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今のうちに笑っておけばいいですよ。

作者: 千秋 颯

 王立魔法学園。

 幼い頃から読書や魔法の勉強が好きだった私は、十五になって魔法学園に入学してからは常に上位の成績を維持してきた。


 学園の生徒は二年の後半から最終学年に掛けて、自身が選んだ研究課題に取り組む。

 その結果が、卒業時の成績に大きく関わってくるのだ。


 私は魔力生成の新たな可能性について研究をしていた。

 魔力は魔法を使う為に必要とするエネルギー。

 生物が自然と生成しているほか、魔晶石という高濃度な魔力を保有できる石からも得ることが出来る。


 基本的にはこのどちらかでしか得られないとされる魔力。

 しかし私はそれ以外の方法から魔力を生み出せる可能性について考えた。


 魔晶石のように無機物が魔力を保有している場合があるのならば、生命でなければ魔力は生み出せないという事はないとも言える。

 そこで私は様々な薬品や物質を組み合わせる事で魔力が発生する現象を見つけようとした。




「お前のような陰気でとろい女が俺と釣り合うなんて本気で思ってるのか?」


 婚約者であり侯爵家の嫡男でもあるユルリッシュ・ド・ブレヴァルは良く私を嗤った。

 我が家は伯爵家。おまけに引っ込み思案で弱腰な上に地味な容姿。

 私は彼からよく見下され、馬鹿にされる事が多かった。


 淑女教育に手を抜いた事はない。

 同年代の子に比べてもよくやっている方だという自負があった。

 けれど私の地位や性格、容姿などが正当な評価がされない理由となっていた。

 それに、地位と容姿ならば同年代により評価される女性もいた。


 イヴォンヌ・ド・ドランブル侯爵令嬢。

 ユルリッシュからの私の評価はいつだって彼女より下だった。


 彼や、彼の取り巻きによって、私は簡単に笑い者にされる。


 悔しかった。

 どれだけ血の滲むような努力をしようとも、私が認められる事は決してない。

 私の努力はユルリッシュに平気で軽んじられるのだ。


 だから私は考えた。

 いつか必ず結果を出そうと。


 彼が認めざるを得ないだけの結果、評価、賞賛――それを他者から集めればいい。

 こうして私は最も好きで得意な分野の勉学により心血を注ぐようになった。


 そして望んだ通り学園で多くの称賛と結果を手に入れた。

 私の研究課題に多くの教師が注目していた。


 そしてその結果が――



***



 ガラスが弾ける音がした。

 鋭い痛みと焼けるような熱さが私の顔を襲う。

 悲鳴を上げて蹲った。


 他の生徒達が駆け付け、騒ぎになる。

 研究の為に用意していた液体の薬品二種をガラスの容器に混ぜ入れた瞬間の事だった。


 容器は勢いよく弾けて割れ、混ざった薬品は私の顔に掛かった。

 私は良く知っている。

 たった今自分が扱った薬品ではこのような危険な現象など起こるはずもないことを。


 一体何が起きたのか。

 何故自分は激しい痛みと戦っているのか。


 顔を覆い、激痛に耐えながら顔を挙げた時、駆け付けた生徒数名が悲鳴を上げた。


「アルレット様、お、お顔が……ッ!」

「だ、だれかぁ! 先生を!!」


 悲鳴が重なり、辺りはパニック状態になる。


 生徒達は私を慰めたり、医務室へ助けを呼ぼうと廊下へ飛び出したりと忙しなく動き始める。

 そんな騒ぎの中。


 開け放たれた研究室の扉の影に立つ人影を私は見つけた。


 ユルリッシュだ。


 彼は蹲る私を遠目に見つめながら――


 ――歪に口角を釣り上げたのだった。



 素の整った顔からは想像もできない程の醜悪な笑み。

 その顔を見た途端過る真相。

 困惑、絶望――そして底知れぬ憎悪。


 私はこの時の光景を、きっと……一生、忘れないだろう。




 あの日から、私の人生は大きく変わった。

 顔は酷く焼け爛れ、ガラスが深く突き刺さった箇所には火傷とは別の傷も共に残った。


 家族は悲しんでくれたけれど、同時に私を見て顔を顰めるようになった。

 家族にすら本能的な嫌悪を抱かせるような顔だ。

