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救いない怪異の世界をRPGの世界と勘違いしてるやつ  作者: 流石ユユシタ
第1章 山神編

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幕間 黎明と志乃

 山神の討伐後。志乃は黎明と一緒に町を歩いていた。理由は単純にお礼がしたかったからだ。



 黎明に何かお礼をしたいと言ったら、夜に一緒に町を回ってくれと言われたので、一緒に回っている。




「志乃が居ると、やっぱりモンスターが寄ってくる気がするよ。ありがとね。流石だ」

「へ、へへ、よ、喜んでもらえて嬉しいです……」





 志乃は褒められて、ニヤニヤしており、顔も赤くなっている。怪異が寄ってきて、褒められるなんて人生で経験がないからである。





「あ、そうだ。ちょっと行きたい場所があるんだよね」

「え、ど、どこですか?」

「廃病院。あそこも結構モンスターが湧いてさ」

「あ、そ、そうなんですね」

「前なんて『ようこそ』、『いらっしゃい』、『まってた』って書いてあったんだよね。歓迎されてる感じ」

「……あ、そ、そうですか」





 志乃は思った。





(それって、よくある幽霊とかが人間を驚かすためにやるやつじゃ……。スザクさんが怪異は人間の恐怖を元に生まれるって言ってた)



(多分、そうやって驚かせて人間から恐怖と霊力を吸おうとしてるのかな? 黎明さんには全然効いてないけど)





 志乃は、きっと怪異の仕業で歓迎しているわけじゃないんだろうと悟る。しかし、それをわざわざ口に出して伝えるのも違うと思い、黙った。


 彼女はだんだん空気が読める子へと成長をしているのだ。



◾️




 二人は廃病院に到着した。真夜中なのに全然怖くなくて、志乃は不思議な気分だった。




「ほら、着いた」

「あ、着きましたね」

「今回も歓迎の文字とかあるかな?」

「歓迎、されてるといいですね……」




 二人が廃病院の入り口に行くと、確かに何か文字が書いてあった。



『ニドモクルナ』

『デテケ』

『シネ』




 と罵詈雑言の嵐だった。志乃はそれを見て、黎明を歓迎しない怪異の仕業だと思った。




「あ、えと」

「前と文字が違うみたいだね。多分、これ元々落書きなんじゃない? 前に俺が水の魔法で洗い流しちゃったから、また落書きしたとか?」

「え、えと、そうかも、ですね」

「廃病院だし、不良の溜まり場みたいなのかもね」

「そ、そうですね」





 そう言って、黎明は再び水の魔法で病院の赤い文字を消し始めた。なんかシュールな映像だなと志乃は思った。


 そして、黎明は汚れを全て落として、廃病院へと入っていった。





「やっぱ、モンスターいるなぁ」

「そ、そうですね」

「ちょっと怖い?」

「さ、流石にちょっとだけ」

「じゃ、手を繋ごっか。詩は家でも夜だと手を繋ごうって言ってくるんだ」

「え、詩さんって、そんな感じなんですか? な、なんかそういうのしない人かなって思ってて」



 志乃は詩がイメージと違って少し首をかしげる。志乃の中ではクールで、孤高な人のような気がしてたのだ。



「詩は手を繋ぐよ。最近知り合ったばかりだけど、昨日とか寝る時とか、ちょっと怖いテレビ見る時とか、初めて一緒に夜歩いたりした時とか」

「あ、え、そう、なんですか? 厳格そうな感じだったのですが……それとなんで怖いテレビ見るんですか? 怖いなら見ない方が……」

「詩はモンスターの勉強したいんだって。だから、怖いモンスターのテレビ見るようにしてるんだってさ」





 美人だが怖い顔のイメージで、厳格そうな雰囲気があった。しかし、実際は違うのかなと? 志乃は詩のイメージを変えることになる。






「そ、それじゃ、私も……」

「うん。いいよー」




 志乃は黎明と手を繋いだ時、心臓が跳ねた。生まれて初めて、異性の手を握ったからだ。そもそも、家族以外と手を繋いだことなど彼女は経験がない。




「あ、えと」

「どうしたの?」

「あ、いや、その、硬いですね。手……」

「鍛えてるからねー」






 黎明の手を握りながら、彼女は廃病院を進む。黎明が怪異を祓う姿を目に収めるが、手の感触のことしか考えられなかった。




 その日、廃病院から、完膚なきまでに、怪異は消し去られた。






◾️




 廃病院を去った後、二人は火の鳥様の神社を訪れていた。なぜその場所に向かったのか、理由は志乃が来たいと言ったからだ。





「ここはモンスターが居ないねー」

「スザクさんが結界張ってるみたいです」

「余計なことを……まぁ、セーフティポイントみたいでいいかー。別に疲れてないけど」

「あ、あの、付き合わせてすいません」

「別にいいよ。志乃のおかげで沢山経験値もらえたし」





 志乃は神社の中にある、とある石碑の元まで歩み寄った。これなんだ? と黎明は感じ、目をパチパチさせる。




「これ、お父さんのお墓なんです。スザクさんに許可をもらって、ここに置かせて貰いました」

「そっか。それなら、手を合わさせて貰うね」

「あ、す、すいません」

「いいよー。因みにだけどお墓参りとかしたことなくてさ。どういう感じにすればいいの?」

「え、あ、こうやって手を合わせていただければ」




 黎明は志乃が両手を合わせたので、それを真似をした。前世で一度も、お墓参りをしたことがなく、今世でもずっと山奥で暮らして居たので知らなかったのだ。




 少し、辿々しい感じだがそれを真似して黎明はお墓で祈った。





「あの、黎明さん。ありがとうございました」

「うん、気にしないで」

「私もお姉ちゃんも感謝をしてます。本当に、ありがとうございました。きっと、父も感謝をしてます。さっきの廃病院で父を祓ってくれたのも黎明さん、ですよね?」

「え? 志乃の父親にはあってないと思うけど」

「……いえ、きっと助けて頂いたと思います。あの病院は私が生まれた場所で、未練があった父はあそこに留まって……あ、すいません。意味わからないことを言って。本当にありがとうございました」

