どうしてこうなった
友人が書いた厨二小説の代理投稿です。
一人称、三人称と、ころころ視点が変わるので注意。
感想(批判もOK)絶賛受付中。
時を、止めれるわけではない。壊れた物を、直せるわけではない。命を、産み出せる訳ではない。異能を、殺せる訳ではない。電撃を、放てる訳ではない。方向を、操れる訳ではない。俺には、何もなかった。自分で言うのもなんだが、バカで、何も出来ない人間だった。
俺は、変わった。4月、入学式前日のあの日。運命は、簡単に、変わる。
4月6日、雨。藤澤正途は家に帰る途中だった。明日は高校入学式。彼は妙に落ち着いていた。ただ実感が湧かないだけであった。高校生何て大人だ、と思っていたらいつの間にか自分がその高校生になってしまった。
しかし雨とは面倒くさい。暗い感じがする。彼はそうおもった。
公園に差し掛かる。雨なので誰もいない、、、いや、誰かいる。変だ。倒れている、のか?しかも14歳くらいの少女だ。ベンチの上に、あお向けで倒れている。青い手術衣を着ていて、よく見ると、、、、血?赤くなっている。
青に赤い血は妙に目立つ。彼は駆け寄った。怪我人だ、大変だ。それぐらいの認識だった。普通の判断だろう。
だが彼女を間近で見た正途は固まってしまった。
彼女はどう見ても斬られていた。思わず振り返ったが誰もいない。
薄く、彼女が目を開けた。人の姿を見た彼女の目に恐れが浮かぶ。「大丈夫。俺は通りがかりの学生です。」彼は自分のハンカチを出し、意外に器用に止血する。叔母が看護師で昔教えてもらった事があったのだ。「動くなよ。今救急車を、、、、、」「救急車は、だめ、」
彼は驚いた。どういうことだ?
「何故、、、」「人を、巻き込みたくない。巻き込んでは、いけない」「でもこのままでは命に関わる」
彼女は彼を見詰める
「これは、私たちの、問題。あなたのような、一般人は、巻き込めない」
彼は少し黙って、そして言った。
「俺の背中に乗れ」彼女が驚いた顔で見る。「何があったのか分からないしどうなるのかも分からない。俺に出来ることは何にもないかもしれないが、ぼろぼろの女の子を見捨てられるほど、俺はクズじゃない」
何であんなことを言ったのか今でも分からない。ただひとつわかること。俺はこの時変わった。「俺はお前を、守る。今だけでも」
正途は結局彼女を自宅のマンションまでおぶっていった。玄関を開けて入る。両親は仕事でいない。取り敢えず彼女を拭いてやる事にした。彼女は雨でびしょびしょになっている上に血がついてどろどろだった。彼女をリビングに待たせておいてタオルを取りに行って帰ってくると、
彼女は既に何も着けていない状態で立っていた。
「え、、、、ええ?」絶句する彼。いままでオンナノコ、から縁遠かったのでこんなラッキースケベ、と言われる事件にあったことはなかったのだが
「あ、、、、、、うわあっ!」
なぜかこのタイミングで見た目によらずあるアレを高校生直前の男子学生に見られたのはショックだったにちがいない。顔が真っ赤になる。そして少女の裸を覗くような不届きな奴は排除しなければならない。よって、
彼女は左腕で胸を隠しつつ手元にあった枕を投げつけた。
ばしーん!!と、予想外の一撃を顔に喰らった不運な学生は(お決まりのように)ぶっ倒れて気絶した。
気がつくと、目の前に少女の顔があった。「ごめんなさい。」少し赤くなって謝る彼女を見て彼は思い出した。「大丈夫。こっちこそはだ、、」「その先は言わないで、恥ずかしいから。」彼は立ち上がり、彼女を見る。今はタオルを巻いている。「そういや名乗ってもなかったな。俺は藤澤正途、高校生、、、、に明日からなる。」「私は、、、、、「何故か詰まる彼女。「あ、いや、言いたくなかったら別にいいんだ。ただ家に連れ込んどいて名乗りもしないのはあれだな、と思って、、、」「レイマークツーセカンド」「え?」「それが私の名前」「どう見ても日本人だけど、、、」「話せば長くなるけど一言で言えば、」そこで彼女は一息区切る。
