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救いない怪異の世界をRPGの世界と勘違いしてるやつ  作者: 流石ユユシタ
第1章 山神編

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第20話 おかえり

 次の夜、影森町はいつもと違った。いつもよりは不気味さが消えていた。それは山神が消えたことに起因している。



 しかし、山神が消えたことで新たにその山に居座ろうとする怪異も現れるため、全く問題がなくなったわけではない。





 だが、以前と比べると願望山には静寂があった。




 全く音がないという意味ではない。犬が遠吠えし、電柱が低く唸り、見えない何かがブランコを押すように動く。そういう種類の、夜のざわめきだけは残っていた。





 その夜を四人は歩道の白線をなぞるように並んでいた。先頭は黎明、半歩遅れて志乃、その後ろにスザクと志麻。



「今夜は効率がいいね。志乃がいるから、モンスター寄ってくる寄ってくる」

「え、えっと……す、すみません……」

「いやいやいや、謝るとこじゃない。嬉しい。でも、なんで志乃に寄ってくるんだろうね。そういう体質なのか、匂いとかなのか? ちょっと匂い嗅がせてくれ。後でいいから」

「あ、いや、そ、その、そういうの恥ずかしいのですが。で、でも、褒められるのは嬉しい……」





 恥ずかしい話、それと矢継ぎ早に褒め倒され、志乃は「へ、へへ……」と困ったみたいに笑い、喉の奥で笑い声を丸めた。



 両手は膝下でそわそわ落ち着かない。顔はうつむいているのに、耳だけがほんのり赤い。




「褒めて伸びるタイプだもんねぇ、志乃ちゃん」




 志麻が肩で小さく笑うと、横のスザクが目を細めた。




「浮ついてないで、霊力について学びなさい」





 そう言うスザクは常に、黎明を見ている。いや、正確には黎明ではなく、彼の霊力の流れだけをずっと観察していた。






「ワタシもそうよ。今日は学びに来たの。ずっと見させてもらうわ」

「いいよ」




 スザクの声は淡々としているが、その奥に熱がある。




 黎明の霊力の巡行(ジュンコウ)




 ――静流と動流。それぞれの同時併用。その無駄のなさ、勾配の付け方。彼女はそれを長い生涯で初めて、自分の課題として認識をする。




「霊力の操作技術もまだまだかしら? いや、アンタは凄すぎるのかもしれないわね。黎明を見ていると到達点が遠すぎるような気がするわ」

「俺はかなりちゃんと修行したからね」

「いや、ちゃんと修行したくらいじゃ無理よ」



 淡々と歩き続けながら、彼等は夜を進んでいく。




「ねぇ、アンタ今までどんな修行してきたの。そんな霊力の流れにならないんだけど」

「MPね。まぁ、反復するしかないかな。それとMPは道具っていうよりは、体の延長のイメージだね。そうだね、この刀あるでしょ」





 そう言って、黎明は刀を地面に置いた。



「これ、スザク拾って」

「え? まぁ、いいけど」




 そう言って、スザクは膝を曲げて、地面に落ちた刀を拾った。そしてそれを黎明に手渡そうとする。




「いや、違う違う、もう一回置いて」





 そう言ったので、スザクは刀を置いた。そして、黎明は手を伸ばす。すると、全く触れていないのに、ゆっくりと吸い込まれるように黎明の手に収まった。






「霊力を伸ばして、先端を手のような形にしてる……?」

「そう。あくまで体の延長だから。常に体の一部みたいに使うのを心がけてるんだよね。偶にMPを手の形にして、それに刀持たせて斬る時もあるね」

「……なるほど。確かに霊力をワタシは御技のための道具と思ってたけど。あくまで体の延長なのね。体の中から溢れるのが霊力なんだから、当然と言えば当然ね。しかし、盲点でもあったわ」

