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女神の姉と天使の妹  作者: 南条仁
女神の姉と天使の妹
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第5章:天使とお風呂で♪

【SIDE:宝仙夢月】


「ふふーん♪」

 

 私、夢月は鼻歌交じりに身体を洗う。

 お風呂場でのんびりと30分ぐらいお風呂に入るのが私のスタイル。

 夕食を終えて、私は冷たいシャワーを浴びている。

 初夏の蒸し暑さから解放される気分。

 

「ふぅ、涼しいなぁ」

 

 私は鏡で自分の身体をジッと眺めていた。

 女の子としては標準的な体型、でも、これじゃ私は納得できない。

 

「もう少しぐらい成長してよね」

 

 自分の胸を揉みながら、溜息がちに囁く。

 私に足りないのは……男の子を誘惑する魅惑の膨らみだと思うんだ。

 私の双子の姉、星歌の身体のラインを思い出して私は毎回へこむ。

 どうして双子として生まれたのに、神様は不公平なの?

 私よりも身長も高いし、胸も大きくて、身体の面では全然相手にならない。

 

「はぁ……これじゃお兄ちゃんを誘惑できないよぅ」

 

 ダメだ、このままじゃ……私は勝負にすらならない。

 私には幼い頃から大好きな人がいる。

 初めて蒼空お兄ちゃんと出会ったのは私はまだ幼い小学1年生だった。

 真っ直ぐな瞳、彼に私を見つめられた瞬間に恋に落ちた。

 子供の頃から優しく私を妹として接してくれた。

 カッコよくて、クールな印象を受ける私の義理のお兄ちゃん。

 彼に私を好きになってもらいたい。

 ……それだけが私の願い、私の気持ち。

 そんな私には恋の強敵がいる。

 

「絶対にお姉ちゃんにだけは負けたくないもんっ」

 

 私は身体についた泡を洗い流しながら、そう呟いた。

 私のライバルは身近にいる、私の双子の実姉……星歌お姉ちゃん。

 お姉ちゃんから直接、お兄ちゃんが好きとは聞いてないけど、双子だから分かるんだ。

 星歌も蒼空お兄ちゃんが好きなんだって。

 あまり積極的ではないけれど、彼女は彼に対して想いを抱いてるみたい。

 初恋は私の方が早かったのに……なんて言っていられない。

 恋は勝負、卑怯でも、正攻法でも勝てなければ意味はない。

 だから、私は先制攻撃としてお兄ちゃんに告白した。

 大好きだって……言ったはずなんだけど。

 

「……好きだって言っても、何も変わらないのかなぁ」

 

 私の告白に驚いたお兄ちゃん。

 妹としてではなく、女の子としての一面を初めて見せたから。

 でも……私は寸前で怖くなり、恋人にしてとは言えなかった。

 ……まぁ、結局、彼には妹としてしかまだ見ていないと言われたんだ。

 告白は失敗、フラれたわけではないけれど、ダメだったことには変わりなくて。

 あれから私達の関係は目に見えて変わってない。

 うぅ、それはそれで悲しいよぅ。

 ……私の失敗は妹でいすぎたことかもしれない。

 ずっと仲良くて、甘えてばかりいた。

 理想的な兄妹としての関係は築いてきたつもり。

 でも、妹でい過ぎて恋人とは違うと言われるのは辛いの。

 

「……妹かぁ。それでも今はいいけどね」

 

 妹は妹なりにお兄ちゃんを攻める方法を考えてみる。

 さぁて、次はどういう手を使おうかなぁ。

 ふふふっ、この夏は私にとって激動の夏になりそう。

 

「私を本気にさせたお兄ちゃんが悪いんだからね」

 

 私はそう言って、お風呂の湯船に入ろうとしたその時、突然、ガラッと風呂場のドアが開いたんだ。

 

「……え?」

 

 湯気がこもる室内に入ってきたのはお兄ちゃんだった。

 

「ふぇ、お兄ちゃん?」

 

「え?あ、えっ!?わ、悪いっ!」

 

 私が入ってるとは思ってなかったみたいで、彼は私の身体から視線を逸らした。

 

「すまん、すぐに出るから」

 

「待ってよ、いいじゃない。兄妹なんだから、ほら、一緒に入ろう」

 

「そういうわけにも……って、僕を引っ張るな」

 

 私が彼の腕を掴んで止める、彼は恥ずかしそうに顔を赤らめる。

 

「ちょっと待て、夢月。落ち着け。とりあえず、タオルをつけろ」

 

 彼に身体を見られてもいいんだけど、大人の事情により、私はタオルを身体に巻いた。

 よせて、あげて……頑張って谷間を作って、お兄ちゃんを悩殺♪

 ……うぅ、見た目でそんなに変わらないのが悲しい。

 

「お兄ちゃんも大事な所を隠したら……?」

 

「妹よ、真顔でこっちを見ないでくれ」

 

 

 

 

 ……。

 と、いうわけでお兄ちゃんと一緒にお風呂に入ることになりました。

 わーい、子供の頃以来だからすごく楽しい。

 

「間違ってる、兄としてこれは間違っている」

 

