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【書籍化】救いない怪異の世界をRPGの世界と勘違いしてるやつ  作者: 流石ユユシタ
第3章 離島編

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序章 離島の主

 夜の海は静かだった。


 波の音だけが規則的に響いている。そして、月明かりが海面を照らし、銀色の光が揺れていた。


 だが、その光は冷たく、まるで死者を照らすもののようだった。


 その海を進む一隻の小型船。そこには五人の男女が乗っていた。


 彼らは反社会的勢力に属する人間だった。


 リーダー格の男、桐生(きりゅう)。三十代半ば。がっしりとした体格で、首には金のネックレス。


 彼は詐欺や恐喝を生業としていた。他にも仲間の女性を使い、不同意性交の冤罪をでっち上げて、示談金を要求する手口なども使用し、金を儲けていた。


「なぁ、前にやった示談金稼ぎ、覚えてるか? 高級車が欲しかったから、適当な金持ちの医者をターゲットにしてさ」


 桐生は缶ビールを飲みながら笑った。


「ああ、覚えてる。あいつ、泣いてたよな」


 それに同調するのは沢村(さわむら)。二十代後半の男。痩せ型で、目つきが悪い。彼は麻薬の売買を担当していた。


「結局、三百万も取れたしな。いい買い物だった」


 そう言って、桐生は満足そうに頷いた。一方、船の後方には二人の女がいた。


 一人は真美(まみ)。二十代前半。派手な化粧をした女。彼女は詐欺の囮役を担当していた。


 よくやるのはSNSで男を誘い出し、金を巻き上げる手法だ。


 それが彼女の仕事だった。


 もう一人は加奈(かな)。二十代半ば。真美よりは地味だが、冷たい目をしている。彼女は闇バイトの斡旋を行っていた。学生や若者を違法な仕事に引き込み、使い捨てにする。


「最近、闇バイトやってる学生、マジでバカだよね」


 加奈はスマホを見ながら言った。下品に笑いながら、スマホを適度に操作する。そんな底辺の言動に対し誰も嫌悪感を抱かない。


「ああ、マジでバカ。一回やったら、もう人生終わりなのにさ」


 寧ろ、一緒になって笑い合うような連中である。五人の中の真美も笑いながら答えた。


「でも、そういうバカがいるから、俺らが儲かるんだよな」


 

 持っている酒を飲み干しながら笑う沢村。その沢村が封を開けてない酒を隣にいる男に渡す。


 

 それが五人目のメンバーである、最後の一人。(さかき)


 四十代の男。五人の中では最年長で、冷静な性格。彼はグループの資金管理を担当していた。



「まぁ、今回の仕事は簡単だ。よくわからん呪物とかいうのを島に運ぶだけで六百万。割のいい仕事だ」


 榊は淡々と言った。貰った酒をぐびぐびと一気飲み干し、空いた缶をまるで自分の庭であるかのように海に投げ捨てる。


「依頼主、安倍家とか言ってたよな。金持ちなんだろうな」

「ああ、かなりの資産家らしい。だから、こんな大金を簡単に出せるんだろう」


 興味深そうな沢村の発言に対し、榊はそう答える。陰陽師は一般的には情報が公開されていない。


 それ故に、【安倍家】と聞いてもそこに対して大きな反応をしないのは彼らが、日本の裏側を知らないからだろう。


 別の意味で裏側の生活をしているわけではあるが、怪異とは無縁の生活を送っているからだ。



「それにしても、呪物って何なんだ?」



 沢村が船室の中を指差した。そこに、黒い布で覆われた箱が置かれていた。その箱はまるで何かを封じ込めるかのように、厳重に縛られていた。


「知らん。島についたら、開けろって言われるが……あれだろ。大したことがない、ただの玩具だろ。幽霊とか信じてる馬鹿なんだろうさ。だから、びびってこんな大金を出すんだ」