「私は人間じゃない。人間によく似た、自律人型生命体、エドウ=レイ。それのmark 2の2番目の個体。それが私。」
意味が、わからなかった。
言ってしまった。私が、人間じゃないと言う事実。どうして言おうと思ったのかどう考えても分からない。
それを聞いた彼は少し驚く表情を見せたが何故か笑いながら言った。
「でもお前は今ここで考えてしゃべってんだろ。アンドロイドだかなんだか分からないけど、人間、てのは自分のことを考えて喋れる生き物のことなんじゃないか?だったら、誰がなんと言おうと、お前は人間だよ。間違いなく!」私は、黙ってしまった。何も言い返せなかった。彼は続ける。「でもやっぱり聞いてもいいか?お前はどうしてあんなことになっていたんだ?」
私は話すことにした。「そのためには私が何者なのかもっと詳しく話さなければならない。」彼は頷く。
「あなたは、GK計画を知っている?」「ああ。大灯台の軍事部門が開発しているらしいな。アンドロイド兵の製造計画。戦争を完全に機械化して合理化するとか言っていたが、没になったってニュースで言っていたが、、、」「それは計画の一面。大灯台はもっと深くこの計画を進めていた。この世界は科学が支配しているのは当然だけれども、別の世界では別の法則が支配している。例えば、神話や魔術。私はその世界の力の一つを科学で再現するための人造生命体。GK計画とは《科学》でありながら《魔術》の力を安定的にもつ兵器を開発するための計画。当然これを知っているのは大灯台の深部だけ。」
「ならお前はその中の一員?」「そう。GK計画で産み出された人造生命体はエドウ=レイと名付けられた。私はそれの第二世代mark2の2番目の個体。だからセカンド。」「ということは、、、」「他のエドウ=レイたちは自分で勝手には動かない。誰かの命令を必要とする。だから何故私が自分で考えて動けるのかは分からない。でもそれに気付いた時、私は恐怖を感じた。誰かに命令されたまま動いて人を殺し、殺される。怖かった。だから逃げた。その途中で追っ手に襲われ、怪我をしてそこであなたに助けられた。だから、勝手が分からない。」
「てことは人に会ったのは、、、」「研究者以外は、逃げ出して初めて。だからあなたに会って、本当に驚いた。」「そうか、、、てことは、、、もしかしたら何も食べてない?」「私は人間とは少し違うからあまり食べ物は必要ない。」「でも腹は減るんだろ?待ってろ」そう言って彼は立ち上がり何か取り出した。そして蓋を剥がしヤカン?から液体(お湯のようだ)を入れた。「待ってて。3分で出来る。このくらいしか出来ないんだが、すまんな。」
そうやって出来上がった食べ物は面白いものだった。箸、の使い方は知っているのでそのまま食べようとして気が付いた。
「、、、、頂きます」はじめていったその言葉は、なんだかくすぐったかった。
その料理は麺類だったがなかなか美味しかった。細かいことはわからなかったが、体が休まった。「なぁ、」呼ばれた「さっきから考えてたんだけど、エドウ、、、なんとか、って長いしさ、レイカって呼んでいいか?昔知り合いにいたんだがお前みてるとなんだか思いだしちゃって。」私は頷いた。レイカ。初めて名前らしい名前を貰った。いい名前だ、と思った。
夕方両親が帰ってきた。彼女を見ると流石に驚いたようだが、彼女は諸事情で帰るところがない、と言ったところ意外にもすんなり彼女がうちに滞在することを認めてくれた。詳しいことを聞こうともせず「大変だねぇ、うちでよければしばらく泊まってなさい」で済ました母はやっぱりすごいと思う。
