人を殺させてみました。
依頼が貼ってある掲示板の前に行く。
きれいにランクごとに区切られていた。
Gランクの依頼は基本的に雑用ばっかりだ。
どれをとってもたいして報酬は変わらないので荷物運びの依頼を受けることにした。依頼の紙をミリスさんの所へ持っていく。
「ミリスさん、これお願いします。」
「はい。ではこの紙を持ってギルドの裏にある配達屋さんのところに行ってください。」
ミリスさんの言われた通りにギルドの裏に行くと配達屋と書かれた建物があった。
中を見ると30個くらい、木箱が山積みされていた。
「すみません。ギルドの依頼を受けたものですけど・・・。」
外から声をかけると中から男の人が出てきた。
彼はルミアを見ると急に不機嫌そうな顔になる。
女連れで来たらそうなるわな。
「はいはい。じゃあこの箱をこの地図を見ながら渡してきてくれ。終わったら奥にいるから呼んで。」
そういうと男は奥に入っていった。
「なんですか。あの態度は。カズヤ様に失礼です。」
隣でルミアが怒っている。
ルミアを宥めながらカバンの中に箱を入れていく。
すると急にルミアがおとなしくなった。
不思議に思いそちらを見ると目が点になっていた。
そう言えばカバンのことを言ってなかったな。
「ルミア、このカバンは物を無限にいれれるんだ。誰にも言うなよ。」
「すごいです。さすがカズヤ様です。まさかこんな珍しいアイテムをお持ちとは。」
目を輝かせながら俺を見つめている。
少し照れながらカバンに箱を詰める作業を再開する。
この時このアイテムをくれた女神にちょっぴり感謝したことは内緒だ。
その後、1時間で配達を終わらせた。
道がわからなかったため意外と時間がかかった。
全ての配達が終わり店主の男に伝えるとめちゃくちゃ驚かれた。
うちで働かないかとスカウトされるほどだ。
まぁ、丁重にお断りさせていただいたけど。
依頼達成のしるしを紙にしてもらいすぐにギルドに戻った。
ミリスのところは誰もいなかったのでそこに行く。
「あれ、カズヤさん。どうしたんですか。まだ1時間しか経ってませんけど。」
ミリスは俺たちがやって来るのに気付いて話しかけてくる。
「依頼が終わったんで報告に来ました。はい、これ。」
そう言いながらカウンターの上に依頼の紙を置く。
「もう終わったんですか。この仕事はみんなが避けるから結構荷物が溜まってた筈なのに…。しかも最高評価じゃないですか。いったいどうやったんですか。」
カウンターから身を乗り出して聞いてくる。
「いえ、普通に荷物を持って回っただけですよ。」
「怪しいですね。これは何か隠しているという予感がビンビンします。」
どうやら素の彼女はこっちのようだ。
あの丁寧な感じは作り物だったんだな。
「まぁ、冒険者の秘密をむやみに聞くのはやめときます。それより今回の依頼で30個分依頼が完了したということなのでランクの昇格ができますがどうしますか。」
一回の依頼、しかもあんな簡単な依頼を達成しただけで昇格か。
「もちろんお願いします。」
「わかりました。では、お二人のギルドカードをお預かりしますね。」
俺たちはギルドカードを渡す。
ミリスは裏に入っていき、5分くらいすると再び戻ってきた。
「はい。こちらがランクFもカードです。Fランクからは討伐の依頼もあるので安全には十分注意してください。まぁ、カズヤさんは初日にいっぱいモンスターの死体を持て来ているので大丈夫かと思いますが。」
「わかりました。じゃあ、今日はこれで 。」
そう言って今日は宿屋に帰った。
自分の部屋でルミアと向き合っている。
「ルミア、気付いていたか?」
「誰かにつけられていることですよね。」
「そうだ。たぶんベントの手下だろう。」
「ベントさんですか。あの人にも恨みはありますから復讐したいです。」
「そうか…。なら今日やるか?」
いきなり軽く言われ戸惑うルミア。
「え、えっと。もちろんやりたいですけど今日いきなりだと…。それにカズヤさんに怪我させるわけにもいきませんし。」
「そんなこと気にするな。やりたければやる。ただそれだけだ。」
「………」
ついに黙ってしまった。
恐らく彼女の中では恨みと理性が戦っているのだろう。
「よし、なら俺があいつを殺すとするか。お前はやらないみたいだし。」