 榊はそう言いながら、もう一本の酒を飲んだ。まるで何も考えなしの発言、そして態度であった。


 そして、彼は気づくことがない。その箱からは微かに不吉な気配が漂っていることに。


 まるで、何かが内側から這い出ようとしているかのような。







◾️◾️



 やがて、船は島に到着した。


 ──饗島(きょうじま)


 そう呼ばれるそこは人口の少ない静かな島だ


 人が本土より少ないから、静かなのも当然。それに加えて夜に到着したことも相まり、静けさはまるで墓場のようだった


 風も、波も、全てが死んだように静まり返っている。


 五人は船を降り、呪物の箱を運び出した。直径で十五センチほどの木箱なので、思っているよりは軽い。


「意外と軽いな、これ」


 違和感を抱いた桐生が呟いた。なぜなら、《《丈夫そうな外装からは信じられないほどに軽い》》。


「しかし、こんなのわざわざ本当に運ばなくても、バレないんじゃね?」

「まぁ、六百万のためだ。我慢しろ。終わったら写真撮れって言われてるしな」


 榊が冷静に答える。そして、彼の発言で全員が目先の利益を優先するかのように、歩き出す。


 港から歩き、人気の少ない場所に彼らは集まった。



 ──そして、彼らは島の浜辺に呪物を置いた。月明かりが、箱を照らす。



 その光はまるで箱を警告するかのように、不気味に揺れていた。



「で、これをどうするんだ?」

「依頼主の指示では島のどこでもいいから解放しろって言われてる。そのあとは適当に捨てておけってさ」


 沢村の問いに、榊は答えながら箱を軽く触る。


 そして、その場で箱の封を解き始めた。木箱を開けると、中には施錠された本が入っていた。


 その本は古びており、表紙には榊らには読めない文字が刻まれている。


 まるで、何かを封じ込めるための施錠のようだと榊は一瞬だけ思った。しかし、だからと言って手を止めることはしない。



「なんじゃこりゃ、鍵か?」

「知らん。だが、仕事だ。やるしかない。これで開ければいいのか?」


 違和感を持つ沢村達の発言を気にしない榊。そのまま本の施錠を解いた。カチャリという音が響いた。



 小さい音なのに、全員の耳に残る音だった。


 そして、その瞬間、空気が変わった。



 ──本の中から、何かが這い出してきた。


 最初に現れたのは、黒く焦げたような指だった。五本の指が本のページを掴み、次に筋肉質の腕が這い出る。黒い皮膚には血管のような赤い筋が浮き出ていた。


 そして、頭が現れた。


 二本の角。真っ赤に光る目。鋭い牙を覗かせた口。


 姿は、ゆっくりと本から這い出た。その身長は二メートルを優に超え、全身が黒い筋肉に覆われている。


 地獄から這い出てきたかのような外見。



 ──まるで、異形の悪魔のような姿だ。



 