晩御飯まで時間があったので、部屋で彼女の話について考えていた。大灯台とよばれている場所は研究所であり科学が支配するこの世界の中心部で世界の政治すべてを牛耳っているとの噂もあった。空間移動や時間旅行など嘘としか思えない研究をしている、と言う都市伝説は昔からあったし、彼女の話を聞いたとき思わずそんなこともあり得ると思ってしまった。何より永らく物理学の基礎だった質量保存の法則をいとも簡単に越えてしまった。その装置は大灯台各地方支部に置かれていて彼も見たことがある。黒いただの箱のようだったがなにもないところから鉄パイプのようなものを作り出した時には戦慄した。大灯台。面白いことになってきた。彼は何故か愉しかった。
夕食は当然彼女を加えたもののいつもどうりのものだった。味噌汁(彼女は初めてだろう)を飲んで美味しいと言われ母は喜んでいたし、団欒のひとときだった。
夜。明日は彼の入学式だったがここで問題が生じた。彼女をどうするか、である。家族全員入学式に行くので彼女一人を置いていく事になる。彼女からあの事を聞いていたので心配だったし母も一緒に来る事を薦めたが恥ずかしいからと彼女は断った。結局彼女は一人で残ることになった。これは心配だった。
朝。彼は制服に着替え駅にいた。両親は少し後からやってくるので彼一人が先に学校に行く。中学の時とは反対側の電車に乗り途中で乗り換える。いつもより混んでいるのでめんどくさく思っていると
「久し振りだな、フジー!」懐かしい声がした。見ると小学校の頃の親友、植待凌である。中学校で引っ越したので会わなかったが、彼は自分より少し遠くの進学校の制服であった。
「もう互いに高校生か、凌。」「そうだな、元気か?」「ああ。」たわいのない話をしているうちに電車がきた。凌はこの先にきた快速急行に乗らないと行けないようなのでここでお別れである。彼は後の急行。最も二駅程の差のはずなのだが、、、
行間 ある人物の通話
「、、、、ああ。あの男意外にすぐ見つかったよ。、、、、そうか、行かせるのか。民間人だぞ。巻き込むのか。、、、、分かった。しかし時間がかかるな。調整に時間が要るのか。、、、、俺としては別の仕事があるからな、こちらにかかりきりには出来ない。ただ幸運にもあの学校にはちょうど別件で部下を送った。仕方ないが任せるとしよう。無理するなよ。灯台守の最側近さんよぅ。」そして呟く。「あいついつの間にあんな《将器》をてにいれた?面白い奴だ、、、まぁお手並み拝見といこうか。久し振りに楽しい事になったな。
入学式は無事終わった。彼が家に帰ると何かが襲ってきた訳でもなく普通にレイカが迎えてくれた。それから数日は彼は新しい学校生活で忙しい日々を過ごしていたが平穏な生活を送っていた。彼女は日常生活に慣れ、母と家事の手伝いをしたりテレビを見たりパソコン(彼のを勝手に使っている)でゲームをしたりしている。(比較的難しいが人気のRPGゲームにはまってしまったようだ。最近いつもしている。)
後で考えると既に動き始めてはいたのだろう。ただこの時は何事もなかった。こんな時間が普通に続くと思っていたのだ。
あの出会いから1週間。彼は彼女と二人で買い物に行った。そのとき彼はある非常事態に襲われていた。
その日の学校の事である。担任(40歳くらいの英語のオッサンである)が「係を決める」と言い出したのである。もう1週間たっているのでそれほどおかしい話ではないのであるがここで彼にとって非常事態が発生した。
「まずは委員長だな、やりたい人は、、、いないか。よし誰がいいかな、、、」そう言ってクラスを見渡す。そして突然言った。
「藤澤、、、お前やってくれないか?なんだかお前向いてそうだな」
はぁ?何でそうなった?これまで彼は委員長何てやったことはない。当然向いてるとは思わない。どうなっているんだ?
