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【書籍化】救いない怪異の世界をRPGの世界と勘違いしてるやつ  作者: 流石ユユシタ
第5章 宗教編

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第73話 黎明

「俺がいること、内緒ね」



 白い信者の服を着た少年が、口元へ人差し指を立てている。その足元には三人の信者が倒れていた。後ろには同じ白い服を着た少女もおり、倒れた信者達を避けながら綾乃へ近づいてくる。


 綾乃には、何が起きたのか見えていない。少年が動いたと思った時には、鉈を持っていた男が倒れていた。残る二人も、額へ指先で触れられただけで水の中へ崩れ落ちている。


 それも、術を使った気配はない。






「……あなた、何者なの?」

「黎明。職業は勇者だよ」

「……そういう冗談は聞いてないんだけど」

「冗談じゃないけど」




 綾乃は少年の顔を見た。嘘を言ってる感じはない。となると本気で自分を勇者と思ってる頭のおかしい人かもしれない。



 だが、それよりも彼女には気になることがあった。





(──これ、こいつが倒したというの?)





 それは純粋な疑問。目の前の信者達を倒したのは、彼なのか。その答えがまだ出ていなかった。





(さっきまで目の前には、信者が向かってきていた。でも、この男……彼は視界に入ってなかったし)




(一瞬で移動し、全員倒したというの……? 全てを視認すらさせないほどの速さで……っ?)





(まさか、あり得ない……。どんな身体能力してたら出来るのよ、いや、無理。人間には絶対に無理。だとしたら、こいつ怪異? いやでも、人間の気配もするし)






 疑問が尽きない。だからこそ、彼女は黎明に向かって、微かに恐れながらも目線を向ける。すると、黎明の方から彼女に話しかけた。



「あ、そう言えば名前は?」

「……土御門綾乃(つちみかどあやの)よ」

「土御門?」

「知っているの?」

「名前だけ。紅と蓮から聞いた。偉そうで、嫌味な人達なんでしょ?」

「……初対面の相手に、普通それを言うかしら」

「違うの?」



 綾乃は否定しようとして、やめた。普通に自覚があるからだ。自分が性格が悪いことに。何より、綾乃自身も、双子へ嫌味を口にしたことがある。



「……まぁ、大体合っているわね」

「やっぱり」



 黎明は納得したように頷いた。



「あなた、あの双子の知り合いなのね。ってことは、貴方も最近、噂の冒険者ってやつかしら?」

「いや、俺は勇者かな」

「……あ、そう」



 綾乃は何言ってるんだこいつ? という目線を黎明へ向けたが、その横にいる女の子も気になったため、話しかけた。



「そっちの子は?」

「さ、榊原澪です。黎明さんと一緒に、両親を探しに来ました」

「……なるほど。二人でここまで来たのね」

「そうそう。最初は地上から入って、地下から霊力と人の気配を感じたからね。だから、降りてきた」

「そう……ここまで来るのに怪異とか信者がいたと思うけど、どうしたのかしら」

「あー、大体倒したよ。最初は潜入して戦闘避けてたんだけど、色々探してたら戦闘になることもあって。それと怪異じゃなくてモンスターね」



 黎明は最初は潜入クエストとして、戦闘を避けていた。その気になれば、暴力で全てを解決できるほどに強いが、敢えてそれはしなかった。


 なぜなら、潜入クエストだから。全て霊力で吹き飛ばしては風情がない。そう思っていた。


 しかし、黎明は基本気になる壺は投げたりするので、普通に怪しまれて戦闘になって、結局暴力で全てを蹴散らしてここまできていた。



 つまるところ、全ては暴力なのだ。





「そ、そう……倒した、ね。モンスター……あの双子もそんな定義してたわね」




 黎明は軽く説明しているが、綾乃からしたら顔が引き攣るしかない。そもそも怪異とは倒せない存在。安倍家の双子が倒したと言っても、彼女は一切信じなかった。



 だが、わずか数分であっただけで彼女は黎明から底知れない何かを感じ取っていた。





(……この飄々とした態度。一切の恐怖のなさ。それらと同時に、絶対的な自信を感じる)





(まさか、本当に……?)