 その化け物の体からは腐臭が漂っていた。まるで、死体の山の中から生まれたかのような、吐き気を催す臭い。五人はその単語を知らないが、この日本ではそれは




 ──怪異と呼ばれる化け物だ。



「「「「「……ッ!?」」」」」



 いきなり現れた化け物、怪異を見て五人が一斉に後ずさった。全員の心臓が激しく鳴る。急激に喉が渇く。極寒になったように足が震える。


 怪異の目はまるで獲物を見るかのように、冷たく光っていた。



「◾️◾️◾️◾️◾️◾️」



 何か声のようなものを発する。その声は低く、どこか歪んでいた。まるで、何百人もの声が重なり合っているかのような、不協和音。



「な、なんだ、これ……」


 桐生が震える声で言った。


 その言葉に反応するように、怪異はゆっくりと桐生を見下ろした。


 そして、口元を歪ませる。


 それは紛れもない笑みだった。だが、親しみを与えるような笑みではない。獲物を見つけた捕食者の、残酷な笑み。



「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️ッ!」



 怪異はそう叫び、桐生に向かって走り出した。その速さは人間の目では追えないほどだった。


「うわああああああッ!」


 桐生は逃げようとした。しかし、遅い。怪異の爪が、桐生の胸を貫いた。ズブリという湿った音が響いた。血が噴き出す。



 唐突に噴水のように撒き散らされる血液。その様子に桐生の目が見開かれた。あまりに非現実的で恐ろしい光景。



 目の前では刺された男の体はまだ痙攣していた。まるで、死を拒むかのように。



「ああああああああああ!!!」


 恐怖のあまり沢村が叫んだ。


 しかし、怪異は止まらなかった。次の標的は沢村だったからである。すぐさま近くで震えていた沢村の首を掴む。そして、そのまま持ち上げた。



「が、ぐ……」



 首を掴まれた沢村は息ができない。首が締め付けられ、視界が暗くなっていく。


 そして、ゴキリという音と共に、沢村の首が折れる。その音は木の枝が折れるかのように、乾いていた。


 そのまま、沢村の体が地面に落ちる。その目は、まだ見開かれたままだった。



「ひ、ひいいいいッ!」

「あ、あぁぁああああ!!」


 


 死人と目が合った真美と加奈が悲鳴を上げた。


 一方、榊は何かを取り出そうとした。だが、手が震えて上手く動かない。


 恐怖が全身を支配していた。


「く、くそッ!」


 榊は何とかライターを取り出した。彼は火で怪異を追い払おうとしたのだ。


 だが、その行動に意味があろうはずがない。恐怖を持った人間が作った、ライターの火。


 そんなのを怪異は恐れない。




「◾️◾️ッ!!!!」


 怪異は榊達に向かって歩き出す。その足音が、まるで死神の足音のように、ゆっくりと近づいてくる。




「く、来るな」



 その時だった。




 ──ドンッという重い音が響いた。それと同時に怪異の体が、吹き飛んだ。



 何かが、怪異を攻撃したのだ。


 その重い音に肩を震わせた三人が、恐る恐る周囲を見渡した。


 そして、そこに立っていたのは──人のシルエット。


 だが、それは形だけだった。


 白い鹿の角を持つ、人型の怪異。


 身長は二メートルを超え、二本の脚で直立している。体つきは人間に近いが、骨ばって痩せ細り、まるで人が鹿の皮を無理やり被ったような歪さがあった。


 そして、何より目を引くのは──顔。


 鹿の頭骨を思わせる、白い顔。


 口は耳元まで裂け、奥には人の歯と鹿の歯が交ざって生えている。


 目は黒く濁り、見つめられると自分がどこに立っているのか分からなくなるような、不気味な輝きを放っていた。


 

