュー様まで帰国するなんて、タイミングが良すぎませんか?」と不安に思うアリーシア。


「うーむ。

 どうも私の妻の実家に、この学院やアリーシアとの噂が耳に入って揉めているようなのだ。

 私の妻は宰相の娘で、我が国の宰相として義父は、ここでの私に関する情報を常に得られているせいで、色々と危惧しているのだろう。

 実は前から、父上から一度帰国するように連絡がきていたのだが、私がアリーシアの側から離れたくなかったからな。

 でも、今回は妻の体調不良もふまえての厳命なので、すぐにでも帰国に応じないと、まずいので今回は帰国しないとな」とサリューもアリーシアの側を離れることを厭っていたが、やむを得ない理由をだされて、渋々、帰国するようである。


 不安がるアリーシアであったが、サリューから「何があっても、愛しいアリーシアの元にすぐ戻るから、心配するな」と甘く囁かれ、緊急時の連絡先、連絡方法もきちんとアリーシアへ渡してくれたので、やや安心するアリーシア。

 セリウスにもお見舞いという形でもうすぐ会えるので、アリーシアは考え過ぎかとも思い、サリュー以外の逆ハーメンバーからお見舞いメンバーを選ぶことにした。


 セリウスからお見舞いにきて欲しいと言われた日までにアリーシアもルシェール遭遇を前提に、色々と策を練って準備した。

 そして、当日、セリウスのいる離宮に着いたアリーシア達は、すぐに客間まで案内された。

 そこで高級なお茶をだされ、少々、待たされることになった。

 

「……ねえ、どうしてセリウス様のお部屋にはすぐに通してもらえないのかしら?」と不審がるアリーシア。


「セリウス殿下は王族だから、たとえ療養中でも、セキュリティーは厳重にされているのはあたり前だよ。

 しかも、今の殿下はご自分の身を守れないくらいに弱っていて、学院を休学してまで離宮で療養しているのだから。

 おそらく王族の方々以外は、殿下の部屋に直接は通されないよ」と答えるアーサー。


「そう」と言って、アリーシアは、心の中で(でも、これだと、ルシェール殿下がセリウス様の部屋でお見舞いした前後になって、すれ違って会えない可能性もあるわね……。無駄足になりそう)と苛つく。 


 しばらく客間で待たされたアリーシア達であったが、いきなりノックもせずに偉そうに入ってくる人物がいた。


「やあ!

 セリウスの幼馴染どもが、今さらながらお見舞いに来ていると聞いてね」と作り笑いのルシェール殿下が突然、現れた。


「まあ!

 ルシェール殿下!!

 お久しぶりでございます」とアリーシアは、逆ハーメンバーの誰もが魅了されるような笑顔を振りまき、ルシェールに近づこうとした。

 しかし、ルシェールの護衛の騎士からそれを阻まれ、ある一定以上の距離には近づけなかった。

 それを不満に思うアリーシアであったが、ルシェールに会うための言い訳であるセリウスに会う前に、あっさりルシェールに会えたことに喜んでいた。

 アリーシア達へ向けるルシェールの冷たく、塵屑をみるような目つきに気づきもせずに……。


「わざわざお見舞いにきている君達に聞きたいことがあってね。

 まあ、とりあえず、皆も座り給え」とルシェールは、自分の座ったソファの向かい側に、それぞれアリーシア達を座らせた。


「なあ、君たちは、セリウスがなぜあんなに具合が悪くなったのか、わかっているのかい?

 一人一人に意見を聞きたいな。

 まず、アリーシア嬢はどう思う?」


「そうですね。

 学院やお仕事のことで大変お疲れな上に、色々と思い悩んでいらっしゃいましたから、それが重なって過労になられたんだと思います」


「……それなら、アリーシア嬢はセリウスが一番、思い悩んでいたことは何だと思う?」


「セリウス様は王家に生まれ、セリウス様自身、大変優秀でございますが、さらに優秀なお兄様の存在には敵わないとよく嘆いていらっしゃいました。

 もちろん、セリウス様もルシェール殿下に負けないように日々努力されておりましたが、どうしても劣等感をお持ちで、とても思い悩んでいらっしゃいました……」といかにもセリウスに同情しておりますという感じで答えるアリーシア。


 それを聞いたルシェールは座っていたソファの肘掛けの木の部分を握りしめていたが、それがミシリッとひびが入るくらい力を入れて、耐えていた。


「ほ、ほう~。

 あのセリウスがか?」と感情を抑えた低い声で答えるルシェールの心は、アリーシアへの憎しみに溢れていた。


(ふん!