「地上から、ここに来たのね。そう……、それでわたしを見つけて助けてくれたと」

「そうそう。あ、長話してる場合じゃない、澪の親見つけないとね。えっと、綾乃だっけ? 多分だけど、このまま一人だと死ぬよ」

「……ッ」

「俺達についてくれば大丈夫だけど、どうする? 仲間になる?」





 綾乃の体に寒気が走った。黎明の紅瞳は彼女をじっと見据えている。その瞳はこれまで見てきた誰よりも揺るぎない意思を持っていた。


 そして、彼は一切の偽りをしていないことも一瞬のうちに理解した。



 だからこそ、分かる。ここが彼女の命の分岐点であると。





(……なに、なんなのこいつ。強さは不明、かと思ったらふざけた言動して。でも、この男の言っていることを否定する気が起きない)





 もし、あの時、黎明が現れなければ間違いなく死んでいた。そして、彼女は今生きている。



 ──生きたい。




 世界に絶望し、いずれ終わるからと達観していた。いや、達観していたふりをしてたというべきだろう。



 死ぬのが怖い。本当は死にたくないし、生きていたい。




 だから、彼女が選ぶ選択は一つしかなかった。彼女は思わず、従属をするように頭を下げた。





「……お願い、仲間に、入れて」

「あれ、なんか思ったより礼儀正しい。蓮と紅からは全部嫌味で返してくる人って聞いてたけど」

「……まぁ、普段は嫌味も言うけど、今は言わないわ」

「あっそ。それじゃ……綾乃が仲間になった! さて、先に進もう」




 綾乃は土御門家、当主の子供。だからこそ、陰陽の才に関しては一般的な陰陽師とは一線を画す。


 しかし、そんな彼女が知らず知らずのうちに従属してしまうような人間。



 それが朝霧黎明。と言う存在なのである。



 綾乃は話の中で気づいていた。黎明は地上から、地下の霊力をたどったと話していたが……


 一般的な陰陽師は地上から地下の霊力の感知は難しい。そもそも単純に難易度が高いのもあるが、この宗教団体はあらゆる霊力や、霊具があり、鈍ってしまう。


 だが、黎明は地上から気づいたと言っている。適当言ってる、そう解釈してもいいが、そんな気が起きないほどに彼女は黎明をある意味で信用してしまっていた。



(こいつ……絶対に嘘は言ってない。分かる。わたしには、常に災厄の未来を見てきたわたしには。こいつは怪異と同じ。どう足掻いても、どうにもならない存在)




(よく、分からないけど。従っておけば命はまだ繋げられる気がするわね……)





 黎明の後をこっそりとつけるように、綾乃は陣取った。すると、黎明が気づいたように彼女に振り返る。




「とりあえず、服を着替えた方がいいね」

「服?」

「それ、すごく目立つから」



 綾乃は自分の姿を確認する。白と金の狩衣は泥と血で汚れていた。確かに、こんな格好で歩いていればすぐ侵入者とバレるだろう。



「でも、着替えなんて――」

「ちょっと待ってて」



 黎明は倒れている信者を一人ずつ確認する。



「全員男か。サイズも合わなそう」



 そう言って、水路の奥へ歩いていった。十秒ほどして、曲がり角の先から女の声が聞こえる。



「四十二番。そちらに侵入者は――」



 声が途中で止まった。黎明が恐ろしいほどの速い手刀で気絶させたのだ。その後、黎明が白い服を着た女信者を肩に担いで戻ってくる。



「丁度いい人がいた」

「……は、えは? い、今、ここにいたわよね? い、いつのまに?」

「素早さが早いからね。ステータスが違うよ」

「は……? い、いつの間に殺したの? み、見えなかった、だ、だけど」

「殺してないよ。気絶させただけ。洗脳されて、改造をちょっとされてる人みたいだから」



 黎明は女を壁際へ寝かせ、白い外衣だけを脱がせた。すると、下着姿になり、少し胸元が見える。




「……詩って大きいんだなぁ」

「……え?」

「いや別に」



 そのまま、黎明は脱がせた信者の服を綾乃に渡した。



「はい、ドロップアイテム」

「ど、ドロップ? アイテム? えと、ごめんなさい。よく、分からなくて」

「よく言われるよ。あ、えとね、分かりやすく解説するね。俺はこの女の人を倒した。だから、この信者の服をドロップした。それを綾乃に渡して、綾乃はこれを装備すればいいってわけ、簡単でしょ?」