 ──異質、この言葉がこれほど似合う存在もいない。




「……おや、これは」


 突如現れた鹿の怪異は、悪魔のような風貌の怪異を見た。その声は穏やかだった。しかし、その穏やかさが、かえって恐ろしさを助長する。



 生きている三人は、もはや生きた心地はしなかった。



「わたしの島に、勝手に入り込んだようですね」

「◾️◾️◾️◾️」

「おっと、自己紹介を忘れておりました。わたしはこの島を守る者。島守(しまもり)と呼ばれております」


 鹿の頭を持つ怪異はそう答えた。それは丁寧な言い回しだが、その声音に邪悪さが宿っているようだった。その声を聞いただけで、生き残った人間は恐怖を増幅させる。


「◾️◾️◾️◾️ッ!」


 悪魔のような風貌の怪異が鹿の怪異に向かって走り出した。しかし、次の瞬間。


 怪異の手が怪異の胸を貫いていた。その速さはまるで瞬間移動のようだった。


「……っ」

「貴方はわたしの島に入り込んだ。それだけで、死罪です。しかし、この怪異はあんまり見ないですね。どこから迷い込んだのか」



 鹿の怪異はそう言って、別の怪異の体を引き裂いた。ズルリという音と共に、怪異の体が二つに裂けた。


 そして、血が辺り一面に飛び散った。赤い雨のように。


 そのまま、体を貫かれた怪異が地面に崩れ落ちた。そして、砂のように体が風により吹き飛ばされた。




 ──急に、グルリと怪異の首が周り、三人を見つめる。まるで、次の獲物を選ぶかのように。




「……さて。貴方たちが、あれを呼び込んだのですね」

「ひ、ひいいいッ!」




 真美と加奈が、逃げ出した。しかし、怪異は一瞬で二人の前に現れた。どう足掻いても絶対に逃げられない。その速さはまるで悪夢のようだった。



「ふむ、せっかくです。もうすぐ美味しい肉が出来る。その前に前菜と行きますか」



 怪異の手が二人の首を掴んだ。その手はまるで鉄の万力のように、強く締め付けた。



「が、ぐ……あえ」

「あ、え……? あ、へ」


 二人は息ができない。そして、怪異は二人の首を折った。ゴキリ、ゴキリという音が響いた。


 その音は、音楽のようにリズミカルだった。そのまま二人の体が地面に落ちる。この島に来た五人。既に四人が死んでしまった。


 そして、最後に残るは榊一人。



「た、頼む。命だけは……」



 榊は地面に這いつくばった。その姿は死にかけの虫のようだった。全身から汗が止まらず、体全身で泣いているようだった。



「命? ああ、怖いのですね、心配しないでください」



 怪異は穏やかに答えた。



「た、助けてくれるのか……」



 榊、安堵の息をついた。



「ええ。美味しく頂きます」



 怪異はそう言って、榊の頭を撫でた。その手は凍てついた氷のように冷たかった。



「ただ、食べるだけです」



 その瞬間、榊の視界が暗転した。





◾️◾️


──やがて、怪異は五人の遺体を前に、ゆっくりと座った。


 そして、どこからか、包丁と皿を取り出した。


 月明かりが、その刃を照らす。その光はまるで死神の鎌のように、冷たく輝いていた。


「では、いただきましょう。命に感謝をし、命を頂く。食に対する拘りはなければなりません」


 怪異はそう言って、遺体を捌き始めた。


 その手際は驚くほど綺麗だった。まるで、一流の料理人のように、無駄なく、美しく、遺体を解体していく。


 ズルリ、ズルリという音が響く。包丁が肉を裂き、骨を断ち、臓器を取り出していく。


 まず、目玉を丁寧に取り出した。そして、薄く切った肝臓と共に皿に盛る。次に、心臓を切り開き、血管を丁寧に取り除く。そして、薄切りにして別の皿へ。


 腎臓は小さく切り分けて、まるで前菜のように並べる。


 そして、太腿の肉を削ぎ取り、ステーキ状に整える。


 やがて、料理は終わった。


 皿の上には様々な部位が並んでいた。


 一つ目の皿には、薄く切られた肝臓。まるで、刺身のように美しく並べられている。


 二つ目の皿には、目玉のソテー。焼かれた目玉は、まだ瞳孔が残っており、まるでこちらを見つめているかのようだった。


 三つ目の皿には、心臓の薄切り。赤黒い肉が、月明かりに照らされて光っている。


 四つ目の皿には、腎臓の前菜。小さく切り分けられた臓器が、まるで芸術作品のように並べられていた。


