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意識が、急激に浮上する感覚。
慣れたその感覚に、次が始まったのだということを理解する。
いつものように、重く感じる体。
いつものように、思い通りに動かない体。
いつものように、朧げな五感。
いつものように、小さなその体。
(今は、生後4ヶ月といったところか)
生まれてから4ヶ月という、まだまだ未熟な体。
その未熟さに不釣り合いな、冷静な思考。
(……いつものことだが、自我の芽生えが早過ぎるよなぁ)
苦笑気味に、だが、さも当然であるとでもいうように、異常ともいえる早さの自我の芽生えを受け入れる。
(さて、ここから見える限りでは、この世界は化学が発展した世界のようだが、)
まだ不確かな五感を駆使し、己の状況を整理する。
己のいる場所は、洋風作りの部屋に置かれたベビーベッドの上。
部屋の内装からみるに、子供部屋だろうか。
室内に数個置かれた電子機器や、己の感覚に何も感知されないことから、この世界は、化学で全てを立証できる世界のようだと推察する。
(しかし、まだまだ発展途上な世界のようだな。………はぁ)
己の状況を理解し終えると、どっと疲れが押し寄せたような感覚に襲われる。
まだまだ幼い身の上で、五感を目一杯活動させたのがこたえたのだろう。
(まぁいい、いつものように、僕は眠り、一部を種にし、成長させ、る、だけ………)
赤子しか居ないその部屋で、確かに起こったその変化。
例え誰かがその場に居たとしても、おそらく気が付かなかったであろうその変化。
ただ、今はもう、窓から暖かな光が注がれるその部屋で、一人の赤子が静かな寝息をこぼしているだけ。