 とても人前に出せるような容姿ではなくなった私は、ローブを纏い、フードで顔を隠すようになった。


「ざまぁみろ」


 ある日、学園でフードをひっぺがされる。

 周囲の生徒の視線が私に突き刺さる中で、ユルリッシュは鼻で笑った。


「不正と盗用ばかり繰り返すからバチが当たったんだろ。この悪女が」


 不正、盗用。

 謂れのない言葉をぶつけられ、私は静かにユルリッシュを睨み付ける。


「お前のような女が、優秀なんて言われるなんておかしいに決まってるしな。おまけに女で伯爵家の娘の癖に俺を見下そうとして――いい気味だなぁ、アルレット」


 ふざけないでと叫んでやりたかった。

 私がどれだけ必死に時間をかけて魔法研究に縋って来たか。

 これまでの仕打ちにどれだけ苦しんで来たか。


「怖いわ、ユルリッシュ」


 その時。

 私を見下ろすユルリッシュの隣にイヴォンヌが並ぶ。


「ほら、今にも噛みついてきそう」

「自分の悪事を明かされたから逆恨みでもしているんだろ。ったく、この顔を見るだけで吐き気がする。――いいか、アルレット」


 ユルリッシュの目が三日月形に歪められる。


「お前との婚約は破棄する! 立場も分からず、社交界にすらろくに出る事も出来ない化け物紛いと結婚など、俺は絶対にしない!」

「ちょっと、言い過ぎよ」


 何が可笑しいのか、イヴォンヌが無邪気に笑っている。

 怒りで肩が震える。

 そんな私をユルリッシュが冷たく見据えた。


「おい、イヴォンヌに何かしてみろ。ただじゃすまないからな」


 不正も盗用も、証拠すら出ない偽りの言葉だ。

 けれど周囲を見れば、私を助けようとする者は誰一人としておらず。

 皆一様に、バツが悪そうに私から目を逸らすだけだった。




 その場から生徒達が去っていく。

 ユルリッシュが暴言を吐き、イヴォンヌが笑いながら離れていく。


 私はその場に一人となっても動くことが出来なかった。


 結果さえ出せば全て報われる。

 自分の努力の価値が認めてもらえると信じていた。

 けれどそうはならなかった。


 私が自分を超えかねないと悟った途端、ユルリッシュは私を蹴落とす為に動いた。

 彼のプライドは悪事に手を染めてでも私を引きずり下ろす事を選んだ。


 悔しい。

 悔しい、悔しい、悔しい。


 私は一人むせび泣いた。

 小さく蹲り、冷たい床に額を付けて嗚咽を漏らす。

 その時。


「――アルレット・ド・ルヴェル?」


 耳障りの良い、柔らかな声が聞こえる。

 私が顔を上げると、そこには金髪と碧眼を持つ男子生徒が立っていた。

 レオナール・クーベルタン。

 公爵家の嫡男であり、魔法学園では私と共に首位を取り合う生徒だった。


 学園で噂が止まない程に美しい彼の顔には今、困惑の色が浮かんでいた。


 私はハッとしてフードを深く被る。

 しかしレオナール様は私の顔に動揺するでも同情するでもなく、ただ真っ直ぐと手を差し伸べて来た。


「大丈夫かい?」


 ただ泣いている生徒を気に掛けているだけ。

 当然のようなその振る舞いが、私は酷く嬉しかった。


「何があったんだ、一体」


 彼は私の頬をハンカチで拭ってくれた。

 それから私の涙が落ち着くまで静かに寄り添い、親身になって話を聞いてくれた。




 私の話を聞いたレオナール様は険しい顔をした。


「……到底許される事ではない、こんなこと」


 それから彼は私へ優しく笑いかける。


「アルレット嬢。もし君が良ければ、研究課題を俺との共同にしないかい」

「え……?」

「俺の研究は回復薬エリクサーの汎用性と効果を高めるものだ。けれど研究が少々難航していてね。君の知恵と技術を借りることが出来るならと思ったのだが……どうだろうか」

「け、けれど……私といるときっと、レオナール様も馬鹿にされますし」

「優秀な人間すら見抜けない者の言葉など捨て置けばいい」

「でも……こんな醜い顔、気味が悪いでしょう」


 自ら言った言葉なのに、酷く胸が痛む。

 レオナール様の答えや反応が怖かった。

 けれど、それを聞いた彼は何と……


 ――笑ったのだ。


「気味が悪いなんてことあるものか!」

「……え」


 碧の瞳が私を映し、優しく細められる。


