すごいな
「・・・ん?」
シェリーは窓から差し込む光に当てられ目が覚めた。
「ここは?」
そこは見知らぬ部屋の布団の中だった。
「おう。起きたか?メシだぞ」
「・・・・神山悟」
「ん?なんだ?」
シェリーの呟きに悟は笑顔で応えた。
ここでシェリーは思い出した。自分は今、悟の家でお世話になっているという事を。
「どうした?寝ぼけてるのか?」
ボーっとしているシェリーに悟は笑いながら訊いてきた。
「いや、問題ない」
シェリーは少し顔を赤くして答えた。
恥ずかしかったのだ。寝ぼけるほど熟睡してしまったことが。こんなにしっかり寝たのはいつ振りだろうか。フカフカな布団に包まれて安心して眠ったのはいつ振りだろうか。
殺し屋と言うのは殺す側でもあり、殺される側でもあるのだ。寝ていても誰かが近づいてくればすぐに目覚め攻撃に備えねばいけなかった。そんな自分が寝ぼけるなんてありえないことだった。
「そうか?じゃあ、早く下に来い。メシだぞ」
「ああ、すぐ行く」
悟が部屋から出て行き、それを追いかけるようにシェリーは立ち上がった。
「・・・すごいな」
シェリーは呟いた。
シェリーは凄腕の殺し屋だ。そんな自分をこんな気持ちにさせるなんて。という純粋な敬意だった。