表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の番と魔王の戦記~薔薇の鎖の座標(しるべ)  作者: 愛龍


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/41

17

 ざわめいていた会議室が、咲彩の一言でぴたりと止まった。


「私には番はない」


 白と金の礼服の少女は椅子からすっと立ち上がる。

 黒い瞳が、真正面から貴族たちを見据えていた。


「だが婚約者は―もう決まってる」


 言葉を区切るように、一拍おく。


「吸血鬼の女王と、エルフの王子を娶る。

 後継なら、充分だろ」


 会議室の空気が、一気に揺れた。


「光皇様……!?」


「そ、それは、両国との同盟のための“仮定”の話であって―」


「仮定じゃないよ。正式に話は進めてる」


 咲彩は淡々と続ける。


「吸血鬼の女王も、エルフの王子も、種が違う。

 けれど私の魔王種としての力は問題ないし、国を背負う覚悟もある。“種の存続”って言うなら、黒の王国はもうとっくに十分なカードを持ってる」


 椅子の背に手をかけ、身を乗り出す。


「それでも、まだ母さんを“器”扱いしたいのか?」


 誰も、すぐには答えられなかった。


 吸血鬼―夜を統べる古い一族。

 エルフ―長命で、精霊と深く結びついた森の民。


 双方と結ぶ婚姻は、確かにこの上ない同盟となる。

 そしてそこから生まれる子は、血筋だけ見れば申し分のない“後継”だ。


 だが、貴族の一人が、なおも食い下がる。


「も、もちろん、それらも尊き血には違いありません。しかし……やはり魔族は、魔族同士の血を―」


「だからさ」


 咲彩は、そこで言葉を切った。


「私が番を持たない限り婚姻は“政略”と“責務”で済む話だ。

 でも、父さんと母さんは違う。

 あの二人は、運命の鎖で繋がってる」


 視線が、センリと大地へと向く。


 センリは驚いたように目を見開き、

 大地は静かに目を細めた。


「運命の番を、“国のため”“種のため”って理由で切り離そうとするなら――」


 咲彩は一人ひとりの顔を見渡しながら言った。


「それはもう、“黒の王国の未来を案じている”なんて綺麗な話じゃない。ただの横取りだよ」


 言葉の刃が、会議室の空気を切り裂く。


 呑まれそうになった貴族が、必死に反論を探す。


「で、ですが、我々は決してセンリ様を軽んじているわけでは―」


「軽んじてないなら、“器”って言葉は出てこないでしょ」


 ぴしゃりと言い切る声。


 そのとき。


「―そこまでだ、咲彩」


 静かな低音が、場を制した。


 大地が立ち上がったのだ。


 軍服の裾が揺れ、椅子がきしむ。

 赤い瞳が、会議室全体をゆっくりと見渡した。


「続きは、俺が言う」


 咲彩は一瞬だけ父を見ると素直に席へと腰を下ろした。


(……親父、頑張れよ)


 2人の薔薇の鎖が、袖の下でかすかに鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