「…………魔力生成の研究。それを選んだのは魔渇(まかつ)病の抑制の為だろう」


 私は小さく息を呑む。

 図星だったからだ。


 我が国で――特に我が家の領地ルヴェル伯爵領周辺で広がりつつある流行り病、魔渇病。

 魔法を使っていないのに魔力を消耗し、やがて体内に魔力を留まらせることが出来ず衰弱死してしまう難病。


 学園の成績の為だけを考えるならばいくらでも選択肢がある中で私がこの研究を選んだのは、この病の対抗策を見出せるかもしれないと考えた為でもあった。


 私の根底にあるのが自己への称賛を意地汚く求める心であったとしても、どうせ褒められるのならば大勢の為になる事で褒められたいと思ったのだ。


「私はただ、大勢に認められたかっただけです」

「だとしても、だ。その為に誰かの足を引っ張って上に立つのではなく、他者の為になろうとした。そんな君の美しい心を俺は知っている。……醜いなんて事、あるものか」


 気が付けば私の両目からは再び涙が溢れ始めていた。

 まるで愛おしいものを見ているかのような優しい目をして、レオナール様が笑う。


「……君は綺麗だよ」




 それから、私はレオナール様と共に回復薬の研究を進めることにした。

 共に意見を出し合い、時に口喧嘩に発展しつつ苦戦し、そして何度も繰り返した失敗を抜け出した瞬間に喜び合う。

 そんな事を繰り返す日々は、周囲の評価ばかりを気にしてきた過去からは考えられない程に有意義なものだった。


 彼といる時は周囲の視線も嗤いも忘れられる。

 ありのままに振る舞え、普通の女性として見てもらえる。

 そんな彼に惹かれていくのに、そう時間はかからなかった。


 研究は順調に進んだ。

 飲み薬しか存在しなかったエリクサーは塗り薬や錠剤、気体化など様々な形状に変化させる方法や効果の向上が見込めるようになった。

 論文も資料も纏まり、あとは研究発表だけ。


 卒業間際に行われる研究発表では、事前に提出した研究内容や結果を基に講師たちが評価し、より優秀だと評価されたいくつかの研究だけが大勢の前で発表する機会を得られる。


 そしてレオナール様との研究は無事に発表の機会を得られる事となったのだ。


「これまでありがとう。アルレット。本当に助かったよ」

「いいえ」


 『これまで』という彼の言葉に私の胸が僅かに痛む。

 彼との接点だった共同研究はもうすぐ終わりを告げる。

 そうなれば、楽しかった日々が終わるのも必然だ。


 そう、思っていた。


「アルレット」

「はい」

「俺は、もっと君にありがとうと言いたいんだけれど。……これからも」


 ――彼がそう言うまでは。


 驚く私を置いて、レオナール様は私の手を取る。

 その手の甲にそっと口づけをし、それから


「俺と婚約してくれないかな」


 甘い微笑みでそう言った。


 信じられなかった。

 自分の様な人間と進んで添い遂げようと思う人がいるなど。

 それも――私のような醜い女と。


「わ、私は……やめておいた方が、良いと思います」

「顔に傷があるから?」


 私は口を閉ざす。

 わかっている。彼はそんな事を気にしない。

 けれどこれは……私の問題だ。


 美しい容姿に優秀な頭脳を持ち、こんな私が相手でも優しいレオナール様。

 内面もだが、何より容姿が釣り合わない。

 私が、彼の隣に立つ自信を持てないのだ。


「……アルレット」


 私が黙ってしまうと、彼はフッと笑った。

 それから一輪の花を手に取る。


 青く、艶やかな花弁を持つ花。

 図鑑で見た事がある。


 非常に高価で入手困難な花。

 現在は存在しているかも疑わしいとされていた伝説の花、サティオーラ。


「この花は食せばたちまちどんな傷でも塞がると言われる程の効能を持っている。……且つて強力なエリクサーを作るために大量に摘まれて消えたとされる、特別な花だ」


 そんな貴重な花を何故手に入れようと思ったのか。

 一体何の為に見つけ出したのか。


 その理由を、私は悟ってしまう。


「俺は、今の君を愛してる。けれど……君が君自身を愛せないというのなら、そのせいで俺と共にいられないというのなら……いや、君ならそう言うだろうと思ったから、俺はこれを用意したんだ」


