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運命の番と魔王の戦記~薔薇の鎖の座標(しるべ)  作者: 愛龍


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 大地は、もう一度センリの顎をそっと持ち上げた。


 潤んだ瞳が、真っ直ぐに自分を映している。

 逃げようともしないその視線が、かえって火に油を注いだ。


「……センリ」


「……んだべ」


 返事をする代わりに、今度は最初から深く口づけた。


 隙間ひとつ残さないように、唇を重ねる。

 さっきまでの怒りも、不安も、全部溶かして奪い尽くすみたいに。


「……っ、ん……っ」


 センリの指が、彼のシャツをきゅっと掴む。

 肩が震え、ひつじ耳がぴくんと跳ねる。


 息が続かなくなって、小さく身じろぎしたのを感じてから、ようやく唇を離した。


「……っ、はぁ……はぁ……もう……む、無理っ」


 涙のにじんだ目で睨むように見上げてくる。

 頬は真っ赤で、耳まで熱い。


 大地は、その顔を見てふっと笑った。


「本当に?」


 わざと意地悪く、囁くように聞く。

 顔の距離は、さっきとほとんど変わらない。

 触れそうで触れない―寸止めみたいな近さ。


 センリは一瞬、きょとんとしたように瞬きをしてから、さらに真っ赤になった。


「……っ、そ、そういう聞き方……」


「答えは?」


「…………」


 視線が泳いで、胸元の赤い石をかすかに見下ろす。

 それから、覚悟を決めたみたいに、きゅっと唇を結んだ。


「…………やだ」


 か細い声だった。


 拒絶じゃない。

 “やだ”と口では言いながら、腕は彼の背中から離れない。


 大地は、胸の奥がずきりと甘く軋むのを感じた。


「やだ、か」


「……やだべ。……離れろって意味じゃ、ねぇけど……」


 最後の方はほとんど囁きで、言い終わると同時に、センリは大地の胸に顔をうずめた。

 ひつじ耳まで埋めようとする勢いだ。


 その仕草が、可愛くて、どうしようもなく愛しくて―大地は、笑い声を喉の奥でかき消した。


「なら、離れない」


 耳もとで静かに言って、そっと抱きしめ直す。


 今度の口づけは、さっきよりも少しだけ優しく、けれど長く。

 求めるよりも、確かめるように重ねる。


 窓の外では、星がゆっくりと流れていく。

 薔薇の鎖が、二人の手首の下で淡く光り、

 胸元の赤い石が、小さな心臓みたいにちいさく脈打っていた。


 器なんかじゃない。

 奪われるものでもない。


 こうして腕の中で震えて、しがみついて、

「やだ」と言いながら離れない―


 その全部が、“俺の番”だと、

 大地はもう、骨の髄まで知っていた。


 センリの首筋に、熱いものが触れた。


「……っ」


 びくん、と身体が跳ねる。

 ひつじ耳が勝手に震えて、またセンリはシャツをぎゅっと掴んだ。


「だ、め……」


 首筋に落ちる口づけは、さっきまでの怒りを忘れさせるみたいに甘くて、くすぐったくて、どうしようもなく力が抜ける。


 大地の唇が、首筋をなぞる。

 言葉の合間に、ふっと熱い息がかかって、センリの背筋がぞくりと震えた。


 

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