 ぶつぶつと言いながら、お兄ちゃんはお風呂に浸かっている。

 

「お風呂の時間を間違えたのはお兄ちゃんでしょ?」

 

 私達は普段からこういうミスがないように時間で決めているんだ。

 でも、今日はお疲れ気味らしくて彼が時間を間違えて入ってきたってわけ。

 私にとってはチャンス到来だけどね。

 

「……普通は『きゃーっ』とか叫ぶだろ。何で、普通に僕を受け入れる?」

 

「愛してるからに決まってるじゃない。それに、叫んだらお姉ちゃんに怒られるのは私だもん。細かい事は気にしないで。今さら恥ずかしがる間柄でもないでしょ。お兄ちゃんと私はお互いに見せ合いっこした仲でもあるし」

 

「僕の人としての尊厳を守るために言わせてくれ。あれは幼い頃の過ちだ」

 

 小学生の頃はよく私はお兄ちゃんと一緒にお風呂に入っていた。

 まぁ、いろんなこともしたけどね、ふふっ。

 お年頃になってから、お兄ちゃんがお風呂から私を追い出すようになって自然に一緒にお風呂には入らなくなったんだ。

 娘がお風呂に入ってくれなくなったパパのような気持ちだったのを思い出す。

 

「夢月も成長したから、こういうのはマズイだろ」

 

「えへへっ。いくつになってもたまにはお風呂ぐらいいいよ」

 

「……中身は変わってないようだ」

 

「それは禁句!もうっ、お兄ちゃんも意地悪な所は変わってない」

 

 私の家のお風呂はそれなりに大きくて、二人で入っても大丈夫。

 肩までお湯に浸かると、お兄ちゃんは懐かしそうに語るんだ。

 

「……一緒に入るのは5年ぶりくらいか」

 

「そうだね。私が小学6年生くらいだから」

 

 寂しかったんだよね、この広いお風呂にひとりっきりで入るのは……。

 だから、しばらくはお姉ちゃんと一緒に入っていた。

 

「ねぇ……お兄ちゃんって巨乳好き?」

 

「ぶっ!?い、いきなりなんだ?」

 

「この前、ベッドの下で見つけた本とかそんな系ばっかりだったから」

 

「忘れてくれ、夢月。何も見なかった事にしてください」

 

 必死に私に頭を下げるお兄ちゃん。

 

「別に男の子なんだからいいよ。むしろ、年頃の男の子にそういう趣味の本とかない方が心配だもんっ。……たまにマニアックな人もいるみたいじゃない」

 

「そういう物分りのいい妹は嫌だよ。うぅ、僕はそういう趣味では……」

 

「つまり、貧乳でもいい?私みたいなのでも許容範囲?」

 

「僕はびにゅ……すまん、妹とそう言う話をする兄は人間として最低な気がした」

 

 私でもまだ勝負はできるという事らしい。

 そういうのは素直に嬉しい。

 私は彼の身体を眺めながら感想を述べる。

 程よく引き締まって筋肉のついている身体。

 

「お兄ちゃんも昔に比べて大きくなったよね」

 

「夢月、どこを見て今、言った?お、おい?」

 

「ホント、大きい……触ってもいい?」

 

 私が手を伸ばすと彼はなぜか動揺を示す。

 昔は小さかったのに……いつのまにか男の子って成長してるんだ。

 

「ま、待て、早まるな。それはいけない、これはダメだぁ!」

 

「……背中を触るだけなのに?ダメ?」

 

「わざと言っただろ、お前……」

 

「別に♪勘違いしたお兄ちゃんが悪いんだよっ」

 

 彼をからかうのが楽しくてしょうがない。

 私は湯船から出て、久しぶりに彼の背中を流してあげる事にする。

 

「でも、本当に大きくなったよ。昔は私と変わらないくらいだったのに」

 

 彼の背中に触れていると何だか安心できるんだ。

 背中を洗うと彼はくすぐったそうに言う。

 

「……大人になったからな。僕も成長したってことだよ」

 

「うん……あっ、前は自分で洗ってね。……ふふっ」

 

 彼はバッとタオルで隠す、男の子はいろいろと大変だ。

 

「あ、はい。すみません。その配慮に感謝します……。はぁ……夢月は天然なのか計算高いのかよく分からなくなってきた。この可愛い小悪魔めっ」

 

 可愛いって褒められたのかな、あはは……。

 

「……お兄ちゃん、大好きっ。愛してるからね。ぎゅーっ」

 

 甘えるような声でそう言うと、私は彼にタオル姿のまま抱きついた。

 

「ちょ、ちょっと待て。何か突起が当たってる!?そ、それ以上は……勘弁してくれ」

 

「妹の未成熟な身体に興奮するなんて……お兄ちゃんのエッチ♪」

 

 私も結構ドキドキしてるのは多分、気づいてないだろうね。

 私も感じている……子供の頃とは明らかに違うの。

 身体の成長以上に、心も成長しているんだ。

 それまで何度も一緒にお風呂に入ってきたのに、胸の鼓動の高まりが止まらない。

 私と彼の関係は妹以上恋人未満。

 私はその理想的な関係が長続きする事を望みつつも、更なる関係の発展を望んでいた。

 

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