 もう、この女狐をこの場で死刑にしたい!それか、今すぐ、剣で切り捨ててやりたい!

 セリウスが私に劣等感を抱くなんて、ありえん!!

 まったく、誰か別の者と間違えているのではないか?

 国一番に麗しく、頭脳明晰と讃えられるセリウスがなぜ、どうして、どこに劣等感を持つというのだ!?

 セリウスはな、生まれてすぐの頃から、宝石のような輝きを放つ美しさと愛らしさを兼ね備えていた、素晴らしい存在なのに!

 私がセリウスより上のものなんて、年齢とそれに伴う王位継承の順位くらいだぞ?

 ああ、あと、女性の趣味は間違いなく、私の方が良いかな。

 私のパメラと比べると、野猿といい、この女狐といい、セリウスが気に入ったという女は驚くほど、ひどいのばかりだしな、本当に悪趣味……)と思い、アリーシアを睨むルシェール。


「ええ。

 私は、セリウス様からルシェール殿下の素晴らしさに劣等感をお持ちとお聞きして、よく相談をされておりましたの」と言って、セリウスから聞いたルシェールとの心温まるエピソードをふまえて、ルシェールのことをうまく褒めようとするアリーシアに、アリーシアへの殺意が耐え難くなったルシェールは、途中でその言葉を遮った。


「では、君達はどう思う?セリウスが体を壊すほど一番、悩んでいたことは何だと思う?」とルシェールはエドワード達に聞く。


「……そうですね。

 セリウス殿下のお悩みはたくさんございますが、我々が考えるセリウス殿下が体調を崩すほどお悩みだったのは、一番はアリーシアに関することかも知れません。

 セリウス殿下は、気に入った者への執着が強く、独占欲も人一倍でしたので、恋するアリーシアがなかなか思い通りに独占できなかったことが、ストレスだったのではないかと思います」と言い辛そうに、でも馬鹿正直に答えるエドワードに、アリーシアは(ちっ、余計なことを!!)と苛ついた。


「そ、そんなことはないですわ!」とすぐに否定しようとするアリーシアであったが、ほかの皆もうなづき同意してしまった。


「……なるほどな」と言って、ため息をつくルシェール。


「まあ、君達に聞くまでもなく、セリウスをあんなにした本当の原因なんて、よくわかっているのだけどね。

 でも、君達が本当にどう思っているのか、その口から言ってもらいたくてな。

 どうやら、予想通り、同情の余地もないって結論だが……」と冷淡に言い放つルシェールに、アリーシア達は首を傾げた。


「あの、ルシェール殿下?

 それはどういう意味でしょう?」と素直に聞くアリーシアへ、にや~と嫌な笑みを浮かべるルシェールに、ちょっと引くアリーシアであった。


「ふっ、それはな……」と黒く微笑むルシェールが言いかけたその時。


「王妃殿下がご到着いたしました!」とアリーシア達のいる部屋に突然、連絡が入った。


「……早かったな。すぐお通ししろ!」と王妃の訪問を知っていた口ぶりのルシェールに、アリーシア達は動揺した。

 

 ルシェールばかりか、王妃殿下までここに現れるとは思わず、皆に緊張が走った。


 ルシェールやセリウスの母親である王妃レイスリーア・ランダードが、堂々とアリーシア達の待つ客間にやってきた。


「お待ちしておりました、母上!」


「あら……。

 争いもせずによく耐えていたようね、ルシェール」とルシェールを褒め、美しく微笑みかける王妃レイスリーアは、セリウスと同じ、輝くばかりの金の髪に晴れ渡る青空のような瞳をもち、今なお眉目秀麗な容姿を保っている人物である。


 そして、アリーシア達が、王妃へ礼をとる体制に入るのを「ああ、こちらへは非公式での訪問ですから、そうかしこまらなくても結構よ」と言って、アリーシア達をまた席に座らせ、ルシェールの隣に王妃自身も座る。


「では、大事なお話をしましょうか」と、アリーシア達を圧倒する雰囲気の王妃は、その真意を測らせない完璧なまでの美麗な微笑みを浮かべた。

ついに、ラスボス(王妃)登場!


うーむ。自分で書いていて、ぱっぱっと進まず、もどかしい~。

でも、もうちょっとアリーシア側の話が続いてしまうので、もう少しおつきあいくださいませ。

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