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女神の姉と天使の妹  作者: 南条仁
女神の姉と天使の妹
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第2章:天使と添い寝

【SIDE:宝仙蒼空】


 期末テストが終われば楽しみいっぱいの夏休みだ。

 その日は金曜日、僕は月曜にあるテストのために、深夜まで勉強をしていた。

 苦手科目の克服、と言ってもすぐにテストに反映されるものでもない。

 赤点を取らないようにしておけばそれでいい。

 後は得意科目で平均点をあげるための努力をするだけだ。

 

「ふわぁ……」

 

 僕は欠伸をしながら、時計を見ると時刻は深夜の12時を過ぎた所だった。

 

「そろそろ、切り上げるか」

 

 僕は勉強を終えて、飲み物で飲もうとリビングに下りる。

 すると、リビングではテレビを見ている夢月がいた。

 自分の部屋にテレビがあるのにリビングで見るとは珍しい。

 まぁ、リビングのテレビの方が大きいから、映画とかを見るなら迫力のあるそちらの方がいいかもしれない。

 

「……夢月?」

 

 僕が声をかけると反応なし。

 彼女は熱心に借りてきた映画のDVDを見ていた。

 しかも、いわゆるホラー系の奴だ。

 画面ではゾンビが群れをなして主人公に襲い掛かっていた。

 夏だからホラーでも見たいと思ったんだろう。

 

「やれやれ、テストも間近なのに余裕だな……」

 

 僕はそう思いながら冷蔵庫からジュースを取り出す。

 

「あ、お兄ちゃん。私の分もお願い」

 

「……気づいてたなら返事くらいしておいてくれ」

 

「えへへ。ごめんね、今、いいところだったから」

 

 DVDはテレビと違って止められるんだぞ、と言ってみたいがやめておこう。

 僕は妹の分もコップにジュースを入れて、彼女の前に差し出した。

 

「ありがとう」

 

「夢月ってこういうの好きだったか?ホラーって苦手じゃなかったけ?」

 

「苦手と言えば苦手だけど。気になる映画は見ておきたくて」

 

 彼女はそう言って再び画面に集中しだす。

 僕はそれを邪魔しないように、

 

「映画もいいけど、ある程度したら寝るんだぞ」

 

「はーい。夜更かしをしないように気をするから大丈夫!」

 

 既に時計は夜更かしと呼ばれる時間に差し掛かっているのだけど。

 兄として注意するのも、妹の楽しみを奪うようで気が引ける。

 僕は妹に甘いかもしれない。

 そう思いながら、再び部屋へと戻った。

 部屋でしばらくは漫画でも読もうとベッドに横になる。

 静かな時間、のんびりと睡眠までの僅かな時間を過ごしていた。

 眠たくなってきたので、寝ようと電気を消そうとした時。

 

「……蒼空お兄ちゃん」

 

 部屋を小さくノックする音に気づいて、僕はドアを開ける。

 するとそこには夢月が恥ずかしそうに立っている。

 

「どうした、夢月?さてはホラー映画のせいでひとりでトイレにいけなくなったか?」

 

「そんなんじゃないもん……トイレはひとりで行って来たし。あのね……お兄ちゃん」

 

 可愛く潤ませた瞳で僕を見つめてくる、うっ……何のつもりだ?

 

「怖くてひとりで寝れないの。私と一緒に寝てくれない?」

 

 こんな時間に来るとしたらそういう話だろうな。

 僕は軽く呆れながら、妹に対して説教交じりに語る。

 

「それが嫌なら最初から夜にホラーなんて見るな。ホラーとか見ると怖いって感じるかも知れないが、それは脳の錯覚に過ぎない。つまり、僕が言いたいのは……」

 

「……難しい事は分かんない。私だってこの歳でお兄ちゃんと一緒に寝るなんて恥ずかしいよ。でも、しょうがないじゃない。ひとりじゃ寝れないんだもん」

 

「星歌はどうした?彼女の抱き枕になるのを我慢して、姉妹で一緒に寝ればいい」

 

「まだ勉強中で、邪魔するなって追い出されました」

 

 あ、そういうことね。

 それはしょうがないや、と言いつつも僕もすっかりと成長した妹と寝るのはそれなりに覚悟のいる事でもある。

 夢月の不安げな顔、ここで僕まで追い出すものならどうなる事やら。

 

「うぅ……蒼空お兄ちゃん」

 

「はぁ……分かったよ。そんな顔するな、僕は追い出したりしない」

 

「ホント!?」

 

 暗闇の中で僅かな希望の光を見つけたような表情をする夢月。

 僕は彼女を部屋に入れて、ベッドを片付けて寝れるようにする。

 

「……いつも思うけど、お兄ちゃんの部屋って片付いてるよね。男の子の部屋ってもっとごちゃ混ぜになるもんじゃないの?……私の部屋みたいに」

 

「日々の片付けをしておけば問題ない。それくらいは女の子として頑張った方がいい」

 

「うーん。私なりに頑張ってるんだけどなぁ」

 

 夢月の言う頑張るは、欲しいものが見つからずにすぐに片付けた部屋中を散らかしてしまう事を言うのか?

