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MEMORYS

7月7日

「うわ~、キレイ」

 私は頭上にある満天の星空を見上げ、目を細めてそう口にした。

 “溢れんばかりの”とか“降って来そうなほどの”なんて表現がぴったりな(そら)は、多少は涼しさを含んだ夜風と相俟って昼の茹だる様な暑さを一時的に忘れさせてくれる。

 隣では、友達が短冊に願い事を書いたり願い事の内容を探り合ったり……少し離れた場所では男子が騒いでいたりと、皆が各々今日という日を楽しんでいる。

 そんな様子を見ていると、これが企画されて良かったと思う。

 正直、最初は高校生にもなって七夕祭をしようなんて子どもっぽいかな? とか思っていた。地元とかで盛大にやるお祭じゃなくて、簡単な、一本の笹にお菓子や飲み物……そんなものだから。

「ねえねえ、あんたは願い事どうしたのー?」

 友達に手元を覗かれる。

「え?」

 ああ、そういえばさっきからずっと短冊を持ったままだった。

「願い事、何にしたの? ほら、おねーさんに教えなさ~い」

 いや、同じ年だし。というか、テンション変なんですけど。

「別に、普通だよ。大学合格」

「ちょっと、色気なさ過ぎ!」

「だってこれしか思いつかなかったんだもん」

「……まあ、らしいといえばらしいか」

 短冊を吊るしていると、後ろから溜め息。どんな答えを期待していたのやら。

「あ、そういえば」

 そう呟いて、友達が一人の男子を呼ぶ。

 その名前を聴いて、顔が熱くなっていくのを感じる。

「……何?」

 直ぐ後ろから彼の声がして、私は笹の方を向いたまま振り向けなかった。そのままでいるのも不自然だから、必死で紐を結ぶフリをする。

「まだ書いてないの、あんただけだよ」

「このコみたいに“大学合格”でもいいから書けば?」

「ちょッ!」

 何、他人(ひと)の願い事言っちゃってるの!?

 そう思って思い切り振り向き……彼と目が合う。

「……オレの願いは、一つだから」

 少し切なそうな瞳でじっと見られる。

 その視線が痛いほど突き刺さって、でも目を背けられない。きっと暗くても赤くなっているのが判るだろう。






 笹の葉が、さらさらと鳴る。






 最後に皆で花火をやっている時、私は彼の近くへ行き小さく呟いた。






「私も、あなたの事……―――」






この日より少し前に彼は彼女に告白しています。そして返事待ち状態。

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