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四話『準備』

「俺の防具の中にはアストラ位のレベルでも装備できるやつがいくつかある、たださっきも言ったが最近の俺は依頼を受ける条件として作る装備の素材を依頼主と取りに行くようにしてる。ちょっとレベルの高いところにいくが俺がフォローするから安心してくれ」

「はい! …あっ、じゃあエルちゃんも呼んだ方がいいですか?」

「二人分の装備作るなら何日かかかることになるし今日は呼ばないでいい、アストラだっていきなり装備見せて驚かせたいだろ?」

「えっ!? えっと…」


 そうでもなかったらしいがここはブラムドに従ってもらうとして話を続ける。


「見たところアストラは魔法使いのように見えるがそれは合ってるか?」

「はい、職業はソーサラーで炎と氷の魔法を使うことが多いです」


 ソーサラーは魔法使いの中では最も平均的なステータスをもつ職業だ、近接系には防御力とHPで劣っているが魔法使いの名の通り魔法による遠距離攻撃がおこなえるため、攻撃をくらわないように立ち回りつつ後方から支援する事が多い。

 但しソーサラーは打たれ弱いが攻撃力は低くないので、ブラムドの知り合いには剣を片手に相手に突っ込み近距離から魔法をぶちこみつつ戦う変態もいる。

 戦う鍛冶屋さんと魔法使い(物理)ではどちらがより変人かはたびたび友人の間で話題になるが未だに結論はでていない。


「使用魔法は炎と氷か……なら素材はファンブル洞穴で集めるべきだな。他に何かこだわりはあるか? 見た目でも性能でも何でもいいぞ」

「出来れば武器は小さめにしていただけると嬉しいです! 後はコートのようないかにも魔法使いって格好で! あとあと……」


 控えめな印象を受けていたがやはり女の子としての服装のこだわりは強いようで次から次へと要望が湧いてくる。

 中には難しいものもあるが出来る限りは答えてあげるのが鍛冶屋の役目だ。


「わかった、デザイン用の飾り素材は特別に俺の手持ちから出す」

「ありがとうございます!」


 雑談を交えながらゆっくりと決定させていくと、終わる頃には午後6時をまわっていた。

 ブラムドは問題なかったがこれ以上のプレイはアストラのリアル生活の方に支障をきたしてしまうということで、素材集めは翌日からということになった。

 お礼を言ってログアウトしていくアストラを見送った後は、翌日の準備をしに地下に向かう。


 仕事場、兼、物置と化している地下室には様々なアイテムや装備が散らばっている。

 捜し物をするときでもなければ整理することなどないので、片付けをしながら一つ一つ手にとって確認していくが中々見つからない。


 ファンブル洞穴は洞窟の中がまったく正反対な環境で分かれており、片やマグマが煮えたぎる灼熱の空間であるにもかかわらず、近くでは極寒の雪山が広がっているという、幻想的な風景になっている。

 それによって出現するモンスターも大きく異なるので、素材を集めるには楽だが対策もそれなりに必要となってくるのだ。

 特に今回は適正レベルを下回るアストラを連れて行くので念入りに準備をしなければならない。


 黙々と捜していくつか目的のものを見つけた頃、上の方から何かの物音が聞こえてくる。


 ……コツコツコツ


「んっ?」


 1階に続いている階段から聞こえてくるそれは足音のようだ、AOのPLホームは所持者が許可したもの以外は勝手に入ることはできないので、音の主はブラムドの知り合いであるのは間違いない。

 それに、ゆっくりと地面を蹴るその特徴的な足音にブラムドは聞き覚えがあった。

 扉の前まで来たその人物はゆっくりと扉を開ける、向こう側にいた人物はやはり考えていた人物その人だったようだ。


「こんにちわ」

「よっ、久しぶりだな」



 ※※※※※※



「待たせたな」

「いえ、私も今来たところでしたから」


 翌日の正午、待ち合わせの場所には既にアストラが待っていた。

 装備は昨日と変わらないが、アイテムボックスの中にはファンブル洞穴の対策アイテムが入っていることだろう。


 一方ブラムドの装備は昨日とは大きく変わっている。防具は黒を基調としたコートをバトルスーツの上から羽織っていて温度差の激しい環境にも対応できるようにしている。

 また背中にはカルテッタではなく小型ハンマーの『ボルバド』が横向きに差されていて、その他にも長槍がボックスに、投擲ナイフが懐にしまわれていていつでも取り出せるようになっている。


「まずは洞穴の中の雪山の方に向かおう、火山の方はクエをこなしてゲットする素材もあるから後回しで」

「わかりました! 足を引っ張らないように気をつけますね」

「そんな固くなるなよ、ゲームなんだ楽しくやろう」

「はい!」


 前髪で隠れている目だが、こちらを見ているそれが輝いているのが見ないでもわかる。

 性格的に緊張しているかと思ったが、むしろリラックスできているようだ。


 転移ゲートの目の前で集合だったのでそのまま一気にファンブル洞穴に移動する、入り口は魔物の口のような形の巨大な岩で、中に入ると熱気と冷気を左右から同時に感じる。

 急いで雪山の方に向かったブラムドとアストラの前には、狙いのモンスターの集団が早速現れるのだった。



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