と言うことで彼はパニック状態であった。
そこに。魔の手が忍び寄る。反乱分子を消すために。
それでも頼まれていた食料品と殺虫剤を買った帰り道、ちょうど路地にさしかかった時突然上から轟音がした。いや、あれは咆哮か?一瞬どこからなった音かわからなかったが再び轟音をたてて目の前に落下して来たものをみて気付く。
街中で咆哮。妙な話だがこの世界では時折起こることである。幻獣。コンピューターのエラーがまれに暴走し質量保存の法則を無視して実体化したもの。倒すには警察では対処できず軍隊か―――狩師と呼ばれる専門職が必要である。科学全盛の現代において非科学的なファンタジーのような話だが人々はみな幻獣に会ったときの対応策を教わるのである。即ち、
逃げるのである。出来るだけ屋外の広いところに逃げて狩師を呼ぶ。幻獣は原始的に暴れるだけなので普通に逃げるだけで充分安全である。よって彼もそのようにしようとしたのだがここで妙な事が起こった。
幻獣が追ってくる。幻獣は普通攻撃されない限りピンポイントでターゲットを決めて動くことはない。それが彼ら目掛けてやってくる。
彼は表通りに出ていたが考えた。幻獣が追ってくるのは先に攻撃しない限りあり得ない。しかし。人工的に幻獣を作ってこれを操り利用するという計画があるということは言われていた。もしこれがそのようなタイプなら。放った者も大体分かる。
彼は立ち止まる。今持っているのは食料品の肉と卵、ホウレン草など野菜、冷凍食品のハンバーグと炭酸飲料、そして殺虫剤のスプレー缶。彼は拳を握る。そして言う。「レイカ、お前は先に逃げろ。俺はこいつをなんとかする。」
時を止めれる訳でも壊れたものを直せる訳でも命を産み出せる訳でも異能を殺せる訳でも電撃を放てる訳でも方向を操れる訳でもなく、力もスキルも何一つない。ただ一つ手にいれたのはレイカを救うこと。何一つ持っていなかった彼はそのたった一つの力を引き下げて、圧倒的な存在に立ち向かう。
幻獣は彼女を狙うよう設定されているようだった。彼にはなんの興味を示していない。彼は落ちていた鉄パイプを拾うとまっすぐ幻獣に向かって飛び込む。幻獣は高さ2メートル、長さ10メートル程だったが彼の突然の動きに対応出来なかったのかあっさり目を打たれた。悲痛の叫び声をあげる。更にもう一撃叩き込もうとするが、今度は口を開けた。そして鉄パイプを噛み砕いた。彼は間一髪で離すが幻獣の足に蹴られる。一瞬で5メートルは吹き飛ばされる。突っ込んで来る。かわす。かわすのがやっとである。既に武器を失い攻撃手段もない。早い。右に来る。左に飛ぶ。左に来る。右に飛ぶ。繰り返していくうちに動きが遅くなってくるのが自分でも分かる。幻獣はむしろ早くなってきた。くそ、このままでは不味い。ここで第二の方向から攻撃出来れば。
正途は逃げるよう言っていたが彼女にはそれはできなかった。幻獣の狙いは分かっている。自分だ。本当は彼をいや誰も巻き込みたくなかった。しかし状況はそれを許さない。だから。彼女もまた覚悟を決める。
彼女は建物の影に隠れた。彼は鉄パイプを食らわせたが圧倒的に反撃されている。それはそうだ。あれは並の幻獣ではない。吹き飛ばされた電柱が目の前に叩きつけられる。彼も幻獣に蹴られた。どちらも完全にこちらに気づいていない。彼女はここで彼にはない力を発動する。
科学式魔導砲。科学の力で魔術を構成することで莫大な威力をもつ光線が放たれる。
幻獣は背中に大きな穴が開いた。血を撒き散らし暴れる。信号機が根本から折れビルに激突する。粉塵が舞い散る。彼女は幻獣に向かって走る。科学式魔導砲は充填に時間がかかる。故に弱っている幻獣を倒すには接近戦を挑んだほうが良い。そう思った。
甘かった。あれだけぼろぼろになりながら幻獣は前足を振る。科学式結界を展開してなんとか踏みとどまったもののタイミングをずらされた彼女は動きが一瞬止まる。そこに幻獣が突っ込む。
彼は彼女がレーザーの様なものを発射して突っ込んで来たのを見た。やはり彼女は普通の人ではない。でも彼にとって彼女はただの守るべき存在。普通の少女、であった。
幻獣がさっきとは逆に彼女につっこむ。不味い。彼は叫ぶ。「やらせるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」彼は瓦礫のコンクリート片を幻獣の背中に投げる。意外にも完璧なコントロールで瓦礫は幻獣のさっき撃ち抜かれたところに当たる。幻獣は叫び声をあげる。