「わ、私もやります。」
彼女の中での戦いに決着がついたようだ。
「じゃあ作戦を言うからよく聞けよ。……………」
俺はルミアに作戦を教えてやった。
その日の深夜、俺達はベントの家に来ていた。
ドアには鍵がかかっていたので「バレット」で壊した。
中に入ると奴隷たちの寝息が聞こえてきた。
事前につけていたやつらを倒し情報を得ていたため、まっすぐにベントのいる二回の部屋に向かう。
すると中から光が差す部屋が一つあった。
ベントの部屋だ。
ドアを少し開けて中をのぞくと、中から女性の喘ぎ声が聞こえて生きた。
「おい、もっときれいに鳴かんか。だからテメェは売れねぇんだよ。」
ベントの大声が聞こえる。
どうやら奴隷とお楽しみのようだ。
ルミアの顔が怒りに変わっている。
ルミアは処女だったため手を出されなかったのだろうが、こんなことが行われているという話は知らなかったようでかなり顔が真っ赤になっている。
これはさっさと終わらせた方がいいな。
俺は部屋の中に音を立てずにはいるとバックの体制になっているベントの後ろまで行き、「バレット(雷属性)」を放つ。
弾はベントに当たりベントの体が上下に振動する。
「な、なんだこれは。おい誰か。誰かいないのか。」
もちろん呼んでも来るわけない。
暗殺部隊にいた俺にとってこれくらいの奴らを始末することくらい余裕だ。
ベントを床に引きずりおろす。
「ひっ。あっ、お、お前は…。どうしてここに!」
ベントが俺の姿を見つけて叫ぶ。
「どうして?そんなこと決まっているだろ。お前を殺すためさ。」
ベントの首筋にナイフを突きつける。
「ひいっ。こ、こんなことをして許されると思っているのか。」
「さぁな。せっかくだから聞いてみるか。なぁルミア、こいつはどうすべきだと思う。」
ベントをルミアの方に振り向かせルミアに問う。
「こんなゴミみたいなやつ殺すのが一番です。それがこの世界のためになるのです。」
「だってさ。残念だったな。」
今日一の笑顔をベントに向ける。
俺は持っているナイフをルミアに渡す。
「ルミア、お前がやれ。」
「わかりました。でもその前に一つはっきりさせておきたいことがあります。ベントさんあなたは私が奴隷として売られることを知っていましたか。」
「ど、どういう意味だ。」
「あなたはトライアルシーフと関係があるのですかと聞いているのです。」
「言ったら殺さないでくれるか。」
命乞いするベント。
そんな彼をにらみつけながらルミアは問いただす。
その視線から逃げるようにベントは眼をそらし小さくつぶやいた。
「俺は…トライアルシーフの幹部だった…。」
その言葉を聞いた瞬間ルミアが動いた。
ベントの首筋目掛けて一切ためらいなく突き刺す。
「なんで…。殺さないといったのに…。」
ベントは血を吐きながら倒れた。
ルミアが俺を振り向き笑顔で言った。
「ありがとうございます。私の手で殺させてくれて。少しですが心が晴れました。」
彼女の笑顔はとてもきれいで、あの女神にも劣らないほどだった。
俺達はその店にいた奴隷たちを起こし逃げるように言って回った。
しかしほとんどの奴隷がその場を離れることを拒んだ。
奴隷たちは諦めようかと思い店を出ようとしたその時だった。
店の奥にとても頑丈に鍵がされた部屋があるのが見えた。
好奇心がドアを開けろと囁いてくる。
俺はそのドアに近づき鍵を破壊した。
そして中を見るとピンク色の髪をした、お姫様が着るような服を着た女の子がいた。顔は少し幼いが十分美少女と言えるレベルで胸には大きなお山が二つ付いていた。
マリア 女 18歳
レベル 2
HP 90 (体力)
MP 400 (魔力)
STR 40 (攻撃力)
VIT 50 (防御力)
INT 6000 (知力)
AGI 30 (素早さ)
スキル 天才
名前はマリアというのか。
「おい、ここの支配人は死んだぞ。お前はどうする?よかったら一緒に来るか。」
ここに閉じ込められていた理由が知りたくて一緒に来るかなんて言ってしまった。
「あ、あの、じゃ、じゃあ、お、お願いします。」
マリアは勢いよくお辞儀をした。
これが俺とマリアが出会った瞬間だった。
誤字・脱字ありましたら言ってもらえるとありがたいです。
名前間違えて書いてたので訂正しました。