第25話 現代の異端
──まさに、唐突に現れた化け物。
斬り裂かれた怪異は、最初から存在しなかったように霧となって消えてしまった。
刀身についた汚れを払うように軽く振ってから、黎明は刀を鞘に納めた。
あまりの非現実的な出来事に双子は何も口にできない。それゆえに沈黙が場を支配している。
寂れた家の中には壊れた壺の破片、割れた樽の木片が散らばっている。それを見ながら息を呑んだ双子は、黎明を見据えている。
何事もなかったように刀を鞘へ戻す白銀髪の少年――朝霧黎明。
安倍蓮は目を見開き続け、黎明の姿をしっかりと視界に収めていた。万が一でも、こちらに襲ってきた際、動けるようにしておかなくてはならないからだ。
無論、黎明が本当に襲い掛かれば常に視界に収めていようが、収めてなかろうが関係はないが。
先ほど、黎明が怪異を倒した際に行った、恐ろしく速い手刀。それを見逃している二人だ。
だから、警戒をしていても意味がないのだ。
しかし、安倍蓮は警戒の視線と同時に、凄まじい好奇心の視線も向けていた。
──なぜなら、彼は、幼い頃から、怪異から人間を救いたいと願っていたからだ。
しかも、封印という延命の手段ではなく、怪異を抹殺するという手段でだ。
(人間が怪異に勝ちやがった……)
「……おい」
わずかな沈黙を破り、最初に声を出したのは蓮だった。喉が乾いているのが分かる。言葉の割に、声音が震えていた。虚勢を張るように、短く吐く。
「お前……何者だ。今の、どうやった」
「ん? モンスター倒しただけだけど」
「モンスター? さっきもそう言っていたが、あれは怪異だろ」
「モンスターでしょ。でもまぁ、そういう呼び名の人も結構いたね。ただ、モンスターの方が正式だと思うけどね」
その返答に蓮は首を傾げる。あまりに強すぎる力、そして、それをなんとも思っていないふるまい。それが不気味にも見える。
しかし、顔立ちは本当に若い人間。年は、蓮と近い。だからこそ、蓮はますます興味を持った。
「……本当に、何者なんだ」
「東雲黎明、職業は勇者」
「職業……仕事ってことか? そんな仕事あるのか?」
「あー、なんて言えばいいのかな。仕事とかじゃなくて、今の自分の戦闘での役割って意味かな?」
「……あれか、ゲームの魔法使いとか戦士とか」
「そうそう」
そんな概念、聞いたことがない。なんだこいつ、頭がおかしいのか?
と蓮は考える。しかし、意思疎通ができている感じ、人間なのは間違いないかもしれないとも推測していた。
(割と、話をできている? 一瞬だが、頭おかしいとは思ったが……割と。いや、冷静に考えたらゲームの概念を現実に当て嵌めてる時点でおかしい……?)
そもそもゲームの概念を現実に持ち出している時点で頭おかしい気がする。
これは大正解である。普通に頭おかしい。
怪異とは絶対人間には倒せない。霊格において、人間よりも上の存在なのだ。それが存在する世界に対し、ゲームの概念を持ち出す。
普通にやばい存在である。
しかし、実力は本物である。同時に、それこそが求めているものであるため、蓮は混乱しながらも、対話を試みる。
「……いや、なんでゲームの概念を持ち出してるんだ? 意味がわからないんだが」
「いや、ゲームに似てたから。モンスター倒したら、経験値もらえて強くなる。魔法使える、モンスター倒したら、新たに強い魔法も使える。ほら、ほぼ一緒」
「……? いや、そう、なのか? オレの感覚が間違ってて、いやでも、一族全員そんなこと言ってなかったが、いやでも、怪異を倒した存在に異議を唱えるって、素人がプロに意見するのと同じか……?」
普通に考えれば黎明の考え方が間違っていると誰もが考えるだろう。
しかし、蓮が考えた通り、倒せる存在に対し、倒せない者が意見をするのはおかしい行為だ。
それはプロに対し、素人が意見している構図と似ているからでもある。
ただ、黎明の場合、普通に勘違いであり、頭がおかしいのも事実であった。
(あ、あれ、オレが間違ってる?)
