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短編

星を拾う子供たち

作者: 月蜜慈雨
掲載日:2025/06/13




僕が引っ越し先の町では、こんな伝説があった。ある満月の夜に、子供にしか見えない流れ星が大量に流れる。その流れ星に願うと、寿命が10年縮む代わりに、なんでも願いが叶うという。



だから、満月の日は外に出てはダメよ、なんてお母さんが言ったから、僕は絶対行こうと決意した。



妹の四葉は、身体が弱い。正確には心臓が悪いそうだ。大人になるまで生きられるか分からない。これまで何度も入退院を繰り返している。



僕は四葉が好きだった。舌ったらずな声でお兄ちゃんと呼ばれると、なんでも叶えてあげたくなってしまう。



だからこの満月の日、ちょうど親が親戚の葬式に出かけた今日がチャンスなんだ。

僕が出かける準備をしていると、四葉が問いかける。


「お兄ちゃん、どこ行くの」

「四葉も行こう」

「だって満月の夜は外に出たダメだってお母さんが」

「だからだよ」


四葉は賢い。僕が何をするのか、すぐに分かった。


「お兄ちゃんが行くなら、私も行く」


 

四葉も出かける準備をした。

たとえ10年、寿命が縮んだっていい。

僕が、四葉の未来をひとつ分けてあげられるなら。


2人で手を繋いで、星がよく見える近くの公園に出かけた。


「こんな風に、お出かけするの久しぶりだね」


四葉はそう言って、嬉しそうに笑った。


「これからは、もっといっぱい出かけることが出来るぞ」


僕がそう言うと、四葉は少し悲しい顔をした。


「お兄ちゃんが犠牲になる必要なんてないんだよ」


僕は握った手を強く握り返した。


「これはお兄ちゃんのエゴなんだ。だから、四葉は何にも思わなくていいんだ」


そう言うと、四葉は黙って少し下を向いて歩いた。

公園に着く。

角にあるベンチに2人で座った。

2人で空を見上げた。

何の変哲もない、ただの夜空だった。




伝説は伝説だったと落胆した、次の瞬間、極彩色の流星が空を横断した。

空にいっぱい、流れ星が流れた。

その一筋が、僕の手の中に落ちた。

ぐっと、それを飲み干す。

その瞬間、胸の中が温まって、光が僕の身体を巡った。今ならなんでも出来るような、そんな力さえ湧いていた。

僕は四葉の手を握った。

その力が行き渡るように。

四葉の蒼白い顔が、少し赤みを帯びた。


「お兄ちゃん、ありがとう」


四葉の甘やかな声は、鼓膜を深く響かした。


「いいんだ。こんなこと、なんたってことはないさ」


僕はカッコつけていった。

そして、大人たちに見つかる前に 、2人で家に帰った。




月は道を照らしていた。まるで僕たちのことまで、やさしく照らしてくれているようだった。


「お兄ちゃん、あのね」


四葉が言う。


「お兄ちゃんは、私が看取るね。私絶対、お兄ちゃんより長生きするから」


涙声で、四葉は俺を見上げた。 


「生意気な!」


そう言って四葉の頭をぐちゃぐちゃに掻き回した。

やめてよお兄ちゃん、なんて元気になった声がすることに、安堵した。

明日死んでもいいんだ、俺は。

そう思えるくらい、お前が大事なんだってことを、少しだけ分かっててくれよな。



空には、まだ流れ星が静かに流れていた。

その下で、月は変わらず、僕たちの帰り道を照らしていた。






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