「……え、ごめんなさい。全然分からなくて」

「あ、そう。とりあえず装備してくれればいいから」

「あの、わたしが着る時に隠します」



 澪が外衣を受け取り、困惑と戸惑いの綾乃は汚れた狩衣を脱いで、白い服を着る。胸元に金色の太陽が見えるよう整えた。番号札には【巡光班・五十八】とある。


 黎明は気絶した女と三人の信者を空いている部屋へ運び、扉の陰に並べていく。綾乃は色々理解ができない黎明に少し怯えていた。


 それも当然だ。その気になれば、一瞬で彼女の命を奪える。怪異と遜色ないとも言えるからだ。



「……て。手慣れているわね」

「潜入クエストは何回かやったから」

「ど、どこで?」

「ブレイブクエスト」

「……聞いたことがない組織ね」

「ゲームだよ」

「……そう」




 何言ってるんだこいつ? ともう何度目かわからない顔をしてしまう綾乃。しかし、目の前の黎明の実力は間違いなく本物でもあり、おとなしくするしかないと彼女は考えた。




「わたしも最初は、黎明さんが何を言ってるのか分かりませんでした」

「……今は分かるの?」

「いえ」

「……わからないのね」



 澪も完全には分かっていない顔をしていたので、綾乃は口を閉じた。仲間がいたので少しだけ安心した。





◆◆◆




 地下施設には、水路だけではなく白い壁で囲まれた廊下が何本もあった。その両側に鉄製の扉が並び、天井の角には監視カメラ。白い服の信者も何人か巡回をしている。



「監視が多いですね」

「うん。見つかると面倒そう」

「なるべく荒事は避けていきましょう」

「そうだね、潜入だし。全部戦闘してたら風情もないし」





 こいつら、何言ってるんだ? という顔をしながら、綾乃は黎明とついでに澪を観察する。特に黎明を注意して見ていた。背中越しに見ているが、身長は自分より少し高い程度。声音や肌の感じから、若めの青年なのはわかった。




(……今気づいたけど、霊力をあまり感じない。というより、ほぼゼロじゃない。それなのに、あんな速く動けるってことは、純粋な身体能力が高いってこと?)