いや、間違っていない。正解している。蓮は正しい。
しかし、彼は迷っている。圧倒的な存在を目の前にして、自分の考えが揺らいでいるからだ。
ただ、そんな必要はないのだ。
そもそも蓮は安倍家と言われる、安倍晴明の子孫の末裔。
この日本で最も優秀な陰陽師の一人として、数えられてもおかしくはないからだ。
歴代のノウハウ、積み上げてきた歴史、それらを加味すれば蓮の考えが間違っているはずもない。
だがしかし、それでは怪異は倒せない。
だからこそ迷う。自らの常識の外側から来たような人材に。
そして、その人間は自らが欲している力を持っている。その考えに同調をすべきなのか、それとも今までの経験で間違っていると言うべきなのか。
「もう少し、詳しく……」
その瞬間、紅が一歩前に出て、蓮の肩を掴んだ。
「蓮。近づきすぎないで」
「姉ちゃん、でも――」
「……見たでしょ。あれは、人間の動きじゃない」
紅の視線は黎明の元に向かう。どこからどう見ても普通の少年。にも関わらず、あの恐ろしい怪異を圧倒した。
それが逆に不気味である。不気味がっているのが思わず顔に出てしまうほどに、彼女は黎明を恐れていた。
紅は、気遣う素振りや相手を不快にさせない態度を心がけている。理由は弟のためだ。
家族がほぼ死んでしまい、弟とずっと二人きり。そんな環境の中で彼女は、弟だけは守らなくてはならない。そんな意識を持っているからだ。
当たり障りのない処世術で、敵を作らない。弟にも敵意を向けさせない。そんなことを無意識に行なっている。
──けれど今は、それが出てこなかった。冷静であろうとするほど、胸の底が冷える。
「黎明くん」
警戒するような呼び声が距離を測るように響いた。
「あなた……本当に、人?」
「そうだよ。モンスターに見える?」
「……見えない。だから、聞いてるの」
紅は小さく息を吸い、喉を整えた。
「ねえ。私たち、陰陽師なの。安倍家の、末裔。安倍晴明は聞いたことある?」
「あー、聞いたことあるね。モンスターを封印するのが得意な人でしょ?」
「……うん。その安倍晴明の子孫が私たちなの」
「あ、そうなんだね。へー。そうなんだ。ふーん。重要なキャラっぽい感じするね」
黎明は淡々と会話をしながらも、二人を観察していた。二人の霊力は黎明、いや、志乃や志麻にすら全く届かない。それほどまでに微弱だった。
(うーん、確かに重要そうな感じだけど。それにしてはあんまりMPとかも無さそうだし。あれかな? 後天的に強くなるタイプなのかな? 才能はどれくらいかなんて、わからないよね)
黎明の無邪気な反応が、紅の背筋をさらに冷やした。知らないのだ。この世界の常識も、陰陽師が何を背負っているかも。少年の目は、怪異を見た人間の目ではなく、狩りを楽しむ子どものような目だった。
しかし、そのタイミングで蓮が、紅の手を振りほどくように前へ出た。
「姉ちゃん、いい。オレが聞く」
「ダメ、危ないから。私の言うことを聞きなさい」
「もし、こいつが悪意ある怪異だとして。どうせこの距離なら、死んでるだろ」
「それは、そうだけど」
「だから、大丈夫。知りたいんだ。怪異を倒す、その実力の秘密を」
声は落ち着いているように装っていた。けれど袖の中で、手が微かに震えている。蓮も目の前の存在が異質であり、未知であることで少なからず恐怖を感じていたのだ。
しかし、それを押さえつけるように、拳を作る。
「……お前、東雲黎明って言ったな。年はいくつだ」
「十六歳だね」
「……オレたちの一個下か」
「あ、一個上なんだ」
蓮は一瞬、言葉を失った。紅が蓮の横顔を見る。弟の顔に浮かぶのは、怒りじゃない。混乱だ。そして、ほんの僅かな――羨望にも似た熱。
僅か一年、しかも年は下である、それでこれほどのまでの実力を手に入れられるのか。
それは蓮からすれば、嬉しい事実だった。
「……十六歳。年はオレと変わらない、か……。なら、オレにも可能性はあるのか?」
「……蓮ちゃん、馬鹿なこと考えないで。怪異は倒せないの。封印をする、封印を整える。それがアタシ達の役割でしょう」
「分かってる。けど、封印をずっとしたって、根本的な解決にはなってないだろ。それに今、こいつは倒した」
「例外中の例外よ。それに、さっきの怪異は弱ってたのかもしれないし」
「弱ってても倒せてることには変わりない」
黎明に可能性を見た蓮、その可能性に対して危険だから手を伸ばさない欲しい紅。