 そして、五つ目の皿には、太腿のステーキ。厚く切られた肉が、まるで高級レストランの一品のように盛られていた。


「美しい」


 整えられた料理を見て、怪異はそう呟いた。


「人間の肉は実に美しい。では、評価をしましょう」


 怪異は箸を取り出した。そして、ゆっくりと肝臓の刺身を口に運んだ。その動作はまるで儀式のようだった。


「……ふむ」


 怪異は目を細めた。そして、瞳を閉じて、口の中で感触を何度も確かめ、ゆっくりと腹の中に落とす。


「肝臓の刺身。食感は良好。しかし、臭みがある。悪意に満ちた人間特有の、独特の臭み。これは……(こう)(おつ)(へい)ならば、(おつ)といったところでしょうか」


 少し不満げに怪異はそう言って、次の料理に移った。


 目玉のソテー。


 怪異はそれをゆっくりと口に運んだ。


「……うーむ」


 怪異は少し考え込んだ。その表情からは先ほどと同様、僅かに不満が溢れている。


「目玉のソテー。食感は面白い。プチプチとした感触が楽しめます。しかし、やはり臭みがある。これも(おつ)。残念ですね」


 怪異はそう言って、次の料理に移った。


 心臓の薄切り。


「……これは」


 怪異は眉をひそめた。ため息を吐いて、口を軽いナプキンで汚れを落とすように拭く。その様子は高級フレンチを食べているかのようだ。


「心臓の薄切り。本来ならば、最も美味な部位のはず。しかし、この臭み。悪意が、心臓にまで染み込んでいる。これは……(へい)、いえ、(へい)という評価にも至らないでしょう」


 怪異はそう言って、次の料理に移った。


 腎臓の前菜。


「……同じく、臭みが強い。(へい)


 またしても満足のいく料理ではなかったようだった。料理について怪異は低い評価をつけ、最後の料理に移った。


 太腿のステーキ。


「……これも」




 ──最後の料理さえも、満足ができない。怪異はため息をついた。



「太腿のステーキ。本来ならば、最も柔らかく、美味な部位。しかし、この臭み。悪意が、全身に染み込んでいる。これは……(おつ)が限界でしょう」


 怪異はそう言って、箸を置いた。全て食べ終わっているがそれでも不完了といった様子だ。


「残念です。五人とも、(こう)には至らない。悪意に満ちた人間は、食には適さない。臭みが強すぎる。しかし、食べ物を粗末にするのは良くない。全て、頂きましょう」



 怪異は丁寧に、一切れ一切れを味わいながら食べていった。

 


 ふと、遠くを見るような目をした。



「……やはり十年前のあれには及びませんね」



 怪異は懐かしそうに言った。


「高潔な方でした。白い髪、黄金の瞳。美しく、そして心も清らかだった。あの時の味は、今でも忘れられません。完璧な(こう)。完璧な味でした」


 怪異は目を閉じ、思い出すような表情を浮かべる。そして、思わずニヤリと口元を歪ませた。


「あれに比べると、今日の食事は……劣りますね。やはり、高潔な人間の肉が、最も美味なのでしょう」


 

「──やはり、食べる人間は選別しなくてはなりません」


 


 怪異はそう言って、立ち上がった。そして、その場から離れていく。



 この怪異が食したのは自身で仕留めた三人のみ。悪魔のような風貌の怪異に殺された人間二人の死体はそのまま取り残された。

 




◾️◾️


 怪異が去った後。


 浜辺に、一人の男が現れた。


 島の住人だった。五十代ほどの男で、作業服を着ている。男は桐生と沢村の遺体を見た。


 そして、小さく息をついた。




「また、島守様がつまみ食いなさったか」



 男はそう呟いた。その声はまるで日常を語るかのように、淡々としていた。



「まぁ、島の住民ではないからよいか。島の外から来た者も不幸だったな。何か目をつけられるようなことでもしたんだろう」


 男は淡々と言った。そして、男は携帯電話を取り出した。


「もしもし、警察か。島の外から来た人間、五人が死んだ。ああ……そうだ。島守様がつまみ食いなされてた」


 男はそう言って、電話を切る。そして、男は浜辺を後にした。月明かりが遺体を照らしている。波の音だけが、静かに響いていた。




 饗島の夜はこうして過ぎていく。


 


 ──島守様の支配する、この島で。


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