1/6
プロローグ
旅人と聞くと、皆様はどのようなものをイメージするでしょう。
自由気ままな珍道中を謳歌する旅人や、償いのために慰霊の旅を続ける旅人でしょうか?
それとも、宝を探し世界をまわるトレジャーハンターや、世に絶望し世捨て人となったもののなれの果て?
はたまたもっと違ったものが頭に浮かんだ方も居るでしょう。
ですが、残念ながら皆様がイメージする旅人と、"彼"という旅人が一致することは、きっと有り得ないでしょう。
何故なら、これから皆様の知り得る"彼"の旅は、"彼"の旅のほんのひと握り、浜辺で海の水をひと掬いした程度の、大海と比べるなんて烏滸がましいような量でしかないのですから。
それでも、例えほんのひと握りであったとしても、どうか、"彼"の旅を……
アリーシア・デストラーデ/ 『生涯の友への手向け』冒頭より一部抜粋