二人の葛藤と迷いの隣で、黎明はそんなことを気にせず周辺に意識を向けていた。
(MPが蔓延してて、方向が分かりづらいねー。山神と戦った時と同じ感じだ。スザクは結界とか言ってたっけ? でも、これって特殊ダンジョンみたいな感じではワクワクするね)
(条件達成までは出れないとか。ボス倒さないと出られないみたいな感じかな)
(山神の時も倒したら戻ったしね。ってなると、ボスモンスターが居るんだろうけど。ここはMPの蔓延がひどいせいか、分かりづらいな)
(俺だけなら、あたり一面を魔法で無理やり吹き飛ばすとかも出来るけど。双子が居るし……それに)
(《《他にもかなりの人間がいるみたいだしね》》。それが巻き込まれちゃうと、ちょっとね。地道にボスモンスター探そうかなー)
黎明は二人を気にしてないが、双子は異常なまでに黎明を気にしていた。黎明は強すぎる。
もし、彼が僅かにでも悪意を持った瞬間に死が待っている。
警戒をする紅と黎明、色々と掛け合いのあった二人だが、蓮が強引に話を引き戻した。
「黎明、お前はどうしてここにいる。この廃村がどういう場所か知っているのか?」
「詳しくは知らないけど、探索で来たんだー。ほらMPが乱れてる感じあるし」
「探索……? よく単独で来れるな、そんな呑気な感じで……いや、まぁ、それだけ強いからなのか?」
「まぁ、じーちゃんは俺を天才って言ってたしねー」
「……そうか、この場所、清泪村はどうやって知ったんだ? 知り合いに陰陽師でもいたか?」
何気ない会話だが、黎明は少しだけ解答に迷った。なぜなら、詩には自らのことも、あまり明かすなと言われているからである。
一応、黎明は詩の弟子ということで、陰陽師登録が先日されている。だからこそ、刀の持ち歩き許可が出ているのだが。
だとしても、ここで今、詩の名前を出すべきかは迷っていた。
「いや、一人で。全国を旅してるからさ。全国のモンスターを倒しまくって経験値を集めるのが俺の旅の目的でもある」
「……そんな旅、するやついるのかよ。ま、まぁ、そうか。教えてくれて、ありがとうな」
苦笑いしながら蓮は礼を言う。マイペースで呑気な黎明に少しだけ心を許したような感覚になっていた。
一応だが、黎明は嘘を言っている。しかし、黎明は割と嘘でも淡々という性格なので、嘘であると思われることはなかった。
それに、ここまで圧倒的な強者が自分たち弱者に対して、わざわざ嘘をつく必要もないと蓮も感じていたというのもある。
正直者の強者。それゆえに蓮は黎明に対して、
──警戒を僅かに解いていた。
──もしかして、彼は悪い人間ではないかもしれない
(なんか、悪いやつではない? 本当にただ強いだけの子供では? そうか、ただの強いだけの子供か……)
──もしかして、彼は悪い人間ではないかもしれない
(いや、冷静に考えて、怪異を倒せる一個下ってやばいだろ。待て待て、落ち着くな。さっきの怪異、霊格だって穢れよりは上な感じがしてた。それをあっさり倒すって……やばいだろ。でも、悪いやつではなさそうだが)
──やっぱり、彼はやばい人間かもしれない。悪い人間ではないとは思うけども。
それが彼の抱いた感想だった。
色々と思考を巡らせる蓮。その次に紅が、蓮の前に半歩出る。庇うというより、制止するために。
「黎明くん。あなた、ここが何か分かって来てる?」
「廃村でしょ。人がいない。だから好きに探索していい場所。モンスターもいる。倒していいんでしょ」
「え、えぇ、そうだけど。その、危険な場所なのに。一人で来たのね。その、ご両親とかは?」
「うーん、いないかなー」
「……そう、ごめんね。変なこと聞いちゃって」
「いや、大丈夫。でも、じーちゃんとばーちゃんに育ててもらったよ」
「そう……」
少年は当たり前のように言った。紅も接していてなんだか、悪い人ではない気がしていた。ただ強いだけで。
(なんて言うか、悪い子ではない気がするわね)
──もしかして、彼は悪い人間ではないかもしれない
(悪い子ではないのは分かる気がするわ。話していると意外と普通の感じもするわね。ただ、怪異を倒せるだけで……いや待って、怪異を倒せるってやばいから)
──あれ、やっぱり、やばい人間じゃん。
そう、彼女の中で結論が出た。
(危ない危ない、両親がいないってことで親近感を感じていたわ。危ない危ない。気を引き締めないと)
(あれ、でも、これぐらい強い存在に気を引き締めようが、緩めようが死んじゃう? あれでも、引き締めないよりはいい……?)