 実際は黎明は霊力を、意図的に抑えている。その理由は潜入クエストなので、忍んでいるのである。


 実際は、人類で最も霊力を多く保有しているが彼女がそれに気づくことはない。






「次の角、三人来る。こっちだね」



 黎明は綾乃の腕を引き、澪にも目で合図する。三人で近くの物置へ入り、扉を閉じて数秒後、廊下を歩く音が近づいてきた。



「巡光班から報告は?」

「侵入者は六名。すでに四名を光へお返ししました」

「残りも遠くへは行けません」



 四名。三島、水城、若松、琴平、話から察するに既に死んでいるらしい。綾乃は少しだけ、唖然とするが陰陽師の世界にいる以上、知り合いが死ぬのは当たり前である。


 だからこそ、そこまで気にしている様子もない。




「行ったよ」

「……どうして、来る前に分かったの?」

「MPを感じたから」

「MP……? 霊力のこと、よね?」

「ちょっと邪魔だけど、感知はできるよ」



 綾乃は黎明の背中を見る。この少年にとっては、大した問題ではないらしい。三人で廊下を進むと、前から男の信者が現れた。



「三十七番、四十二番。五十八番と合流したのですね。北の水路へ入った侵入者は、どうなりました?」



 綾乃と澪が俯いて顔を隠すと、黎明が前へ出た。しかし、すぐさまさらに澪が前に出る。黎明に任せたら、絶対にボロが出るからだ。



「今、最後の一人を捜索してるところです」

「一人、逃がしたのですか?」

「はい。でも大丈夫です、すぐに捕縛を完了させます」

「さっさと見つけるように」




 男は三人の横を通り過ぎていく。




「流石、澪は誤魔化しマスターだね」

「そんな称号いらないのですが、まぁ、無事でよかったです」




 黎明は適当を言いつつ、廊下の先へ目を向けた。次は何が出てくるのか、彼はそれだけに興味があった。



 そして、綾乃はなんだかんだ、澪もまぁまぁ、ヤバいやつなのでは? と思い始めていた。黎明と気さくに話している光景は、怪異と仲良くしている人間と同じようなふうにも見えるからだ。






(……なんなのよこいつら。特に、黎明だったわよね? こっちの方、マジで理解不能)




◆◆◆




「この先は人が多い。右の部屋に入ろう」



 監視カメラが別方向を向いた時に、黎明は廊下を横切った。鍵の掛かった扉へ手を添え、錠前を外す。すると、バキバキと、金属音がなる。明らかに通常時に開閉する音ではない。


