14.みんなが尻込みする
クマ対策における「フリーライド(ただ乗り)問題」は、自治体間の連携を阻害し、問題解決を困難にしている構造的課題の一つです。
クマ対策におけるフリーライドの構造
クマなどの野生動物は行政の境界線を認識しないため、ある自治体が徹底した対策(積極的な駆除、高い報償金、餌付け防止策)を行っても、隣接する自治体が怠慢であれば、その効果は薄れてしまいます。逆に、フリーライドの動機が働きます。
1. フリーライドのメカニズム
側:動機・行動:結果
A自治体:動機: 費用とリスクの回避。 行動: 報償金を安く設定し、猟友会への依頼を抑制する。:クマが近隣へ移動するリスクを負うが、自らの予算支出を最小限に抑える。
B自治体(責任を負う側):動機: 人命保護の責務。 行動: 高い報償金を設定し、積極的にクマを駆除する。:クマの密度が低下し、隣接するA自治体にもその恩恵(クマの出没減)が及ぶ。
A自治体は、B自治体の公費と猟師の労力によって、自らの安全を「ただ乗り」している状態になります。
2. 深刻化する問題点
このフリーライド問題は、以下の点でクマ対策全体を悪化させます。
責任感の低下(「底辺への競争」): 「うちがやらなくても隣がやってくれる」という雰囲気が広がることで、自治体間で報償金の引き下げ競争や対策の怠慢競争が起こり、対策全体が後退します。
負担の集中: 最終的に責任感を持って対策を行う少数の自治体と、その地域の猟友会に、広範囲の駆除コストとリスクが集中し、彼らの疲弊を決定づけます。
クマのホットスポット化: 駆除を避ける自治体の境界線付近が、クマにとっての「安全な滞留地」となり、そこから両側の地域へ出没を繰り返すホットスポットと化すリスクが高まります。
3. 解決策:広域的な調整と責任の移管
このフリーライド問題を解消し、行政の怠慢を防ぐためには、自治体間の自発的な連携に任せるのではなく、より上位の行政機関による強制的な調整が必要です。
都道府県による強制的な広域調整: クマの生息域を単位とした「広域対策協議会」を都道府県が主導し、共通の報償金体系や予算の共同負担を義務付ける。
国の介入(責任のナショナル化): クマの駆除を人命保護に関わる国家的な公務と位置づけ、予算や対クマSWATの派遣権限を警察庁や環境省が一元管理する。
フリーライド問題は、「地方分権と自治体の自己責任」の限界を示しており、クマのような広域移動する野生動物の管理は、国レベルのガバナンスが不可欠であることを示唆しています。