紅も現実離れした強さに、何がなんだが分からなくなっていた。だからこそ、ここで一度冷静にならないといけない。
紅が息を整え、冷静さを取り戻そうとした、その瞬間だった。
空気が、歪んだ。耳鳴りとも違う。音ではないのに、脳の奥を直接引っ掻かれるような感覚。肌にまとわりつく霊力が、一気に濃くなる。
「……来るね」
黎明が低く呟いた。
その直後。黎明は家から飛び出す。
すると霧に囲まれた木々、その裏から、ぬるりとそれは立ち上がった。
人の形をしている。髪もあり、鼻もある。だが、顔の両目と口――三箇所が、底の見えない黒い穴になっていた。
不気味な立ち姿、その怪異からは異様に邪悪な霊力が満ちている。
「……っ!」
蓮が息を呑む。紅の背筋が凍りついた。霊格【怨霊】。明らかに、通常の怪異とは格が違う。
二度目の対峙にて、双子は悟る。
勝てるはずがない。
その瞬間――視線が、合った。紅の身体が、完全に硬直する。指先一つ動かない。声も出ない。
呼吸だけが、異様にはっきりと聞こえる。
(な、に……これ……!)
金縛り。いや、それ以上だ。存在そのものを縫い止められている。動けない状態の二人に対して呪喰は、ゆっくりと歩き出した。
土を踏みしめるたび、空気が軋む。
ゆっくりと死が近づいていくる感覚が、二人の恐怖を増幅している。
しかし――
「へぇ」
その声で、紅の世界が揺れた。黎明が、一歩前に出ていた。
「このタイプかぁ。目でバインドする感じね。まぁ、ありがちだけど。耐性ない二人にはきついのかなー」
「……れ、黎明……!」
「MPでバインドしてるから、同じようにMPで跳ね返したり、ヒールを使ったりすればいいんだけど……まぁ、無理そうだね」
蓮も動けない。声が出ない。なのに、黎明だけが、自由だった。呪喰にはある能力が三つ備わっている。
そのうちの一つ。
顔にある二つの穴、両目の穴は【対象の動きを止める】。
目が合った相手の身体は、一瞬で硬直する。金縛りのように動けなくなる
声も出なくなる。呼吸だけはできるため、生きたまま恐怖を味わうのだ。
かろうじて、声が出せている二人は流石は名家の子孫ということだろうか。
しかし、そんな常識とかは全部関係がない。
黎明は当然のように、体を動かす。
「あ、ちょっと待ってて。数秒で終わるからさー」
「「……っ」」
「絶対に動けるようにするから、待ってて」
二人は動けなかった。でも、自然と安心感が心に湧いたのだ。あの少年は嘘は言っていない。
心の底から、そう思ったのだ。
「じゃ、行こっか」
刀が、抜かれる。
二人は動けないが、目を凝らすようにじっと黎明を見つめる。黎明のすべての行動を見逃さないように。
──は?