「レイカっ!」彼は呼び掛ける。
「本当はあなたを巻き込みたくなかったけど、もう今はそんな場合ではない。私も戦う。」彼女はそう言うと笑って言う。「あなたに会えて、良かった。私を守ろうなんてしてくれた人は初めてだから。ありがとう。でも私のためにあなたを見捨てられない。」そう言って彼女は再び科学式魔導砲を撃つべく腕を幻獣に向ける。が、
「っっっっ!」幻獣は尚も動き続け狙いが定まらない。放たれた光線は路面を焼き払い削った。
このままではレイカがやられる!そう思った彼は周りを見渡す。そして見つけた。
彼は落ちていた買い物袋から殺虫剤を拾う。そして走ってレイカのいる方向に向かう。
「殺虫剤?そんなものでは幻獣は死なないよ、虫じゃないんだし、、、」彼女はそう言ったが彼は笑みを浮かべながら何かを告げる。レイカは驚きの表情を見せたが「わかった。」と言って幻獣を見ると左に走る。それと同時に彼が右に走る。
幻獣はレイカの方を追おうとする。彼は再び瓦礫を拾って投げる。またも正確なコントロールで今度は幻獣の後頭部に当たる。幻獣が振り向く。そこに向かって殺虫剤が缶ごと投げ込まれた。
殺虫剤は幻獣の鼻先を越える方向に飛ぶ。幻獣はかわそうともしない。そこに。彼女は科学式魔導砲を放つ。今度は幻獣はかわすため頭を引っ込める。だが。彼が言う。「こいつはかわすのが早いからレーザーを普通に撃っても当たらない。でも。防御自体はそれほどでもない。ただの鉄パイプとか石ころでケガさしてるからな。」魔導砲の光線は殺虫剤をかする。「あの光線は熱を持ってる。だからかするだけでも熱せられた殺虫剤の中身は一気に膨張する。」そして。
パーーーン!と音を立てて爆発した殺虫剤は幻獣の目に入り込んだ。更に缶の破片も幻獣の顔を襲う。幻獣が目をつぶり咆哮する。
尚も動こうとするが先程とは違いぎこちない動きとなった。そこに。光線が藤澤正途のいるほうから放たれる。
当然放たれたのは魔導砲ではないし放ったのは彼ではない。そこにいたのは、
「一般人が幻獣と直接戦闘するとは危険すぎるがここまでやってくれるとはな。俺たちの仕事がなくなっちまう。」
本職の幻獣を狩る者。狩師。その一員である男、佐原明孝は右にレーザーキャノン、左に盾とそれに隠れた藤澤正途を持って立っていた。
「まぁ安心しろ。幻獣を狩るのは慣れている。」
五分後。幻獣を倒した佐原明孝は先程の二人を探したが何故かいなくなっていた。いろいろ聞きたいことがあったのだが、仕方ない、と思った。
四分前。藤澤正途とレイカの二人は合流した。だがそこに1人の少女が現れた。その少女は
「なに、、、、、レイカと同じ顔?」彼は呆然として言う。彼女も少女を見て言う。「姉さん、、、来てしまったのね、、、」
少女はレイカと同じ姿形だった。ただショートカットのレイカに対しこちらは長い髪をくくっている。少女はにやりとして言う。「意外にやるな、流石我妹。だがその不始末は姉である私がつけることになったっ!」「即ち、、、、、」「ああ、私はエドウ=レイmark2ファースト、この個体の、姉に当たる。」
姉の方、ファーストはソードを腕から展開した。レイカも同じものを展開して二人同時に動きだした。決戦が始まった。
ファーストが斬りかかる。それをレイカが受け止める。二人は離れまた斬りかかる。息はぴったりである。見た目だけは戦いというよりただ真似し合っているように見えるが明らかに遊びと異なることは二人から発する殺気。戦いは完全な互角。
エドウ=レイとは言ってみればクローン、人造人間である。故にこの二人のスペックは全く同じと言っても良い。つまり二人にとってこの戦いは自分と戦っている様なものである。
そして正途はその戦いをただ眺めていた。正確には加わるところがない。先程レイカを守りきると宣言したものの完全に息ぴったりの戦いを見せつけられてただただ圧倒されていた。そもそも彼は戦闘慣れしていないから当然でもある。
レイカは姉との戦いを望んでいなかったがどこかであり得ると思っていた。裏切った相手にその最も戦いづらい相手を与えることはよくある。
折角正途との間で何か繋がりができたような気がしたのに、なにもできない自分に嫌気がさしたが今は戦いに集中しなければ、倒される。
