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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。3  作者: こーの新


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 夜中、ジェマは拳を突き上げた。



「出来たっ!」



 その声に驚いてジェットが飛び起きた。ジェマの様子を見ながら書物を読んでいたジャスパーは慌てているジェットを見て小さく笑った。



「ジェマ、ジェットが可哀想だ」


「あっ、ごめんね。完成したから、つい……」



 ジェマは申し訳なさそうに肩をすくめる。ジェマが座っていた作業台の上には、何やら小さな家の模型。テントのようだけど、硬く板のような素材でできている。



「これがさっき言っていた素材か?」


「うん。耐水性も高くてかなり頑丈なんだけど、すごく軽いの。だから持ち運び用のテントというか、小さな小屋のようなものを作ってみたの」


「常設ではない家ならそれなりに耐水性があれば問題ないからな。持ち運びの方はどうするんだ?」



 ジェマはジャスパーの問い掛けに、自信満々に胸を張る。そしてカチリとボタンを押した。すると不思議なことにテントがバタバタと折り畳まれていく。



「これは、凄いな」


「でしょ? 少し考えてみたんだけど、魔石を使わずにできる方法があればみんな使いやすくなるかなって」



 ジェマは折り畳まれて正方形に収まったものを丁寧に広げていく。パネルのような一枚一枚がどこか一ヵ所噛み合うようになっていて、一枚が起きると一枚が起き上がる。一枚が倒れると一枚が倒れる。



「凄いな」


「でしょう? なんかいろいろ折り曲げて遊んでたらできた!」



 満面の笑みを浮かべるジェマに、ジャスパーは苦笑いを浮かべる。遊び感覚で革新的な発明をしてしまう辺り、成人しているとはいえまだまだ少女だ。発明が楽しい。そんな明るい気持ちでいられる姿は、きっと道具師たちにとっては羨ましいものだ。


 発明は道具師としての名声や今後に関わる。だから誰もが必死になる。必死になるがゆえに、楽しむ気持ちなんて忘れて頭が固くなる。仕事として頑張ることとは違う、枷に感じることもある。


 その点ジェマは仕事でありながら、楽しくて仕方がないという気持ちを忘れることがない。それは見つめる背中がそうだったから。


 店主でありながら、スレートは楽しむ気持ちを忘れなかった。誰かを楽しませるために、まずは自分が楽しむ。面白いと思うものを作ることを諦めない。常に上昇志向。それがスレートの基本理念。


 ジェマはその想いすら、確かに受け継いでいた。その発明をする背中は、ジャスパーがいつも見つめていたあの背中と瓜二つだった。



「そのテントを商品化するのか?」


「うーん。一応発明の申請だけ出して、数量限定で販売して終わりかな。この仕組みだけは私の技術として申請を出して、ヒルマニスの使い道だけは公開する形で申請を出してみる」


「それが良いだろうな」



 ジェマはこの村に常駐するわけではない。ヒルマニスを定期的に発注したところで、ファスフォリアではあまり需要がない商品だろう。


 それならばこの村でヒルマニスの使い道を知らしめる方が有効だ。さらにこの村を活動拠点にしている冒険者たちに使ってもらう方が効果的だろう。それにヒルマニスも無尽蔵ではない。水を飲んだ冒険者が回収してそれを素材にするくらいの活用方法でないと、冒険者たちの給水スポットがなくなってしまう。



「これは冒険者の命綱の後始末みたいなことだから。この村で正しく使われた後の使い道が示せたらお終いくらいかな」


「そうだな。それくらいの感覚でいるべき素材だろうな」



 ジェマはジャスパーの同意に微笑むと、早速申請の書類を書き始める。ジェマは迷うことなく書類を纏める。ジャスパーはその背中を見ながら、浮遊魔法でベッドを整える。


 落ち着きなくそわそわしていたジェットも、眠気が限界な様子でベッドに倒れ込む。そしてすやすやと眠り始めた。



「ジェットには悪いことしちゃったな」


「大丈夫だろ。ジェットだって、ジェマの嬉しいことは嬉しいさ」


「そうかなぁ。でも、明日はいつもよりたくさんなでてあげなきゃだね」


「はは、そうだな」



 ジャスパーは眠っているジェットの頭を蹄で撫でてやる。ジェットは気持ちよさそうに寝息を立てている。



「ジェマも。それを書き終えたら寝るんだぞ?」


「はぁい」



 ジェマは書類を書き終えて、道具を【次元袋】に収納する。そして全ての道具も片付けて、ベッドに向かう。


 ジェマがベッドに寝転ぶと、ジャスパーは布団をかけてあげる。ジェマは嬉しそうに笑ってジャスパーに手を伸ばす。ジャスパーは呆れたように笑いながらも嬉しそうにその腕に飛び込んだ。


 ジェマがまだ1人で眠ることが怖かったときにはよく一緒に眠っていた。けれど最近はそれぞれのベッドで眠っていたから、ジャスパーにとっては少し気恥ずかしい。



「ジェマ、どうしても一緒に寝るのか?」


「うんっ! 今日は一緒が良いの!」


「そ、そうか」



 ジャスパーは諦めて腕の中で目を閉じる。ジェマは満足げに微笑みながら目を閉じた。


 翌朝、珍しくジャスパーが寝坊した。様子を見にやってきたシヴァリーは、ジャスパーを抱き締めて眠るジェマと、羨むようにジェマの頬にすりすりしているジェットを見て、思わず笑みが零れた。



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