1-3
1-3というよりは、1-3の前置き的な
言うならno-sideってやつかな?
偏差値が高く、進学校としてそこそこ有名であり、なおかつ、御金持ちのお坊っちゃんやお嬢様が多く在籍する、とある私立高校に、季節外れの編入生が来るらしい。
噂では、難解な編入試験を満点合格したとか、理事長の親類だとか。
その真偽はともかくとして、生徒達の注目を集める物が多く、最近は編入生の話題で持ち切りである。
そして、そんな注目の的な編入生が訪れたのは、高校二年生の秋という、とても中途半端な時期であった。
「初めまして、廻神刹那〈えがみせつな〉です。あと一年半という短い間ですが、宜しくお願いします」
誰一人として知り合いのいない空間で、クラス四十人分の視線を一身に浴びている状況だというのに、当人には一切の焦りも不安も、そして緊張すらも見受けられない。
穏やかな微笑に、落ち着いた声色。
高校二年生という、子供と大人の境界を行き来する年頃には、似つかわしくない態度。
まるで達観した大人のような雰囲気を感じる。
それは、挨拶を受けた生徒達にも感じられた様で、その整った容姿と相まって、色恋盛りの女子生徒達の視線には僅かに熱が篭り、生意気盛りな男子生徒達の視線には鋭いものが加わる。
その空気を敏感に感じ取った担任の教師が、この雰囲気は良くないと、何事かを口にする、その直前に___
「あぁそうだ、言い忘れてた。僕、女性が苦手だから、女子生徒はあまり話しかけないでね。てか、むしろ近寄らないで」
渦中の人物が、突然の爆弾投下。
しかも、先程とは違い、完全な、完璧な、満面の笑みで、である。
その威力は絶大で、教室中が静まり返り、皆が皆惚けた表情で固まっている。
___結果、皆が再始動しだして、困惑と動揺による混乱が起こり、それを収めて通常のHRが始まるまで、そう短くない時間が消費されることとなった。
悲しきことに、この爆弾の一番の被害者が、担任教師であったことは間違いないだろう。