 

「……ほら、ベッドを使え」

 

「え、お兄ちゃんは?どこで寝るの?」

 

「新しく布団を持ってくる。それでいいだろ?」

 

 僕は床に敷布団を持ってきて敷くことにする。

 さすがに同じ布団で夜を過ごして、僕が妹に欲情しない可能性がゼロではない。

 当たり前だが僕は男だ。

 そんでもって、これだけ可愛い女の子と同居生活しているだけでも日々、大変なのだ。

 人並みに性欲もあれば、理性を抑えられない事も体験している。

 しょうがないんだろ、可愛い女の子が義妹なんだから。

 

「だ、ダメだよ。そんなのはダメ!」

 

「僕らが一緒に寝るほうがホラーより危ない気がする」

 

「あのね、お兄ちゃん。私、蒼空お兄ちゃんを信じてるから!」

 

「……その妹の信頼にどこまで応えられるか分からないから、こういう提案をしてるんだ。あのなぁ、夢月だって来月で17歳だろ?それくらい気にしてくれ」

 

 僕の言葉に彼女は俯いてしまう。

 いつまでも子供のままじゃいられない。

 人は成長して、大人になっていくんだよ。

 僕は兄として妹を諭した。

 僕って何かいい感じに兄をしてるなぁ。

 

「……わかった」

 

「わかってくれたか。寝るまではすぐ傍にいてやるから」

 

 僕がそう言うと彼女は首を横に振る。

 

「それじゃ不満か?」

 

「うん……不満だよ」

 

 彼女はしっかりと僕から目をそらさずに見て言う。

 

「……私、蒼空お兄ちゃんにならいいよ」

 

 意味深発言、キター!?

 僕は驚いて開いた口がふさがらない、パクパク。

 

「というか、むしろ既成事実ありの方がいいよね、お兄ちゃん……」

 

 むふふっと怪しい笑顔で怖いことを言い出した。

 リアルでホラーより怖いのでやめてください。

 

「わ、分かった。一緒に寝るからもうやめてくれ。お兄ちゃんが悪かった」

 

「えへへっ。やったぁ。ほらほら、一緒に寝ましょう」

 

 楽しそうに僕をベッドに誘い込む妹。

 無垢とはこれほどまで攻撃力があるなんて……兄の良心に痛恨のダメージだ。

 僕はいけない世界に踏み出したかもしれない。

 彼女にピタッとくっつかれると僕は身体が緊張で硬直する。

 そうだ、無の世界だ……何も考えちゃダメだ。

 悟りを開くように、全ての欲望を無に……。

 

「……んぁっ……お兄ちゃん」

 

 ……そんな砂糖たっぷりの甘い声を出すな、妹よ。

 ベッドに横になるだけで、既に夢月の身体が僕に触れている。

 身体のラインに目が向く、いつのまにか妹も女の子になったんだなぁ。

 しみじみと実感させられる、そんな状況ではないと僕はすぐに後悔するが。

 

「こうして一緒に寝ているとおかしな気分になったりしない?」

 

「なりません。……ホントにならないから」

 

「ねぇ……どうしたらおかしな気分になるの、蒼空お兄ちゃん?」

 

 僕の中に眠る男の本能がこれは危険だと告げている。

 ゆっくりと夢月の方を見ると、彼女は僕に顔を近づける。

 すみません、あの、それ以上は……。

 

「妹の私にいけない事を、お・し・え・て(はぁと)」

 

 義妹の甘い囁き、これは罠だ、ハマってしまうと抜けだせない。

 僕をいけない世界へと踏み込ませようとする天使の顔をした小悪魔の囁きだ。

 

「私は星歌お姉ちゃんみたいに大人っぽい魅力はないけど、行動力はあるから」

 

「夢月、あのなぁ……これ以上、冗談はやめてくれ」

 

 ただでさえ、こんなに密着した状態だ。

 いつ僕の理性が限界を迎えるのか分からない。

 彼女はそれさえ弄ぶように、僕の身体を動けないように抱きついて囁き続ける。

 

「どうして冗談だと思うの?私だって子供じゃない。分かってるつもり、男と女の事も……お兄ちゃんのベッドの下に隠してある本で学習済みだから安心して」

 

 すみません、自業自得でした……って、いろんな意味で違う!

 兄の秘密を見られたショックと妹の行動力に戸惑う僕……えぐっ、泣きたい。

 

「私、お兄ちゃんのおかしくなる姿が見たいなぁ」

 

「ほ、ホラーが怖いから眠れないんじゃなかったのか?早く寝なさい」

 

「そうだよ。でも、それ以上にお兄ちゃんと一緒に寝てると変な気持ちになるの。えへへっ。私を襲ってくれないなら……私が蒼空お兄ちゃんを襲っちゃうよ。……どうする?」

 

 彼女は僕の耳を口で甘く噛んできた。

 さらに妹の猛攻が続く、お兄ちゃん大ピンチ!?

 妹に襲われる兄、まさかの序盤で禁断関係突入かよ!?

 まだまだ夜は長いのさ……ていう感じで、なぜか次回に続く!

 

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