 綾乃は、黎明を戸惑った視線で見える。戸惑った視線と言っても、ずっと戸惑っているので、ずっとそんな目つきである。



「……壊したの?」

「開けただけ」

「……それを壊したと言うんじゃ」



 三人が入ったのは、資料室だった。



「何か手掛かりとかないかな? 鍵かかってたし、重要なアイテムとかがあるかもしれない」



 机の上に書類の束がいくつも置かれている。黎明がその一つを開くと、表紙には【半人半魔】と記されていた。



「半人半魔?」



 綾乃と澪も横から覗き込む。


 最初の頁には、被験者の写真が二枚貼られていた。一枚目は、どこにでもいそうな中年の男。二枚目では同じ男の右腕が太く膨れ、指が七本に増えている。


 写真の下には【融合率二十三パーセント・理性維持】と書かれていた。


 次の頁には、腹に人間の口が開いた女。さらに次は、首から上だけが獣になった子供。



【人間としての思考を残し、怪異の肉体と再生力を獲得】

【完全な怪異とは異なり、肉体の破壊によって活動を停止】



 綾乃達を追いかけた存在と似ていた。



「……あれは、怪異ではなかったの? 確か人間の気配もしてたような……」

「人間とモンスターを混ぜたみたいだね」




 その後、三人は少し資料室で色々と資料を探した。すると、その中に【母体候補】という文字があった。黎明がサッとそれに目を通す。



「これ、澪のことかな」

「……わたし、ですか?」



 澪が黎明の手元を覗く。紙には母体候補者の条件として、霊力の高さ、怪異への抵抗力、巫女の血筋などが記されていた。



「清泪村のことまで、書いてあります」

「なら、澪の可能性が高そうだね」

「どうして、わたしを……」



 澪は紙を持つ手へ力を入れた。黎明が続きを読もうとした時、部屋の隅にある大きな壺が目に入った。



「お、壺がある」

「それが何?」

「なんかMPを感じる。やっぱり壺は確かめないとさ」



 黎明は壺の前へ立ち、両手でそれを持ち上げる。そして、それをそのまま地面に叩きつけた。





「……ちょ!? あ、あなた、な、何考えてるの?!」

「何が?」

「さ、さっき見つかると面倒だから、戦闘は必要な時だけ。人と会わないよう、静かに探索するって言ってたでしょうっ?」

「うん」

「な、なら、どうして壺を割ったの……?」

「中身を確かめるため」

「あ、開ければいいでしょう? わざわざ割る必要あるかしら……? これじゃ気づかれて。いや別に、貴方が強いのは、なんとなく分かるけど……」

「いや、中を見ないと。だから割った」

「ど、どういうこと? 割らずに調べればいいんじゃなくて? え、わ、わたしが何かおかしいのかしら……?」




 黎明は何を言われているのかよく分からない顔をしていた。逆に綾乃の方も戸惑っていた。さっきまで侵入クエストとか言っておいて、いきなり大きな音を立てた。


 よく分からないはずだ。しかし、黎明からしても【壺から霊力の気配】がするのであれば確かめざるを得ない。



 両者の意見は一切交差せず、平行線に。だが、黎明に従うと決めている綾乃は自分が、おかしいのかと考え直したりしていた。澪は黎明が壺を割ったりすることは、既にこの施設で体験を済ませていたため、驚いたりもしない。




「黎明さんは、壺を見つけたら割る。それだけなんです」

「……ど、どういうことかしら」

「そのままですね。でも、何も入ってない壺とかは興味ないみたいで。何かがあるのだけ割る人のようですね」

「……あなた、淡々としてるわね」




 そして、そんな彼女を気に求めず、黎明は割ったツボを見る。




「あ、アイテム入ってた。やっぱり何かある気がしたんだよ」



 割れた壺の中から、黒い石が五つ転がり出た。


 封霊石を前にした途端、綾乃は立っているのも辛くなり、机へ手をついた。一方、黎明は気にする様子もなく一つを拾い上げる。



「これ、MPを貯めてるね」




 黎明が石へ僅かに霊力を流す。金色の筋が光り、それが徐々に輝きを増していく。




「……なるほど、霊力を吸い取られてるわね」

「でしょー」






 そんなふうに会話をしていると廊下から、足音が近づいてくる。壺を割った音を聞きつけたらしい。



「や、やっぱり来てるわ」

「大丈夫。人ではないようだ、改造人間のようだ」

「そ、それって大丈夫ではないわよね?」



 資料室の扉が、外側から大きく歪んだ。もう一度衝撃が加わり、蝶番ごと室内へ倒れる。


 白い服を着た大男が立っていた。


 顔の右半分は人間だが、左半分には毛が生え、口元から牙が突き出ている。右腕は膝まで届くほど太く、皮膚の中で何本もの骨が動いていた。




「侵入者……光へ、帰れ」




 人間の口と、獣の口から同時に声が出る。




「また、怪異……!」

「いや、さっきの資料にあったやつだね。半分モンスターの人間か」






 大男が床を蹴る。石が砕け、太い腕が黎明へ振り下ろされた。綾乃は反射的に後ろへ下がる。澪も資料を抱えたまま、その隣まで下がった。


 だが、黎明は拳を片手で受け止めていた。


 床に亀裂が走り、机の上の資料が飛び散る。黎明の足は、最初に立っていた場所から動いていない。



「なぜ……封霊石の前で……」

「力は強いね。でも、動きが分かりやすい」



 黎明は大男の拳を掴んだまま引き寄せ、空いた手で腹を殴った。大男の体が折れる。


 そのまま後ろの壁へ突っ込み、積まれていた棚ごと崩れ落ちた。起き上がろうと腕を動かしたが、途中で力が抜ける。




「経験値は……あんまり入らないな。半分人間だからかな。でも、体術の熟練度は上がった気がする!!」



 黎明は残念そうにしている。綾乃と澪は何も言えなかった。


 封霊石の中で、五人の精鋭は術を失い、あっという間に殺された。目の前にいる半人半魔も、あの化け物達と大差ない力を持っているはずだ。


 それを、こいつは一発で倒した。




「……強い、強過ぎるっ」





 わずかな動きでわかる。目の前の存在は、体術の世界トップクラスの使い手であると。




(とんでもない身体能力と、身体技術。もしかして、世界有数の武術の使い手とか? いやでも、どう考えても人間の枠からは外れてるし。まさか、本当に怪異とか?)




(安倍晴明の記録には、人間に味方をする怪異がいるとかは聞いたことあるけど。まさか、それとか……? それか術を補助していた神々が急に人間を好んで力を貸してるとか……?)




 しかし、彼女が真実に辿り着くのはまだ先であった。

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