 彼が如何に本気であるか、嫌でもわかってしまう。


「必ず君を幸せにする。だから傍に居てくれ、アルレット」


 嫌だなんて、言えない。

 彼の想いがただただうれしかった。

 そして彼の側にいたいと思う気持ちが、胸の奥で叫んでいた。


「……はい」


 私は涙を流しながら頷くのだった。



***



 研究発表当日。

 私はフードを被ったまま研究発表に参加する。


 名が呼ばれた時、レオナール様は私を向いて笑みを深めた。


「いいかい、アルレット。俺は今日ここで研究が評価されなくたって構わない。今俺の中で最も大切なものは、君の幸せだ」

「……もう充分、理解しております」


 私の答えに、レオナール様は満足そうに頷いた。


「それじゃあ、大暴れといこうか」


 私はレオナール様に手を引かれて歩いていく。

 視界の端、多くの生徒が集う中で……ユルリッシュとイヴォンヌの視線に気付く。

 彼らはニヤニヤと醜悪な笑みを浮かべている。


 けれどもう、何も怖くない。

 怒りや悲しみで狂いそうになる事もない。


「――今のうちに笑っておけばいいですよ」


 ただ私はほくそ笑むのだった。




 レオナール様は自身の研究の成果について堂々と発表した。

 事前に用意していた通りに、順調に。


 そして彼の研究の成果が偉大なものである事を殆どの者が信じたところで発表は終わり、締めの言葉へ入るかと思われた時。


「聞くだけなら大層素晴らしい結果だとも思うけどな。だが、助手一人の傷も治せない薬に意味はあるのかというと」

「確かに。そうですわね」


 コソコソとそんな事を言って笑ったのはユルリッシュだ。

 そしてそれに便乗するイヴォンヌ。

 二人によって一部では嘲笑や疑念が生まれ始めていた。


 それを聞いたレオナール様はやれやれと肩を竦める。

 彼は、ここで騒いでいる人々を黙らせる方法知っている。

 けれど自らそうする事はしないだろう。


 だから私は――私の幸せを望んでくれた彼の為に、自ら選択する。


 私はフードを取っ払った。

 晒される素顔。

 それを見た生徒達が一斉に息を呑んだ。


「彼の研究は確かに発展途上です。けれど、これまでのエリクサーとは異なる可能性を秘めています。――残ってしまった傷を消すという」


 爛れて変色した肌も、ガラス片に付けられた傷も、全て消え、元通りになった肌。

 私はレオナール様のお陰で取り戻した素顔を大勢に晒した。


「私に用いたのは研究成果であるエリクサーの原材料に稀少な植物サティオーラを加えたもの。同様の薬をどれだけ作れるのか、普及させられるのかなどに問題が多く、同じものを作り続ける事は現実的ではないでしょう。……しかし、サティオーラもエリクサーも、本来は『傷を塞ぐ』効果はあれど――古傷を消すことはできない」


 ユルリッシュとイヴォンヌの顔が驚きから苛立ちへ歪む。

 それを見据えながら私は口角を挙げた。


「いくつもの材料を組み合わせる事で単体では期待できなかった効果が得られるようになった。この点は事実です。であるならば、サティオーラを使わずとも同様の効果を得られる調合方法だって見つかる可能性がある」