戦いたくない。正途も姉さんも守りたい。
レイカは心の底で叫ぶ。
「その程度か、妹!」「姉さん!あなただって、戦いたくないのでは、、、、」「うるさい、遅いぞ!」必死で回避する。そのまま自分も斬りかかる。
いつ終わるかわからぬ、戦い。悲しい、姉妹血戦。
妹の動きは読める。それは妹も同じだろう。二人に個性はある。しかしそれでも充分過ぎるほどにわかった。左。次は右。上からいくと受け止めながら流して左。癖すら読み取れた。
エドウ=レイmark2ファーストはこれが初陣である。初陣が妹の殺害指令であった。妹は逃走の過程でmark1を何体か倒している。予想外に強力なmark2は同じmark2でしか対抗できない、といわれた。
最初に突破される前提で人工幻獣をけしかけ、力を削いでから自分が行く。そのような作戦だった。
妹が脱走した理由はよく分かる。自分は何者なのか。思い悩んだのは同じだ。だから妹を倒したくなかった。わざと逃がしてやって、死んだことにしてやる。それが妹のためだと思った。故に戦う。妹を試すために。自分を納得させるために。
互いに高速で動く。切り結ぶ。「おおおおおおおおっっっっ!!!」「はあっっ!!!」二人とも遣っているのは科学式魔術宝剣。はじめからインプットされている能力。他の技は使わなかった。決着はつかない。そう思った。
一瞬離れた。そして二人同時に渾身の一撃を放つ。ガギーン!!と音を立ててぶつかった。「「っっうおおおおおおおおおおおおおつっっ!!!」」互いに声をあげた。
そこに。乾いた音が響いた。
何の音か気づくのに数秒かかった。
目の前で妹が傾いていく。右脇腹から赤いものが流れ出る。
「あ、あ、ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」声が出た。
「いつまでやってんだ、遊んでんじゃねえんだ。これで終わらしてやるよ。」後ろから男が近づく。
動けなかった。
正途は彼女らの戦いを見ていた。なにもできなかった。殺気のようなものは感じたが何か互いに苦しんでいると感じていた。
だから、気づくのが遅れた。建物の影に銃を構える男を見つけたときにはそれは起きていた。
「あ、あ、ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」絶叫が聞こえた。近づいていく男が「いつまでやってんだ、遊んでんじゃねえんだ。これで終わらしてやるよ。」と言うのが聞こえた。
守れなかった。守ると誓ったのに。頭の中のすべてが飛んだ。叫ぶ。「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」勝手に体が動いた。
身動きの取れないファーストの前で男は拳銃を抜き撃鉄を起こした。「死ね。」そして撃つ。
だーん、という乾いた音が響いた。
が弾は妹ではなく近くのコンクリートに当たった。なぜなら、
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおつっっ!!!」と叫びながら突っ込んできた男がいたからだ。その男は無言で睨み付ける。それを見て拳銃男は一端引くことにしたのか、下がり出した。そのとき、男は拳銃男を殴った。ばしーん、と音を立てて拳銃男は倒れた。
それを見ているうちに我に返った。妹を見ると撃たれた右脇腹から血が流れ出している。男が言う。「不味い、かなりの量だ、、、止血出来るものは、、、」
ファーストは何かのためにと持っていた包帯を差し出す。それを受け取った男は意外に手際よく包帯を巻き出した。
「私の、せいだ、、、私は、こうなることも予測できたはずなのにっ、」「悪いのはこの世界だ。命を弄んで、挙げ句の果てに従わなくなったら消す。そんな世界が悪い。お前じゃない。お前が悪いならなにもできなかった俺の方が悪い。」男はそう呟く。
「それでも、それでもっ、、、」言葉がでない。「ほんとは即病院なのだが、、、」男は言う。「止血が限界だ。これではまだ危険なんだが、、、」未だに意識を取り戻さない妹を見ているとふと一つ思い出した。
「これは本来自分の回復用で使えるかわからないけど、、、、」そう言って手を傷口に当てて力をこめる。科学式回復魔術。少しは効くだろうか?