「ご飯食べる時も、箸をMPで持ったりね。最初は上手くいかないけど、自分の手の形を造形するイメージをしたり、寝ている時でも体にMPの流れを纏わせるようにしてた」





 ジッと、見つめるスザクの目線の先。そこには黎明の霊力が滑らかに流れ続けていた。しかし、そこであることにスザクは気づいた。




 黎明の右手。その指のつけ根の部分、そこが裂けたような傷跡があったからだ。





「……アンタ、霊力の修行。ただやってたわけじゃないわね。かなり無茶してたわね」

「あぁ、この傷跡ね。MPを派手に集めすぎると、体が壊れちゃうんだよねー。まぁ、【ヒール】何回もかけたりすれば治るし。それに集めすぎて体壊れたからこそ、【ヒール】効果向上に気づいたってのもあるし」

「……今度、体全部見せて」

「え、いいけど」





 スザクはきっと、彼の体はこれ以外にも傷跡があるんだろうなぁと感じていた。



「でも、頭と顔には傷跡ないわね」

「流石に脳にひび入ったらやばいと思った。だから、頭のMP強化精度は他よりは劣るね」

「ふーん、アンタにも課題があるのね」





 歩き続ける四人。黎明は志乃に寄ってきた怪異を狩り続けて、それをスザクは眺め、志乃と志麻も、観察を続けた。







「ワタシもまだまだって、わけね」





 黎明を見て、スザクは自らの霊力の手本とした。更に、山神の霊力を黎明が押し潰した結果として、彼女の中には黎明の霊力が残っている。



 感覚的にも真似しやすい。これは彼女にとって絶好の成長の機会だと考えていた。




「志乃も志麻も、よく見なさいよ」









──その日は、黎明は合計で四十三体の怪異を打破した。





 黎明は驚いていた。志乃に寄ってくる怪異が、こんなにも沢山いたからである。


 



 しかも、山にいたときは探し回ってようやく三十体ほど。しかし、今回は歩いていただけなのにも関わらず、過去最高の数でもあった。

 


 

 スザクも驚いていた。志乃に寄ってきた怪異、全四十三体を黎明があっさりと打ち倒していたからである。


 黎明の近くにいると麻痺するが、本来なら、1体を「倒す」ことだけでも偉業である。 


 わかっていたことではあるが、改めて「こいつ、本当に人間じゃないわね……」と考えていた。







◾️◾️





──そして、山神討伐後、三日が経過した。




「黎明、居るか」

「おかえりー。(うた)、結構遅かったね」





 黎明の元に、白妙詩(しろたえうた)が帰還した。彼女はスーツ姿で一仕事終えたような表情だった。




「前に言ったように、黎明の戸籍を変えた」

「ほぉー、そういえばそんな話もしてたような。あれ、そもそもなんで戸籍変えないといけないんだっけ?」

「お前のような才能を持つ者を妬む存在がいる。他にも怪異を崇拝する人間も居たりするからな。狙われる可能性もある。変に目立たないように、出自などを真っ当なものに変えておいた」

「おお、そうだった。じーちゃんも力はあんまりひけらかすなって言ってた。目立ちすぎると出る杭を打つような人間も居るって」

「まぁ、黎明に勝てる人間がどれほどかは疑問だが。それでもお前は才に溢れる。万が一にも備えはあったほうがいい」





 褒められると黎明は素直に嬉しそうに頷いた。



「ふむ、褒められると嬉しいもんだね」

「それでだ。朝霧は特に陰陽師と関係が深い苗字だ。だから、お前は東雲黎明(しののめれいめい)という名前に変更した」

「あ、そうなんだ、わかった。もっと、レイメイ・スペルブレードみたいな、横文字を期待してたけど」

「まぁ、我慢するんだな、もう変えてしまったし。それよりも話は変わるが、この町には……山神というモンスターがいるのは知っているか?」





 白妙詩は真剣な表情で、黎明にその名前を告げた。黎明は三日前に倒したなぁと思って、思い出しながら話し始める。




「あ、知ってる」

「……なら、話が早いな。奴はお前の祖父と祖母である、玄蔵さん達が封印している山人喰いと縄張り争いで負けた神だ。負けた神とは言ったが、神と名のつくのが納得であるほど恐ろしい」

