俺が教えてやるんです
「いま、なんて言いました?」
日向の言葉が信じられず悟は訊き返した。
「殺すしかない・・・そう言ったんだ」
真剣な顔で日向は言った。
「なんでですか?」
「その子はプロの殺し屋なんだろう?そして誰かに雇われてお前を狙っているわけだ。だとするとその依頼主が依頼を取り消さない限りお前は狙われ続けるし、その子は狙い続ける。それこそ、どちらかが死ぬまで」
日向の目はマジだ。日向の表情に悟は怖くなった。寒気を覚えた。
「だからって・・・あの子は好きで殺してるわけじゃない!」
「その子はそんなこと言ってないんだろ?それはお前のカンだろう!」
「でも・・・分かります」
悟は日向に負けないような真剣な目つきで日向を睨んだ。
「・・・やめとけよ・・・一体何人の魔族を抱え込む気だお前は?殺し屋と関わったって良いことないぞ」
「困ってる子を助けることのどこが悪いことなんですか?」
「だから、その子は困ってるなんて言ってないんだろ?」
「言ってる言ってない関係なく、殺し屋なんてやらせておくわけにはいかないです!だから、俺が教えてやるんです!・・・・この世界には殺しより楽しいことがあるって」
悟は笑ってそう言った。
悟は彼女に笑ってほしいのだ。まだ一度も彼女の笑顔を見ていない。もしかしたら相川よりも無表情なのかもしれないと思うほどに。だから悟は決めていたのだ。絶対に彼女を救い出して笑顔にしてやると。
「もう・・・勝手にしろ」
そんな悟の様子を見て日向は呆れた様子で言った。
「はい。そうします」
そう言って、悟は教室を出て行った。
「あれで良かったの?」
「ああ」
悟が出て行った後、残された忍と日向が話し始めた。
「あいつは俺たちの希望だ・・・・」
そして、間を開けてから日向は再び口を開いた。
「あいつは強いよ」