「今後の課題は、アルレット嬢のような苦しみを抱える者を救える回復薬を造る事となるでしょう」


 ワッと拍手が湧きたつ。

 レオナール様は深く礼をし、自身の発表を締め括った――


 ――かと思われた、その時。


「それでは、この場を借りてもう一つ……彼女の怪我の要因について言及させて頂きましょう」


 これは研究とは関係のない話だ。

 誰かが止めに入る前にとレオナール様はやや早口で続けた。


 彼はそう言うと研究発表用に持っていた書類の中から発表に用いなかった紙束を取り出す。


「彼女の怪我の原因は、想定されていない誤った薬品を混ぜてしまったから。……しかし研究で扱う薬品は事前に講師の許可がいりますし、学園に保管されていないような薬品であれば申請をし、学園側の経費で取り寄せる形になる。しかし……あの事故の原因となった薬品の内一つは、アルレット嬢が用意したものではなかった」


 日頃物腰柔らかな彼の微笑みが消える。

 代わりに冷たい眼差しが、ユルリッシュを見据えた。


「調査を進めれば、同時に浮き彫りになる事がありました。何と同時期に、学園や商会を通さず、わざわざ社会の裏で件の薬品を手に入れる人物がいたようでしてね」


 ユルリッシュの顔が強張る。

 まずいと思ったのだろう。

 けれどもう遅い。


「――ユルリッシュ・ド・ブレヴァル。貴殿を傷害の罪で、そして彼の悪行を秘匿したイヴォンヌ・ド・ドランブルもまたそれに加担した罪で裁かせていただく」

「な、な……ッ! そんな馬鹿な事――ッ」


 ユルリッシュが顔を歪め、否定しようとする。

 しかしその時、バンと発表会場の扉が乱暴に開け放たれ、騎士達が駆け込んで来た。


「ああ、弁明ならば必要はない。何故なら――もうすでに俺が通報しており、国は貴方達を捕えるべきという判断を下したからな」

「ちょっと、離しなさいよ!」

「ッふざけるな! こんな……! こんな事で……ッ!」

「こんな事?」


 レオナール様は静かな怒りを顕わにした。


「血の滲むような努力を重ねる人間を、汚い手で引きずり下ろし、踏み躙り、果てには社会的な立場すら奪おうとした事を『こんな事』で片付けるような愚か者め。――二度と、俺達の前に現れるな」


 ユルリッシュとイヴォンヌは連れ出された。

 彼らが社交界に再び姿を見せる事はないだろう。


 二人の姿が消えたのを見て、終わったのだと私は深く息を吐いた。




 それから半年後。

 私達は結婚した。


 公爵家の跡取りと、その妻として、私達は忙しい毎日を過ごす。

 政務に加え、魔法の研究にまで首を突っ込んでいるのだから当然の事だった。


 そして数年後。

 サティオーラの時のような即時性はないものの、古傷を徐々に薄くさせる塗り薬が完成した。

 そして学園在籍中に私が着手していた研究の続きも並行し、魔渇病の特効薬も完成する。




 領地の視察から帰る馬車の中。


「嬉しそうだね」

「ええ」


 先程、領民から述べられた感謝の言葉を思い出しながら私は微笑む。


「……誰かの為になる事って、こんなにもうれしい事なのね。貴方と親しくならなければ、きっとずっとわからなかったわ」


 正面に座るレオナールへ私は笑いかける。


「……ありがとう。私と共にいてくれて」


 レオナールが息を呑んだ。

 それから彼は嬉しそうに笑みを深め、私の隣に座る。


 そしてそっと私を抱き寄せ、顔を近づけた。


「こちらこそだ。アルレット」


 これからもずっと傍にいてくれ、という言葉と共に唇が塞がれる。


 ――なんて幸せなのだろう。


 甘いキスに溺れながら、私はそう思うのだった。

最後までお読みいただきありがとうございました!


もし楽しんでいただけた場合には是非とも

リアクション、ブックマーク、評価、などなど頂けますと、大変励みになります!


また他にもたくさん短編をアップしているので、気に入って頂けた方は是非マイページまでお越しください!


それでは、またご縁がありましたらどこかで!

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― 新着の感想 ―
とても胸がすくお話、ありがとうございました。 連れ出された方々の行く末はあっても面白いしなくても想像の余地がありますしどちらもわたくしは楽しめますわ。 自身の価値を前向きな努力ではなく他者を貶めて上げ…
結局連れ出された2人はどうなったの? どうなったのかの結末は流石にあった方が良いですよ。指摘しておきますね。
感想一覧
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