「あ、本でも書いてあったね」

「山神を封印するのに、安倍晴明は多大なる犠牲や金銭をかけてようやく封印をした。その後、封印を維持するためにも人柱を出して現在の平和が保たれている」

「あ、スザクがそんなこと言ってたような」

「いいか。今はその神が封印されているからいいが。まだ挑むなよ。文字通り、神だ。人間とは天と地の差がある。一と十というレベルじゃない。零と千と考えるほどだ」

「あ、そう」



 黎明は淡々と詩の話を聞き続けた。絶対にまだ戦うな。そう言う彼女に黎明はすでに倒している事実を告げようとする。





「だからこそ、絶対にまだ挑むなよ」

「うーん、でも……」

「でもではない。神と名のつくものは、そこらの霊とは格が違う」

「そんなに強いとは思えなかったけど……」

「調べ物時点ではそう思えるかもしれん。だが、文章だけで強さを判断してはいけない。いいか……」

「あの、詩」

「お前が戦いに自信をもっているのはわかる。強いのも知っている。だが、世の中には上には上というもの。想像を超える怪物というものがいるのだ。よって……」

「いや、倒したけど」

「そう、倒したといっても、調子にのってはいけない。そこらをうろついてる霊とは格が違って……」

「いや、だから、山神はもう倒したけど」

「そうか、たしかに山神というやつは弱かったかもしれん。だが……うん?今なんといった?」

「山神はもう倒したけど。20mぐらいのでっかい、山にいた神」




 淡々と語り続ける詩。しかし、黎明はようやくそこで山神を倒した事実を話す。




「なに? それは冗談か?」

「違うよ」

「神を倒しただと。いや、まさか、そんな事を……そうか、そうだったか。ふはは、お前はもう倒してしまっていたか。ククク、つくづく規格外だな。お前は……」





 彼女はソファに座りながら、天を仰いだ。黎明が嘘を言っていないことを彼女は直ぐに気づいた。



 それは黎明がそんな嘘をいう人間ではないと、知っているからだった。





「……黎明。色々と聞きたい。少し時間を作れるか」

「いいよー」





 そう言って、彼女はパソコンを取り出した。そして、タイピングをしながら、黎明へと質問を開始する。





「もともと、黎明については現状の情報をまとめておきたかった。だからこそ、このタイミングでやらせてもらう」

「ほほう? ステータス的な?」

「あぁ、そうそう。いずれは山人喰いを倒したいのだろう? 今の実力や、都度の成長度合いなども記録しておいたほうがいいだろうからな」





 今の実力を把握したいというのが九割の理由だが、彼女は黎明の気分が上がるように、否定はあえてしなかった。そして、そこから彼女と黎明は三時間ほど話を始める。




 黎明は語った、山神とそこで出会った、志乃や志麻。そして、スザクのことを。


 前世を通じて、初めて外界とまともに関わった黎明。


彼はこの事件を機に、黎明は世界へ大きく羽ばたいていくことになる。

 だが、それはまだ誰も知らぬ話であった。






◾️◾️






7月23日。日記ではないが、自分用に情報をまとめておく。




◆【書記場所・影森町】


――対象者:朝霧黎明(あさぎりれいめい)

(書記者:白妙 詩(しろたえうた)


■ 基本情報

氏名:朝霧黎明(あさぎりれいめい)

分類:人間(※ただし、霊力量・霊格・戦闘センスは人間枠を逸脱)