「うん、どういたしまして」





 黎明は何も気にしてないと言った表情だった。志乃は深く感謝をし、頭を下げたが黎明が神社を去ろうと歩き出すと、彼女も後を追った。



 神社をさる前に、彼女は一度だけ振り返った。





「お父さん。もう、大丈夫だから。今までありがとうございました。私も前に進むから」










◾️





 それから翌朝。


 志乃は鏡の前で制服の襟を整え、そっと深呼吸した。



(大丈夫……大丈夫……私、変わりたいって決めたんだ)



 山神、怪異との死闘。黎明が命をかけて守ってくれた。スザクがそばにいてくれた。


 志麻も、いつも味方でいてくれた。


 なのに――自分だけが何も変わらず、また部屋に閉じこもっていたら、それは逃げているのと同じだと彼女は思う。



(強くなりたい。ちゃんと前を向きたい。お父さんにも、そう言ったんだから)



 制服の胸のリボンをぎゅっと握り、玄関へ向かう。手は震えていたが、それでも足は止まらなかった。



 中学一年生の時に、行くことを諦めた学校。その場所に彼女は再び、足を向けた。



 また、誰かに否定される恐れはあった。しかし、それでも彼女は前を向いていた。



 そして、狭い部屋を抜け出して、――久しぶりに中学校の門をくぐった。






◼︎



 昇降口の空気は、以前と変わらない。靴箱の匂い、誰かの笑い声、先生の呼びかけ。



 何も変わっていないのに、世界は以前より少しだけ優しく見えた。



 だが――



「は? なにアンタ来てんの?」



 かつて彼女を一番苦しめた女子グループが、すぐに声をかけてきた。嘲笑うような目つき。ぞっとする嫌悪感。



 中学一年生の時――志乃はその視線だけで崩れたのだ。




「なに、今さら学校来てんの? お化け屋敷にずっと引きこもってればいいのに」

「お化けは学校来ちゃダメなんだよー」

「どうせ、すぐ帰るっしょ~」




 言葉のナイフが容赦なく投げつけられる。一瞬、心臓がきゅっと縮んだ。


 だが――





(こんなの……黎明さんが戦ってた怪異に比べたら)





 蜂の化け物、異形になった母、山神の咆哮。それら全てに目の前の恐怖は劣って見えた。



 それを思い返すと、恐怖の波が不思議と引いた。




(あれを見た後で……人間の言葉だけで怖気づいてる場合じゃない……)




 そして志乃の脳裏に浮かぶ。いつも自然体で、どんな怪異も切り伏せる少年の姿。



(黎明さんみたいに――強くなりたい)



 震える唇を噛み、志乃は顔をあげた。



「……私、帰らない。もう逃げない。来たかったから来たの」



 強い声ではなかった。でも、確かに自分の意思で放たれた言葉だった。



「……は?」



 女子たちが一瞬だけ怯んだ。今まで一度も反論したことのない志乃が、反撃したからだ。





「な、なに偉そうに言って――」

「偉そうじゃない。でも……私、あなた達の言葉より怖いもの知ってる。だから、もう傷つかない。私は学校に来るよ」



 淡い声だった。だけど芯のある声。女子グループは顔をひきつらせ、困ったように視線をそらした。


 攻撃が通じない相手――それだけで、彼女たちの優位は崩れた。それだけではない、彼女は無意識に体から霊力を発していた。



 そう、黎明が使っていたように、霊力による威圧行為を覚えていたのだ。



「……勝手にすれば?」




 負け惜しみの声を残し、女子たちは去っていった。静寂。

 


 そのあと――




「……スゲェ。篝火さん、言い返した」

「なんか雰囲気変わったよね? なんかかっこよかった」

「ってか、あの子達に言い返すってすごい」




 周りのクラスメイトが小声で話しているのが聞こえた。志乃は驚きで息を飲んだ。



(……すごいって、言われた……!?)



 胸がじんわり熱くなる。恐る恐る笑みが浮かんだ。




(黎明さん、スザクさん、ありがとう……!)





◼︎





 その光景を校舎の屋上から見ていた影があった。夕陽の色を羽織ったような燃える赤髪――スザクである。



「ふぅん……やるじゃない」



 腕を組みながら小さくうなずいた。



(山神の霊力の呪いが晴れた影響ね。あの神が居た時、この町の人間は無意識に負の感情を抱きやすくなっていた。だから志乃はクラスに馴染みにくかった……それだけの話)

 





 それが消えれば、均衡は戻る。人は本来、良いも悪いも混ぜ合わせて生きている生き物だ。




(全部……あの人間のおかげかしらね)





 黎明――

 


 名前の通り、新たな時代を象徴するような人間を彼女は思い出す。





「大したものね。さて、そろそろワタシも神社に戻ろうかしらね」




 成長した志乃を見て、スザクは微笑みながら、背を向ける。そして、彼女は志乃の学校から去っていった。





 




いつも読んで頂きありがとうございます!


今回にて、第1章が終了となります! お時間をおきまして、2章を投稿開始します。


ここまでで面白い、まだまだ続きを見たいと思っていただければ、★やレビューとかで応援を頂けるとモチベーションにつながります!


いつも応援ありがとうございます! それではまた!

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