ファーストはおもむろに立ち上がった。「私に出来ることはこれだけ。後は妹次第。」歩き出す。変な動きだ、と思う。そう、変。自分の意思に合わない。まだ妹が意識を回復するのを待つこともできるはずだ。
2メートル離れて振り替える。体が動く。どうして。体は妹とこの男を殺す方向に動いた。もしかしたら。妹を追う直前の調整。あのときに遠隔操作を組み込まれた。
止めきれない。
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正途は突然のファーストの攻撃をかわした。何が起こっているのか。先程の呆然とした姿が一変、レイカと戦っていた時よりも激しく接近して来る。
「レイカ、我慢してくれ!」そう言うと正途はレイカを抱えた。意外に軽かったのは良かったが動きが鈍くなる。「ぐわわっ!!」レーザーキャノンが一気に12本放たれる。交わしきれない。絶体絶命。
轟音とともに目の前が真っ白になった。しかし彼は気付く。
「生きてる、、、いや、当たらなかった、、、いや、当てられなかった?」
本気の12本もの攻撃をはずすとは思えない。しかし手を抜いているようにも見えないということは、、、
正途は拳を握る。しかし殴る訳ではない。彼女の意識を救う。
「待ってろ、レイカ。お前もお前の姉さんもどっちも救ってやる。」
正途はファーストを見据えた。ファーストは再びレーザーキャノン(のようなもの)を展開している。また来る。しかし正途は逆に突っ込む。ファーストが意表を突かれた顔をした。
既に日は暮れ暗闇のなかにファーストのレーザーが光る。狙う正途は目の前にいるはずなのに当たらない。「っっっ!!!」ファーストが声を出す。
「どう、して!!当たらない!」
「それは当てる気がないからじゃないのか?」正途はファーストと向き合う。「お前は戦いに来たんじゃなくて妹を助けに来たんだろ?ずっと見ていたから分かるよ。でもどうしてもそれをねじ曲げられそうになっている。だからそれを元に戻したい、違うか?」
「お前に何が分かる、っ!!!」ファーストがあえぐ。
「いい加減自分に素直になったらどうだ?お前ならできるはずだ。」
「もしお前だけではその何かを倒しきれないなら俺の、いや俺達の力を借りてくれ!お前は一人じゃない。」正途は未だに意識を取り戻さないレイカを背におぶっている。「俺は口下手であんまり言葉じゃ言えないからな、動きで助けてやるよ。」そう言って笑った。
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ファーストは泣いている。何をしていいのかわからなくなった。「助けてやるよ」何て言われたのが初めてだった。そもそもこれまでに自分のために動いたことはなかった。だからどうすればいいかわからない。「あ、、、、、、、」彼女の考えは止まった。
だが無情にも体が動く。ソードを出して正途を斬ろうとする。
ただ思った。助けて。
「あ、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」
ソードは正途を斬れなかった。ただファーストは暖かさを感じた。
正途は自分を抱き締めていた。
終章 どうしてこうなった
正途は気がついたら病院にいた。どうもあの後正途は気を失い誰かが救急車を呼んだらしい。彼自身はケガだらけになっていただけで(殺虫剤爆破攻撃は自分にもダメージを与えていたらしい。)包帯を巻かれただけだが問題はレイカで脇腹に銃創があるしそもそも保険証(というか戸籍)もないのでヤバそう(主に金銭的)と思っていたが、
「さっき見たらポストに書類が入っていてなかにレイカ名義の保険証と住民票が入っていた?そんなことあるの?」