年齢:十六歳

身長:現在百六十五cm

体格:細身だが筋肉密度が異常に高い

髪型:腰より少し上ほどまで長い

髪色:白銀

目の色:通常は黒。霊力高負荷時、虹彩に赤色の混入が確認される

服装:祖父から譲渡された和装(赤の小袖+白の袴)。特段霊具でもない服。


■ 性格・行動傾向

自由を求める性格、自分が思うがままに冒険をしたいと考えている。

自分のことを天才であるという自覚はある。しかし、どちらかと言うと祖父に天才と言われ続けたから、それを信じている。


対話において間延びした特徴的な口癖あり。

例:「そうだねー」「分かったー」「じーちゃんが言ってたけどさー」。


『重要』

本人は世界がゲームとよく似ているという誤った認知による、独特の戦闘観が形成されている。





■ 前世関連事項(重要)

本人曰く、中学三年生で死亡をしたとされている。

前世の両親は宗教団体「懐古真理論(かいこしんりろん)」に属していたと本人から語られる。一応調べたが、今の日本にはそのような組織は存在していなかった。


まさかとは思うが、本当に前世があるのだというのか。嘘の可能性も考えはしたが、嘘を言っているようには見えなかった。また、本人からの話も現実味があるような内容だった。


最新機器否定・情報遮断・外界遮断・精神的虐待の環境下で育つ。殴打・熱湯・罰に伴う拘束などが語られた。


また、友人は一人もいない。唯一自由だったのが「父の持っていた古いRPG」。

→ 現在のモンスター観、戦闘観レベル概念はここに起因していると考えられる。しかし、同時にそれが彼自身を大きく成長させている要因でもある。


ゲームと勘違いしているせいか、怪異について恐怖を持っていないことが、最大の強みでもある。





■ 霊力(MP)分析

●霊力総量:常人の約数千倍以上(数万倍の可能性もある)

※判定が難しい。




■霊力操作

感霊(カンレイ)同響(ドウキョウ)まで、ほぼ全段階を完全修得

特に「第五段階の同響」——神であろうが、対象の霊力そのものを潰すという暴挙を平然と実行。





■ 戦闘能力

●使用術の一例

フレアボム(陰陽術炎宝(えんほう)

インフェルノ・フィールド(炎舞円舞(えんぶえんぶ)

イグニス・セイバー(火神刀(ひかみかたな)

フレイム・テンペスト(火浄界(かじょうかい)

ハイドロ・バースト(清砲ノ槍(せいほうのやり)

インナーフォール(霊力の放出)

ヒール(光ノ奏(ひかりのそう)

セイクリッド・ヒール(超光ノ命(ちょうこうのめい)




●技術

ゾーン

本人の調子が最大限に達した状態。黎明は尻上がりに調子を上げる。また、スロースターターであるので、ポテンシャルを発揮するまで時間がかかる。



●必殺技(本人曰く)

イグニッション・カット

イグニス・セイバー(火神刀(ひかみかたな))をしている時に、使用可能。

(ただの上段斬りの可能性あり)


ディバイン・エクスプロード

※ゾーン状態+イグニス・セイバー(火神刀(ひかみかたな))併用時にのみ使用可能。イグニッション・カットの上位版らしい(本人談)

(ただのテンション上がった上段斬りの可能性あり)






■ 結語

黎明は陰陽師・人間・怪異という括りを超えている。しかし、褒められると素直に嬉しそうにしたり、可愛らしい一面もある。


更に、私と同じで寂しがり屋である可能性が高い。一緒に寝た時に、そんな気がしたという個人的な感想でもある。


しかし、前世の境遇などを考えると筋は通っていると考えられる。


結論を言えば、朝霧黎明という少年に危険な点はない。人間に対して、敵意はない。ただ、知識がずれている部分もあり、意図せず害を与えてしまう可能性あり。


この辺りについては、一緒に学んでいきたいと思っている。



という評価で問題ない。



◾️今後について


 山人喰いを倒すという目的があるが、黎明は現在では勝てないと明言している。山に住んでいる時に、一度だけ見たことがあるらしい。

 戦ってはいないが、戦闘になった場合、逃げることはできるが、勝つのは難しいと言っている。


 しかし、数年経てば倒せると明言している。




本情報のまとめは以上。

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