驚愕、それに尽きた。
気付けば、黎明は刀を振り終えていた。黎明は特別なことをしていない、手刀で怪異を仕留めた時と同じ。
ただ、素早く攻撃をしただけである。
だが、凄まじい速度の攻撃を二人は視覚に捉えられない。
(こいつ、なんの術を使った……? 気付けば、怪異が斬られてたぞ……? 自分の速度を上げる効果を付与してた? いや、だとしても、知覚すらできないほどなのか……?)
蓮は勘違いをしている。黎明がなんらかの術を行使していると考えているが、それは大きな間違いでもある。
──数秒前、黎明は刀を抜いている状態。
そこから、振りかぶり、一瞬だけ霊力を身に纏い、体を強化し振り下ろす。ただ、それだけだ。
神速の一閃。それにより呪喰の胴が、真っ二つに裂けたのだ。悲鳴も、抵抗もないまま、黒い霧となって消滅する。
――だが。
霧として霧散する直前。
『■■■■■■――!!』
言葉にならない咆哮が、村中に響いた。
──次の瞬間。別の影が、木々の裏から立ち上がる。同じ顔。同じ、三つの穴。
怪異の呼び声に応え、次々と集まってくる。これこそがもう一つの恐ろしい特徴。非常に強力な怪異にも関わらず、数も多く、さらに仲間を募ろうとする。
この場所に留まっているのが一つの奇跡、こんなのが人間社会に出てしまえば、被害は甚大となることは確実。
「……お、新しい個体が」
──黎明の目が、きらりと光った。さらに嬉しそうに笑っている。
「やっぱそうだ。戦闘中に仲間を呼ぶタイプ! さっきも呼んでたし!」
紅と蓮は、理解が追いつかなかった。常識的に考えて、怪異が現れて喜ぶ人間はいない。
(……呼ぶ……? それって嬉しそうに話すことかしら?)
(それ、嬉しそうにいうことじゃないだろっ)
((──今、喋れないからつっこめないけど))
明らかにおかしい状況。しかし、二人は話せないのでツッコミが不在となった。
ツッコミ不在の中、黎明は、嬉しそうに刀を構え直す。
「経験値、美味しいやつじゃん。」
次の呪喰が、視線を向ける。だが――
「はい、次!」
呪喰が近づくよりも早く、黎明の斬撃が先に届いた。そして、再び消滅。その前に咆哮をして新たな呪喰を呼ぶ。
呪喰A、呪喰B、呪喰C、呪喰Dと次々と増えていく。
「お、増えたー、ラッキー」
呪喰A、呪喰B、呪喰C、呪喰Dは次々倒れていく。黎明がガンガン倒していくからである。
それを、黎明は繰り返した。まるで作業のように。効率を測るように。
「もっと効率よく、倒したいなー。どうすればいいんだろう? あれか、殺さず、ギリギリのところで生かして仲間を呼べばいいのか! 天才か!? やっぱりゲームでも裏道みたいなのを思いついた時が一番面白いよねー」
黎明は自覚がないが、彼が成したのは偉業とも言える行為だ。あの量の怪異を封印ではなく、倒すのは人間には不可能である。
倒すのは無理として、封印する場合でも多大なる犠牲がかかるはず。
もし、並の陰陽師集団であれば、百人近くが死んでいたのは確実だ。
それほどの功績なのだ。
それを間近でみて、安倍家の二人は驚きを持つ。
(……おい、あれ本当に人間かよ。実力が異次元すぎる……あと、いつまで戦ってるんだよ!! 動けねぇ!! まさか、オレたち忘れられてる?)
(あれは間違いなく、霊格は穢れよりも上のはず。それを封印ではなく、祓うだなんて。もう、人間の枠では測れない存在なのはいうまでもないわ……ただ、悪い存在ではない、のかしら? それなら、そろそろ動けるようにしてくれないのかしら……?)
動けない二人を黎明は一時的に忘れていた。黎明はしばらくレベリングに勤しんだ。
合計で呪喰を二十体を倒した。
「アンブラマンAからアンブラマンTまで沢山来てくれて、運が良かったなー」




