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番外編 IF 野猿な囚人 1.婚約破棄と断罪

 注意)これは野猿な悪役令嬢のIFになります。


 野猿令嬢と呼ばれる公爵令嬢リーリアは、ランダート王国の第2王子のセリウスと良好な婚約関係を続けていた。

 実は前世の記憶があるリーリアは、この国が前世で遊んだ乙女ゲームの世界に似ていると思っていた。

 そして、ゲームのヒロインであるアリーシアとリーリアは、その乙女ゲームのストーリーどおりに出会ってしまい、戦慄するリーリアであった。


 このままでは、悪役令嬢にされてしまうかも?


 そんなリーリアの恐れていたように、メナード公爵家の養女になったアリーシアが学院に入り、リーリアの前世の記憶どおりに、乙女ゲームのような流れが現実にも起こってしまった。

 それをくい止めようと、悪役令嬢にならないようにリーリア・メナードは、いろいろと立ち回った。

 しかし、リーリアの勝手な取り巻きであったクロエやイザベラたちは、むしろリーリアを貶めるかのように、リーリアのためといって、リーリアが止めたにも関わらずゲームの時のようにアリーシアへ嫌がらせをし始めた。

それに気づいたリーリアは、断罪の前に、セリウスへ事前に婚約解消を打診したり、アリーシアの誤解を解いたり、リーリアの思いつく限りの対策をしてみた。

 けれども、努力の甲斐なく、アリーシアは兄のアーサーをはじめとする取り巻きを着実につくり、とうとう、先日までリーリア溺愛であったセリウスまでも、気づけばアリーシアとすでに恋仲になっていた。


 そして、ゲーム通り、リーリアへの断罪が行われた。


「リーリア・メナード!お前との婚約を破棄する!!

 公爵令嬢にあるまじき行いをして、義理とはいえ、妹を、しかも国賓扱いといわれていたのにもかかわらず害をなしたな。

 これは王への反逆罪ともとらえられ、そんな女とこれ以上、婚約関係を続けられない。

 そして、次の婚約者はお前よりふさわしいアリーシア・メナードと新たに婚約する」と冷たく言い離れた言葉に、ついリーリアは言い返してしまった。


「……あの、セリウス様。

 つい先日、婚約解消していただきたいとこちらからお願いした時は、『婚約解消するなら、妊娠させて、すぐに結婚することになるぞ!』と脅された覚えがあるのですが、今日は婚約破棄ですか?」


「はあ?僕がお前にそんなことを言うわけないだろう!?

 夢でも見たのか?」と嘲笑うセリウスに、リーリアはどうなっているのかわからないが、そういうことなのか……とあきらめてみた。


「それより、アリーシアへの数々の非道な行いに対する謝罪もないのか?」とさらに周囲も凍る冷たさで言い放つセリウスに、リーリアはすぐに最大級の謝罪で対応した。


 前世でのメジャーな謝罪


 DO・GE・ZA 


 しかもスライディング土下座をしてみるリーリア。


「た、大変申し訳ございませぬ!

 言い訳でございますが、決して私が命令したわけでもございませんし、できる限り止めました。

 正直いうと、私の周りの友人らしき方々が、勝手にやりました。

 でも、止められなかったのも事実。

 どうか心優しいアリーシア様のお許しを請わせていただきます!

 そして、すぐにでも婚約破棄をお受けいたします。本当に申しわけございませんでしたー!!」と着ている服に泥がつくのもかまわない勢いでやってみた。

 そして、深々と突っ伏し、しばらく固まっていたが、アリーシアの取り巻きたちの動揺は伝わってきたが、アリーシアからは許すともいわれず、リーリアがこっそりみてみると、呆れた様子であった。

 そして、一番重要なセリウスといえば、何だか複雑な人相になっていた。


「これって……。リーリア、君は……」とつぶやきながら、氷のような瞳ととまどう瞳を交互にするという器用な瞳の変化をしながら、何かを思い出そうと眉間に皺をよせて、胸が痛いのか、何故か胸をおさえた状態でセリウスも固まっていた。


 どうしたのだろうとリーリアが首を傾けていると、アリーシアがセリウスに近づき、セリウスの耳に何かをつぶやいた。すると、セリウスはすぐに先ほどの冷酷な表情に戻り、リーリアに言い放つ。


「ふーん。随分、みっともなくあやまっているけど、結局、他人のせいにしているよね。これじゃあ、処分はもう決まったようなもんだね。

 リーリア・メナード。お前は国王反逆罪の疑いとアリシアへの傷害の首謀者として、アウスフォーデュ修道院行きに決定だ。

 せいぜい、そこで反省するんだな。

 もちろん、実行犯のクロエ・ハーシュ、イザベラ・ターナーも修道院行きだが、アウスフォーデュ修道院ほど厳しいところではないがね。

 まあ、命があるだけでも感謝して欲しいな」とせせら笑うセリウス。


(おやー?

 もしやセリウス様や、他のみんなも操られている?

 随分高度な意思を操る魔法なのかな?

 王族を操るほどって、どんだけチートなのよ、ヒロインは!

 もしくは催眠術かな?

 あと、アリーシア様の方から甘ったるい臭いもするから、薬も同時に使っているかもな…。

 セリウス様はもちろん、ランダード王国有数の魔力を持つクリス様まで操れるとは、恐るべし、ヒロイン!!)


 そして、リーリアはアリーシアの取り巻きの1人になっているアーサーを見ると、アーサーも何だか不安定そうな状態でリーリアを見ているが、助けてくれるような状態でもなかった。


(アーサー兄様まであの状態で、兄様の婚約者のスージー様は大丈夫かしら?

 私よりも要領が悪いから、私と同じ修道院行きにならないといいけど……。

 まあ、エドワード様の婚約者のエレノラ様や、クリス様の婚約者のヘレン様なら、自力で何とかなさりそうだけどね。

 ああ、でも他人の心配している場合ではないか……)


 そう思って、思いっきりため息をつくリーリア。


(やれやれ、ヒロインの思いがけないチートに負けたのか……。

 まあ、今はアリーシアの実家でもあるからメナード公爵家が没落することもないでしょう~)とあきらめて、修道院に行きを受け入れることにした。

 もっとも、その修道院は、重罪を犯したが死刑にするほどでもない女性ばかりが集まる監獄のような場所であった。


 リーリアは断罪された翌日には犯罪者護送用の馬車で、アウスフォーデュ修道院に連れていかれた。


 両手に重い鎖の手錠をはめられ、逃げないように足も縛られたリーリア。

 リーリアは深いため息をついて、これがゲームの中での話ではなく、現実の話であることをその重みと不自由さで実感する。


 王都から、一週間もかけて、リーリアはそのアウスフォーデュ修道院に着いた。


 これからのリーリアに大変なことが待ちうけているのは明らかであった。

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