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君のライフルの彼方  作者: ゆう
第1章 『現代でのお話』
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第1話 『本との出会い』

第1話 『本との出会い』


木の葉も日に日に散ってゆく。


春から蓄えた恵みを赤い夕日と風にさらわれる様に舞う姿は、俺の心を癒していた。


そんな秋の季節に、俺はと言えばつまらない物理の選択授業にうつつを抜かしていた。


去年転勤してきた若い物理教師は、お気に入りの女の子しか目に入っていない様子だ。


ふと涼のスマホの画面が光る。


LINAというメッセージアプリが小画面に表示されている。


直樹【6時限目が終わったらグランドに集合な!】


涼『こいつの誘いに乗るとロクなことが無いからなー』


涼【悪りい、今日塾なんだ。】


涼は基本、部活以外のスポーツは控えている。


ただでさえ少ない自由な時間を、スポーツに当てるよりはパソコンやゲームをしたい、というのが本音である。


涼は都内に住む16歳。


進学校として有名な高校の、理数科の2年生だ。


クラスは10クラスもあり、友達を作るのに不自由はしないが、逆に言うと涼の様なタイプは不必要な関わりを少なくしたい方であった。


先ほどの直樹も、涼の中では友達と言っても知り合い程度である。


涼のゲーム好きは時にはゲームセンターにも及んでいた。


涼の得意な格闘技ゲームの金拳。


涼は様々な裏コンボ、カウンターを知っており、直樹の目に止まったのである。


若い教師『じゃあ今日はここまでなー』


生徒『ありがとうございましたー』


もう既に太陽は山に半分欠けている。


オレンジ色ともとれる夕焼けに教室内も染まっていた。


涼『さてと、今日はマック買って家でCB5の続きだな』


CB5とは涼のハマっているネットゲームである。


涼はクラスの連中には目もくれず、裏校門から駅に向かう。


今日は火曜日なのでLHRも無い。


涼『2650円か』


涼は週に一日だけコンビニでバイトしていた。


一日だけのバイトでも、進学校に通っているということで親の許しを得るのに苦労した。


先月のバイト代は14000円。


そのほとんどはネットゲームの課金に使うウェブマネーに消えていた。


涼『まだ少し余裕があるから今日は月見バーガーだな』


涼の家族は、大手金融機関に勤める父親と、弁護士の母親である。


2人とも帰宅は夜11時を過ぎることが多く、涼は一人で夕食を食べることが多かった。


今日は火曜日。


涼のハマっているネットゲームのCB5は火曜日の13時から一時間の間にアップデートというゲームの更新がある。


涼の様なゲーム好きには特に大切なイベントである。


マップや武器、アイテムが増えるアップデート後は初心者も多くログインするので゛狩り゛がしやすいのである。


涼『今日こそ黒猫の武装前線を突破しないと』


黒猫というのはCB5のクラン(チームの様な物)の一つで、先月のランキング一位のクランだ。


涼がクランマスターを勤めるキャッセルは黒猫に3連敗していた。


涼は学校のある新芝駅から自宅のある荒井坂駅へ向かう車内にいた。


この区間は特に学生も多く、痴漢被害の多発している区間である。


女の子『やめ…』


涼『ん? なにか今声が聞こえた様な。』


男性A『こら!やめないか!』


声のする方を見ると、先ほどの男性が柄の悪い男の手首をつかんでいた。


男性B『俺はなにもしてねぇよ!』


男性A『私は見ていたんだ。君がこの子に痴漢をしているのを』


女の子『……』


涼『なんだ、痴漢か。』


涼は週に3回はこの様な光景を目にしている。


女の子も女の子だ。


秋の寒風が吹いているのに、ミニスカートに露出の多いトップスで、いかにもだ。


涼『くだらん。』


涼はリアルの世界において女の子や美少女というものに興味はなかった。


二次元でも、戦闘物のゲームの中の負傷した女キャラにしか萌えないという変わり者だった。


そうこうしていると、自宅のある荒井坂駅に停車していた。


涼は慌ててホームへ飛び出す。


ここで乗り過ごすと面倒だ。


涼は改札を出てまっすぐマックへと向かった。


荒井坂駅を右にでて横断歩道を渡り、角のコンビニを左に曲がるとすぐそこにマックがある。


涼のマンションはそこから五分ほどだ。


店員『いらっしゃいませー』


あからさまに学生バイトと分かるようなやる気のない声が聞こえてくる。


涼『月見バーガーセットで、コーラで。』


店員『かしこまりました。690円になります。』


涼は小銭を払うと、右の方で待つ様に言われた。


しばらくして


店員『お待たせしました。月見バーガーセットになります。』


店員『ありがとうございましたー』


涼は月見バーガーを冷やさぬ様にマンションへと早足で向かう。


ここら辺はゲームセンターもカラオケも多く、平日だと言うのに賑やかだ。


公園の角を曲がった。


涼『え?』


涼は振り返った。


確かにいつもの公園を曲がってきた。


目の前にはマンションがあるはずだった。


しかし、そこにあったのは奇妙な倉庫だ。


涼『なんだこれ??』


涼は倉庫へ近づく。


まるでゲームに出てくるマップ見たいだ。


入り口に近づくと一冊の本が落ちていた。


【ようこそCB7へ】


タイトルにはそう書かれていた。


涼『CB7?』


涼のやっているCBシリーズは、2ヶ月前に公開されたCB5が最新である。


涼『どうなってるんだ』


涼はその本を拾い、倉庫を開けようとドアノブに手をかけた。


その時!


ぐわんぐわん…


涼『う゛…』


涼はひどい目眩に襲われた。


………



……





目が覚めると涼はマンションの自室にいた。


涼『なんだったんだ』


なにが起こったのか分からない涼はとりあえずパソコンの電源を入れようと手を伸ばした。


涼『‼︎‼︎』


キーボードの上にはあの本が置いてあったのだ。



第1話 『本との出会い』 完

第2話へ続く



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