第2話 変わってきた
三時限目まで、特に何も変わったことはなく、休み時間。
嗚呼、つまらん。
なにかこう、アッと驚くようなサプライズはないだろうか。
「あれどうする?」
「消しちゃう?」
「消しちゃおうか」
「そうだね」
「無くしちゃおう」
なんだか教室の隅っこで話し声が聞こえたが…まぁいい。気にしない。
あの辺りのメンツには正直関わりを持ちたくないし。
あの辺のメンツってのは、オカルト研究会の男子三人。
いかにも、って感じに暗くて、内向的だ。
だから俺は「つまらないもの」と判定し、近付いていない。
ベタすぎて、なんかキャラ作ってウケ狙ってるみたいで、見ててつまらない。
名前とかも…なんだったか忘れた。
あ、もしかしてクラスの奴の名前も覚えてない俺って最悪?
まぁ、俺にとってはその程度の存在なんであろうから、特に気にはしない。
って!こっち見るな!
そして謎の微笑みを浮かべないでくれ!
マジで怖いから!
「涼?」
「あ、悪い聞いてなかった」
「いや、なんか顔が青いんで心配で」
ああ、お前はいい奴だなぁ悠斗。
でも、ゲーム小説読みながら心配されても、なんか虚しいぞ。
「次が嫌いな先生の授業とか?」
「あ…別になんでもねぇから…」
そうだ。なんでもないんだ。
さっきちょこっとこっち見られたぐらいで、こんなに同様してどうする。
恋する中学生かっての。
つーか、自意識過剰みたいじゃねぇか。
ダサいな俺。
「…まずいな」
悠斗が呟く。
なんだろ、聞こえなかった。
「え、何?」
「や、なんでもない」
悠斗が急に小説をしまって、真剣な顔で携帯を弄り始めた。
なんでもないとか、嘘だな。
ホントはなんでもあるんだろうに。
まあ、追及はしない主義だけど。
「送った!」
「は?」
「ケータイから応募して、限定トレカをゲットするキャンペーンがあるのさぁ!!」
あぁ…、やっぱこいつが真剣になるのって、このことぐらいしかないよな。
なんだろう、泣けてきた。
「ヤンデレ少女萌えー!!!」
またわからん単語がでてきた。
でも聞いたらすげぇ語られるだろうから、あとでググろう。
なんて勉強熱心な俺。
っと、そんな真面目な俺の後ろにただならぬ気配が!
「涼ー…」
「ん?どした、晃」
「さっきの授業のノート写させてくれ〜。全然聞いてなかった〜」
「あぁ、いいよー」
寝ていたのか、伸びをしながら首をコキコキやっている。
そんな晃に、クラスの女子がざわざわと黄色い声を上げる。
こんなちょっとした仕草ですら騒がしくなるってことは、相当なんだろうなぁ…。
羨ましいことこの上ないよまったく。
「はぁ…」
いきなりため息とかやめろ、晃。
しかも俺の横で盛大に。
「…モッテモテだねーヒカル君」
「モテる男は大変だぜ?」
「うっわー、贅沢な悩み」
「っと…失礼」
バシィッ!!!
「い〜〜〜ってぇな!!!」
おもいっきり背中をひっぱたかれた。
紅葉できてるってこれ…。
あー…ジンジンする。
紅葉の季節には早すぎっすよ晃さん。
まだ夏も始まったばっかりっすよ。
ってか音が響きまくり…!
「なにすんだよ!!普通に痛いんだけど!!!」
「んー?虫がついてただけだよぉ?」
だからってあんな、鬼のように叩くか、普通!?
腕とかやばいぐらいふりかぶってたし!
今度からシャツの下に鉄板でも入れといたほうがいいんだろうかこれは。
「じゃあお詫びにこれは俺が責任を持って捨てておくよ」
責任ねぇ…
虫の死体破棄に責任感じる男ってのもどんなもんなんだ。
まあ、俺はもうこのぐちゃぐちゃの虫に触らなくていいわけだし、悪い話じゃないことは確かだ。
「あー、はいはい。全部お前に任せるよ」
「そりゃー有難い。じゃ、ノート借りるからな〜」
あぁ…俺のノートに虫の中身くっつかねぇかな…。
くっついてたら金があろうとなかろうと弁償させてやる。
「失敗か」
「失敗したね」
「向こうはもう気付いてるね」
「やりにくいよ」
「どうする」
「…直接やっちゃおう」
「…直接…か」
「もうそれしかないね」
「消しちゃえば変わらないよ」
「そうだね、消しちゃえ」
「うん、消しちゃえ」
って、またオカルトマニアどもがこっち見ながら喋ってる!!
流石に不安になってきたから、誰かのとこに行こう…。
「オカルト研究会?」
「うん。間違いなく狙われてる」
とりあえず悠斗にひっついとこうと思ったけど、晃と真剣な顔で話してるから、邪魔しようにも悪い気がしたし。
そういえば、あの二人が真剣に話す顔って見たことねーや。
なんの話してんのか気になるけど、俺がしゃしゃり出ていい雰囲気じゃないな。
ってか、いつまで虫の死体を持ってるんだアイツは。
「…わかった。目つけとく」
「あぁ、護衛は俺と須王に任せてくれよ」
「じゃあ、僕はできるだけ情報を集めるよ」
「うん、頼むよ」
なんだか…よくわからん話してんなぁ。
って、その虫渡しちゃうのかよ!?
なんの情報なんだ…?よくわからん。
まあ、知らないフリをしとこう。
見つかって怪しまれてもアレだし、そろそろ教室帰るか…。
「って…」
なんだ!?
俺の机の回りに人だかりが!
まさかイジメか!?
だとしたら俺は屈しないぞ!!
「ちょ…悪い、通して…」
………
イジメかどうかは分からないが、まず、なんでこんなもんが学校にある…。
「ん?なになに?面白そぉ」
理緒が人を押し退けて、俺の隣にやってきた。
「うっわー!これが藁人形と五寸釘!?生でみるの初めてー!」
「お、面白がるなよっ!」
「もしかして涼ってホラー系ダメな人?」
「関係ねーだろっ!?」
「なんだ図星か」
「違うって!」
いや、別にホラー映画とかは怖くはないんだけど、ってかむしろ常識が通じなくて面白いもんだと俺は思ってる。
でも、実際身近にこういうのがあると…怖いな…ちょっとだけど。
「しかも藁人形に日向って書いてあるー」
「え!?」
「アンタまた彼女取っ替えたの?ここまでされるってことは相当酷い捨てかたしたんだなー」
「いや違う、誤解だ。ってかそれをやりそうなのは俺じゃなくて晃だと思うぞ」
「チッ」
「チッ、とか何!?」
「なんか心当たりないわけ?」
「あー…」
あるんだが、ここじゃギャラリーが多すぎる。
別にこんな大人数いるところで暴露するような話でもないだろう。
「あとで話す」
ひとまず、藁人形と五寸釘はゴミ箱にポイッとして、なかったことにしてみる。
まだざわつく教室で、昼前最後の授業が始まった。
なんか…面白くなりそうな気がする。
一話目よりもだいぶながくなった気がします=ω=.
前回の作品は「背景描写が足りない」というご指摘を受けたので、今回、できるだけ背景を表現できるようにがんばってみました。
でもなんだか玉砕したような…