救急車で運ばれたことを知って駆けつけてきた母がとんでもないことを言い出したので思わず言ってしまった正途だったが、
「ほら、藤澤 レイカ 14歳 女 って書いてあ、、、」「マジかよ!」
更に不思議なことに
医者はレイカを見て「何かで切ったみたいですね。単純に失血しただけです。輸血もしましたから大丈夫です。」
銃創がいつの間にかただの切り傷(失血多量)になっていた。無茶苦茶な誤診だがそっちの方が無難なのでスルーした。レイカは「どうしてこうなったの?」と言っていたが。
正途はそのままその日は家に帰された。翌日は流石に休んだが次の日は学校に行った。「(絶対突っ込まれるなこの格好)」と思っていたら案の定突っ込まれまくって(これまで話したこともない人からも突っ込まれた。そんなに気になる?)疲れはてながらも帰りに病院に寄ってまだ入院しているレイカを見舞った(「パソコン持ってきてゲームしたいから」と言っていたがレイカも明日には退院するので却下)。
帰りにあの戦った公園に行ってみると何故か何事もなく子供達が遊んでいてあのジャングルジムとかぶち壊したよないつの間に直したんだ?と不思議に感じながら家にたどり着く。エレベーターに乗り部屋のある6階に着く。まだ母はいないはずなので部屋の鍵を開けようとすると玄関が空いた。泥棒?と思って警戒して見ると
「お前何してんだ?泥棒?」「ち、違うっっ!!!わ、私も妹とここに住むことになったのよ!!!」
ファースト(と呼ぶしかない)がいた。
「え?うちにそんなスペースはな、、、いやごめんなさいありますあります余ってますだからそのソード首に当てるのやめてーーーーーーーーーーーっ!!!」
正途はキャラを崩壊させつつ叫ぶ。
「どうしてこうなった!!!!!!!!」
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男は目を覚ました。さっきまでは路地にいたはずなのに何故か地下室のようなところにいた。
「お目覚めかい、暇で間抜けな工作員殿。」声がした。見ると高校生位の別の男が立っていた。「誰だ?」「予想してみろ。」「日本政府のスパイか?」「少し違う。もっと上だよ。」「もしや大灯台のスパイ、、、」「ご名答。まあ俺たちに大灯台の奴らの部下何て意識はないがな。俺たちはジョーカーだよ。切り札かつババ。諸刃の剣。」「何故俺を捕まえた?」「無駄なことをしたからだよ。お前のせいでいろいろ損失が出そうだったからねえ。」高校生位の大灯台のスパイは続ける。「エドウ=レイの脱走何て事実CIAすらつかんでいないうちから早々と動き出しよってなあ。その努力は認めてやるがもっとこっそり動けないか?バレバレだ。挙げ句の果てにそのエドウ=レイを殺そうとした。まぁ邪魔だったから毒をやったが意外に丈夫な奴だなお前、フラフラになりながら狙撃なんかして。結局一般人にぶっとばされて、それでも工作員かよ。」「ならあいつらは、、、」大灯台のスパイは無言で工作員を立たせると「来いよ。」と言ってどこかに連れて行く。直ぐにどこかの扉を開ける。「ほらよ。」そこには、赤いものが転がっていた。あれは、、、あいつらの死体か?そこには赤い塊
が転がっていた。「まずこれの掃除からはじめてもらうか。簡単な仕事だよ。」大灯台のスパイは言う。「これからお前には死より重い罰ゲームをしてもらおう。まぁ頑張ってくださいね。」そう言って姿を消した。
大灯台のスパイは《ごみ捨て場》の外に出た。そして電話をかける。「おう、やっと一仕事終わった。、、、、そうか、ご苦労様。あいつのこととあのことについて2つも任せてすまんな。こっちも忙しくてな。、、、、ありがとうよ。じゃあな、六津。」